2010年 01月 31日
『いけちゃんとぼく』鑑賞
西原理恵子氏の絵本が原作の映画。
小学生のヨシオのそばには正体不明の生物「いけちゃん」がつねに寄り添っています。いけちゃんはヨシオ以外には見えない存在ですが、どうやらこの世のものではないようです。小豆あらいなどの妖怪やさまざまな魑魅魍魎とともに行動するシーンも挿入されていました。
いけちゃんはヨシオの悩みを聞いたり、夢のなかで空を一緒に飛んだり、威勢をつけたりと心理面を支えますが、決して表面に出てくることはありません。いざとなれば、モノを動かすなど物理的な力を行使することも出来るようなんですが、ヨシオがたけしやヤスといったいじめっ子にボコボコにされていても助けようとはしません。その後に心理的フォローは入れたりしますがね。
毎日のようにたけしとヤスにぼこぼこにされているヨシオはなんとかこの二人に対抗するために仲間を募るのですが、親友と信じていた二人の友人は直接対決を避け、逃げまくることを選択し、ヨシオの元を去っていきます。仕方なくヨシオは牛乳屋の親父から空手を習おうとするのですが、当然のことながら一朝一夕には強くなるもんじゃありません。鬱々とした心を抱えながらボコボコにされる毎日。
そんなある日、近隣の町から不良の一群がヨシオたちの街に乗り込んできて、遊び場を独占しようとします。たけしとヤスは彼らに立ち向かうのですが、多勢に無勢で返り討ちにあってしまいます。これを見ていたヨシオは「暴力をつきつめても、やがてもっと大きな暴力に打ち負かされてしまう。どこかでこの暴力の連鎖をたちきらないといけない」と考え、この不良の一団に野球の試合で決着をつけることを提案します。
この辺が麻雀劇画っぽい展開でしたね。麻雀劇画ってのはなにかトラブルが起こるとかならず麻雀で白黒つけようって展開になりますから…。数的に圧倒的に優位な不良の一群がこの提案をあっさり受けてしまうところが少々不自然でした。
この野球の試合の中で、ヨシオは失われかけていた友情を取り戻し、たけしやヤスまでも心服させるに至ります。あまつさえ、一度は乱闘になってしまったため中断された試合をもう一度やろうと提案して、相手の不良たちとも最終的には仲良くなってしまいます。
ヨシオが一回りおおきくなって大人への一歩を踏み出したことを見届けたいけちゃんは自らの正体をヨシオに明かし、しずかに別れを告げます。その後もしばらくヨシオの姿を影ながら見守るのですが、大学生になったヨシオが彼女を作るとひっそりと消えていきます。いけちゃんの正体は…、実際の映像を見てくださいm(_)m。
大学時代に『近代麻雀』を愛読していた身としては、西原氏はギャグ漫画家というイメージが強かったのですが、ほのぼのとしたストリーテラーという一面もあることを発見した、驚きの一作でした。
by lemgmnsc-bara
| 2010-01-31 07:20
| エンターテインメント