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『幕末バトル・ロワイヤル』を読んだ

幕末バトル・ロワイヤル (新潮新書 206)
野口 武彦 / / 新潮社
ISBN : 4106102064
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著者野口武彦氏は日本史に造詣の深い文芸評論家。私が一時期非常に興味を持っていた「太田南畝(蜀山人)」に関する同氏の評伝『蜀山残雨』を読んで以来、気になる文筆家の一人となりました。最近では日経新聞の日曜日に日本史エッセイを連載中です。

標題の書は、日本史の中でも有数の動乱期である「幕末」に焦点を当てた、週刊新潮の人気連載をまとめたものです。

著者は「幕末」を水野忠邦による「天保の改革」以降と定義しています。
「天保の改革」ねぇ…。「享保」「寛政」と並ぶ江戸時代の「三大改革」という受験勉強に必要な「知識」だけは辛うじて持っていましたが、実際の改革の内容なんかはすっかり忘れ去っています。代表者の水野忠邦以外の「実務者」に至っては習った記憶すらありません。

野口氏は、水野忠邦を始めとする登場人物の人間臭さを前面に押し出して、実に生々しく「幕末」の姿を描きだしています。遠縁である水野忠成を頼りに、懸命に権力の中枢に入り込もうとする水野忠邦、自身の美貌を武器に大奥を後ろ盾とし将軍との結びつきを強めた阿部正弘、御三家の威光をかさに何にでも口出しする水戸斉昭・・・。時にはほんのちょっとした人の好き嫌いで政治の局面ががらっと変わってしまう。人はつくづく感情の動物なのだなぁ、と変な感慨にふけってしまいますな。

年貢による収入だけでは支出をまかないきれない財政状況、実よりも情を重んじた人事、黒船来航による「外圧」。どこやらの国の現在の状況に良く似ていますな。改革を声高に叫んでいるところなんか特に。ドラスティックな改革者(ただし改革そのものは失敗)の後にどこといって特色のない「アベ」という後継者がでてきたところもそうですな。

この後、攘夷という方針を改め、海外と結んだ雄藩が力をつけ、明治維新という革命を起こすのが「幕末」。参議院選挙で大敗した自民党は果たして江戸幕府同様崩壊の憂き目にあうのか?先日の桐生操氏の本の紹介時にも書きましたが、人間ってのは時代が変わってもあんまり考えることに差はありませんね。
by lemgmnsc-bara | 2007-08-20 19:55 | 読んだ本

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