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『リカ』を読んだ

ここのところ注目している作家五十嵐貴久氏のデビュー作にして第2回ホラーサスペンス大賞受賞作。

平凡な妻子あるサラリーマンが、些細なきっかけで出会い系サイトにハマり、そこで知り合った「リカ」にストーキングされ、次第に追いつめられていく恐怖を描いています。

実は私もある女性からストーキングにあったことがあります。もう15年以上前、社会人になったばかりの頃でした。まだインターネットも普及していない頃だったので、出会い系サイトなどある訳もなく、知り合ったのは卒業旅行先のタイでした。ツアーで一緒になり、行動を共にするうちに、それなりに親しくはなったのですが、私には友人以上の感情は湧きませんでした。

彼女は学生で、私の任地がその大学のある地方都市だったこともあって、旅行後も会おうということになりました。最初に会ったその日に、いきなり「結婚して」と言われました。当然のことながら拒否すると、彼女は露骨に男女の関係に誘ってきました。これも当然のことながら拒否。彼女は怒ったまま帰ってゆきました。

翌日から電話攻勢が始まりました。当時は携帯電話などありませんので、自宅の固定電話です。会社から帰ると20〜30件ほど留守番電話にメッセージが吹き込まれていましたし、夜間の在宅中にも4〜5回はかかってきました。あまりのひどさに電話番号を変えようかとも思いましたが、そうなると会社にかけてくる可能性もありましたので敢て電話番号は変えませんでした。

その他会社の寮の前で待ち伏せを受けたり、実家に物を送りつけられたり、手紙やらカセットテープやらもずいぶんと送りつけられてきました。

1ヶ月ほどそんな日々が続いたある日、深夜まで仕事をし、帰って寝付いた瞬間に電話が鳴りました。寝入りばなを起こされたせいもあって猛烈に怒りが湧いて来て、電話口で「いい加減にしろ!!」と怒鳴りつけました。ようやくこれで彼女も望みがないことを悟ったのでしょう、数日後、精神病院に入院したというメッセージを最後に電話もかかって来なくなり、ストーキングは終了しました。

彼女などは、この本のリカに比べれば「常軌に則した」ストーカーだったのかも知れません。リカはまさに常軌を逸した行動で主人公を追いつめ、衝撃の結末に導きます。一歩間違えば、私にもこういう結末が待っていたのかも知れません。改めて背筋がゾクリとしました。

今までに読んだ五十嵐氏の作品は一見すると全く関係ない事象が思わぬところで絡み合う意外性と、その意外さをきちんと調和させる整合性が特徴だったのですが、この作品は、ど真ん中の恐怖を描いていました。「実体験」のない方でも十分に恐怖を感じていただける作品だと思います。
by lemgmnsc-bara | 2008-01-26 07:39 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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