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『岳飛伝 13 蒼風の章』を読んだ

岳飛伝 十三 蒼波の章 (集英社文庫)

北方 謙三/集英社

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北方謙三氏の「大水滸伝シリーズ」のシーズン3である岳飛伝も13巻目。このシリーズは18巻までだそうですから、標題の書を入れて残り6巻。物語の収束に向けて、登場人物たちの動きが活発化してきました。

自由主義経済を基盤に現代の民主主義国家に近い民のあり方を模索する梁山泊第二世代と、旧宋国の栄華を取り戻そうとする南宋、そして長年の念願であった中間への進出を目論む金国の三勢力の直接対決が本格化してきました。

南宋は軍事部門の第一人者辛晃が、岳飛・秦容の連合軍に倒され、拠点となっていた景朧も同連合軍に占領されてしまったため、南アジアへの進出を一旦ストップし、改めて軍制を編成し直そうとしていますが、そこに金国が攻め込んできます。

しかしながら金国の王海陵王は、野心だけがでかい暗愚な君主でした。自らが出陣した戦いで、南宋軍に散々に打ち破られ、大河を渡る退却戦を強いられることとなります。ここで海陵王を救うのは叔父でもある将軍兀朮。兀朮は戦いこそが自分の求めるものだと宣言し、国の存続よりも戦いが優先するという自らの価値観をもって海陵王を突き放します。現代で言えば、本業を忘れて、いろんなことに手を出しまくっては失敗している若社長を、一言で黙らせてしまう創業者一族の傍流である専務といった役回りでしょうか。南宋、梁山泊(岳飛軍との連合軍含む)との戦いが厳しいことを承知して、おそらく自分はその戦いの中で命を落とすだろう、と予測し、しかもそれを望んでいるようです。

死に場所を探しているのは梁山泊第一世代の李俊と史進。李俊は南宋海軍の拠点である島を攻めている際に間一髪で生還し、相変わらず第二世代の人物たちへの思いと、梁山泊結成の際の志を強く意識し続けています。史進は相変わらず超人的な強さを誇ります。南宋にも金軍にも彼を打ち取れそうな人物はいません。コロリと病気で死んじゃうような退場のさせ方はして欲しくないのですがね。兀朮との直接対決を期待しましょう。

主人公岳飛は、秦容とともに甘藷糖を産物とする産業立国を着々と築き上げ、様々な地域との貿易で国を富ませていきます。軍を精強なものにする軍人としてだけでなく、為政者として、民の生活を安定させ、一人一人が自分の才覚で自由に生きられる世を作る、という志を小規模ながら実現しています。彼がもし中国の広大な土地を支配して、いまと同じような施策を打っていたらどのような国が出来上がるのかを見てみたい気もしますが、史実からいうと、そんな国は実現されていません。しばらくは他勢力との様々な分野での戦いが描かれることになるのでしょう。事態はますます混迷を深めるばかり。

次巻が待ち遠しいというのは毎回読後に最初に感じることなのですが、あと5冊でこの物語が終わってしまうのは惜しいという気持ちもだんだん「具体的」になってきましたね。






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by lemgmnsc-bara | 2018-01-25 15:34 | 読んだ本 | Comments(0)

『ねじ曲げられた「イタリア料理」』を読んだ

ねじ曲げられた「イタリア料理」 (光文社新書)

ファブリツィオ・グラッセッリ/光文社

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数年前にイタリア旅行に行って以来、当家は彼の国のファンとなりました。歴史上、世界に冠たる大国だった時代もあれば、ルネサンスという一大文化ムーヴメントを起こした国でもあります。現代においてもファッションを中心に様々な分野で世界をリードする国の一つですね。つい最近、サッカーW杯の連続出場記録が途切れて話題にもなりました。

