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『楊令伝 2 辺烽の章』を読んだ

楊令伝 2 辺烽の章 (集英社文庫 き 3-68)

北方 謙三 / 集英社

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発売と同時に買い求めた第2巻。調子に乗ってその他に7冊ほど買い込んでしまいました。

さて、今巻ではいよいよ楊令が動き出しますが、すんなりと梁山泊のリーダーの跡目を相続するわけではありません。彼をためらわせているものは何か?これは読んでいただくしかありません。この物語の本質にかかわる部分ですからね。

ストーリーは金と梁山泊軍の連携、方ロウ(ロウは月へんに蠟の右側)の蜂起を中心に進んでいきます。特にこの方ロウという人物の描き方が特徴的。確か原作では宋の勢力の減退に伴い、乱を起こすものの、官軍として採用された梁山泊軍に打ち破られる存在です。ただし、この方ロウとの戦いで108人の武将のうち81名が死亡するという曰くつきの人物でもあります。

この方ロウという人物はカルト教団の教祖に近いような存在として描写されます。宋の政府に対して不満を抱く人々を「信者」として取り込み、現世での利益ではなく、来世での幸福を保証することで、命を捨てることを厭わせなくなるのです。梁山泊が思想を掲げているのに対し、方ロウは信仰を掲げている。そして現政府は日常の苦しみを与えるばかり。さてこの三者はどうかかわりあってゆくのか?そして金、遼という外国勢力との力関係はどうなっていくのか?北方氏の緻密な筆運びは、細かいところまでストーリーを破綻させずに描ききっています。相変わらず、兵站、軍事教練などの描写はリアルです。

そして武将たちの人間臭さ。人を束ねる器の大小について悩んだり、個人の生き方について悩んだり。どの武将にも感情移入したくなっちゃいます。

今後、梁山泊軍がどのように力を蓄え、そして戦っていくのか。興味は尽きません。早くも次月の刊行日が待ち遠しい思いです。
by lemgmnsc-bara | 2011-07-25 19:26 | 読んだ本

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