2013年 06月 23日
『あなたに似た人 』を読んだ
阿刀田高氏や清水義範氏など、当代きっての「奇妙な味の短編」の書き手達(=私の好きな作家達)が、こぞって影響を受けたと述べていたのが標題の書。15編の短編が収録されています。
全体としての感想はまあ、ほどほどと言ったところですかね。普段強烈な酒を飲んでいて、たまにアルコール度数が低い飲み物を飲んだ時に感じる物足りなさみたいなものを感じました。時代背景に関する知識も不足していますし、翻訳物独特のニュアンスの「すくえなさ」みたいなこともあったのだと思いますが、パッと読みはかなりマイルドな「奇妙な味」でした。
しかし、こうしたなんとも形容し難い薄気味の悪さであったり、そこはかとないユーモアをさりげなく盛り込んで、オチまで持って行く、という形式の小説は、恐らく彼が最初に切り拓いた分野なのでしょう。そういう意味ではこの分野における「古典作品」としての価値は十分にあると思います。はっきりとした恐怖でもなく、爆笑を誘うようなギャグでもなく、思いっきり意表をつかれるオチがある訳でもない。でもこの「バランス感覚」が絶妙なんですよね。読み終わった後にジワジワわき上がる不思議な感情は本当に表現し難い。近頃の若者言葉的に言えば「ビミョー」なんです、すべての作品。
どう始末をつけたらいいのかが不明な感情が残る作品集でした。プロの書き手にとっても真似のしようがない作品達だと思います。それ故、いまだに高く評価する人が多いのでしょう。
by lemgmnsc-bara
| 2013-06-23 20:43
| 読んだ本