そんなイタリアが、世界に対し大きな影響力を持つのが料理の世界。一般に世界団大料理といえば、フランス料理、中華料理、トルコ料理と言われていますが、人によってはその中の一つとイタリア料理を取り替えてしまう場合もあります(和食も同様の場合がありますね)。三大料理云々は別にしても、現在のフランス料理に対してイタリア料理が与えた影響というのが非常に大きいことは料理界の常識です。

ところで、イタリア料理といって思い浮かべるモノは一体どんなモノでしょうか?まずは多種多菜(あえて菜の字を使っています)なパスタ、同じくピザ、基本的な食材だとトマトにオリーブオイルってなところではないでしょうか。

表題の書の著者、ファブリツィオ・グラッセッリ氏は、これらの食材や料理は他国のものであり、「イタリア料理」として定着したのはほんの数十年ほどの間の出来事だ、という衝撃の事実を実例を挙げながら示してくれています。

トマトの原産国は南米だし、ピザがブームを経て、もっともポピュラーなファストフードの一つに定着したのはアメリカの方が先だったそうです。

なるほどねぇ…。ピザ屋トマトに対する、他の国々の人々の感情を知ったら、日本人がどこかの国のスシバーで、海苔巻きに衣をつけて揚げたものにスパイシーなソースとマヨネーズをたっぷりかけて食って「スシは美味い!!」ってのたまう時に感じる違和感と同じような感覚を持つのではないでしょうか?

最近のイタリアでは「スローフード」という考え方が提唱され、それが世界の「意識の高い人」の間でじわじわと広がりつつありますね。広まり方の是非はともかく、その土地土地の気候風土にあった生物を材料に作られる食事こそがその土地に住む人々には一番適しているはずで、ヨソで余計なエネルギーをかけて大量生産された「工業製品」のような食物を、これまた余計なエネルギーをかけて運んでくるよりは、人体にとっても地球にとっても優しいことだというのは事実です。日本にも「身土不二」という概念がありますが、それを実践しているのがスローフード運動だと言えましょう。イタリア人が「イタリア本来の料理」を取り戻すためには文字通り足下を眺めることから始めなきゃならないようですね。まあ、これはイタリアに限った話ではなく、日本も全く同じです。






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by lemgmnsc-bara | 2018-01-25 14:40 | 読んだ本 | Comments(0)

『教団X』を読んだ

教団X (集英社文庫)

中村 文則/集英社

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中村文則氏による超大作。氏の作品を読むのは芥川賞受賞作『土の中の子供』以来となります。ふたつの対照的なカルト教団の教祖とその信者たちの姿を通じて、現代社会に生きるおそらく全ての人々が常々疑問に思いながらも見て見ぬフリをしている、大きな問題に鋭く切り込んでいます。

物語はある教団に入信したと思しき女性を探す男性の描写から始まります。男が最初に訪れたのは「教団」とは呼べないような、緩やかな宗教サークルとでもいうべき集まり。この集団はそのメンバーに献金やら献身を強要することなく、死期の迫った老「リーダー」の講話を皆で聴く、というのが主な活動です。どのような存在を信仰の対象とするかは別にして、こうした素朴な寄合こそが宗教の原始的な、それ故純粋な形ではないでしょうか?様々な悩みを抱えた一般人が教祖の言葉に耳を傾けて、心が洗われたように感じてそれぞれの生活に戻る…。そこには一切寄付や苦役やらは登場しません。ただひたすらに生きていることを肯定し、そこに生じる苦しみにいかに対処していくかを人智を超えた存在の導きによって知る。理想的ですねぇ。世界の宗教が皆この形であれば世界の平和は保たれたままなのだと思いますが…。

一方で、タイトルともなっている「教団X」はヤバい方の典型です。外観上は普通のマンションながら各種装備を備え、武器も備えた施設に信者を集め、教祖はそこで武装した男性信者に守られながら、ハーレムを作り、女性信者を集めて酒池肉林の生活を送っています。この教団Xの教祖、沢渡という人物は、上述した牧歌的な宗教サークルから、多数の信者を引き抜いて教団を創設したという設定です。

沢渡は紛争地域に医師として赴いた経験があり、そこで感じた、この世にはびこる様々な矛盾を正すべく立ち上がったということにもなっています。

人の命というものが、それこそ虫ケラのごとく扱われるような事態を引き起こしたのは一体誰なのでしょう?発展途上にある国々の人民や資源を搾取して富を得ているのは誰?そしてそんなシステムを作り上げたのは誰?

