人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『昭和芸人 七人の最期』を読んだ

昭和芸人 七人の最期 (文春文庫)

笹山 敬輔/文藝春秋

undefined

題名通り昭和の初期から中期にかけて活躍した芸人七人の死に様のルポルタージュ。

著者笹山氏はプロローグで、歌手や俳優は老いさらばえの歳になっても「演技に味が出た」とか「若い時には感じられなかった豊かな表現力」などとほめられる事があるが、芸人は面白くなくなったらそれでおしまい、という厳しい現実を示しています。エノケン氏が自ら語っているように、「笑ってもらっているうちが花。同情されるようになったらおしまい」。そして、笑いがとれなくなった芸人ほどみじめなモノはありません。故に芸人の死に様は悲劇的なものにならざるを得ないという厳然たる事実を描いています。

松鶴家千代若・千代菊師匠みたいに、元々くたびれたことをネタにしていたコンビは例外ですが、芸人というのは歳を経る毎に面白くなくなっていきますね。観る側はある意味無責任に新しいもの、新しいものを求めますが、演じる方が持ちネタをどんどん作り上げていく事は至難の業。加齢に伴う体力の低下、そして感性の鈍化。売れた経験がある芸人には、過去の成功体験を捨てきれない、という葛藤もあります。これらの要素がすべて絡み合って「面白くなくなっ」ていき、そして大抵の場合は、芸人としての死とともに人生も終わる事になるのです。

標題の書に収められた芸人は榎本健一、古川ロッパ、横山エンタツ、石田一松、清水金一、柳家金語楼、トニー谷の七人。どの方も、私はリアルタイムでは観ていませんので全盛期にどれくらい面白かったのかについては想像する他ありません。唯一、トニー谷氏だけは大滝詠一師匠が編集したCDを買い求めたことと、ルー大柴の「ルー語」の元祖がトニイングリッシュだとちょっと話題になったことで、多少強めのイメージを持つ事ができます。それにしても彼の「ライブ」を観た訳ではありませんので、想像の域はでません。

死に様はそれぞれみなうらぶれています。芸人としてのアイデンティティーを失い、しかも挽回するだけの体力もアタマもない。失意のうちの死、というのはまさに芸人のためにある言葉のようです。

今の私の一番の心配は小堺一機氏の行く末です。4月に30年以上続いたお昼の番組が終わってから、ほとんどメディアに出なくなりましたし、毎年ライブで観ている『おすましでSHOW』も今ひとつ元気がないように思います。実際に空席が目立ちましたしね…。どっこいまだまだ老け込む歳じゃねーぜってな姿をみたいものです。こういうワガママが芸人自身を一番疲弊させるのだという事はわかっているのですがね…。



by lemgmnsc-bara | 2016-06-06 21:57 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

by 黄昏ラガーマン
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31