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身辺雑事2

今朝は朝からあまりツイていなかった。

私は今、私鉄とJRを乗り継いで通勤している。今日はこの私鉄が少し遅れた。おかげでJRには本当にギリギリに乗った。駅員から思いっきりイヤミを言われそうな典型的な駆け込み乗車という奴だ。車両を選んでいる余地はなかった。駆け込んで一息ついて周りをみたら、なんとその車両はラッシュアワーには椅子が壁に収納されてしまう形式の奴だった。

私は絶望のあまり立ちくらみしそうになった。私の乗る電車は常に超満員なのだが、各駅での乗り降りが非常に激しい。従って、大きな駅に停車した後はかなりの確率で座れるのだ。まだそんなトシではなかろう、と言われるのは百も承知だが、いつぞやのストリートファイトで傷めた左膝が最近とみに痛む上、先週の試合で背中まで傷めてしまった私としては、少しでも押し合いへしあいを避けて座っていたいのだ。周りから他人をどかそうとするなら、いきなり花笠音頭を歌い踊る、ゲロを吐く、カウンターテナーでフランク永井の持ち歌を歌い上げるなどの策がない訳ではないが、こうした策が通用するのは精々一駅くらいのものだ。

今日も乗り降りの激しい駅でちょうど座席に相当する部分が空いた。ああ、椅子さえ倒せれば座れるのに…、って英語でどういえばいいんだろうなどと思考を他の分野に向けることでなんとか無念さをかみ殺していたら、鼻に強烈な刺激臭が来た。

思い出すだけで吐き気を催しそうな口臭が漂ってきたのだ。どうやら私の正面でつり革につかまって立ったまま居眠りをしている奴の息らしい。体毛も濃いし、顔も濃い、なにをやっても臭そうな奴だった。私はたまりかねて、本で顔を隠し、さらにそのうえ鼻に指をあてて、鼻から空気を吸い込まないように工夫した。歯ぐらい磨いて来いよ、まったく、と言いたいのを我慢し、吐き気をこらえTOEICの問題集に集中している私はなんと見上げた奴なんだろう。ジャパニーズサラリーマンの鑑ではないか、などと自画自賛でもしていないかぎり、中毒死しそうだった。どうせならこの口臭を放っている男が自家中毒で死ねばよいと思うまでに憎悪がふくれあがっていた。また、こういう時に限って、この男は降りない。結局私の降車後も白目をむいて居眠りしながら乗り続けていたが、私以外の人間はあの口臭を良く我慢できたと思う。

ようやくサリンガスにも劣らぬ毒ガス「口撃」から逃れた私を襲ったのは、会社のトイレの個室の床に点々とこぼされた水滴たちだった。まったく、自分のしたことの後始末くらいしとけ、と毒づきながらトイレットペーパーで水滴を拭おうとしたその瞬間、ビリっという嫌な音とともに股間に風を感じた。

少しやせたので油断していたのだが、私の尻は私が思っている以上にでかかったのだ。見事なまでに股間の部分が裂けていた。私はこの瞬間、狼の群れに囲まれた子羊の絶望感を理解していた。周りはすべて敵。逃げ道もない。すこしでも隙を見せればたちまち嘲笑という牙がうなりをあげる…。

私は性転換手術を受けた後のオカマもかくやと思われるほどの内股で自分の席まで戻り、生理痛に苦しめられている少女のごとく、ぎこちない腰つきで椅子に座った。階段を上るときは盗撮の被害に遭った女子高生の悲しみを理解した。

しかしそんな私にも救いの時は来た。今度の職場は目と鼻の先に大きなショッピングモールがあるのだ。私はそのショッピングモールの開店時間に合わせ、そっと職場を抜け出すと、ノーパンのままミニスカートで歩き回らされるという安手のエロ漫画にありそうなシチュエーションに置かれた女のおびえを自分のものとして感じながらユニクロに飛び込み、一本だけあったウエスト100cmのズボンを買い求め、即座に裾上げを頼んだ。

帰りには破れたズボンをショッピングモールのゴミ箱に叩き込んだ。あのズボンは今頃どこかの焼却場で結構なカロリーを排出しながら燃えているはずである。
by lemgmnsc-bara | 2012-09-28 20:41 | 雑談

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by 黄昏ラガーマン
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