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『天変地異の黙示録―人類文明が生きのびるためのメッセージ』を読んだ

天変地異の黙示録―人類文明が生きのびるためのメッセージ (パンドラ新書)

小松 左京 / 日本文芸社

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故小松左京氏が2006年に上梓したのが標題の書。映画『日本沈没』公開に際して、40年ほど前に書かれたエッセイに2006年当時の状況を織り込んだエッセイを加えて出版されたものです。発行当時は当然2011.3.11の惨劇は起こっておらず、1995年の阪神淡路大震災が直近の天変地異として挙げられておりましたが、その他はおよそ40年前に書かれたエッセイにも関わらず、現在の問題点をぴたりと言い当てていることに驚かされます。人類が進歩していないのか、小松氏の慧眼に恐れ入るべきなのか?恐らく両方でしょうけど(笑)。

中でも印象に残ったのは現在焦眉の急とされている「地球温暖化」に関する見識ですね。地球は氷河期を繰り返しており、現在は「間氷期」であるということを指摘し、むしろ氷河期をどう過ごすのかの方が重要ではないのか、と指摘していますが、私が常々感じている「地球温暖化は本当に人間の営為によってのみ発生した現象なのか」という疑問に対しての一つの回答を与えてくれたように感じました。地球の歴史はおよそ46億年。たかだか100年レベルの「変動」なんてのはホンの一瞬の現象にしか過ぎません。人間という「種」の個体に与えられた寿命が100年程度のモノなのでついつい重大なことのように感じてしまいますが、あと30年もしたら温暖化よりも寒冷化の方が問題になる、なんてことが起きないとも限りません。今年の冬の厳しい寒さと各地の大雪を鑑みると、「温暖化」しているのかすら疑問を感じますし…。

その他「ユートピア」というものに関しても新しい知識を貰いました。トマス・モアの示したユートピアは奴隷の存在が前提となっていたこと、農作物を生産できる土地を放置しておくのは罪であり、原住民が有効活用していないなら、他地域の人間が有効に活用することこそが正しいことであり、その考え方に共鳴できない原住民はその地を追放されてしかるべきだ、という「哲学」があったということなどです。後者の考え方は、欧州の人間が新大陸であったアメリカの「開拓」を進める際の思想的バックボーンになったそうです。歴史って深いですねぇ。

非常にステレオタイプな言い方ですが、東日本大震災で改めて自然の脅威を思い知らされた今、地球の「ホンの気まぐれ」で滅ぼされてもおかしくないほど人類というのは弱々しい存在なのだ、ということを改めて認識させてくれる一冊でした。
by lemgmnsc-bara | 2013-03-26 20:43 | 読んだ本

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