今シーズンのラグビー観戦記其の二は遅ればせながら一ヶ月ほど前に行われたサンゴリアスvsグリーンロケッツの一戦。
ほぼベストメンバーのサンゴリアスに対し、グリーンロケッツは昨年のメンバーから日本代表経験のある田村、村田が抜け、かつ、キャプテンでムードメーカーである瀧澤を負傷で欠く状態。新外国人に有力な選手が多いとはいえ、サンゴリアス優位は動かないだろうというのが戦前の私の予想でした。
ところが案に反して序盤から攻め込んだのはグリーンロケッツ。サンゴリアスのお株を奪う波状攻撃でサンゴリアスのゴールラインに迫ります。攻めの勢いそのままに開始早々PGのチャンスを得ました。ここでグリーンロケッツが先制していれば面白かったのに、というのがこの試合最大のタラレバ。
グリーンロケッツのPG失敗後はサンゴリアスのアタックの時間が長く続きます。しかしながらこの日のグリーンロケッツのディフェンスは非常にしぶとかった。ワイルドナイツほどの力強さはないものの、接点でのファイトで互角に渡り合えていたため、サンゴリアスの攻撃陣になかなかゲインラインを切らせない展開が続きます。
実はグリーンロケッツはサンゴリアスにとっては苦手な部類の相手です。相撲でいうところの取り口の相性が悪いとでも言いましょうか、サンゴリアスの方が常にリーグの上位にはいるし、リーグ優勝も何度も果たしているのですが、トップリーグ発足後の17回の対戦成績はサンゴリアスの10勝6敗1引き分と、実績に比して思ったほどの勝敗差はありません。
グリーンロケッツは接点でとにかくしぶとくファイトしてサンゴリアスの攻撃を寸断し、あわよくば相手ボールを奪って逆襲するというのがその戦法です。ゆえに接点でのファイトで上回る場合はロースコアのゲームとなり、グリーンロケッツのペースに持ち込めるのです。例えばエディー・ジョーンズ監督の初年度には日本選手権を制したサンゴリアスをリーグ戦の直接対決で破っているし、’01年の日本選手権決勝ではグリーンロケッツ陣ゴール前の密集でサンゴリアスのボールを奪い、そのままトライを奪って優勝を果たしています。
この試合も、そうしたサンゴリアスの負け試合と同じような展開をたどっていました。攻めている時間は圧倒的に多いサンゴリアスですが、なかなか得点に結びつかないのです。サンゴリアスの方に細かいミスが少なからずあったというのも事実ですが、ミスにつながる焦りを誘発したのはグリーンロケッツの接点での飽くなきファイトだったように思います。
それでも前半はサンゴリアスのリードで終わりましたが、後半開始直後からはグリーンロケッツが試合の主導権を握り、いい流れでトライを奪いました。そのままの勢いでPGなども絡めて一時は1トライ1コンバージョン差まで迫りました。プレーのほんのちょっとしたアヤで勝敗の行方が左右される競った状態が長く続きました。
グリーンロケッツがついに最後まで追いつけなかったのは、ゴールキックの精度がやや低かったことと、肝心のポイントでミスが出たことです。守りに力を注いだ分、攻めに転じた時にスタミナ切れを起こしてしまうのか、ノックオン、スローフォワードなどのミスが続き、文字通りみすみすチャンスを自らの手で潰してしまっていました。プレッシャーのかかる場面でいかに正確にプレーするかはプレーヤーたちの永遠の課題であるが、その課題を解決できなかった典型的な一戦だったと思います。
サンゴリアスは苦しみながらも、勝ったことが大きい。この後のリーグ戦では神戸製鋼、東芝(どっちも本業が危ういですね 笑)といった強豪と当たりますが、この一戦の苦戦を糧に修正していっていただきたいものです。その先にはパナソニックとの対戦が控えています(いるはずです)。
パナソニックの守備はこのゲームのグリーンロケッツのそれをはるかに上回りますし、BKもグリーンロケッツにはかけていた決定力を持ち合わせています。そのディフェンスを打ち破ることなしには日本選手権を手にすることはできませんし、日本ラグビーの進化もありません。