『八つ墓村』鑑賞

八つ墓村 [DVD]

萩原健一,山崎努,小川真由美,藤岡琢也,渥美清/松竹ホームビデオ

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作中でいかにも怪しげな老婆が叫ぶ「たたりじゃぁ〜、八つ墓村の祟りじゃぁ〜」というフレーズがドリフのコントなどで盛んに取り上げられたことで、人々の記憶に残り、興行的にもヒットした作品。一連の横溝正史ミステリー映画化シリーズの第二弾となる今作は、第一弾の配給元の東宝ではなく松竹が制作・配給しています。何でも角川と松竹との間で制作方針を巡って対立があったという「大人の事情」によるものだそうです。

というわけで、名探偵金田一耕助は第一段『犬神家の一族』に起用されて以降、この役の代名詞ともなった石坂浩二氏ではなく、渥美清氏が務めています。あんまり頭脳明晰って感じのしない方ですが、ポイント、ポイントで登場し、さすがの存在感を見せつけてはくれます。余談ですが、私はこの作品も石坂浩二氏が金田一役で、その別バージョンとして渥美清版があるとずっと勘違いしていました。なおこの作品は1996年と2006年にリメイクされており、前者の金田一役は豊川悦司が演じ、後者のそれは石坂氏が再演しています。

さて、この作品自体の主役は萩原健一氏が演じる寺田辰弥。彼は東京の空港で滑走路を走行中の飛行機に進路を指示する職に就いていましたが、ある日新聞の尋ね人欄(最近ほとんど見かけないようになりましたが、まだあるんですかね?)に自分の名前を見つけ、連絡先として指定してあった法律事務所を訪問します。そこで背中の傷から確かに本人であると認められましたが、立ち合いに来ていた母方の祖父と名乗る人物が突然血を吐いて倒れ、そのまま死亡してしまいます。辰弥はそのまま、葬儀に出席するため、岡山県にある、多治見家を訪ねることとなります。この多治見家が存在し、近隣に広大な山地を所有するのが八つ墓村。

辰弥が多治見家を訪問した際に、辰弥の腹違いの兄で、現当主でもある久弥は死を間近に控えた病の床についていました。で、その枕元には親戚が勢ぞろいしていました。そうでなくてもそもそも親戚演者が多い中、前当主の血を引いているとはいえ、今まで多治見家には一切出入りしたこともなく、いきなり現れた辰弥を巡っては一族係累の皆様から一斉に不穏な視線が向けられることになります。そんな中、久弥もいきなり血を吐いて死亡。いよいよ跡目争いが激しくなります。跡を継ぐことができれば莫大な遺産を手にすることはできるし、もし跡が継げなくても、跡継ぎとなった人物にすり寄っておけば、おこぼれに預かれるかも知れないという欲に駆られた人物たちの思惑が複雑に絡み合う様が描かれます。そして関係者が次々と変死を遂げる連続殺人事件に発展していきます。登場人物の誰しもに動機があり、また誰のアリバイもはっきりしないという状況でストーリーが引っ張られていきます。そして、その過程において、多治見家が広大な土地を手に入れ、この地の「豪族」として古くから権勢を振るってきた陰にある、戦国時代にまで遡る、恐ろしい言い伝えと、辰弥の父要蔵がこの地で32人もの人間を惨殺した後に行方不明になったまま、という事実も明らかになっていきます。

なるほど「祟りじゃぁ〜」と叫び続ける人物がいてもおかしくないほどに、この地の歴史は血塗られています。というわけで、後はこの一連の殺人事件の真犯人探しと、多治見家をめぐる因縁と、その犯人の関わりを探るという体で物語が進んでいきます。で、我らが寅さん、もとい、金田一耕助が見事に謎を解決することとなります。

謎を引っ張るだけ引っ張り、そこに祟りやら、大量殺人を絡ませてどんどん事態を複雑化していく、という横溝ミステリーの典型パターンが見事に展開していた一作。人々が潜在的に持つ「お姫様(あるいは王子様)願望」(自分はどこかのエラい一族に連なる人物で、いつかそのエラい一族からお呼びがかかって、労せずして富と名声を手にする)を巧みに刺激したこともヒットの一因だったと思います。




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by lemgmnsc-bara | 2018-08-19 15:52 | エンターテインメント | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
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