2017年 09月 28日
『ムーンライト』鑑賞
最底辺の生活を送る黒人で、しかも同性愛者であるという、「差別してくれ」といわんばかりの属性をもった少年の成長する姿を描いています。
主人公は、黒人少年シャロン。彼は通っている小学校でいじめられており、追いかけてくるいじめっ子から逃げるためにとある廃屋に隠れます。そこに現れたのは、麻薬の売人フアン。彼は売人というお天道様に顔向けできないような職業についていながら、シャロンをやさしく扱い、生きていくための強さを身につけるよう諭します。
しかしながら、現実はそうそう甘くはありません。シャロンの母親は薬物中毒で、シャロンにまで金をせびる始末。いわゆるネグレクトの状態ですし、高校生になってもあいかわらず、不良たちからいじめの標的にされています。
そんなある日、少年がキューバ系の黒人ケヴィンから散々に殴られるという事件が起こります。このケヴィンこそは、少年の無二の親友であり、最初に結ばれた同性愛の相手でもありました。
ここで、ついに堪忍袋の緒を切ったシャロンは、不良のリーダー格の少年を椅子で殴り倒し、逮捕されてしまいます。
数年後、シャロンはいっぱしの売人になっていました。体も鍛え、フアンが言っていた「強さ」を身につけることには成功していますが、でもやっぱり違法なことをやっているという後ろめたさは持ち続けています。そんな少年にケヴィンが連絡をしてきます。ケヴィンもまた、少年院送りになった後にレストラン経営で成功していたのでした。久しぶりに再会した二人は、懐かしさだけではない感情をたかまらせていき…というのがラストシーン。
スペクタクル性という意味においては『ラ ラ ランド』のほうが数段上ですが、人間の存在と尊厳、一歩道を間違えたことで大きく狂ってしまう人生、そして愛、といった深い部分の描写はやはりこちらの作品のほうが優れていると思います。観衆を熱狂させる雰囲気には決してならないでしょうが、帰り道にいろんなことを考えさせるような作品ではあると思います。余韻の長く残る、味わい深い作品でした。
by lemgmnsc-bara
| 2017-09-28 11:28
| エンターテインメント