2012年 06月 09日
『パスタでたどるイタリア史』を読んだ
西洋中世史、ルネッサンス史が専門の池上俊一氏が文字通り、パスタと絡めながらイタリアの歴史を分りやすく解説した一冊。昨年末の旅行以来イタリアおよび、イタリアに関連する言葉を目にすると反射的に手に取ってしまう癖がついてしまい、その癖のお陰で衝動買いしたもの。ずいぶん噛み砕いた内容だなと思って読了後、よくよく見たら中高生向けの岩波ジュニア新書でした。でも、大人が読んでも十分楽しめ、かつイタリアの歴史の概要は自然と頭の中に入っているというスグレモノでしたね。
イタリアのパスタは掛け値なしに美味い。日本でも美味いパスタを供する店は多々ありますが、少々お値段が張ります。コスパ的には低いのですが、イタリアの場合はどこの店に行っても皆美味い。しかもよほど気取ったリストランテにまで行かない限りはお値段も良心的。イタリア人のソウルフードであるとともに、イタリアから始まった「スローフード運動」の旗印的食物として全世界的に広がりつつありますね。
このパスタがいかにして発生し、どのような変遷を経て今のような形で食べられるようになったかを、時系列にそって丁寧に説明してくれています。一番の根本は南の乾燥パスタと北の生パスタという二分法でしょうかね。地中海性気候のまっただ中で、乾いた空気の南では固めの麦を用いて乾燥させて保存する事が前提の乾燥パスタが発達したのに対し、北の方では柔らかい麦を用いてつくり置きのきかない生パスタを打つ事が一般的だったという事実はまさに「へぇ〜」。まさに「身土不二」。その土地にあった作物から、その土地にあった食物が作られて行くというわけです。
そして戦乱や大航海時代がもたらした新しい食材がパスタに及ぼした影響も無視できません。特にトマトについては、その存在抜きにはパスタを語れないといってよいくらいですね。その他ジャガイモはニョッキの材料だし、かぼちゃなんかも小麦と混ぜてパスタ風にしてよく食べられていたそうです。日本でいえばまったく異文化の食物であった肉を用いたカツ丼や牛丼が「国民食」としてすっかり定着したようなもんでしょうか。
この本もイタリア再訪の機会に恵まれた場合には再読して行きたい一冊です。というか、「また行きたいよう!!」という欲望を大いにかき立てられましたね。
by lemgmnsc-bara
| 2012-06-09 19:25
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