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『嫉妬の世界史』を読んだ

嫉妬の世界史 (新潮新書)

山内 昌之 / 新潮社

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嫉妬という字は二つとも「おんなへん」がついています。詳しい成り立ちは専門の方に譲るとして、「嫉妬」という感情と女性との関係の強さをうかがわせる字面ですね。

一方で「男の嫉妬は女より怖い」という言葉もあります。組織の中での権力争いなんてのはまさに「嫉妬」によるもの。単純な感情故に強力なんですね。私が勤務する会社にもご多分に漏れず権力争いってのがありますから、誰かが誰かに嫉妬しているという状況は常に生じていると考えられます。私自身にも出世して行く同期や私を追い越していく後輩に対しての嫉妬は存在しているはずです。普段は意識しないようにしていますから表面には出て来ませんが、もともと見栄っ張りな一人っ子である私が嫉妬と無縁なはずはないんです(笑)。

ところがこの「嫉妬」という感情、決して醜悪なだけではありません。上手くつき合えば、自分自身を向上させようという意欲につながります。非常に卑近な例で言えば、先に出世されたら、それをバネにナニクソと奮起して仕事に精を出すなんてことがその好例です。私には感情だけは存在していますが、努力しようという気はまったくないんですがね…。

さて、標題の書には歴史上有名な人物たちの「嫉妬模様」が紹介されています。興味深かったのは森鴎外ですかね。文学者として名声を受けていた森鴎外に対しては、「本来」の職場である軍医の同僚たちは激しい嫉妬の炎を燃やします。明治時代の軍医なんてのはエリート中のエリート。頭が良い分、プライドもお高いですから、天からニ物を与えられた鴎外に対しての嫉妬はさぞかし激しかったでしょう。鴎外はこうした同僚たちによって一旦は左遷されますが、盛り返して最高位に就いた後はそれまでのライバルたちを追い落とす報復人事を徹底したそうです。やだねえ、まったく。偉くなるとこういうことがあるからイヤだ(笑)。

その他、天才型の石原莞爾と実務型の東条英機との確執やら、部下である西郷隆盛の有能さを認めることの出来なかった「上司」島津久光の感情なんかも興味深かったですね。

なんだかんだ言っても人間の行動なんてのは、極卑近な感情から引き起こされるものなんだってのがよく分る一冊でした。
by lemgmnsc-bara | 2014-08-31 17:47 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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