人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『BL時代の男子学』を読んだ

BL時代の男子学 ~21世紀ハリウッド映画に見るブロマンス~ (SCREEN新書)

國友万裕/近代映画社

undefined


映画関連本の棚をみていて目にとまり、衝動買いした一冊。

副題にある「ブロマンス」とは「brother」と「romance」を合成した新語で、男性同士のロマンスを描く物語だそうです。この本では、そのものずばりのゲイの世界を描いた作品を紹介するとともに、時代の変化につれて変遷していった映画の中の「男性像」についても言及しています。

二度の世界大戦、そして東西冷戦の時代までは、「アメリカの敵」がはっきりしていました。それゆえ、映画の中で描かれる男性は敵を倒すマッチョなイメージでした。戦いに明け暮れ、そして勝利する男性。いかにも、ってな描かれ方ですね。

しかし、時代の変遷とともに、その男性像も変化していきます。「敵」はナチスやソ連から身近な問題へと変化し、そしてそれに立ち向かう男性を等身大に描くというパターンが増えていきました。そして、意識の多様化。未だにさまざまな差別や偏見があるにせよ、LGBTの人々に対する意識はずいぶんと「軟化」していると思います。むやみに変態扱いするよりは「個性」の一つとして認めようという動きの方に傾きつつあるように思います。マツコ・デラックスなんかレギュラー番組を何本も抱える超売れっ子になっちゃいましたしね(笑)。

そんな中で、男性を主体(観る側)から客体(観られる側)へとポジションチェンジさせるような視座も生まれて来たし、男同士の恋愛感情を描く作品も出てくるようになったという著者の分析はなかなか興味深かったですね。少し古い言葉で大げさに言えば、いわゆる「性役割」という共同幻想が揺らぎ始めて来ている、とでもいいましょうか。同性に対して恋愛感情を抱くことがあってもいいじゃないか、という風潮が生まれつつあるということですね。

日本は仏教という、同性愛を強く禁忌とはしない宗教が支配的だった時代が長かったせいで、特に男性同士の同性愛に関しては寛容な国のようです。ある地方では成人前の男子が共同生活を送り、その中で男性同士で性関係を結ぶことが習慣化していたそうですし、江戸時代に世界一のメガロポリスだった江戸では女性の絶対数が足りずに、男色が一般化していたそうです。
さらに言えば、君主のためには命を投げ出すことも厭わないという武士道は主従の緊密な結びつきを生み、その精神的なつながりが「愛情」に転化していったなどという説もありますね。

加うるに、草食系男子など「異性との関係を面倒くさがる」若者たちが増加傾向にある昨今、ますます「男」という共同幻想は曖昧になっていくように思います。そうした風潮は今後どんな作品を生み出すのか?もっと広く考えると、社会全体にどんな状態を出来させるのか?興味深いですねぇ…。

私自身は男性には友情以上のものは感じません。オカマバーに行って騒ぐのは楽しいとは思いますけどね(笑)。



by lemgmnsc-bara | 2015-03-15 13:15 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

by 黄昏ラガーマン
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31