やや、ステレオタイプな疑問の提示の仕方ではありますが、実体験に基づいた沢渡のこの問題に対する答えは信者たちの心に突き刺さり、強烈な信仰心を生むとともに、かなり先鋭的な思想を持つ集団として成長し続けています。

こうなると行き着く先は一つ。現世界の破壊と新秩序の確立です。信者たちは周到な計画を練ってテロを実行しようとします。

果たしてこのテロは成功するのか?そして主人公たる男性の探し求める女性の行方は?次々とたたみかけてくる後半部分の展開にはすっかり引き込まれました。作品の世界に引き込まれてみたい方はぜひとも本文に当たってみてください。

世の中には勝ち組と負け組とが存在し、負け組の方は、大なり小なり世の中がひっくり返って欲しいという願望を持っていると思います。負け組の不満が爆発寸前にまで高まっているときに、着火剤のような役割を果たす、沢渡のような存在がもし現れたら…。ヒトラー然り、IS然り、オウム真理教然り。世界は少なからず混乱し、大きく傷つくこととなります。

こうした不満分子に対する「景気対策」などのガス抜きには短期的にはそれなりに効果があるでしょうが、最終的には物事の根本を全て変えてしまわない限り、いずれまた不満は溜まっていきます。どこかでこの悪しき循環というか、イタチごっこを解消しなければならないとは思いますが、では具体的に何をどうする?と問われても、私には答えは到底出せそうにありません。教祖になるだけのカリスマ性も知識もない私としては、せいぜい、世の風潮に流されないように、不貞腐れて世の中を眺めるくらいのことしかできませんね。








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by lemgmnsc-bara | 2018-01-25 11:04 | 読んだ本 | Comments(0)

『メジャーリーガーの女房〜ヨメだけが知る田口壮の挑戦、その舞台裏〜』を読んだ

メジャーリーガーの女房 ~ヨメだけが知る田口壮の挑戦、その舞台裏~ (マイコミ新書)

田口 恵美子/毎日コミュニケーションズ

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現在オリックスバファローズの二軍監督を務める田口壮氏の妻、恵美子氏のエッセイ集。題名通り、メジャーリーガーの妻としての日常を生き生きとした筆致で描き出しています。

壮氏はアメリカには渡ったものの、メジャーに完全に定着していたわけではなく、マイナーとの間を行ったり来たりする、日本で言うところの一軍半、あるいはエレベーター選手、という立場にいることが長かったですね。そしてその立場はまさに天国と地獄を行ったり来たりするようなもの。チャーター機を仕立てて移動するメジャーに対し、マイナーはオンボロのバスに揺られての長旅続きとなります。食事もメジャーなら専属のコックに豪華なものを用意させますが、マイナーは自費でハンバーガー程度のものを買うことができる程度。厳しい環境ですな〜。

選手もシンドイけどその家族もシンドイ。所属する球団や、グレードが変わるたび引越しを余儀無くされるし、その引越しの際の移動手段も大抵自分で運転する自動車。引越し先では住環境に慣れることから始まって、チームメイトの家族との人間関係なども一から全て再構築しなければならない。そんな事態が長くても数ヶ月に一度、短い場合は一月に満たない期間で発生したそうですから、その煩わしさたるや、考えるだに恐ろしい。

さらに、女房としては壮氏のコンディションづくりを第一に考えなければならないわ、一粒種の寛君を懐妊するわ、実父の死去も重なるわで、私なら到底耐えられなかったであろう日常です。

