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『それでもやる』を読んだ

それでもやる (小学館101新書)

辰吉 丈一郎 / 小学館

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40歳を越えて、なお現役ボクサーとしてリングに上がり続ける辰吉丈一郎選手の自伝。

辰吉選手は、大口も叩くけど、やることはやる、っていうタイプのボクサーのハシリだったんじゃないでしょうかね。それまでのボクサーはチャンピオンになっても、みな謙虚だという印象がありました。日本の場合は何でもかんでも「道」にしてしまって、達人になればなるほど謙虚であることがより尊ばれる傾向がありましたから、彼の出現はちょっとしたショックでしたね。今の亀田親子の先駆け的存在で、当初は世間からの風当たりが強かったように思います。私自身もそんなに好きなタイプの選手ではありませんでした。試合中に時々相手をおちょくるようなしぐさをみせることがあり、その点だけは結構好きでしたけどね。

辰吉選手は、何よりもボクシングが好きなのだそうです。好きだから、毎日のロードワークも辛くないし、一日一食でも耐えられる。そして勝ちたいから、万全の準備をして試合に臨む。もし万全の準備をしないままリングに上がって負けたらそれこそ悔いが残るし、何より準備が足りないとリングに上がるのが怖いのだそうです。派手な言動の裏では臆病と言ってもよいほどの繊細さで、きちんとトレーニングを積んでいる。理想ですね。毎回毎回準備不足を感じながら試合に臨み、直後は後悔してもなんだかんだとサボってしまう私にはグサリとくるオハナシでした。

彼は網膜はく離のために日本でのライセンスを更新できなくなり、今ではタイでリングに上がっているそうです。日本のスポーツ運営団体ってのは概して頭の固い連中ばかりですね。以前に西澤ヨシノリ選手の著作を紹介した時にも書きましたが、本人がやりたいといっているのに、運営団体が拒む理由はないはずです。死亡事故とか重篤な障害が残るような結果になってしまった場合の責任問題を考えてのことでしょうが、本人から念書のひとつでも取って自己責任ってことでやらせてあげればいいと思いますね。加齢による体力低下は確かに軽視できない要素の一つですが、それを補うテクニックを身につけていればなんら問題はないと思いますね。怪我で戦えなくなるなら仕方ありませんが、単にルールの壁で戦えないなんてのは愚の骨頂だと思います。

今は素直に彼のファイトを応援したい気持ちです。同じように40代を越えた身としては、彼の頑張りに奮起させられる思いですね。週末の試合を前にテンションを上げてくれる本だったと思います。
by lemgmnsc-bara | 2011-06-08 23:21 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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