2018年 01月 03日
『死小説』を読んだ
恐怖をテーマにした作品の多い福澤徹三氏の短編集。タイトル通り「死」を扱った作品ばかりが収められています。
人はいつか必ず死を迎えますが、その死に様は人それぞれ。事故や急病で突然の死を迎えることもあれば、植物で、長く「生かされている」ケースもある。美人薄命、憎まれっ子世に憚るなんて言葉もありますし、自ら死を選ぶ人の数が長い間3万人を超え続け、社会問題化したなんてこともありました。
医学的、法学的には脳死や心臓死なんて分け方もありますし、倫理的、哲学的には認知症にかかって「ワケがわからん」状態になってしまった人も固有の人格としては「死んでしまった」状態と言えるかもしれません。
いずれにせよ、死とは生命活動が停止し、それまで意思を持っていた「人間」がただの物質に変化してしまった状態であると言えます。
しかしながら、果たして今の今まで、その人の「人格」として存在していたモノはきれいさっぱりと消えてしまうものなのでしょうか?
そんな素朴かつ強力な疑問により、死および死後の世界というものは常に強く意識され、様々な想像から様々な物語が描かれてきました。
残念ながら私にはまだ死を強烈に意識するような出来事は起こっていません。父や祖母、大叔母などの葬式の際にはそれなりの感慨と悲しみはありましたが、それだけ。いわゆる霊感とか言われるものも持ち合わせておらず、それゆえ幽霊にも出くわしたことはありません。もっとも、現在の私の身の周りの状況が何らかの存在による祟りだと言われてしまえばコロッと信じてしまうかもしれません(笑)。
本文に関係なく、自分自身の「死」というものに対しての印象をずらずらと並べてしまいましたが、読み手に「死」というものの実感と得体の知れなさを強く意識させることには成功していた一冊であったように思います。霊魂やら妖怪の実在を信じるまでには至りませんでしたがね。
by lemgmnsc-bara
| 2018-01-03 17:26
| 読んだ本