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『岳飛伝 16 戎旌の章』を読んだ

岳飛伝 16 戎旌の章 (集英社文庫)

北方 謙三/集英社

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今まで、ずっと『岳飛伝』は18巻で完結、と記してきましたが、実は全17巻だったようです。(しかも前巻の15巻を紹介した際にはしばらく16巻をライフログに表示してました…)そんなわけでラス前となるのが今巻です。

ストーリーはほぼ戦い一色。年齢を重ね、人格的にもそれなりに成熟した梁山泊第二世代が率いる梁山泊軍とが南宋という旧体制国家と金国という軍事大国を相手に、自由主義経済に基づいた民主主義を確立するために戦い続けます。

戦闘シーンはシビアでリアルそのもの。特に父秦明も用いていた狼牙棍を武器にする秦容は当たるを幸い、全ての敵をなぎ倒す超人ぶり。数万の軍勢同士の戦いがホンの一騎の大暴れで左右されるのですから、その超人ぶりは際立っています。普通の人間の中に、一人だけ仮面ライダーがいるようなもんです。まあ、数の論理でいえば、梁山泊軍は南宋にも金国にも劣っているのですから、一人一人の戦闘力が高いということをアピールする一つの方法ですね。

今巻最大のクライマックスは、第一世代の最後の生き残り、史進と金国軍総帥兀朮との乱戦の中での一騎討ち。お互いが待ち望んでいた「戦いの中での死」を迎えるのは果たしてどちらでしょう?これは本文を読んでのお楽しみということにしておきます。

各勢力が戦いに明け暮れる一方で、梁山泊がその基礎を築きあげた物流網は、金国軍の元総帥の息子蕭玄材がトップである轟交賈という組織が完全に引き継いでいます。この組織は現在でいえば総合商社、それも多国籍にまたがる巨大商社とでもいうべき存在です。日本の昆布、金から南方の甘藷糖、中国大陸内部の穀物全般に、南宋が特産品としている絹織物まで、何でも扱います。しかもどの勢力に与することもなく、戦乱が怒っている地域では一切商売をしない、という方針が徹底しています。現代の商社との違いは、利のための不正は一切しないところ。戦火がくすぶっている地域で、兵器や食糧などの「需要」を高めるために、戦いを煽るような介入を行う(と、巷間言われてますね)現代商社にはない高潔さがそこにはあります。

志の具現化の一つの形として梁山泊の面々にも認められている轟交賈はどの勢力が勝ったとしても残るのでしょう。民がその機能を必要とするからです。こういうところが相変わらずリアルですね。

さてこの長大かつ重厚な物語がどのような結末を迎えるのか、待ち遠しいような、名残惜しいような…。とりあえずすでに最終巻は買い求めてあります。



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by lemgmnsc-bara | 2018-05-13 19:37 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 15 照影の章』を読んだ

岳飛伝 十五 照影の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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岳飛伝の15巻目。いよいよ三大勢力の直接のぶつかり合いが始まりました。

南宋の程雲という将軍が実にいやらしい動きを見せます。岳飛一人に狙いを定め、彼を討ち果たすために、軍の動きを感知されないよう、大多数の味方にも内緒のまま自ら城砦作りの一兵卒に身をやつして「気配」を完全に絶ってしまうのです。そして実際に後一歩というところまで岳飛を追い詰めるのですが、岳飛は命からがらなんとか逃げ切ります。戦闘で深手を負った岳飛は、しばらくの間生死の境をさまよいますが、回復したら即、身の回りの世話(シモの世話を含む)を焼いてくれた女性と関係を持ってしまったりもします。人間臭いというか男臭いというか、決して清廉潔白一辺倒の男として描かれないところがリアルですね。大敗を喫した岳飛が今後どのように生まれ変わった姿を見せてくれるのか?興味は尽きません。

南方から北上して来たもう一方の雄、秦容も一度程雲の巧妙さの前に、軍全滅の危機に陥りそうになりますが、持ち前の「嗅覚」のおかげで、程雲の包囲網のほんの少しのほころびを突いて一点突破し、ほぼ無傷で金国軍に相対する位置まで軍を引っ張り上げます。

