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『ヘル』を読んだ

ヘル
筒井 康隆 / / 文藝春秋
ISBN : 4167181150
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久しぶりに筒井康隆先生の新作を読みました。

巻末の横尾忠則氏との対談を読むと、この作品のテーマは夢とのことですが、同じ夢でも最近映画化された『パプリカ』なんかに比べるともっと混沌度が増していますね。生者と死者、意識と無意識、現実と虚構、現在、過去、未来がもうぐちゃぐちゃに入り混じってまさにカオスの極み。

途中で出てくる七五調のセリフや、歌舞伎のパロディーなど言葉遊びも多彩。七五調の部分の執筆は通常の3倍時間がかかったそうです。単なる音数あわせではなく、きちんと意味が通っているようで実は支離支滅というこのセリフ部分は筒井先生ならではのもの。読んでいてあまりの名調子に何度か吹き出しそうになりました。

読み終えてふと、父の末期を思い出しました。父は初老性うつ病からアルツハイマーを発症し、呼吸器系の病気を併発して、最後は私のことも認識できずに亡くなりました。私のことを叔父、つまり自分の弟とよく間違えたりしていました。父の末期の意識の中も混沌としていたのでしょうね。俳句や短歌を詠むのが趣味だった父の頭の中には七五調で言葉が渦巻いていたかもしれません。意味はほとんどなかったでしょうが…。
by lemgmnsc-bara | 2007-03-15 20:01 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

by 黄昏ラガーマン
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