2013年 12月 17日
『納豆に砂糖を入れますか?: ニッポン食文化の境界線』を読んだ
日経新聞の野瀬泰申氏による、食の境界線をめぐるルポルタージュ。以前紹介した『天ぷらにソースをかけますか?-ニッポン食文化の境界線』の続編という位置づけの一冊。今巻も興味深い調査結果が数々紹介されています。
まずは、標題の「納豆に砂糖を入れますか?」という質問。ハナシに聞いた事はありましたが、私は絶対にやりたいとは思わない食い方です。以前TVで当時横綱に昇進したばかりの三代目若乃花が実際に砂糖を入れた納豆を食べるのを観た事がありましたが、正直吐き気を催す寸前でした。しかし、この本に紹介されていた一人の読者の見解には一本取られました。「納豆のパックについている納豆のタレには砂糖が含まれている。故にほとんどの人は納豆に砂糖をかけて食べている事になるだろう」おっしゃる通り。粉状のままの砂糖はかけていないとしても、タレには確かに砂糖が含まれており、甘みを感じさせる作りになっているのですから、砂糖をかけて食べているのと味的にはさほど変わらないはず。いきなり先制パンチを浴びちゃいました。
本書によれば、粉のままの砂糖をかけるのは北海道、東北といった寒い地方に多いようです。この地域は冬の寒さのため納豆菌の働きが悪く、あまり糸をひかないのだそうです。そこに砂糖を入れると、見違えるほどに糸を引くようになるんだとか。だったら塩の方がまだ私は受け入れやすいなぁ、という個人的な感想はさておき、納豆の食い方一つとってみてもその土地土地の気候風土に左右される、という厳然たる事実を提示された事はショックですらありました。
その他「すき焼き」の話題、「つきだし」、「お通し」の地域性、せんべいとはどんなものを指すのかなど興味深いトピックスが満載でした。
最終章は、年取り魚の境界線を求めて、糸魚川にそって富山から静岡まで野瀬氏が旅をします。行く先々の商店やスーパー、食堂に立ち寄って、店頭を見るとともに聞き取り調査を行う。そこで得た情報からは、その地方に暮らす人々の食生活がほの見えて来ましたし、特徴的な食品(およびそれに伴う食にまつわる文化)の伝播状況などが詳しくわかりました。まさに生きたフィールドワーク。私はこういう発見を求めて、大学時代の専攻を決めたんじゃなかったんだっけ、っていう自分の原点まで振り返らせてくれる貴重な一冊でした。
続編が待ち遠しい!!
by lemgmnsc-bara
| 2013-12-17 19:13
| 読んだ本