南宋は、岳飛、秦容を程雲が追う一方で、梁山泊軍の南の本拠、小梁山を攻めるための船を続々と作り上げ、南方に集結させていきます。宰相秦檜は大病を患っていて徐々に弱って来ているという設定。秦檜に息あるうちに梁山泊を倒し、返す刀で金国軍を追い払おうと企図する程雲ですが、まずは梁山泊軍との戦いに注力していくようです。

金国は海陵王の梁山泊軍との開戦の決意待ち。将軍の兀朮はすでに臨戦体制なのですが、人を動かし、死なせることの怖さを知った海陵王はなかなか肚が定まりません。梁山泊は梁山泊で。兀朮を最高権力者にしてしまうよりは、人間としての器が小さい海陵王を王座に据えておいたほうが組し易しとみて、いざ海陵王が出張って来ても、わざと撃ち漏らすように将校たちに指示を出したりします。下手な味方は敵より怖いとはよく言ったもので、才能のない人間が、特に上にいると組織全体が機能不全になりますな。どこかの会社の管理職に突きつけてやりたい物語です。

三者三様に風雲急を告げる展開となった今巻。物語がどのような結末を迎えるのかが、楽しみでもあり、寂しくもありというところですが、まずは、結末前に描かれるであろう、一大決戦を楽しみにしておこうと思います。





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by lemgmnsc-bara | 2018-03-21 15:43 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝14 撃撞の章』を読んだ

岳飛伝 14 撃撞の章 (集英社文庫)

北方 謙三/集英社

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トラックで行われる徒競走に例えれば最終周の第4コーナーに突入したところといった風情の『岳飛伝』第14巻目。

今巻ではいよいよ岳飛軍と秦容の軍とが本格的な北上を開始します。頭数こそ少ないものの、両軍の強さは圧倒的。当初は刺客として送り込まれながら味方につけた「高山兵」の活躍もあり、野戦、攻城戦ともに連戦連勝。久しぶりに、疾駆する騎馬隊によってまき起こされる殺気を孕んだ風や、血の臭いまでを生々しく感じられるような、北方氏の描き出す戦闘シーンを堪能しました。こういう男臭さがあるからこそ、軟弱な男からの人生相談に対し「風俗へ行け!」と言い切れる力強さが出てくるんだと思います(笑)。

南宋は陸戦では負け続きですが、巨大な船団を編成して、秦容の本拠地である小梁山を攻め取るという戦略を巡らし始めます。北の梁山泊本山は金国に任せ、南宋と金国は当面争わないという約定を結んだ上での動きなのですが、この辺はいかにも権謀術数に長けた秦檜ならではの「外交戦略」ですね。現実社会でも、実動部隊とは別の次元と場所でハカリゴトをめぐらして一気にコトが決まってしまうってのはよくあるオハナシですが、武力だけには依らず、交渉と協調で敵に当たるというのは、一つの優れた戦略ではあります。雄々しい梁山泊軍の前ではどうしても女々しく感じられてしまいますし、ハカリゴトの後には首謀者は民衆に広く嫌われそうではありますけどね(笑)。

金国は梁山泊軍との戦いのみを考えている状態。将軍兀朮も、王である海陵王も中原に覇を唱えるためにはまず梁山泊を倒さなければならないという意図の下、着々と決戦に向けての準備を進めていますが、兀朮はすでに梁山泊との戦いそのものが目的化しているという状態。梁山泊軍の主力豪傑たちとの「直接対決」のシーンはどう描かれるのか、少しワクワクします。

そんな中、楊志、楊令と受け継がれた、伝説の「吹毛剣」を、楊令の遺児である胡土児に手渡す「儀式」のために史進が登場します。今巻では戦闘シーンには一切登場しませんでしたが、後々どんな散りざまを見せてくれるのかに期待しましょう。



