『怪談歳時記 12か月の悪夢』を読んだ

怪談歳時記 12か月の悪夢 (角川ホラー文庫)

福澤 徹三/角川書店(角川グループパブリッシング)

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現代における、優れた怪談の書き手の一人である福澤徹三氏の短編集。『歳時記』の名にふさわしく、12ヶ月、各月の気候や風物にちなんだ階段が収められています。

日本では怪談といえば、夏のイメージですが、これは暑い夏場に寒気を味わってもらおうという趣向で、興行界が夏の演目として怪談をやるようになってから定着したことですね。まあ、夏場は気温も高いので、夜活動することも多かったでしょうから、そこで得体の知れないモノに出会ってしまったり、頭がおかしくなってしまった奴が暴れたりということもあったのかも知れませんが…。

「怖いこと」の大半は「怖いような気がする」だけ。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という川柳が指し示すような状況が大半なのだと思います。欧米諸国では幽霊は冷たい雨のそぼ降る冬の朝に出現することが「常識」だそうですが、そういうモノが出そうなシチュエーションとしては欧米の方が相応しいような気がしますね。

さて、12編の短編、それぞれに怖さはあったのですが、私が一番怖かったのは『神無月 紅葉の出口』という作品です。ドライブ中に高速で渋滞に巻き込まれ、それを避けるために山の中の狭い抜け道を走り始めたは良いが、ちょっとしたアクシンデントのせいでハンドル操作を誤り、クルマは崖下に。一人息子は虫の息、妻は妻で夫のせいでこんな状況に陥ったと散々に詰る。周りは全て一面の切り立った崖で到底よじ登れそうにない、しかもその崖は延々と続いていて、どこまで歩いても上に上がれそうな場所など見当たらない。地元民でも滅多に通らないような抜け道であるせいか、車どころか猫の子一匹通り掛かる気配すらない。そんな状況の中で、夫が取った行動とは?芥川龍之介の名作『羅生門』の三界目の改定後のエンディングを思わせるラストシーンが秀逸。最大のピンチは、考え方の変化一つで最大のチャンスに変わった、とだけ述べておきます。

やっぱり怖いのは人間そのもの。狐狸妖怪の類は人間の想像の産物ですので、人間の想像を超える怖さを示すことはありませんが、実際の人間の行動は、我々の想像をはるかに超えることが多々ありますからね。



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by lemgmnsc-bara | 2018-06-28 18:27 | 読んだ本 | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
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