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『投球論』を読んだ

投球論 (講談社現代新書)

川口 和久 / 講談社

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広島、巨人で活躍した名サウスポー川口和久氏の著作。標題どおり、氏がマウンド上でどのようなことを考え、どのような球を放っていたかを書き記しています。

広島時代の川口氏は名うての巨人キラーでした。下位打線の打者には平気でフォアボールをだしてピンチを招くのに、原、クロマティーといった当時の主力打者は力で抑え込んでしまい、点を取られない。巨人ファンとしては崩せそうで崩せないイヤなピッチャーでした。巨人相手に通算33勝を稼いでいるそうです。

晩年FA宣言して巨人に移籍してからは正直パッとしませんでした。当時ちょうど工藤投手もFA宣言し、巨人入りを希望していたと伝えられましたが、川口氏と広澤氏を獲得した巨人は「1シーズンのFA獲得選手は二名まで」という協約に引っかかることから工藤投手を獲得できませんでした。「無駄な人材取ったよなぁ。工藤のほうがずーっとよかった。もうトシだから全然働かねーじゃん」って言うのが当時の正直な感想。

しかし、その後リリーフ投手に転向してから「レフティーズ」の一員として、渋い活躍を見せてくれました。当時の宮田投手コーチの助言により「リリーフ投手」専任としての心構えを作り、そしてそのためにフォームを変えたことが奏功したんだそうです。

先発投手としての川口氏は威力のある高めのストレートと同じ高さから落ちるカーブを主体に、力でねじ伏せることを考えていたそうです。正々堂々と力を出し切って打者と勝負し、ホームランか三振か(あるいは四球…、多かったですからね)という結末を見せることこそが野球の醍醐味という考え方だったそうです。その後、スライダー、フォーク(スクリューボールのように利き腕側に曲がり落ちるような変化を見せたそうです)を覚え、投球の幅を広げていったものの、基本的にはストレート中心で押しまくり、最終的に試合をぶち壊さなければいい、というスタイルだったそうです。

しかし、リリーフになってからは、一点も許せないという場面での当番が多くなりました。味方が4点取ってくれたら3点で押さえればいい、という粗っぽい投球ができなくなったということです。そこで一球一球を大切に投げることを心がけるようになり、ステップの幅を狭くするなどの工夫をして、ピッチングの「精度」を高めていったとのとでした。

本人自らが語る言葉は重いですね。私は、単に長いイニングはもたないから、短いイニングだけ投げさせようという、単なる配置転換だと思っていました。先発は長いイニングを投げる代わりに一度投げた後、何日か休めるものの、救援陣は毎日登板する可能性があるから「アガリ」がない。そのことだけでも大きな違いですね。球に威力があるからといって単純にリリーフを任すわけにはいかないってことです。去年の巨人で言えば、一時期東野がストッパーに回りましたが、実績を残せなかったですが、川口氏の実体験のオハナシをうかがうと、なるほど、と納得できました。

ここのところ、川口氏のような、速球とカーブでシンプルかつパワフルに抑える投手を観ていないような気がします。もう一度原点に返ったシンプルな野球を観てみたいものですね。
by lemgmnsc-bara | 2012-02-17 21:05 | 読んだ本

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