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『ブレードランナー』鑑賞

ブレードランナー 最終版 [DVD]

ワーナー・ホーム・ビデオ

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ハリソン・フォード主演の1982年の作品。あまりに有名な作品だったため今まで敬遠していましたが、「名作」と呼ばれている作品をなるべく多く観ようという決意の下、観てみることにしました。

2019年の世界が舞台。環境悪化により、人類の大半は他の惑星に移り住み、地上には絶え間なく酸性雨が降り続いています。1980年代の未来観ってのはこんな感じだったんですね。意図的に暗く描いているような気がしますな。その他にも、アメリカ映画にありがちな、アジア各国をごっちゃにしているシーン(明らかにチャイナタウンをイメージしているセットなのに日本の屋台のうどんやが出ていたり、日本語の看板が出ていたり…)や、車が空を飛んでいるというのに、テレビがブラウン管のままだったり、現時点でこれだけ普及している携帯電話を持っている人が皆無だったりと細かい突っ込みどころは満載です。「未来」の姿ってのも当時の「現実」に左右されるモンなんですねぇ。

他の惑星に移り住んだ人類はレプリカントと呼ばれる、人造人間を過酷な作業に使役していました。レプリカントは見た目は人間そっくりですが、感情がなく、死期もあらかじめ決められているという設定です。しかし、何年か生きると人間並みに知能と感情を持ち始め、自らの置かれた環境に疑問を抱き、脱走する者が現れてきます。人間と区別がつかないレプリカントを探し出し、「処分」するのがブレードランナーの務め。ハリソン演じるデッカードは、人間とほぼ等しい「性能」をもつレプリカントを処理するという仕事に疑問を抱き、ブレードランナーをリタイアしていましたが、技能の高さを買われて、4人のレプリカントが地球に侵入してきた事件を任されることとなります。

この映画のメタファーはずばり言って人種差別でしょう。奴隷制度をはじめ、白人が黒人を支配し牛馬並みに酷使したという歴史もありますし、現代においてもさまざまな形で人種差別はとりわけ西洋社会にははびこっていますな。「同じ人間なのに肌の色が違うだけでなぜ差別されるのだ?」という問いかけは、そのまま「人間と同じような体と知能を持っているのになぜレプリカントだというだけで人権が認められないのだ?」というレプリカントたちの悲痛な叫びに置き換えることが可能です。ブレードランナーを演じているのはことごとく白人ですし、レプリカントの製造元であるタイレル社の社長も白人です。レプリカントもリーダーは白人でしたが、有色人種が混じってましたし、貧困ゆえに地球から出て行けない民衆は、そのほとんどが有色人種でした。こういうところがいかにもアメリカ映画っぽいですな。悲惨な場面はすべてマイノリティーに任せておけばいいという少々思い上がった考えが透けて見えるところに少々イラだちを感じました。まあ、製作者はレプリカントに同情的な視線を投げかけることで、人種差別への疑問を呈しているといえなくも無いのですがね…。

ストーリーそのものは、単なる「虐殺アクション」モノに終わっておらず、なかなかに楽しめました。ただ、どうしても「未来観」の古臭さが目立ってしまいましたね。環境悪化は仕方ないとはいえ、もう少し、スタイリッシュな未来像は描けなかったんでしょうか。当時としては精一杯の未来像だったんでしょうけどね。
by lemgmnsc-bara | 2010-07-27 22:29 | エンターテインメント

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