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『ニキータ』鑑賞

ニキータ [Blu-ray]

角川書店

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リュック・ベッソン監督の出世作。ヤク中のアバズレから諜報員に転身を遂げた一人の女性が、人間としての姿を取り戻すという物語。

冒頭は主人公ニキータを含む四人の不良が、その内の一人の実家に忍び込むというシーンから。彼らの目的は薬物の入手でした。しかし、駆けつけた警官達と撃ち合いとなり、ニキータを除く全員が撃ち殺されてしまいます。一人生き残ったニキータはたまたま手にした銃で警官を撃ち殺し、そのまま意識を失います。

目が覚めたニキータは見知らぬ一室の中にいました。そこは国が管理する諜報員の極秘訓練所でした。ニキータの特異な闘争心と戦闘能力は後々描写されることにはなるのですが、今ひとつ説得力に欠けていました。なんで、ろくに教育もうけていなそうなヤク中の少女が諜報員に抜擢されるワケ?最後までこの疑問は払拭できませんでした。

最初の頃は逃走を試みたニキータですが、その企みが無意味である事をさとり、諜報員としてのスキルを身につける事を受け入れて行きます。

3年後、彼女は一人前の諜報員として認められ、市井に解き放たれます。この辺は初めて一人暮らしを始めた若い女性の非常にわかりやすいメタファーですね。様々な制約から解き放たれたニキータはスーパーのレジ打ちをしていたマルコという男性と知り合い、恋に落ち、同棲を始めます。

しかし、自由に見えても実はさまざまなしがらみに絡みとられているというのが現実の姿。彼女に与えられる使命は徐々にマルコとの生活を侵していきます。実際の社会は場合によっては「カゴの鳥」よりも窮屈なんだ、ということの非常に分りやすいメタファーでしたね。

やがて、彼女は関わった人間全てが死亡してしまうという悲惨な事件に巻き込まれる事になります。ここに至り、自分が置かれた境遇が異常である事を初めて自覚するニキータ。この描写は狂気のようなバブル景気の夢から醒めつつあった1990年当時の日本人にとっては自らの境遇を重ねやすかったのではないでしょうか?昨日まで当たり前だと思っていた事が、今日には一気に覆されるという悲劇。ああ、わかりやすい。

この、非情でいることを求められながら、非情にはなりきれない主人公というのは後の同監督の『レオン』や『トランスポーター』シリーズにも共通する設定です。これもわかりやすい「性善説」ですね。

ただの派手なドンパチものではなかったことと、最後がハッピーでなかったことがフランスっぽかったですね。
by lemgmnsc-bara | 2013-10-17 20:41 | エンターテインメント

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