恵美子氏もある日突然カラダが全く動かなくなるという、典型的なうつ病に襲われてしまったそうです。彼女にとって幸いだったのは「真性うつ」であったこと。きちんと休養を摂って薬を飲んだことで症状は寛解に至ったそうです。現在でも薬は手放せないそうですが、壮氏をはじめとする家族の支えも大きな力になったでしょうし、メジャーリーガーの女房仲間からのサポートも強力だったようです。

異国の地で暮らす本音の厳しさとともに、日米の文化の差異がはっきりと感じられる見事な「比較文化論」になっていたと思います。日本の場合、記録のかかった試合や引退試合など、特別な場合にしか家族を球場に呼ぶようなことはありませんが、米では毎試合観戦して一緒に戦うのが当たり前。球場には選手の家族専用の託児所もあるし、家族用の観戦シートも常設されているそうです。そこで知り合った女房仲間とは独自のネットワークが形成され、選手が他球団にトレードされた際も、そのネットワークが様々に選手の家族をサポートする。多民族の集まった国家であり、またトレードが日常茶飯事である彼の国ならではでのシステムですね。

球界関係者だけでなく、今後海外で暮らす機会があると予想される人にとっても役に立ちそうな一冊であるように思います。






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by lemgmnsc-bara | 2018-01-21 10:08 | 読んだ本

『虎に食われた男』を読んだ

虎に食われた男

藤本義一/幻戯書房

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故藤本義一氏の阪神タイガース賛歌。日刊スポーツ紙上に連載されたものを単行本化したもの。どこかの大きな書店でバーゲンブックとして叩き売られていたものを「救出」。

藤本氏といえば、私にとっては作家というよりは『11PM』の司会者という印象が強い方です。中学生当時、親が起きてくるのを警戒しながらエッチな画面にドキドキワクワクしていた身としてはどうしてもイヤラシイおじさまというイメージを持ってしまいましたが、実は私は藤本氏の作品を読んだことがありませんでした。

藤本氏初体験のこの作品の主人公は、阪神タイガース私設応援団の創設に深く関わり、その団長を務めたこともある松林豊氏。この方、タイガースを応援するためなら全国どこにでも行くという筋金入りのトラキチで、そのために安定した公務員という職を捨て、順調に拡大しつつあった事業も手放したという人物です。

ストーリーは連載当時、低迷を極めていたタイガースの実像にちらりと触れてから、終戦直後のダイナマイト打線の回顧へと進んでいきます。ちなみに、私が敬愛する北杜夫氏も熱烈な阪神ファンでしたが、彼が阪神ファンとなったのはこのダイナマイト打線に魅せられたからだそうです。

リアルタイムと過去を行き来しながら、タイガースという球団がどのような性格を持ち、どのように変貌して来たのかを描き、同時にトラキチである松林氏の生き様と、日本社会全体の戦後からの復興と平成の世に入ってからの動向を描いています。一つの球団を物語の核に据え、人間の人生と社会の変遷を描いた見事な「時代小説」と言って良いと思います。

オハナシの最後は昭和60年、超強力打線を有したタイガースが日本一の栄冠をつかんだところで終わっています。バース、掛布、岡田の甲子園バックスクリーン3連発はもはや伝説と化していますね。この三人に、俊足と長打力を兼ね備えたリードオフマンの真弓を加えた打線は、日本球界の歴史の中でも屈指の存在でした。日本シリーズの相手は全盛期の西武ライオンズでしたが、管理野球だの戦術だのといった、小やたら難しい野球を強力打線で粉砕してつかんだ日本一は、野球の面白さの一つの原点でしたね。四の五の言おうが、どんな小細工をしようが、最終的に良いバッターが額面通りに打てば勝つんだよ、という野村克也氏あたりが聞いたら卒倒しそうな世界観の野球を実現しちゃいましたからね。

さて、平成の世も末となった先シーズン、タイガースファンの多くは歯がすり減ってしまうくらい歯噛みしたのではないかと思います。大差をつけられてリーグ優勝には届かず、本拠地甲子園でのクライマックスシリーズでDeNAに下克上を許してしまいましたからね。最後の最後で詰めが甘い、という体質だけは確かに継承されているようです。






