2013年 05月 24日
『歪笑小説 』を読んだ
東野圭吾氏の「笑」シリーズ4作目。この作品集では、主に文学界の内幕をパロディーとして描いています。
私のような活字中毒者にはイメージしにくいのですが、活字離れは深刻な問題のようです。いろんなメディアに露出し、そこそこ知名度のある作家が書いた本でも初版は千の単位だそうです。そして重版もできずに消えていく本はそれこそ星の数ほどあるそうです。げに恐ろしき文筆業。このご時世にあっては村上春樹氏なんかはほとんど奇跡のような存在なんですね。
文学界を語る時に忘れてはいけないのは出版社という存在です。どんなに優れた作品であっても、出版社が流通にのせない限りは読者の目には触れないのですから。そして出版社も企業である以上は利益を出さなければいけない。利益を出すためには「売れる」本をつくり出さなければならない。売れる本を作るためには人気のある作家の囲い込みもすれば、文学賞だって作っちゃう。内容よりも如何に売るか…。やだなぁ、営業職時代を思い出しちゃった。
ややデフォルメがキツい感もありますが、変に描写が生々しいところがこの本のミソ。どんな作家が大衆にウケてそして売れるのか?そうした人物をみつけだし、育てることこそが編集者の醍醐味であるということは伝わってきました。
作者が「文学界」の内幕を暴露した作品としては筒井康隆氏の『大いなる助走』というものがありますが、筒井氏の作品ほどは生々しくはなく、かつ笑いの要素もふんだんに織り込まれた、なかなか楽しい一冊だったように思います。
by lemgmnsc-bara
| 2013-05-24 20:38
| 読んだ本