2009年 09月 05日
『君はフィクション』を読んだ
中島らも最後の短編集と銘打たれているのが標題の書。出ると買う作家の一人ですので、早速買い求めました。
12編の短編と娘さんのあとがきが収められています。氏の多彩な知識と才能を垣間見せるように、すべての短編がそれぞれ全く異なる味わいを持っていました。
中でも次の3編が印象に残りました。
『君はフィクション』。この本の題名にもなっている作品です。性格が全く正反対な双子の二人と付き合うことになってしまった男。ある日その二人が暮らしている家に行ってみると奇妙な事に気づきます。この双子の姉妹が二人で写っている写真が一枚もないのです…。この謎の真相はいかに。
『DECO-CHIN』。中島氏のひとつの特徴である、’世間の一般常識から外れた人々’を描いた作品。インディーズのバンドについての専門誌の記者をしている主人公が、あるライブハウスで出会ったすごいミュージシャンばかりのバンド。そのバンドはすべてのメンバーがフリークスで構成されていました。その姿と演奏に惚れ込んでしまった主人公が、そのバンドに参加させてもらうために取った行動とは・・・。
『43号線の亡霊』。自転車に乗った幽霊が出ると評判の国道43号線をポルシェで毎日走る男。ある日件の幽霊が現れ、ポルシェとデッドヒートを繰り広げるが…。最後の一行で背筋がぞくっとする怪作です。
この作品集は結果として中島氏の遺作となってしまったわけですが、遺作ということだけで、氏にしてはとりたててレベルの高い作品集ではなかったような気がします。もっと長く生きてもっと数多くの作品を世に問うてほしかったですな。合掌。
by lemgmnsc-bara
| 2009-09-05 14:37
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