2018年 06月 28日
『御存じ右門 護る影』鑑賞
ストーリーは、典型的な勧善懲悪モノ。「知恵伊豆」こと松平伊豆守配下の目付け3名が次々と殺されていくという事件が勃発。彼らはある藩の取り潰しに功あった人物たち。取り潰しにあった藩の家臣たちが、亡き主君の姫君を担ぎ上げて、復讐を企て、最終的には伊豆守の命まで狙っているという設定が、謎めかしも何もなく、淡々と描かれてしまいます。
敵がわかれば、あとはその敵を殲滅して、知恵伊豆の命を守れば良いだけ。伊豆守が少人数の供だけで外出するという偽情報を流し、伊豆守の駕籠には右門が乗り込んで敵を待ち受けるという展開です。ここで一つツッコミどころが。右門は供の者が全て斬られてしまうまで駕籠から出てこないんです。何もわざわざ不利な状況に自分を追い込むことはないし、供の者たちの命だって何人かは救えたかも知れないのに…。絶体絶命のピンチを出来させるための演出だとはいえ、やや無理があったような気がしますね。まあ、一人の主人公が多数の敵を向こうに回して多少のキズは負いながらも勝利するというのは時代劇の「定番」ではあります。
で、敵方を全て討ち果たした右門は、姫君に対しては、他家に嫁いでいる妹を頼って落ち延びることを促して、ストーリーは終了。右門には、お上に楯突くことは許さないものの、一方では取りつぶしにあった藩に対しての同情も持ち合わせる人情派であるという性格付けがなされています。この映画はモノクロですが、いかにも当時の日本人が好みそうな人物像ですね。
当時の技術水準では難しかったのでしょうが、殺陣に際してBGMも効果音もなし、おかげで、敵が斬られたのか、それともただ単にカラダを傾けてすれ違ったのかがわからず少々イライラしました。BGMや効果音がないとシーンの意味を理解できないという約束事になれてしまった現代の我々は、作り手の過剰サービスに毒されてしまっているのかもしれませんね。ストーリーはともかく、史料的な価値はある一作だったように思います。
by lemgmnsc-bara
| 2018-06-28 17:42
| エンターテインメント