2013年 12月 18日
『雀蜂』を読んだ
久しぶりに読んだ小説。腰巻きには「サバイバルホラー」の文字が躍っています。出ると買い作家の一人貴志祐介氏の作品。この方の作品は一筋縄ではいかないんですよね。というわけで、どんな謎を読ませてくれるのかとわくわくしながら読み始めました。
ミステリー作家安斎智哉がある朝目覚めると、隣に妻夢子の姿はありませんでした。几帳面な性格に似つかわしくない脱ぎ捨ててくしゃくしゃになったままのガウンを残して…。
同時に智哉は命の危険性を脅かす羽音を耳にします。真冬のような寒さの八ヶ岳の山荘だというのに雀蜂が飛び交っていたのでした。智哉は以前にアナフィラキシーショックで命を落としかけていたことが語られます。今度雀蜂に刺されたら命がない。ここから智哉と雀蜂の戦いが始まります。しかし通常なら活動するはずのない季節だというのになぜ雀蜂が飛び交っているのでしょう?謎が謎を呼ぶ展開。読者の心にも、智哉の心にも疑問を残しつつ物語は緊迫感をどんどん増しながら進行していきます。
色々な可能性が表れては消え、伏線らしきものが示されては潰され、物語は進んでいきます。そして最後に現れる大どんでん返し。実に巧妙なハナシの持って行き方です。ついつい最後まで読んでしまう緊張感に満ち満ちています。どんな緊張感かは本文をお読み下さい、としか言いようがありません。ミステリーの種明かしなんぞは興を殺ぐだけですからね。
どうか智哉に感情移入して智哉の視点で最後まで読んで下さい。緊張感が心地よい一作でした。
by lemgmnsc-bara
| 2013-12-18 20:57
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