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by lemgmnsc-bara | 2018-01-13 07:40 | 読んだ本 | Comments(0)

『拝み屋怪談 逆さ稲荷』を読んだ

拝み屋怪談 逆さ稲荷 (角川ホラー文庫)

郷内 心瞳/KADOKAWA/角川書店

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宮城県で「拝み屋」を営む郷内心瞳氏の「ライジング」編。郷内氏が幼少期から体験してきた様々な怪奇現象を中心に紹介するとともに、なぜに氏がこの道を選んだのかについて書かれています。

氏はひい婆様、父方の祖父母、両親、本人と弟と妹が一人づつの計8人の家族でした。このひい婆様は一風変わった方で、神仏を一切信じないばかりか、仏壇や神棚を他の家族が拝んでいるとその側で聞こえよがしに神仏を罵倒するという奇行に及びます。

普通は歳をとればとるほど信心深くなると思うのですが、この方は全く逆。そしてこのひい婆様によって起こされた怪異も多々あったそうです。そして最後の最後に非常に君の悪い事態がこの家族を襲います。その怪異の中心人物はやっぱりこのひい婆様でした。

氏は、ひい婆様が引き起こした怪異を取り除いた拝み屋に師事し、拝み屋としての修行を積むこととなります。

私は本書も含め氏の作品は二作しか読んだことがないので、彼の拝み屋としての活躍については詳しくは知りません。まあ、私はどこに行こうと霊とか狐狸妖怪の類を「感じた」ことは一切ありません。感じなきゃ感じないままの方が幸せなのかもしれませんね。知らないうちに祟られているのでは?という恐怖は感じざるを得ませんが、これは何もあやかしの皆様に限ったことではありません。

拝んでもらったら鬱が治るっていうのならすぐにでもすっ飛んでいきたいと思いますが、まあ今後とも氏に拝んでもらうような事態は発生しないだろうと高を括っております。






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by lemgmnsc-bara | 2018-01-06 09:46 | 読んだ本 | Comments(0)

『審判は見た!』を読んだ

審判は見た!(新潮新書)

織田淳太郎/新潮社

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スポーツライター織田淳太郎氏によるプロ野球審判のルポルタージュ集。

野球というスポーツにはルールが存在し、そのルールに照らして様々な判定を行うのが審判員。目立たないというより、目立ってはいけない存在ですが、彼らがゲームに及ぼす影響は大きいですね。小はボールストライクの判定から、大はホームランか否かの判定まで。塁上のクロスプレーあり、非合法すれすれのプレーあり、コースギリギリを変化してかすめるボールあり。千変万化の状況下で正しい判断を下さねばならず、しかも正しく判定することが最低条件で、ミスジャッジでもしようものなら、不利な判定をされたチームの選手、監督、コーチはもとより応援団やマスコミからも叩かれまくります。本書の冒頭には判定に激怒し暴徒化したファンに追い詰められ、とっさの機転で文字通り命からがら球場から逃れたエピソードが紹介されています。珍プレー好プレーを紹介するTV番組などでは監督やコーチが審判に詰め寄ったり、ひどい時には暴行を受けやりするシーンまでがコミカルに特集されたりしますが、本人たちにとっては笑い事ではすみませんね。

本書では球史に残る名(迷?)判定の数々を取り上げ、それに携わった審判員たちを描くとともに、判定によって起こった騒動前後のエピソードや、審判員の「人気度」、年収など様々なウンチクが散りばめられています。

中でも強く私の印象に残っているのは、1978年の阪急vsヤクルトの日本シリーズ第七戦、大杉選手の打球のジャッジを巡る騒動ですね。ファールを主張した阪急上田監督の抗議は1時間19分もの中断を招き、時のプロ野球コミッショナーまでが説得に出張るという大混乱を巻き起こしました。結局判定は覆らず、ヤクルトは初の日本一という栄冠を手にします。文字通り球史に残る疑惑の判定でした。

