2017年 12月 24日
『はじめての古寺歩き』を読んだ
歴史に関する著述の第一人者の一人である井沢元彦氏による古寺巡りのガイド本。歴史と宗教の関わりをメインテーマにしている井沢氏の寺に関する知識を惜しげも無く提供してくれています。
拝観のポイントはズバリ三つ。仏像、建築、庭園だそうです。
恥ずかしながら、私はこの本を読むまで、仏の名称による違いを全く分かっておりませんでした。
仏は如来、菩薩、明王、天の四種類あるそうです。
如来は、仏教の中では全能の神たる最高の存在。薬師如来や阿弥陀如来なんてのが思い浮かびますね。その中でも至高の存在が大日如来。原語では大きく光り輝く仏という意味となり、それを意訳したものが大日如来となるわけです。太陽信仰にも結びつきがあるような気がしますね。いやー知らなかったなぁ。
菩薩は如来を目指して修行中の仏であり、人間と如来の中間という概念の存在です。如来よりも人間に近い分、人間の悩みや苦しみに寄り添うことができるという性格を付与されています。観音菩薩が代表的ですね。
明王と天というのは、元々ヒンドゥー教の神だったものを仏教に取り込み、守護神という性格を付与されたもの。明王といえば何と言っても不動明王がまず思い浮かびますが、この不動明王というのは大日如来が悪を懲らしめるために姿を変えて出現した姿と解釈されているそうです。なるほど、仏像で表されているのは憤怒の形相とスーパーマッチョな体型に、炎を纏いつかせた姿です。悪魔ならずとも近寄りがたい雰囲気ですね。
天は、寅さんの口上にも出て来る柴又の帝釈天がおそらく一番有名でしょう。その他には七福神の一人として人口に膾炙している弁財天も代表的な天ですね。
まずはこの基本的な知識を得られただけで、かなり満足。
お次は建築物。イタリア旅行の際、ガイドさんから教会内の施設は、ステンドグラスを始めとして、文盲の多かった当時の人々に教義をダイレクトにわかりやすく伝えるために作られている、という説明を受けましたが、日本の寺院の建物も仏教の世界観を表したつくりになっているそうです。もっとも日本の場合は、権力の象徴となっていた場合も多いようですが。わかりやすいのは鳳凰で、この飾りが屋根に付いている場合は、そこが最高権力者の住処であることを示すそうです。古寺の多くは平安時代からのものですが、当時の最高権力者といえば天皇であるはずが、天皇の住処以外の寺にこの鳳凰が据え付けられていることも多々あるそうです。いやはや。
庭園も、仏教の世界観を表したもの。代表的なのは龍安寺の石庭ですかね。見る人が見れば、あの石と砂だけの小さな庭園が無限の宇宙を表すように見えるそうですが、当然のことながら私にはそこまでの見識はありません。
この本を読んでから、古寺巡りをしたら、今までよりより踏み込んだ見方ができるようになるのは事実です。巻末に井沢氏オススメの寺院のリストが都府県別についているのも嬉しいところ。なかなかお買得な一冊でした。
by lemgmnsc-bara
| 2017-12-24 15:45
| 読んだ本