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『セッション』鑑賞

セッション コレクターズ・エディション[2枚組] [DVD]

マイルズ・テラー,J・K・シモンズ/ギャガ

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第87回のアカデミー賞で助演男優賞他3部門を受賞したのが標題の作。ジャズドラマーとバンドの指揮者との「戦い」を描きます。

ジャズドラマーのアンドリューはシャッファー音楽院の新入生。ある日スタジオで練習していると、そこに現れたのは名声を博しているバンドの指揮者フレッチャー。フレッチャーはアンドリューにとあるフレーズを演奏するように指示しますが、最初の数小節を聞いただけで部屋から出て行ってしまいます。何やら不安な冒頭部分。

しかし、数日後、フレッチャーは自分のバンドにアンドリューを呼び寄せます。そしてそこで、自分の理想とするテンポを叩き出せないアンドリューを散々に貶しまくります。このシーン、今の私にとっては少々辛かった。自分の体験がフラッシュバックしそうでした。まあ、TVのワイドショー等でこの映画の見どころとして、フレッチャーの「乱暴さ」については予備知識がありましたので、少々身構えていましたから、なんとかなりましたけどね(苦笑)。言葉の違いがあるのでストレートに感じた訳ではありませんでしたが、それでも侮蔑のニュアンスはアンドリューの表情からはしっかりとうかがえました。

そうそう、このフレッチャーは数々のプレーヤーを世に送り出しはするのですが、その陰で潰れていった人間は数知れず。いますね、こういう人間。罵倒と叱責で実績を挙げてはいるものの、私的には絶対に付き合いたくないというキャラです。昔の上司そっくりでした(笑)。

このフレッチャーの要求を満たすため、アンドリューはいい雰囲気になりかけていたガールフレンドと別れ、文字通り血のにじむような努力をしてテクニックと鋭敏な感覚を身につけていきます。苦しい練習を繰り返すうちに破れてしまう手の皮。流れ出る血を止めるために拳を突っ込んだ氷水がみるみる血に染まるというシーンは表現に携わる者が直面する厳しさみたいなものを見事に暗喩していたと思います。

アンドリューは苦労の甲斐あってバンドのメイン演奏者としての地位を得ます。ところがあるコンテストの際に遅刻してしまい、その遅刻を取り戻すためにレンタカーで猛スピードで走り、事故を起こしてしまいます。血まみれで会場に入るアンドリュー。しかしその怪我は到底ドラムを叩けるレベルのものではありませんでした。フレッチャーが演奏の中止を告げ、アンドリューに交代を命じた途端、アンドリューはプッツン。フレッチャーに殴り掛かります。よくわかるわ、この気持ち。自分自身そういう思いを何度持ったことか。殴れば地獄、殴らなくても地獄なら、せめてパンチの一発も浴びせておきたかった…。

さて、この一件でアンドリューは音楽院を退学しますが、フレッチャーによってうつ病に追い込まれ、自殺したプレーヤーの遺族が雇った弁護士に証言しフレッチャーも指揮者としての職を失います。

ドラムの道をあきらめたアンドリューは、ある日の仕事の帰り道、ジャズクラブの奏者にフレッチャーの名があるのをみつけ、思わずそのクラブに入ってしまいます。そこで再会したフレッチャーは、才能のある人間が褒めることによってスポイルされていった例を挙げて、自分の厳しさはその人間の資質を見込んだ上でのものだと語ります。同時に直近に控えたコンクールにはメガネにかなったドラマーがいない事も語り、アンドリューにカムバックを求めます。躊躇するアンドリューですが、そもそもの情熱を思い出し、コンクールに出場する事を決意。

ここでコンクールに出て優勝をかっさらってめでたしめでたし、かと思いきや、最後の最後でどんでん返し。これについては本編をご覧下さい。アンドリューの鬼気迫るドラムソロが印象的です。

なかなかの佳作だとは思いましたが、最後の演出はちょっと余分だったような気がします。また、上司に散々な目に遭わされた事のある身としては、どうしても我が身とオーバーラップしてしまい、冷静に観る事ができませんでした。



by lemgmnsc-bara | 2015-09-25 17:18 | エンターテインメント

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