常に過度の緊張下に置かれる審判員は胃を中心とした内臓系の重篤な病に犯されることが多いようで、数多の方々が「えっ?そんな年で??」と驚かされるような若さで亡くなっています。ビデオ判定が導入されたり、コリジョンルールなんてものが出現したりで審判の判定がしやすくなるのか、それともより混沌の度合いを深めるのかわからない状況下にあります。彼らのストレスは軽くなるどころか、ますます重くなっていきそうですね。






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by lemgmnsc-bara | 2018-01-06 08:03 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 12 飄風の章』を読んだ

岳飛伝 12 瓢風の章 (集英社文庫)

北方 謙三/集英社

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岳飛伝も全18巻の2/3となる12巻目に突入。今巻では復活を期す南宋と梁山泊・岳飛連合軍との直接のぶつかり合いが描かれます。

まずは海戦。新しい拠点から梁山泊の輸送船団を襲い続けていた韓世忠と、本来の水滸伝の続編、水滸後伝では主人公となる李俊との文字通りの直接対決が描かれます。軍全体の指揮官から水軍の一将校に降格されたことにより傷ついたプライドと意地をぶつけてくる韓世忠と、後継者が続々と育っていくことに喜びを覚えながらも、自らの肉体の衰えといまだに達成できていない「替天行道」の志に関して忸怩たる思いを抱いている李俊との屈折対決が前半最大の読みどころ。結果は書きませんよ、本文を読んで欲しいから(笑)。

後半は小梁山の指導者秦容と岳飛の連合軍対第一人者辛晃率いる南宋軍との激突。景朧という要衝地の城砦をめぐって、両軍が総力戦を繰り広げます。久々に北方氏の描く、血の臭いまでが漂ってくるような戦闘シーンが堪能できます。

中でも小梁山のリーダーとして「政治」に携わり続けてきた秦容の「軍人返り」とでも言うべき活躍が凄まじい。父秦明から受け継いだ狼牙棍を手にするや、まさしく鬼神の如く敵中に突進してあっという間に数十人の敵兵を血の海に沈める大立ち回りを見せつけます。ワンマンアーミーというか、リーサルウエポンというか、彼一人が敵陣に突っ込むだけで戦況がガラリと変わってしまう鬼神のような荒武者ぶり。

こんな奴を敵に回す戦いをせざるを得ない南宋軍に同情せざるを得ないほどの描かれ方です。

この戦いによって主力軍の兵数を大きく損じ、また有力な武将を数々討ち取られ、要衝である景朧を抑えられた南宋は今後どうなっていくのか?梁山泊の快進撃は続くのか?今巻ではおとなしかった金国の動向は?そして主人公岳飛の命運は?ますます興味の尽きない展開です。毎度のことながら次巻が待ち遠しい。







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by lemgmnsc-bara | 2018-01-04 07:13 | 読んだ本 | Comments(0)

『死小説』を読んだ

死小説 (幻冬舎文庫)

福澤 徹三/幻冬舎

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恐怖をテーマにした作品の多い福澤徹三氏の短編集。タイトル通り「死」を扱った作品ばかりが収められています。

人はいつか必ず死を迎えますが、その死に様は人それぞれ。事故や急病で突然の死を迎えることもあれば、植物で、長く「生かされている」ケースもある。美人薄命、憎まれっ子世に憚るなんて言葉もありますし、自ら死を選ぶ人の数が長い間3万人を超え続け、社会問題化したなんてこともありました。

医学的、法学的には脳死や心臓死なんて分け方もありますし、倫理的、哲学的には認知症にかかって「ワケがわからん」状態になってしまった人も固有の人格としては「死んでしまった」状態と言えるかもしれません。

いずれにせよ、死とは生命活動が停止し、それまで意思を持っていた「人間」がただの物質に変化してしまった状態であると言えます。

しかしながら、果たして今の今まで、その人の「人格」として存在していたモノはきれいさっぱりと消えてしまうものなのでしょうか?

