2012年 06月 06日
『怖すぎる話 真夜中の都市伝説』を読んだ
世に「都市伝説」と呼ばれるものは多数存在しますね。標題の書はその「都市伝説」のうちの代表的な怪談を66編収録してあります。
この「都市伝説」なるもの、いつの間にか発生してそしてあっという間に人口に膾炙していきますね。そして伝達の過程で様々にディテールが変化して数多のバージョンが生まれていきます。オリジナルが昔からある怪談の場合もあれば、実際の事件がどんどん拡大していくものもあり、単なる噂やデマがいつの間にか信憑性を帯びてしまったものもあります。発生から拡大、そして別バージョンの発生など詳しく調査すると非常に面白そうな社会学のフィールドワークになるような気がしますね。久しぶりに大学時代を思い出しました。
閑話休題。収録されたオハナシの中には私が知っていたものもいくつかありました。一番有名なのは「だるま女」。香港で買い物に行った夫婦の妻の方が試着質に入ったきり出てこない。夫は必死で妻を捜すが見つからない。ある日捜索に疲れた夫が気晴らしに見世物小屋に入ると、手足のない女が見せ物になっていた。その顔をよく見てみたらなんと探し求めていた妻その人。夫は大金を積んでなんとか妻を取り戻したが、すでに妻は狂気に犯されていた、というもの。私が聞いたバージョンは夫婦ではなく、若い女性たちのツアー旅行中にその中の一人が行方不明になり、家族が探しに行き、色んな伝手をたぐって娘の居場所を探り出したら、そこは見世物小屋で、手足を切り落とされた娘はやっぱり狂ってしまっていたというものでした。
このオハナシはフランスのオルレアンでユダヤ人の経営する店で若い女性が誘拐された、というデマが「原典」だそうです。彼の地では暴動が起こりかけたほどの「リアル」なデマだったそうです。その話が流れ流れて日本にたどり着き、上述したような「都市伝説」に変化したというわけです。何がどう伝わったらこんなオハナシになるのか、非常に興味深いですな。大学時代なら卒論のテーマに選んだかも知れないくらい面白そうなオハナシです。
俗に「ヒトの噂も75日」などと言われ、うわさ話はいつの間にか沸騰していつの間にか消えて行ってしまうものですが、「都市伝説」として残って行くオハナシにはどこか否定しきれない「力」があるように感じますね。今日もどこかで新しい伝説の種が蒔かれているのかもしれません。
by lemgmnsc-bara
| 2012-06-06 21:00
| 読んだ本