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『前田の美学 広島東洋カープ 前田智徳』を読んだ

前田の美学 広島東洋カープ 前田智徳 (宝島SUGOI文庫)

迫勝則 / 宝島社

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今シーズン限りで現役を引退した「ラストサムライ」、広島カープの前田智徳選手に関するルポルタージュ。

私は巨人ファンでしたが、個人としての前田選手は尊敬に値すると思っていました。彼の一番印象深いプレーは、他ならぬ巨人戦。地面すれすれに飛んできたセンターライナーを捕ろうとしてしてバウンドがあわずに後逸してしまい、リードをフイにしてしまいました。そしてその後、打席に立った前田選手は、勝ち越しのホームランを放ち、男泣きしながらベースを一周したのでした。敵ながらあっぱれ。自らの失策は自ら取り返す、という強い意志と気迫には感動すら覚えました。

その他にもこの方は常に玄人好みの言動をされる方でしたね。寡黙で自らに厳しく、決して妥協しない。黙々と努力を重ね、果たすべき仕事はきっちりとは果たす。いかにも玄人好み。もっと言えば、高度成長期に一番格好よいとされた男の姿を体現していると言ってよいですね。自らの境遇に重ね合わせて胸を熱くしていたオジサンたちが数多いたであろうことは容易に想像がつきます。

この方のプロ野球人生はまた怪我との戦いでもありました。左脚のアキレス腱断裂に始まり、傷めた左脚をかばう癖がついてしまったために右脚までも傷めるという悪循環。挙げ句の果てに今シーズンの序盤にはデッドボールを受けて左腕を骨折と、最後の最後まで怪我がついてまわりました。「怪我さえなければ…」という思いは本人が一番強く持っていた事でしょう。

あのイチロー選手があこがれたという天性のセンスと、自らの理想をとことん突き詰める求道者としての姿。正に彼は努力することの天才でした。指導者としてグラウンドに戻って来るのもそう遠いことではないでしょう。今後は一人でも多くの「努力の天才」を世に送り出す存在になることを期待します。
by lemgmnsc-bara | 2013-10-23 21:31 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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