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『ホステージ』鑑賞

ホステージ(Blu-ray Disc)

ブルース・ウィリス,ケヴィン・ポラック,ジョナサン・タッカー/松竹

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ブルース・ウィリス主演のサスペンスアクション。

主人公タリーはとある田舎町の警察署長。そこに赴任する前はロスアンゼルス市警で敏腕の交渉人として活躍していたという設定。数々の難事件を解決はしてきたものの、ある人質立てこもり事件で、人質になった子供は死亡、犯人も自殺という事態を引き起こしてしまい、自ら志願して田舎町に赴任したということになっています。

まあ、ここでタリーがのんびりと暮らしながら、時折事件を思い出しては心の痛みを感じる程度のお話では流石に映画にはなりません。田舎町随一の資産家で会計士のスミス親子三人を人質に、不良三人がその邸宅に立てこもるという、交渉人が必要とされる典型的な事件が発生することで、ストーリーが展開していきます。そこで、タリーが見事に犯人を説得してメデタシ、メデタシ、となってはやはりお話は盛り上がりません。

事件の現場に向かうタリーは、いきなり黒覆面の集団に拉致されスミスの家から、あるDVDを秘密裏に奪還してくることを命じられます。タリーと妻と娘を人質に取った上でのお話です。

というわけで、スミスの身辺がキナ臭いことを、同僚たちには隠しながら、すなわち孤立無援の状態で、人質を無事に解放させ、さらにDVDは奪還しなければならない、という、実現可能性が限りなくゼロに近いミッションがタリーに課せられることとなります。

率直に言って、ブルース・ウィリスの代表作、『ダイハード』そのまんまです。TBSの『高校聖夫婦』をフジが『青い瞳の聖ライフ』という名でパクって以来の、換骨奪胎ぶり。違いはドンパチのシーンの多寡くらいです。ブルース・ウィリスに対して観客が持っているであろうイメージと、主人公タリーとのキャラの乖離こそほとんどなかったとは思いますが、ストーリーが本当にそのまんまで、「本当にこんなお話でいいの?」って疑問ばかりが頭に浮かんできちゃってどうしようもありませんでした。『ダイハード』シリーズそのものがすでにマンネリ化していて客の入りが悪いってのに、こんな「代替品」がウケるわけはないですね。少なくとも私は思いっきりゲンナリしました。

この作品は、BSで放映していたやつを録画して観たのですが、劇場でのチケット代はおろか、旧作レンタル代の100円すら払うのは惜しいという程度の作品でした。



# by lemgmnsc-bara | 2019-06-09 17:25 | エンターテインメント

ミッドナイト・ジャーナル (講談社文庫)

本城 雅人/講談社

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新聞記者出身である本城氏が、自らの体験をもとに新聞記者の生々しい姿を描いた一作。

俗にマスコミは、「立法・行政、司法」の三権に次ぐ第四の権力などと言われるくらい、大衆に対して影響力を持ちます。ネットの速報性に押されて、部数こそ落ちているものの(当家も「紙」の新聞は購読せず、ネットで紙面を読む契約に変えました)、まだまだその影響力は強力で、新聞の報道がきっかけで隠れていた問題が表面化したり、人々の意見が大幅に変化したり、という例は枚挙にいとまがありませんね。世論調査や政治、経済、社会など各分野に存在する問題点のえぐり出しなど、新聞の果たす役割は決して小さくなってはいません。

一方で新聞には、現実に起きたことを「正確」に伝えるという使命もあります。ジャーナリズムを論じる際に常に問題とされるのは「客観報道」の是非です。客観報道とは、主に警察など公的機関の発表を根拠とした「事実」を報道すること。お上の言ったことについての責任はお上にあり、法的に正しい手続きに則って発表されたことなので「正しいことと」として報道して良い、という姿勢です。私のような門外漢でも発表されたことを鵜呑みにすることに関してはかなりの危険性を感じるのですが、例えば小さな交通事故などの報道に関しては。人手などの問題もあり、警察の発表を「事実」として報道することが大半です。

この物語の登場人物たちは、女子児童連れ去り殺人事件に関し、誤報を流してしまった過去を持つ記者たちです。三人の女子児童を殺害した犯人が四人目の凶行に及んだと報道したのですが、実は四人目は生きていました。社会からは誤報を叩かれ、無事帰還した女児の家族からは面罵されるという屈辱の日々を送りながらも、その誤報に関わった記者たちは、事件発生当時の目撃証言から、死刑が確定し、執行された実行犯とは別にもう一人共犯者がいたという可能性を追い続けて行くのです。

