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『全思考』を読んだ

全思考

北野 武 / 幻冬舎

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芸人と映画監督という二足のわらじを履く北野武氏のエッセイ集。

北野氏がよく行く料理屋のご主人の語る北野武像や、さまざまなエピソードなどがちりばめられ、素の北野武氏が何を考えているのかが語られています。

私は芸人としてのビートたけしの大ファンです。特にさまざまなバラエティー番組で彼が見せる、的確に笑いを取るリアクションにはいつも感心しています。ただ単にスタジオで笑いを取るだけなら、さんまやタモリ、紳助なんかもそれなりのレベルにあると思いますが、彼のすごいところは、文章を書かせても政治問題を語らせても、的確な比喩と表現が生み出されてくるところ。決して斬新な切り口ではなく、むしろ考え方としては紋切り型のことが多いのですが、世の中の大多数の人がほぼ同じように考えていることに対して、「そうそう、こういうことだったんだよ、俺の言いたかったのは…」という言葉をずばり与えられるところが彼の卓越したところ。この「もやもやとした感情に的確な言葉を与える」という才能は他の芸人を圧倒していますし、下手な評論家よりよほど鋭いと思います。

映画については、まともに観たのが『ソナチネ』くらいしかないので具体的に語れるレベルにないのですが、おそらく人間の持つさまざまな喜びや、悲しみ、暴力性、といったことを的確に表現する映像を創っておられるのだと思います。

読んでいて一番共感できたのは「世の中は決して自分の思うとおりにはならない。ダメなものはダメと子供に教えることが親の教育でもっとも必要なこと」という考え方。北野氏自身、この考え方を自身の母親から叩き込まれたと語っています。親の言い分というのは時には理不尽(私個人的にも母親の言動の理不尽さに相当苦しめられた記憶があります^^;)だが、世の中なんてものはもっと理不尽で、自分の思い通りになんかなりゃしない。単純ですが、重い真理ですな。その理不尽さを受け入れることが大人になっていくということなのでしょうが、その理不尽さを受け入れられない「子供(年齢によるものではありません)」が多くなったと嘆く北野氏。「そうそう、そうなんだよ!」またも思わされてしまいました。

この方やっぱり私にとっては永遠のあこがれであり、一度会って直接話がしてみたい方です。
by lemgmnsc-bara | 2009-06-06 07:47 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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