人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『カラヴァッジョ伝記集』を読んだ

カラヴァッジョ伝記集 (平凡社ライブラリー)

石鍋 真澄(翻訳)/平凡社

undefined


2011年のイタリア旅行以降、当家では彼の国に対する関心の高さが継続しています。パスタにピッツァにワイン(って食い物ばっかりじゃねーか!!)、ラグビー(そんなにメジャーじゃない。少なくともサッカーより日本での関心は低い)、本、旅番組など、イタリアに関するモノゴトは常に身近にあります。そんなこんなで今週は「カラヴァッジョ展」を観に行ってきました。

会場である国立西洋美術館のある上野公園は『若冲展』で人があふれかえって(平日の昼間だというのに会場入りまで1時間待ち)いましたが、「カラヴァッジョ展」もこじんまりと盛り上がっていましたよ。

で、この展覧会を観る前に知識をアタマに入れておこうと買い込んだのが標題の書。結局は展覧会を観る前に読み終わる事はできなかったので、中途半端な知識を持っただけで終わってしまいましたが(苦笑)。

さて、「カラヴァッジョ」というのは地名です。本名は「ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ」という長ったらしい名前です。無理矢理日本語に直すと、カラヴァッジョ村(ミラノの近くにある田舎町)のメリージ家のミケランジェロってことになります(有名なレオナルド・ダ・ヴィンチもヴィンチ村のレオナルドって意味になります)。

この人物はゴシック期を代表する画家で、目の前の事物をあるがままにカンバスに再現することで、当時の美術界の常識をまるっきりひっくり返した人物として知られています。その先進性ゆえ、当時の画壇は容認派と否定派にはっきりと二分されたのですが、後には、彼の「画風」にあこがれ、その手法を真似る「ジャラヴァッジェニスキ」というフォロワーたちを多数生み出す事となります。カラヴァッジェニスキたちはイタリアのみならず、ドイツやオランダにも少なからず出現したそうで、彼らの作品も多々展示されていました。それまでは絵の題材の「欠点」を修正して美しい姿を描く事が一般的だったのですが、カラヴァッジョの出現以降、対象をよりリアルに描く、という思想を持った一派が美術界にそれなりの勢力を持つこととなります。

絵の方のウデはともかく、このカラヴァッジョ氏、私生活はかなり荒れていたようです。とにかくケンカっ早い。標題の書には、カラヴァッジョの「犯罪」に関しての裁判資料が数多く収められています。中でも一番の大罪はテニスの試合でのイザコザが原因で人を一人殺してしまったこと。こうしたトラブルが原因で絵の名声ほどには私生活は充実せず、イタリア各地を転々とすることを余儀なくされたようです。挙げ句には彼に恨みを持つ人物に顔を殴られて重症を負い、最後には急病で亡くなってしまうのです。破滅型の天才だったのですね。

私のようなコンテキスト読みにはなかなか良い一冊であったように思います。ただ絵を流して眺めて終わりってな鑑賞よりは少し深い鑑賞が出来たように思います。

by lemgmnsc-bara | 2016-05-28 20:47 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

by 黄昏ラガーマン
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31