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『日本のビール 面白ヒストリー:ぷはっとうまい』を読んだ

日本のビール 面白ヒストリー:ぷはっとうまい

端田 晶/小学館

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船橋にあるサッポロビールの工場を見学した時に、工場内のショップで文字通り酔った勢いで買い求めたのが標題の書。

著者端田氏はサッポロビールで、宣伝・広報等の業務を歴任した人物。いかにビールの魅力を世に発信するかに腐心してきた方ですから、いろんなうんちくをお持ちです。そしてそのうんちくを惜しげもなく披露してくれています。文章も読みやすい上に、ユーモラスでした。

さて、ビールというのは水とホップと大麦が原料の主なものです。故に、これらの作物を安定的に、しかも大量に消費することで農業従事者の生活を安定させることが出来る。また、西洋の食文化に欠かすことの出来ないビール(とワイン)を自作することで、欧米と対等に渡り合える(と少なくとも当時の政府の偉い方々は考えたようです)。という訳で、「国策」としてビールを作ることが推奨され、実際に政府が北海道開拓の一つの柱としてビール工場の建設に助力までしました。

いささか大げさではありますが、ビールは単なる酒ではなく、国の威信を高めるための一つの「武器」だったというわけです。なるほどねぇ。普段ガブガブ飲んでいるだけのビールもこういう歴史を知るとなにやらありがたいもののように感じますね。

そして、このビール作りに携わった人々の中からは、現代の大企業を作り上げた人物達も出ていたりします。それもビールとはあまり関係ない分野の人まで。どんな方々なのかは本文に譲ろうと思います。

その他では、ビールが産業として確立されるまでの混沌とした状況がなかなか面白かったですね。今の4大メーカーに集約される遥か以前には、それこそ小さなビールメーカーが乱立したそうです。状況だけ考えると、「クラフトビール」ブームに乗って様々なメーカーが出現している現在によく似ています。ただし、品質は今とは比べ物になりません。製造技術も流通も整備されていなかった、明治時代は「飲んでびっくり、二度と飲むか!!」ってな商品が多々あったことでしょう。

それにしても、これだけのうんちくとビールへの愛情を持つ人物を社内に抱えながら、なぜサッポロビールは率先して「まがい物」を発売するのでしょうか?エビスも黒ラベルも非常に優れた製品だと思いますので、このブランドを大切育てて守っていくことこそがサッポロビールのアイデンティティーだと思うのですがねぇ…。悪い意味で企業が大きくなりすぎたんでしょうね。効果効率を考えたり、世の低価格志向に合致していくためには量の見込める低価格の商品を出して、無理矢理にでも売っていかなければ大きくなったカラダを維持出来ないってことです。日本のビールの老舗の一つなんですから、量だけではなく質の向上にも本腰をいれて取り組んでいただきたいですね。



by lemgmnsc-bara | 2015-07-11 05:22 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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