人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『井沢式「日本史入門」講座3 天武系vs.天智系/天皇家交代と日本教成立の巻』を読んだ

井沢式「日本史入門」講座3 天武系vs.天智系/天皇家交代と日本教成立の巻 (徳間文庫)

井沢元彦 / 徳間書店

スコア:




井沢氏の日本史入門3巻目。一度読み出すとどんどん続きが読みたくなるのが井沢氏の本の特色ですね。

今巻では、前巻から引き続いて天智系と天武系の争いのオハナシがまずあります。日本の財力のかなりの部分を用い、莫大な手間をかけて作った大仏を建立した平城京を、なぜ遷都してしまったのか?また、もし大仏を無用のモノと判断したのなら、貴重な金属である銅を何故別の用途に用いようとしなかったのか?歴史の教科書では、平安遷都の理由としては様々な災難が重なったため、験を担いだのだという解釈がなされていたと記憶していますが、井沢説はさらに踏み込み、この時期に天武系の系統が絶え、一度政治の表舞台から退場した天智系の系統がまた復活したことも理由としてあげています。また大仏をそのままにしたのは日本に特有の「祟りを恐れる」心情からだとも述べています。生前徳の高かった存在は、死すれば同じエネルギーを持ちながらベクトルの方向が180度転換し、強大なケガレとなり、祟りをなすようになる。従って後世の「合理的」な判断では考えられないことですが、大仏を捨てたのです。

大仏を捨てただけではなく、唐に最澄、空海という僧侶を派遣して、当時の最新テクノロジーである中国の仏教を輸入し、新しい教えを広めるようなことまでやります。いわゆる、近代科学が発達する前段階では宗教というのはこの世のすべてを理解するための最先端の科学だという解説をしている本を読んだことがあり、まさに目からウロコだったのですが、当時の最新知識を取り入れて天武系が支持していた旧仏教をすべて否定すべく理論武装したってコトなんですね。

その他、中世史最大のスキャンダル、称徳天皇と道鏡の関係についての記述も、江戸時代に俗説として淫らな関係が噂されただけで、実際は醜悪な関係だったとは考えられないという説や、柿本人麻呂についての新解釈が述べてあり、あいかわらず、教科書で習った断片的知識に基づいた私の歴史観に新鮮な風を吹き込んでくれます。

読み終えてすぐに第4巻に取りかかりました。こちらも新鮮ですよ〜。稿を改めて紹介したいと思います。
by lemgmnsc-bara | 2011-07-07 19:58 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

by 黄昏ラガーマン
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31