2010年 11月 21日
『少女禁区』を読んだ
第17回日本ホラー小説大賞の短編賞を受賞したのが表題の作。
昨年あたりから、この日本ホラー大賞受賞作を意識して読むようになりました。『嘘神』という作品が非常に面白かったので、この賞の受賞作のクオリティーが高いことに遅ればせながら気づいたからです。
この短編集には中編といってもよいくらいの長さの『chocolate blood,biscuit hearts.』、『少女禁区』という二つの作品が収録されていました。
前者は一代で巨大な財閥を作り上げ、急死した父親の、厳格なプログラミングに則った生活しか許されない姉弟のレジスタンスの物語。父親の作り上げた組織から逃げ出し、世間の片隅に身を隠して懸命に生きようとする二人。特に姉は弟を守るために必死で行動するのですが…。結末は読んでのお楽しみ。一筋縄ではいかないエンディングです。もちろん、ホラー小説なんですから、十分に恐怖を感じることもできます。
表題作でもある後者は、設定がSFチック。人智を超越した呪力を持つ少女と、その呪力に抗うことができずに、彼女の奴隷となって仕える少年の物語。都会のような人々の結びつきの薄いコミュニティーでは呪術などというモノは御伽噺の中の存在でしかありませんが、地方の閉じられた集団の濃密な人間関係の中では、現実に作用することもあるのではないか、と思ったりもします。その地域の人々の大多数が信じているなら、それは「現実」となるからです。
少年たちが住む地域の、あるしきたりに従い、ある日少女はこの世から消えてしまい、少年はその呪術から解放されるのですが…。ま、こっちも素直には終わりません。虐げられ続けた少年の心に芽生えた憎しみとは別の感情が重要なエッセンスとなります。荒唐無稽な物語でありながら、最後は人間の心の不可思議さに帰結する…、で、やっぱり怖いです^^;。
今年の作品もなかなか読み応えありです。長編賞の作品も買ってあるので、近々読んでみたいと思います。
by lemgmnsc-bara
| 2010-11-21 22:59
| 読んだ本