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by lemgmnsc-bara | 2018-03-04 11:41 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 13 蒼風の章』を読んだ

岳飛伝 十三 蒼波の章 (集英社文庫)

北方 謙三/集英社

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北方謙三氏の「大水滸伝シリーズ」のシーズン3である岳飛伝も13巻目。このシリーズは18巻までだそうですから、標題の書を入れて残り6巻。物語の収束に向けて、登場人物たちの動きが活発化してきました。

自由主義経済を基盤に現代の民主主義国家に近い民のあり方を模索する梁山泊第二世代と、旧宋国の栄華を取り戻そうとする南宋、そして長年の念願であった中間への進出を目論む金国の三勢力の直接対決が本格化してきました。

南宋は軍事部門の第一人者辛晃が、岳飛・秦容の連合軍に倒され、拠点となっていた景朧も同連合軍に占領されてしまったため、南アジアへの進出を一旦ストップし、改めて軍制を編成し直そうとしていますが、そこに金国が攻め込んできます。

しかしながら金国の王海陵王は、野心だけがでかい暗愚な君主でした。自らが出陣した戦いで、南宋軍に散々に打ち破られ、大河を渡る退却戦を強いられることとなります。ここで海陵王を救うのは叔父でもある将軍兀朮。兀朮は戦いこそが自分の求めるものだと宣言し、国の存続よりも戦いが優先するという自らの価値観をもって海陵王を突き放します。現代で言えば、本業を忘れて、いろんなことに手を出しまくっては失敗している若社長を、一言で黙らせてしまう創業者一族の傍流である専務といった役回りでしょうか。南宋、梁山泊(岳飛軍との連合軍含む)との戦いが厳しいことを承知して、おそらく自分はその戦いの中で命を落とすだろう、と予測し、しかもそれを望んでいるようです。

死に場所を探しているのは梁山泊第一世代の李俊と史進。李俊は南宋海軍の拠点である島を攻めている際に間一髪で生還し、相変わらず第二世代の人物たちへの思いと、梁山泊結成の際の志を強く意識し続けています。史進は相変わらず超人的な強さを誇ります。南宋にも金軍にも彼を打ち取れそうな人物はいません。コロリと病気で死んじゃうような退場のさせ方はして欲しくないのですがね。兀朮との直接対決を期待しましょう。

主人公岳飛は、秦容とともに甘藷糖を産物とする産業立国を着々と築き上げ、様々な地域との貿易で国を富ませていきます。軍を精強なものにする軍人としてだけでなく、為政者として、民の生活を安定させ、一人一人が自分の才覚で自由に生きられる世を作る、という志を小規模ながら実現しています。彼がもし中国の広大な土地を支配して、いまと同じような施策を打っていたらどのような国が出来上がるのかを見てみたい気もしますが、史実からいうと、そんな国は実現されていません。しばらくは他勢力との様々な分野での戦いが描かれることになるのでしょう。事態はますます混迷を深めるばかり。

次巻が待ち遠しいというのは毎回読後に最初に感じることなのですが、あと5冊でこの物語が終わってしまうのは惜しいという気持ちもだんだん「具体的」になってきましたね。






第2回プラチナブロガーコンテスト



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by lemgmnsc-bara | 2018-01-25 15:34 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 12 飄風の章』を読んだ

岳飛伝 12 瓢風の章 (集英社文庫)

北方 謙三/集英社

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岳飛伝も全18巻の2/3となる12巻目に突入。今巻では復活を期す南宋と梁山泊・岳飛連合軍との直接のぶつかり合いが描かれます。

まずは海戦。新しい拠点から梁山泊の輸送船団を襲い続けていた韓世忠と、本来の水滸伝の続編、水滸後伝では主人公となる李俊との文字通りの直接対決が描かれます。軍全体の指揮官から水軍の一将校に降格されたことにより傷ついたプライドと意地をぶつけてくる韓世忠と、後継者が続々と育っていくことに喜びを覚えながらも、自らの肉体の衰えといまだに達成できていない「替天行道」の志に関して忸怩たる思いを抱いている李俊との屈折対決が前半最大の読みどころ。結果は書きませんよ、本文を読んで欲しいから(笑)。

