『メジャーリーガーの女房〜ヨメだけが知る田口壮の挑戦、その舞台裏〜』を読んだ

メジャーリーガーの女房 ~ヨメだけが知る田口壮の挑戦、その舞台裏~ (マイコミ新書)

田口 恵美子/毎日コミュニケーションズ

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現在オリックスバファローズの二軍監督を務める田口壮氏の妻、恵美子氏のエッセイ集。題名通り、メジャーリーガーの妻としての日常を生き生きとした筆致で描き出しています。

壮氏はアメリカには渡ったものの、メジャーに完全に定着していたわけではなく、マイナーとの間を行ったり来たりする、日本で言うところの一軍半、あるいはエレベーター選手、という立場にいることが長かったですね。そしてその立場はまさに天国と地獄を行ったり来たりするようなもの。チャーター機を仕立てて移動するメジャーに対し、マイナーはオンボロのバスに揺られての長旅続きとなります。食事もメジャーなら専属のコックに豪華なものを用意させますが、マイナーは自費でハンバーガー程度のものを買うことができる程度。厳しい環境ですな〜。

選手もシンドイけどその家族もシンドイ。所属する球団や、グレードが変わるたび引越しを余儀無くされるし、その引越しの際の移動手段も大抵自分で運転する自動車。引越し先では住環境に慣れることから始まって、チームメイトの家族との人間関係なども一から全て再構築しなければならない。そんな事態が長くても数ヶ月に一度、短い場合は一月に満たない期間で発生したそうですから、その煩わしさたるや、考えるだに恐ろしい。

さらに、女房としては壮氏のコンディションづくりを第一に考えなければならないわ、一粒種の寛君を懐妊するわ、実父の死去も重なるわで、私なら到底耐えられなかったであろう日常です。

恵美子氏もある日突然カラダが全く動かなくなるという、典型的なうつ病に襲われてしまったそうです。彼女にとって幸いだったのは「真性うつ」であったこと。きちんと休養を摂って薬を飲んだことで症状は寛解に至ったそうです。現在でも薬は手放せないそうですが、壮氏をはじめとする家族の支えも大きな力になったでしょうし、メジャーリーガーの女房仲間からのサポートも強力だったようです。

異国の地で暮らす本音の厳しさとともに、日米の文化の差異がはっきりと感じられる見事な「比較文化論」になっていたと思います。日本の場合、記録のかかった試合や引退試合など、特別な場合にしか家族を球場に呼ぶようなことはありませんが、米では毎試合観戦して一緒に戦うのが当たり前。球場には選手の家族専用の託児所もあるし、家族用の観戦シートも常設されているそうです。そこで知り合った女房仲間とは独自のネットワークが形成され、選手が他球団にトレードされた際も、そのネットワークが様々に選手の家族をサポートする。多民族の集まった国家であり、またトレードが日常茶飯事である彼の国ならではでのシステムですね。

球界関係者だけでなく、今後海外で暮らす機会があると予想される人にとっても役に立ちそうな一冊であるように思います。






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by lemgmnsc-bara | 2018-01-21 10:08 | 読んだ本

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
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