『狐の呉れた赤ん坊』鑑賞

狐の呉れた赤ん坊 [DVD] COS-040

阪東妻三郎,橘公子,羅門光三郎,寺島貢,谷譲二/Cosmo Contents

undefined

俳優の田村三兄弟(俳優以外にも一名いて本当は四兄弟)の父としても名高い、俳優阪東妻三郎氏主演の人情時代劇。何年か前のBSの企画で「山田洋次の選ぶ日本の映画100本」というものがあり、その中の一本として紹介されていたものを録画しておいて鑑賞。

舞台は、江戸時代の大井川金谷宿。川越え人足をしている主人公張り子の寅八(阪妻)は、酒とバクチが大好きで、喧嘩っ早いものの男気にあふれ、どこか憎めない男というキャラ設定です。昭和中期の日本でウケた人物像の典型と言って良い設定ですね。今日も今日とて馬方の辰(羅門光三郎:中島らも氏のペンネームの由来となった方ですね)行きつけの居酒屋浪華屋で酔っ払って大げんか。店の主人も看板娘のおときもいささか呆れ気味。でも誰も止めようとしないし、いくら店の中をしっちゃかめっちゃかにしようと出禁にもならないところに寅八の人間的魅力と、当時のおおらかさのようなものが暗示されています。最近でこそコンプライアンスとかハラスメントとかで厳しくなりましたが、日本は酔っ払いには寛大な時期が長かったですからね…。

寅八と辰の「哲学」的対立が、またなんともおかしい。辰が「動物は毛が少なくて、裸に近い奴がより下等なものとされている。してみればいつも裸ん坊の川越え人足なんてのは一番下等な商売だ」と嘲るのに対し、寅八は「動物である馬をこき使って自分は楽をしている馬方こそ卑怯な生業だ」と切り返す。それぞれの職業が一番であるといううぬぼれと、その他の職業を下に見てしまう尊大さは程度の多少はあれ、現代人も持ち合わせているのではないでしょうかね?

さて、そんなところにある日、街道筋に人を化かす狐が出没するとの噂が…。意地っ張りの寅八は内心ではビクビクとしながらも狐をふんづかまえてやろうと夜の街道へ。そこにいたのは狐ではなく男の赤ん坊。寅八はこの赤ん坊を自分の息子として育てることを決意し、酒もバクチもやめ、真面目な生活を送るようになります。これも日本人にはウケるストーリーですねぇ。散々悪さをしてきたヤンキーのにいちゃんが、子供が生まれた途端に、家にすっ飛んで帰るようになり、仕事もバリバリこなすようになった、なんて話は腐る程聞きましたし、そういうテーマの映画やドラマもゴマンとあります。もっとも最近はこういう風潮は文字通り腐ってしまい、子供が生まれようが親が死にかけようが、自分が第一で自分の思い通りにならないとすぐに虐待したり殺したりする、クソガキばかりですが…。

さて、善太と名付けられた赤ん坊はすくすくと育ち、七つになる頃には年上を含め周りの子供達の上に君臨するガキ大将となっていました。なお、この善太を演じたのは、後に津川雅彦と名乗るようになる方です。あんな可愛い子役が、いまは鼻にチューブを突っ込んだじいさんなんですから、時の流れは残酷です。

善太は近所の子供に輿を担がせてその上に乗り、大名行列の真似事をしながら街道を練り歩いていたのですが、そこに本物の大名行列が現れ、正面衝突。子供とはいえ勘弁ならぬから手討ちにするという大名の下に寅八は乗り込んで行って、善太の代わりに自分を手討ちにしてくれと談判するのです。昭和中期の観衆はここで大号泣でしょうね。で、結局は寅八の誠意が通じて二人とも無罪放免。「本物の親子」として強い絆で結ばれることになるのですが、善太が、実はさる大名の世継ぎであることが判明します。

父子ともに別れたくはないのですが、しがない川越え人足と、大名の世継ぎとでは身分も暮らしも雲泥の差があることも事実。悩みに悩む寅八に「引導」を渡す質屋の大黒屋主人の言葉がまた良い。「お前は善太の命を救うために一度死んだはずだ。ならばもう一度善太のために死ね。」この言葉で、寅八は善太を送り出すことを決意します。

最後のシーンも泣かせますよ。侍従が担ぐ輿に乗ろうとせず、寅八の肩車で川を渡る善太。肩の上に乗る善太に向かって寅八は「下々の民のことをしっかり考える殿様になるんだぜ」と諭すのです。陳腐と言われてしまえばそれまでのシーンですが、このシーンで涙を誘われない人間は人間やめなさいと言いたいほどの名シーンでした。

阪妻氏は田村三兄弟の誰とも似ていない「芸風」でしたね。二枚目というよりはどちらかというと三枚目に近い二枚目半で、カラダを張ったドタバタが印象的でした。


[PR]
by lemgmnsc-bara | 2018-07-22 07:36 | エンターテインメント | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30