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『つきぢ田村「料理の理」』を読んだ

つきぢ田村「料理の理」 (小学館文庫)

田村 平治 / 小学館

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創業60年以上の歴史を持ち、ヒゲタ醤油のCMに出演していることでも有名な料亭「つきぢ田村」。そこの初代と二代目の主人が共同で執筆したのが標題の書。前半は料理のレシピ中心、後半は料理人の哲学を主に語っています。

日本料理の基本は季節の素材を、その素材本来の味を殺さない料理法で提供すること。というわけで四季折々の食材を使った懐石料理の数々の調理法が紹介されているのですが、実に素っ気ない記述に終始しています。調理法そのものは単純でも、そこで駆使される包丁使いとか火加減とかに、プロの秘伝が込められているんでしょうね。形ばかりは整えられるかもしれませんが、同じ味は決して出せないでしょう。

四季の料理を紹介した後は、アラカルト的に40種ほどのお手軽料理が紹介されています。あくまでもお手軽なのは字面だけのことであって、修錬を積んだプロでないと出せない味というのが厳然として存在しているんでしょうけど。

後半部分の「哲学」に関しては「材料は一片たりとも無駄にしない」という条りにその真髄を読み取ることが出来ます。人は命あるモノを食べないと生きて行けない。同じ命を貰うのなら、その隅々まで全部無駄にせず取り込むことで失われる命に対する感謝の気持ちを表そう。実に深いですねぇ。宗教的ですらありますが、小難しい理屈をこねるのではなく、食べ物という切り口から語られると、生命の尊さというものが文字通り身にしみますね。

この哲学ゆえに、「つきぢ田村」では、例えば大根の葉や皮など通常は捨ててしまう部位まで全部使いきることを実践しています。葉は菜飯の材料に、茎はみそ汁や炒め物に。そして皮はお土産用の漬け物にするそうです。ご主人はこうも付け加えています。「実は野菜は皮の部分が一番美味しいんです」。百聞は一食にしかず。確かに皮の部分の歯ごたえと旨味は堪えられません。特に歳を食って体質が変わってきた最近ではこうしたちょっとした旨味に惹かれるようになってきました。

最近は面倒臭さに負けてほとんど料理などすることはありませんが、いくつか試してみたい料理が掲載されていました。いつ気が向くかはわかりませんが一度挑戦してみたいと思います。
by lemgmnsc-bara | 2013-04-25 20:57 | 読んだ本

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