2010年 08月 30日
『荒野の七人』鑑賞
いわずと知れた『七人の侍』のリメイク作品。この作品はこの作品でなかなか世評の高い作品ですね。
ただ、私はあまり面白いと思えませんでした。
最初にユル・ブリンナーエ演じるリーダー格のクリスが周囲の白い眼を物ともせず、インディアンの葬儀を強行したところは日米のヒーロー像の違いがうかがえて、なかなか興味深かったのですが、黒澤作品に観られたような、義侠心の強さとでもいうべきものが今ひとつ伝わってきませんでしたね。これもまた日米のスタイルの違いと言ってしまえばそれまでなんですが、なんだかガンマンたちがすべてカッコつけているような感じがしました。
一番違和感を感じたのは、村を要塞化する件ですね。『七人の侍』の方では、地形をしっかりと見込んだ上で、その地形にあった仕掛けを施す様が詳細に語られましたが、こちらはただ意味も説明せずに、石を積み上げたり、溝を掘ったりする程度。単に村人とガンマンたちの交流が深まる一つのプロセスとしてしか描かれていません。きちんとした仕掛けを作り上げておいた上で、綿密な作戦を立て、村人も巻き込んで村全体での戦いを演出した勘兵衛とは大違いです。実際に村を襲う無法者カルヴェラ一味は仕掛けなどまったく無視して村に入り込んできちゃいますし…。作品の深みとリアリティーに大きな差が出ちゃいましたね。
それから、菊千代に相当するような強烈な個性をもった人物が出てこなかったことも不満の一つ。人物描写があっさりしすぎなんですよね。
最後に一番の若手チコが村の娘との愛故に村に残るところも、少々興ざめ。ハリウッドお得意のハッピーエンドって奴を無理矢理当てはめてしまったことで、『七人の侍』で勝四郎が観せた、感情の深みが感じられない薄味の終わり方になってしまいました。もっとも、クリスの最後の「本当の勝者は農民たちだ」というセリフを端的に表した行動だと解釈できなくもありません。農民たちは持ち前のしたたかさで最後には何者をも絡めとってしまうのだ、ということはストレートに表現されていましたね。
やっぱりリメイク版というのは本家を凌ぐことができないのだということを痛感させられた作品だったように思います。
by lemgmnsc-bara
| 2010-08-30 19:43
| エンターテインメント