関係者たちは責任を取らされ、それぞれが左遷されて冴えない日々を送っていますが、そんなある日、当時と同じような手口の女児連れ去り未遂事件が発生します。いわゆるミステリーと同様の手法で、一見完璧に見える事象の本の小さなほころびに気付くか否か?そしてそのほころびをどう解釈して事件に結びつけて行くのか、というストーリーが展開する中で、同時に記者がどのように性根を据えて事件の関係者たちの懐に飛び込んで行くのか、という人間味溢れる「現実」も読み込むことができます。このミックス加減が実に巧みで、ついつい読み進めさせられてしまいました。なかなか読み応えのある一冊だったように思います。



# by lemgmnsc-bara | 2019-06-09 11:59 | 読んだ本

『万引き家族』鑑賞

万引き家族 通常版Blu-ray(特典なし) [Blu-ray]

リリー・フランキー,安藤サクラ/ポニーキャニオン

スコア:



カンヌ映画祭のパルムドールをはじめ、国内外で数々の賞を受賞したのが標題の作。

描かれる「一家」は祖母、両親に一女一男の五人家族。収入は祖母の年金と父の肉体労働、母のパート勤めから得ていますが、それだけでは生活を維持できないため、足りない分は万引きで補っている、という設定です。

とある日の「万引き」帰り、父と長男はマンションのベランダの隅で震えている少女を見つけます。少女が放置されている姿を何度も見ている父親は少女を家に連れ帰ります。決して善人であるとは言えないが、困っている人を見過ごすことの出来ない人の良さを持ち合わせた男であるという設定がすんなり頭に入ります。

家に帰ると、他の家族たちは少女をすぐに家に返してくるようにと文句を言い、実際に父と母とで返しに行くのですが、少女の自宅から男女が激しく言い争う声が漏れ聞こえ、母親の方が、少女をそのまま自宅において帰ることができなくなり、結局一家に連れ戻ります。こうしてこの一家に末っ子が増えることになります。

この辺りから、観ている人は「家族」って一体なんなんだろうという素朴かつ、根本的な疑問を感じざるを得なくなります。血の繋がった実の親子ですら、親が幼い子供を虐待したり、逆に老齢の親を子供が殺害してしまったりという悲惨な事件が多発していますね。一つ屋根の下で、寝食をともにしてはいても心はバラバラという集団は思いの外多く、さらにこうした集団は増大、深刻化の一途を辿っているように思えます。

昨今の実社会の崩壊しはじめた家族に対し、この一家は、実は血のつながりも、法的な親族関係も全くない「他人同士」の集団であるというのに、心の結びつきがはじめにあり、実の家族以上に家族らしい共同体として機能しているのです。様々な事情があるとは言え、家族という与件が希薄化していると感じている人が多いからこそ、この一家の関係性が多くの人々の感動を呼び起こしたのでしょう。

この家族の、心の結びつきは強固でも法律的には綱渡と言って良い危うい生活は、「妹」に万引きをさせたくないという「兄」の行動から一気に崩壊します。それぞれのメンバーが「法的」に正しい場所に配置されるのですが、全員が全員少しも幸せそうではないところに、この一家はいかに法律的には正しくない集団ではあっても、そこに属する人間たちにとっては確かな居場所であったことが示されるラストは、ややベタな描写ではありますが、感動的でした。何かと言うと、離婚した夫婦が登場する欧米諸国でのウケが良かったのも良くわかるお話ですし、家族というものの概念が揺らぎはじめた日本社会への警鐘としても優れていた作品だったと思います。

# by lemgmnsc-bara | 2019-06-01 10:56 | エンターテインメント

ボヘミアン・ラプソディ 2枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]

ラミ・マレック,ルーシー・ボーイントン,グウィリム・リー,ベン・ハーディ,ジョセフ・マッゼロ/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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昨年の映画界の話題をかっさらい、フレディー・マーキュリーを演じたラミ・マレックがアカデミー賞の主演男優賞に選出されるなど、名実ともに大ヒットした作品。

伝説と言われるほどのロックバンド「クイーン」がスターダムにのし上がる姿を、リードボーカルのフレディー・マーキュリーを中心に据えて描いた、ドキュメンタリー的な一作です。

ストーリー的にはさほど複雑ではありません。ひょんな事から、バンドを結成し、フレディーのあふれんばかりの才能でヒット曲を連発し、一気にブレイクしたクイーン。しかし、フレディーは自らがゲイであることで、最愛の妻メアリーに去られ、果てしない孤独感に苛まれることになります。そしてその寂しさゆえに、ブレイク前の彼らを支えたスタッフを次々とクビにしたり、バンドのメンバーともギクシャクした関係となります。こうしてますます孤独感が募り、酒に溺れて手当たり次第にゲイの相手を漁っては関係を結ぶという荒れた生活を送ることとなります。で、当時世界的に流行し始めていたエイズに罹患し、世を去ることになる、というのが大まかなストーリー。

