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『魅入られた瞳:南青山骨董通り探偵社Ⅱ』を読んだ

魅入られた瞳: 南青山骨董通り探偵社II (光文社文庫)

五十嵐 貴久/光文社

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前回の投稿で予告した通り、二作目の書き下ろし作品について書いてみたいと思います。

主人公の井上雅也は、安定した大企業であるトヨカワ自動車を辞め、得体の知れない南青山骨董通り探偵社に転職します。しかし、雅也を待っていたのは「手持ち無沙汰」。毎日毎日忙しいという訳ではないというのが、私立探偵という稼業の「不安定さ」を表していますね。反面忙しい時はそれこそ寝食を忘れてでも集中しなければならないということでもありますが…。

事務所の雑用と、先輩立木の「説教飲み」に付き合わされるだけの日々を送っていた雅也に、ようやく待望の仕事がめぐってきます。

しかし、その仕事というのは犯罪を暴くような派手なものではなく、大手商社に勤めるエリートサラリーマンの妻のメンタルクリニック通いの送迎という、非常に地味なお仕事でした。どうせ、入りたての新人には大した仕事なんぞ任せてもらえませんよ、とむくれた雅也ですが、送迎する妻本人を一目見てからポーっとしてしまいます。彼は年上の美女に弱いというキャラ設定になっているのです。美魔女ブーム、熟女ブームの昨今、こういう若い男は増えているのでしょうね。

ここでちょいと脇道へ。男性の欲望の一つに、幼い女性を自分の手のうちに置き、思い通りに教育することで自分の好みの女性に育て上げるというものがありますね。源氏物語の「若紫」などはその典型ですが、どっこい女性だって幼い男の子を自分好みの男性に仕立て上げることを、欲望として持ち合わせています。というより、特に日本の場合、ほぼすべての母親がこの欲望に忠実に日々の生活を送っていると考えてよろしいのではないでしょうか。いい大学を出て、いい会社に入って安定した生活を営むとともに、身近な人々に対して自慢出来るような息子を作り上げる…。これを終世の目的としているお母さんは多いですよね。故に小さい時からお受験やらなんやらで、散々に息子を追いまくる。私など、一人息子ですから、もろにこの「逆若紫計画」にハマっちゃってます。もっとも、この計画のおかげで安定した生活を安易に手放さずにいる訳ですから、感謝しなければいけない部分の方が大きいのでしょうけどね(苦笑)。

閑話休題。雅也はこの性格をまんまと利用され、窮地におちいることとなります。どのように利用され、どのような窮地に陥ったかは、本文をお読みください、としか言い様がありません。ストーリーの根幹を為す仕掛けが施されています。

最後の最後は意外な結末が待ち受けています。世の中奇麗ゴトばかりではない、ってことと、探偵社の社長金城の抜け目のなさにうならされる結末です。一筋縄のハッピーエンドに終わらない所が五十嵐氏の面目躍如といったところでしょうか。

続編期待してます。


by lemgmnsc-bara | 2015-10-16 19:41 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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