後半は小梁山の指導者秦容と岳飛の連合軍対第一人者辛晃率いる南宋軍との激突。景朧という要衝地の城砦をめぐって、両軍が総力戦を繰り広げます。久々に北方氏の描く、血の臭いまでが漂ってくるような戦闘シーンが堪能できます。

中でも小梁山のリーダーとして「政治」に携わり続けてきた秦容の「軍人返り」とでも言うべき活躍が凄まじい。父秦明から受け継いだ狼牙棍を手にするや、まさしく鬼神の如く敵中に突進してあっという間に数十人の敵兵を血の海に沈める大立ち回りを見せつけます。ワンマンアーミーというか、リーサルウエポンというか、彼一人が敵陣に突っ込むだけで戦況がガラリと変わってしまう鬼神のような荒武者ぶり。

こんな奴を敵に回す戦いをせざるを得ない南宋軍に同情せざるを得ないほどの描かれ方です。

この戦いによって主力軍の兵数を大きく損じ、また有力な武将を数々討ち取られ、要衝である景朧を抑えられた南宋は今後どうなっていくのか?梁山泊の快進撃は続くのか?今巻ではおとなしかった金国の動向は?そして主人公岳飛の命運は?ますます興味の尽きない展開です。毎度のことながら次巻が待ち遠しい。







第2回プラチナブロガーコンテスト



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by lemgmnsc-bara | 2018-01-04 07:13 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 十一 烽燧の章』を読んだ

岳飛伝 十一 烽燧の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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岳飛伝も巻を重ねること11冊目。いよいよ本格的な戦闘シーンが描かれることとなります。

とはいえ、作者が文中の登場人物に吐かせるセリフに「もはや、戦いの勝ち負けだけで世の中が変わる時代ではなくなった」という主旨のものがある通り、武力に優れた勢力が勝って「国」を名乗ったとしても、その治世は長くは続かないだろう、という思想が暗示されています。梁山泊軍が陰に陽に発達させたモノの流れを背景にした貨幣経済が民の意識までをも変革させてしまったからです。

史実としてはこの後、元が出現し、中国のみならず、欧州近辺までその勢力を拡大し、占領した都市では、人間のみならず、勝っていた小鳥までをも皆殺しにしたなどと伝えられるような「力の時代」が出来して、民の意識はもう一度大きく古代に戻ることになるんですけどね。

さて、今巻のハイライトは呼延凌率いる梁山泊軍の本軍と、金国の主力軍とのぶつかり合いです。お互いの大将同士が一騎打ちに近い形で切り結んだ激戦は、決着を見ないままに一旦終結。当然リターンマッチはあるでしょうし、金国との連携を保ちながら、一方で二つの勢力の力が弱まることによる漁夫の利を得ようとする南宋の動きからも目を離せません。

王清、秦容などのメインキャラたちの人間的成長(武や商いだけに生きてきた若者が好きな人にきちんと好きだと伝え、妻にするなど)が描かれる一方で、「主人公」岳飛は自分の子(現妻の連れ子も含む)の成長を目の当たりにし、自分の人生が後半戦に入ったことを徐々に思い知らされていきます。そんな日々の中、岳飛は南宋内に居残った旧岳飛軍三千人の潜伏先を全て訪ね歩き、来るべき大きな戦いへの準備を進めていきます。

最終的には兵力で一番劣る、梁山泊軍・岳飛軍の連合軍が、南宋、金国の二大勢力を相手にどこまで食い下がり、彼らが戦う根底をなす志をどこまで実現できるのか、という展開になりそうですが、まだまだ波乱は起きそうですね。



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by lemgmnsc-bara | 2017-11-18 07:39 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 十 天雷の章』を読んだ

