2012年 06月 01日
『賢者の非常食』を読んだ
発酵学者小泉武夫氏の一冊。
私はこの方が書いている日経新聞のコラムを良く読みます。味わいの表現が巧いんですよ。決して上品ではありませんが(笑)。私自身が食べ物の味を表現する時の参考にさせてもらっています。
さて、氏がこの一冊を上梓した背景には昨年の東日本大震災があります。ああした、いつ救助の手が差し伸べられるかわからない状況に置いて、日本人は一体何を食べるべきか?日頃から備蓄しておくべき食糧はどういった類いのものか?テーマはこの二つに絞られるのですが、そのテーマに沿って解説を加えていくうちに、自然と日本の食文化の解説にもなっているというスグレモノです。
氏の大きな主張は「非常時こそ日常食を摂るようにすべし」というもの。そしてその日常食とは日本人の場合、米、魚、発酵食品(味噌、醤油、納豆など)、海藻などになるとしています。
第二次大戦後、アメリカの政策もあって、日本人の食生活は急速な西欧化が進み、いまや高カロリー、高脂質の食事は日本人の日常にも定着してしまいましたが、そのことは必ずしも日本人にとっては幸福な事ではないと断じています。日本には日本の気候風土にあった植物が育ち、動物が棲息する訳で、日本人はそうした動植物を摂る事を食文化として連綿と受け継いできた訳です。そして、その食文化は解き明かしていけばいくほど、「合理的」で「健康的」なものであることがわかっていくそうです。
「身土不二」という言葉を工藤公康氏の著作で知りましたが、この本に書いてあった事を一言で言い表せばまさにこの言葉になります。生まれ育った土地に根付いている食品こそが、その地域に住む人間に取って一番のスタミナ食であり、非常食であるという小泉氏の言は非常に重かったです。試合前になってから急に焼き肉を貪り食っても効果はないということですね。食事も肉体鍛錬の一つの大きな手段であり、日頃の積み重ねがモノを言う、ということを改めて教えていただきました。
by lemgmnsc-bara
| 2012-06-01 19:59
| 読んだ本