2013年 03月 22日
『アイアン・スカイ』鑑賞
みるからに安っぽい作りのB級SF映画。第二次大戦後地球からは見えない月の裏側に潜んでいたナチスの残党が、地球からの調査船を戦時に使う偵察機と勘違いして、地球との「再戦」と征服を目的に、攻撃を開始するという内容。
設定が荒唐無稽なのは、まあ悪くないんですが、いかにも作り物っぽいセットとミエミエのCGで興ざめ。まあ月面の状況にリアリティーなんか求めても仕様がありませんけどね。
オハナシの筋は単純明快。地球を攻撃しようとしたナチスは、各国の最新鋭の兵器に撃退されてめでたしめでたし。で、ヒーローとヒロインも結ばれるというハリウッド的ハッピーエンド。これだけなら「なんじゃいこれは?」で終わってしまうのですが、星を4つつけたのには理由があります。
この映画、紋切り型の表現ではありながら、随所にピリリと皮肉が効いているんですよ。支持率の低下により再選が危ぶまれている米大統領(女性)が「一期目に戦争があった大統領は必ず再選しているの!」と微笑んでみたり、国連の場で「アメリカの正義が世界の正義よ」みたいなことを堂々と言い放ってみたり。そうそう、そうなんだよ。今や世界唯一の超大国アメリカってのはどこか他国を見下しているようなところがあるし、ロシアとの「冷戦」が終わったと思ったら、無理矢理イスラム教を敵に仕立ててみたり、実は横暴極まりないんだよな、っていう誰もが心の奥底で蟠らせている感情を一気に放出させてくれる爽快さがありました。
国連と言えば、この映画の中で一番笑ったシーンがありました。それがどんなシーンなのかは実際にご覧ください。ゲラゲラ大笑いするとともに、大いに溜飲が下がる思いがしましたよ。
設定がキャッチーではあるものの、ものすごくレベルの低い作品なんだろうと思って期待せずに観たのですが、思わぬ拾いものでした。深く考えようとすればいくらでも深く考えられるテーマがそこここに無造作に転がっています。コメディの「使命」ってのは、笑いの中にどれだけ毒を含ませられるかだと思うんですが、十分に毒々しい内容だったと思います。
by lemgmnsc-bara
| 2013-03-22 21:12
| エンターテインメント