岳飛伝 十 天雷の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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岳飛伝も後半戦に突入。各々の勢力が、各々の方法で蓄えていた力を徐々に放出して、勢力同士がぶつかり合う、という展開に物語は進んで行きます。

正面切っての戦いの描写こそ一箇所しかありませんでしたが、暗殺あり海戦あり破壊工作ありと、多種多様な「小競り合い」が展開されます。

今巻ではまた、梁山泊、南宋、金国の三つの勢力の戦いをそれぞれが持つイデオロギーの戦いであるとする描き方がより先鋭化しています。

一人一人の民の暮らしが先にあり、それが集まったものが結果として国という体裁を取るのだ、という梁山泊と、巨大な権力がまずありきで、民をその権力のために奉仕させる存在であると位置付ける南宋、戦いに勝ったものが全てを掌握し、その後の統治形態については歴代の中国王朝を踏襲するのだろうなと予想される金国。比較的親和性の高い後二者が連合し、それに梁山泊軍が対峙するという構図となります。南宋も金国も共に目の上のたんこぶ的存在なのが梁山泊。まずは共同してこのたんこぶを取り除いてしまおうというわけです。で、地理的にも思想的にも目障りな梁山泊がなくなったら、改めて両者で覇を競い、勝った方が中央集権国家を構築しようという魂胆です。

二つの勢力が組んだら、いかに豪傑揃いの梁山泊といえど、その命運は危うくなるでしょう。しかしながら敵と同じ方法で戦力を拡充することは、民の暮らしが優先(どこかの国の政党に突きつけてやりたいイデアですな)という梁山泊設立の志に反することです。故に梁山泊軍は南方の地を開拓して、そこに人を集め、今で言うところの福利厚生を手厚くして、住民の暮らしが十分に成り立つようにしながら、精強な兵を育て上げます。商業と兵器の生産の中心でもある本拠地梁山泊に、豪傑の一人秦容が築いた南国の小梁山、小梁山にほど近い場所にやはり屯田兵的な本拠地を築いた岳飛軍との軍事的連携と、日本を含めたアジア全域にまたがる巨大かつ精緻な経済網の構築で、圧倒的な兵数の差を埋めていこうというのが戦略です。

そんな中、岳飛は岳飛なき後、宋軍の最高司令官となった辛晃と戦い、後一歩で辛晃の首をとる、というところまで追い詰めます。大軍同士が正面からぶつかり合うだけが戦ではなく、相手の頭だけを狙って一直線に攻めるというのも有効な戦法だ(寡兵を以って大軍を攻める時の常套手段でもありますね)というのが、北方氏独特の男臭い記述で描かれます。

こうした戦いの日々の中、水滸伝、楊令伝で活躍した武将の「ジュニア世代」が次々と成人して行きます。すなわち人を愛することを知り、民と同じように「暮らし」を経験することで、人生の意味、みたいなものを考え始めるようになるのです。こうした経験や思索が今後の梁山泊軍の「志」にどのように影響し、そしてその「志」の下に作られようとする国がどのような形となるのか…。

史実上は、梁山泊軍というのは単なる反乱軍であり、結局は中央集権国家に飲み込まれてしまうのですが、この物語上ではどこまで成長していくのか?今後の展開も目を離せません。



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by lemgmnsc-bara | 2017-10-28 16:38 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 八 龍蟠の章』を読んだ

岳飛伝 八 龍蟠の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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岳飛伝も巻を重ねること8冊目。梁山泊軍、南宋、金国の三大勢力に、西遼、大理、南越等の周辺国の情勢も盛り込まれ、いよいよ事態は複雑化していきます。

とは言っても、実際の武力衝突はなく、やがて来るべき「決戦」を見据え、各勢力が様々な方法で力を蓄える姿の記述が中心となっています。

水陸ともに設備、体制を整え、商流の充実により「資本主義国家」として発達しているのが我らが梁山泊軍。英雄豪傑が集い、武によって民の暮らしを豊かにしようとした、作品開始当初からは大幅に方針を変更していますが、産業を興すことでそこに関わる民に益をもたらし、商流を発達させることで、得た益を有効に活用させる、という仕組みはまさに近代国家ですね。秦容が南越に作り上げつつある甘藷糖の生産基地に至っては老齢や怪我などのために戦の第一線を退いたメンバーたちの福祉施設とでもいうべき機能まで果たしています。