そんな素朴かつ強力な疑問により、死および死後の世界というものは常に強く意識され、様々な想像から様々な物語が描かれてきました。

残念ながら私にはまだ死を強烈に意識するような出来事は起こっていません。父や祖母、大叔母などの葬式の際にはそれなりの感慨と悲しみはありましたが、それだけ。いわゆる霊感とか言われるものも持ち合わせておらず、それゆえ幽霊にも出くわしたことはありません。もっとも、現在の私の身の周りの状況が何らかの存在による祟りだと言われてしまえばコロッと信じてしまうかもしれません(笑)。

本文に関係なく、自分自身の「死」というものに対しての印象をずらずらと並べてしまいましたが、読み手に「死」というものの実感と得体の知れなさを強く意識させることには成功していた一冊であったように思います。霊魂やら妖怪の実在を信じるまでには至りませんでしたがね。






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by lemgmnsc-bara | 2018-01-03 17:26 | 読んだ本 | Comments(0)

『会津春秋』を読んだ

会津春秋 (集英社文庫)

清水義範/集英社

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ブロ友の皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

新年一発目の投稿は、昨年読んでおいたものの感想から。パスティーシュ小説の第一人者にして、教育関連の本も多い清水義範氏のど真ん中の時代小説です。幕末に生きた二人の武士の姿を通じて、人間の運命の不安定さと、その中でも変わらぬものがあるということを描いた、青春小説としての一面も持ち合わせた作品です。

主人公は会津藩士、秋月新之助。彼は後年京都守護職となる松平容保の近習として、その幼少時から生活をともにしてきたという設定になっています。17歳の彼は佐久間象山が主宰する軍事教育の学校に通っているのですが、そこで知り合うのが終生の友となる橋口八郎太。彼は薩摩藩士で、新之助とはお互いに数学が苦手であることから意気投合。その親は徐々に厚い厚い友情へと変化していきます。

数学ができないもの同士、慰めあったり、同じ女性を好きになってみたり。舞台をそのまま現在に持ってきても十分通用する高校生の青春小説そのものです。そして江戸の世がそのまま続いていれば、二人はそのまま親友として生きていけたことでしょう。

ところが時代は幕末です。昨日勤王、今日佐幕。時代の波のうねりは二人のみならず日本の国民全体に大きく影響を及ぼしましたね。

最初は長州という共通の敵を撃退するために手を組んだ会津、薩摩の両藩ですが、世間の情勢が刻々と変わる中、坂本龍馬(彼もこの二人の同窓生として物語中に登場します)らの奔走により、薩長同盟が成り立った後は、会津藩は薩摩のみならず日本全国を敵に回す賊軍となってしまいました。

維新後、旧薩摩藩の有力人物西郷隆盛を担ぐ人々が起こした西南の役では八郎太が朝敵となり、新政府で警官となっていた新之助はその征伐に参加することとなります。地震や津波が人々の暮らしの全てを猫すぎ奪ってしまうのと同様、世の中の大きな動きってやつも、個人の価値観など軽々と凌駕し、それを根底からひっくり返してしまいます。

そんな、まさに一寸先は闇の時代の流れの中にあっても二人の友情は変わりません。お互いに、敵陣に変装して乗り込み、友としての関係に変わりがないことを確かめ合うエピソードが描かれています。人の心は強いようで弱いし、弱いようで強い。

今の自分に命を賭してまで会いにきてくれる友がいるだろうか?あるいは自分が命を賭けて会いに行きたい友はいるだろうか?単なる青春小説の枠には止まらない、深い深い命題が読み手の前に突きつけられます。その問いに関する答えを見つける、あるいは見つけようと考えてみることこそがこの本の本当の味わいなのではないでしょうか。





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by lemgmnsc-bara | 2018-01-03 08:09 | 読んだ本 | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。