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『食肉の帝王』を読んだ

食肉の帝王 (講談社+α文庫)

溝口 敦/講談社

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社会のダークサイドやアウトサイダーたちに視線を注ぎ続けるジャーナリスト溝口敦氏が、自ら「世間を動かした」と自負している一冊。浅田満という人物をめぐる様々な事柄をえぐり出しています。

この浅田満氏という人物、私は浅学にして知りませんでしたが、題名の通り「食肉の帝王」と称されるにふさわしい人物のようです。大阪の食肉卸の最大手、ハンナンの経営者。反社会的勢力とされる集団の長とは兄弟分であり、鈴木宗男衆議院議員をはじめとする有力な政治家の「財源」でもあります。

この人物が世間の注目を浴びたのはBSE騒動の時。国は国内感染を防ぐために、すでに流通していた輸入牛肉を買い上げるという施策を実施しましたが、この施策を利用して国内産の牛肉まで買い上げさせて莫大な金額をせしめたのが浅田氏。国内の畜産流通業者たちを保護するための原資が「輸入モノ」を騙ったニセモノの買い上げに使われだまし盗られたのです。そしてそのカネは政治家に回り、政治家の勢力の拡大に使われる。勢力を増した政治家は、様々な利権を手にし、そこから得られる「カネになる話」を浅田氏に提供する…。

利益の拡大のために投資を行うのは商売の常道であり、その意味においては、投資がうまく作用した例であるとも言えるのですが、「公金」すなわち我々の税金を私するような結果となっていれば立派な犯罪だし、倫理的観点からも断罪されるべき行為であると思います。

しかし、浅田氏は滅多にマスコミに姿をさらすこともないし、警察や検察といった罪を糺す機関もどことなく及び腰であるような印象を受けます。そこに浅田氏が持つもう一つの顔が大きく関係して来るのです。

もう一つの顔とは「同和問題」の運動家であるということです。マスコミにとっても、国家権力にとってもこの問題はタブー。出来れば触れずに済ましたい問題です。故に浅田氏は計上したと予測される利益に比しては不釣り合いなほどの微罪にしか問われないというわけです。

自らのハンデをバネにのし上がって来た浅田氏はこのハンデを徹底的に利用し尽くし、最後には最大の防具にまでしてしまいました。ある種、立派な才覚であるとも言えるのですが、それを悪用し尽くしたところがこの方の醜悪さの最たるもの。とは言え、この方の尺度は一般庶民からはかけ離れたものなのでしょうから、世間からの批判なんぞ馬耳東風と受け流しているんでしょうけどね…。



by lemgmnsc-bara | 2016-10-27 10:54 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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