三大勢力の一角、南宋は秦檜のリーダーシップにより、中央集権国家としての体裁を取り戻しつつあります。最近ほとんど登場の場がありませんが、張俊という人物が率いる軍閥も依然として力を保ったまま。梁山泊軍にとっての最大の「仮想敵国」であることは間違いありません。

残る一つ、金国は目の上のタンコブとでもいうべき梁山泊を疎ましく思い始め、南宋との連携を模索し始めます。

そしてこのシリーズの主人公、岳飛は裸一貫の状態から、三千人の人員を従えて、再起ロードをたどり始めます。隣接していると言って良い、秦容の生産基地を訪問するなど、梁山泊軍との距離を縮めるのですが、この二つの勢力が合流するのか否か、現段階ではまだ明らかになりません。

いずれにせよ、物語はクライマックスに向けて、大きく舵を切ったというところでしょうか。目の離せない展開となりそうです。本屋の店頭には文庫版の第9巻が山積みとなり、10巻目の刊行も近いようです。電子版の出版が待ち遠しい、という感想を今巻の読了後にも感じました。



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by lemgmnsc-bara | 2017-08-13 14:46 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 七 懸軍の章』を読んだ

岳飛伝 七 懸軍の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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岳飛伝の7巻目。『大水滸伝シリーズ』全体としては終盤ですが、『岳飛伝』に限って言えばちょうど中間点あたり。今巻には戦闘シーンは全くなく、三つの勢力が来るべき「決戦」を見据えて、それぞれに力を蓄える姿が描かれます。

軍功多大だった岳飛を「処刑」(実際には岳飛は逃亡)した南宋は、宰相秦檜が中心となって、かつての宋の栄光を取り戻そうとしますが、内憂外患を地でいく状態。講和がなったとはいえ、いつその状態が破綻してもおかしくない金国、武力でいえば三勢力の中で随一の梁山泊軍が間接的なプレッシャーをかけている上、国内では岳飛亡き後最大の軍閥となった張俊軍の処遇が悩みのタネに。さらに皇帝の座を狙って、死に絶えたはずの青蓮寺勢力までもが暗躍し始めるのです。いやはや。フィクションとはいえ、某国の首相が同じような状況に放り込まれたら、病気を理由にさっさと逃げてしまいたくなるであろう状況です。

金国はリーダーである耶律大石の死期がいよいよ迫り、世代交代を迎えています。その中では梁山泊軍の一員であった、韓成の動きが気になります。前首領の楊令からの関係性を踏まえて連携する方向に向かうのか?それともあくまで単独で中原に覇を唱えようとするのか?これも三勢力の力関係が刻々と変化する展開の中では非常に読みにくい、それゆえハラハラさせられる状況です。

さて、我らが梁山泊軍はというと、「本社」である梁山泊の山塞にいる宣凱が組織としての機能を統制してはいますが、ますます「国」としてのカタチは拡散し、希薄化していっています。各人の心の中に「志」がある限り、どこでどんな形態であろうとも梁山泊という「国」はあり続ける…。現代における「国家」という枠組みすら超えているような概念です。

一方で秦容が南方の地で進めている農地の開拓が軌道に乗り始め、十万人の人間が住む街を作り上げるというプロジェクトが走り始めることとなります。甘藷糖を作るために、当時としては最新・最高の設備を作り上げ、そこに従事する人々がきちんと生活して行く施設と仕組みを作り上げる。物々交換が基本だったこの地の経済活動に通貨を導入する。生活用水の手配から下水の処理まで。元々が武の人であった秦容は、こうした活動も一つの戦いだと心得て、一つ一つの問題と向き合います。人々が安定した暮らしを営むための手段は、武力による統一だけではない、という主張がはっきりとわかる表現方法ですね。

主人公の岳飛は秦容が巨大な街を作ろうとしている地域に近い場所で、やはり新しい街を作って行こうとしています。軍の将であった姚明とともにたった二人でたどり着いた地でしたが、岳飛を慕う兵士たちがボチボチと集まりだし、今巻の終了時点では300人ほどの人員がいました。この仲間たちは新しい国作りを目指すのか?それともあくまでも軍としての復活を企図するのか?当事者同士は否定していますが、梁山泊への合流はあるのか?