こういうお話は何もショービジネスの世界に限ったことではなく、どんな分野にでもあるものではないでしょうか?成功した人間には、お追従を駆使して取り入り、なんとかそのおこぼれに預かろうとする人間が群がります。そしてそんな連中に散々に甘やかされた成功者は諌めてくれたり、叱ってくれたりする「本当に大切な人間」を次第に遠ざけるようになります。そのうちに才能までが枯渇し、落目になると、金の切れ目が縁の切れ目とばかりに周りから人間が一気にいなくなる。そして、酒とか性欲とかドラッグなんかに依存していき、しまいには死んでしまうという絵に描いたような転落ストーリー。人物、時代などを変えて何度も芝居や映画のネタにされている物語ですが、それだけ病巣が深く、程度の差はあれ、誰しもが落ち込む危険性を持ち合わせているがゆえに何度でも取り上げられるのでしょう。

さて、フレディーはエイズによる肺疾患の影響と長年の不摂生で、往年の美声を出せない状態になっていたのですが、アフリカの飢餓を救うために当時の英国のアーティストたちがほぼ全て出演した伝説のイベント「ライブエイド」に出演するため、文字通り最後の力を振り絞ります。このシーンは、実にリアルな迫力がありました。観客の「本物」の感動を画面のこちら側でも素直に共有できました。『伝説のチャンピオン』を聴衆とともに大合唱するシーンなどは皮膚に粟を生じたほどです。このシーンだけでもラミ・マレックが数々の映画賞の主演男優賞を受賞するに十分だと思えるほどです。

映画・ドラマ・CMなどでクイーンの楽曲を耳にする機会は多々ありますが、このことはクイーンの作り出した音楽が後世に「20世紀のクラシック」として生き残り続ける可能性を示唆するものだと思います。フレディーの遺志はエイズ患者を救うための財団という形で受け継がれてもいます。



# by lemgmnsc-bara | 2019-06-01 10:28 | エンターテインメント

エージェント・マロリー [Blu-ray]

ジーナ・カラーノ,マイケル・ファスベンダー,ユアン・マクレガー,ビル・パクストン,チャニング・テイタム/東宝

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どこで放映されていたのを録画したはいいが、保存しておいたBlu-Rayが使い回しだったために、途中で再生不能となり、中途半端に観たものだから結末が知りたくなって借りてきてしまった一作。

ストーリーは、スパイ物にはよくありがちな展開。主人公マロリーは米海兵隊出身の凄腕のエージェントで、現在は民間の諜報会社でスパイとして、危険で荒っぽい仕事をしています。で、とある事件に絡んでジャーナリスト依頼を受けて、首尾よく任務を果たして、次の任務に取り掛かったら、派遣先でそのジャーナリストが殺されていて…。誰が敵で誰が味方かわからない状況の中、マロリーは単身で組織とその後ろに控える依頼主に迫っていく、というのがサマリー。

実はこの作品はストーリーを楽しむものではありません。主人公マロリーを演じたジーナ・カラーノを鑑賞するための作品なのです。とは言っても別にオケべなシーンが満載というわけではありません。ジーナは、総合格闘技のチャンピオンなのです。で、その特長を活かした戦闘シーンが実に見事。

自分より体格的にまさる相手に対しては、関節技や絞め技が有効だという戦い方に実に忠実で、柔道で言う所の崩し、すなわち自分が技をかけに行くためにいかに相手の体勢を技をかけやすいよう崩すかが見事なのです。段取りをつけたスタントであってもこうはうまくいかないだろうな、というシーンが随所に見られます。さすがは総合のチャンピオンです。マウントポジションを取って、男をボコボコに殴りつけるなんていうシーンもあります。それを不自然に感じさせない「実力」の持ち主だから、文句のつけようもありません。いかにも華奢なおねーちゃんが大の男を投げ飛ばして当身一発で悶絶させるというような、絵に描いたような演出でないところは流石です。

残念ながら、この方、この作品しか映画には出ていないようですが、もう一作くらいは、戦闘能力を遺憾なく見せつけるような作品に出演していただきたいものだとは思います。

# by lemgmnsc-bara | 2019-05-25 11:52 | エンターテインメント

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

by 黄昏ラガーマン
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