あらゆる疑問と期待が提示された一冊でした。次巻の電子書籍化が待ち遠しい限りです。



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by lemgmnsc-bara | 2017-07-14 20:02 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 六 転遠の章』を読んだ

岳飛伝 六 転遠の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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岳飛伝の6巻目。

今巻では、「正統派」の岳飛伝での最大の敵役秦檜が、そのストーリー通りの憎まれ役として岳飛の前に立ちはだかります。秦檜は、岳飛を南宋軍の最高司令官として迎えるとともに、岳家軍を正式な軍隊として南宋に取り込もうとするのですが、岳飛はあくまでも軍閥として独立して活動することを望みます。最高権力者たる秦檜の命令に従わない岳飛は、南宋に対しての忠誠を秘めながら、従容として刑場の露と消える、というのが正統派のストーリー。

しかし、北方版は正統派通りにストーリー展開などしません。こんなところで主人公が死んでしまっては元も子もないってのもありますが、北方氏の大胆な翻案を楽しむのがこの大水滸伝の醍醐味。岳飛は表向き処刑されたこととされますが、実際は目立たぬように都から追放されます。秦檜は約束どおり岳飛を解放しましたが、その部下は後顧の憂いを断つために、暗殺団を送り込みます。ここで岳飛を救ったのは梁山泊の致死軍。久しぶりにこの集団が、暗躍でなく活躍する姿が描かれ、燕青も登場します。世間的には「亡くなった人物」となった岳飛はどこに向かうのか?梁山泊への合流となるのか?仮に合流となれば知も武も兼ね備えた、頭領にふさわしい存在になるとは思いますが、そうそうすんなりとは行きそうにないのもこの物語の特色です。

金国は兀述が岳飛との戦いを終え、世代交代を画策します。こちらの動きからも目を離せません。中原に覇を唱えることが悲願のこの国が南宋とどう対峙して、そしてそれは梁山泊軍にどのような影響をもたらすのか?今のところは、楊令とのつながりや物流により金と梁山泊は協力体制にありますが、世代交代後の金がどのような道を選択するのかについては、暗示すらもされていない状態です。

さて、我らが梁山泊は二強の直接対決を横目に、着々と力を蓄えている最中です。南越に甘藷糖の生産基地を建設した秦容が、その基地が大きくなるにつれて生じる「生活の諸問題」をいかに解決していくのか、を描きながら、狩猟採集から栽培定住の生活への転換、国というものの根本的な成り立ちとはどういうものかをも描いています。

以前、一時期ハマった水滸伝のシュミレーションゲームでも、実際の戦闘よりは、戦闘を開始する前の国力の充実(武器や食料の生産拠点の建設と発展)の方が楽しくなって、戦闘そのものはソフト任せにしていた(武器やら何やらを最大限に持たせておけば勝手に勝ってくれた)私にとっては非常に興味深い視点の転換です。もとより、梁山泊の志とは民が安心して暮らせる国とはどんなものかという問いに対しての答えを求めるものであったはず。で、南越の地に、一つの理想郷とでもいうべき村が出来上がるのです。戦いだけに生きてきた秦容が「文官」に転じるのも、武力革命を成し遂げた後の指導者の姿の一つの理想形だと思いますね。

シメの言葉はいつもと同じ。次巻の発売が待ち遠しい…。

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by lemgmnsc-bara | 2017-06-07 05:20 | 読んだ本 | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
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