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世界の危険思想 悪いやつらの頭の中 (光文社新書)

丸山 ゴンザレス/光文社

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世界各地のヤバイ場所に自ら出向いて、そこでの体験を綴った著作の多い丸山ゴンザレス氏による、ヤバイ人々に関してのルポルタージュ集。

現代の日本においては、殺人を生業とする人は半ばフィクションの世界にしか存在しませんが、世界には自らが生きていく糧を得るために殺人を犯す人間は確実に存在します。彼らにとって殺人とは単なるビジネスであり、そこには罪悪感や恐怖などの感情は存在しません。農業の従事者が作物を、屠殺業者が家畜を処理するのと同様に機械的に人を殺します。こうした人々は何故人の道から外れたような行いを仕事としているのでしょうか?

答えは実に簡単で、金が欲しいから。殺人という行為の対価として支払われるカネがなければ生活していけないからです。「平和」な日本に住む我々にとって、この問題を正面切って考えることは実に難しい。彼らを悪と断じるのは容易いことですが、殺人で身を立てるに至った原因は何か、ということを考えていくと、貧困という問題が現れ、最終的には世界全体の仕組みのおかしさへと行き着くのです。レベルは全く違いますが、昨今世を賑わせている吉本興業の「闇営業」問題と構造的には非常に良く似ています。貧しいがゆえに、手っ取り早く金を得るため、不正な方法を用いる。ではその貧しさを生み出しているものはなんだ…。一朝一夕ではとても答えは出ませんが、人間の営みは日々刻々続いていくのです。

日本にいる我々は、とりあえず食うためだけのお話ならば、世間から後ろ指を指されずに済む方法は多々あります。しかし、世界には食うや食わずの状態に置かれ、ニッチもサッチも行かない人々が多々存在しています。ありきたりですが、厳しい現実が、そこにはあるのだと思うしかありません。

他にも麻薬の取引や、売春など、国によっては合法的であっても決して「いい仕事」とは言えない仕事に従事している人々が多数登場します。

著者丸山氏は、当然のことながら、こうした危険な連中へのアプローチの際に、自らの身の危険を感じるような場面に数多出くわします。それでもなお、世界に危険な職業が存在し、その仕事に就く人間がいることへの興味を断ち切れず、彼らのフトコロに飛び込んでいくのです。

私には丸山氏のような、覚悟も度胸も機転もないのでこうしたルポは書けないでしょう。海外にはパックツアーで行き、大人しくガイドに従っているだけでもまだまだ楽しいし、何より命は惜しいので…(苦笑)。

# by lemgmnsc-bara | 2019-07-28 13:16 | 読んだ本 | Comments(0)

W杯イヤーの今シーズンの初観戦は、サントリーサンゴリアスvs日野レッドドルフィンズの一戦。日がな一日降ったり止んだりの空模様でしたが、幸いなことに試合開始少し前から、試合終了まではなんとか降られずに済みました。試合前から、一緒に観戦に行った仲間とともにビールを飲んで盛り上がりました。

昨シーズン、神戸製鋼コベルコスティーラーズに決勝でボロ負けはしたものの、準優勝だったサンゴリアスに、昨季トップリーグに昇格はしたものの、最下位に終わったレッドドルフィンズが挑むという構図の戦いです。サンゴリアスの優位は動かないだろうというのが戦前の大方の予想。

で、実際に試合が始まるとその予想通りとなりました。W杯代表チームに流主将以下有力選手を供出したサンゴリアスは、「一軍半」的なチームではありましたが、スクラムとブレイクダウンの攻防については安心してみていらる状態でした。

一方でラインアウトは大いに課題ありです。雨が降ったり止んだりという環境下で、ボールに水分が付着してコントロールがしにくかったということもあり、スローワーのボールの軌道が安定せず、せっかく獲得した敵陣ゴール前ラインアウトでスチールを食らったことが二度ほど。相手は格下と言って良いチームなのですから、トライを獲れそうなチャンスは確実にモノにしておかないと、チーム力が拮抗しているチームとの対戦では命取りになりかねません。

また、トライが個人技に頼った「力づく」のものが多かったことも不満な点です。サンゴリアスというチームのアドヴァンテージポイントは組織としてボールを保持し続ける技術とそれを支えるフィットネスだと思います。この日のレベルの相手であれば、もっとDF網を引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、最後は人がド余りして悠々とトライ、みたいなシーンを数多く作らなければいけなかったところです。相手に与えるダメージがまだまだ小さすぎですね。

レッドドルフィンズの得点は、前半の早い時間帯にPGで奪った3点のみ。残念ながら全ての局面で劣っていたと言わざるを得ません。なんとかしのいでしのいで、そこから逆襲を狙うという戦法はそれなりに効果はあったと思いますし、実際によく守っていて、簡単に取らせたトライはありませんでした。ただ、ブレイクダウンの攻防が互角であれば、攻撃側に有利だというのは自明の理。そこの部分で互角以上に戦うことができないと上位チームに伍していくことは難しいでしょう。

まあ、レッドドルフィンズは相撲で言えば、ようやく幕内に入ったばかり。横綱や大関とはまだまだ差があります。他チームとの契約が切れたベテラン選手の獲得に熱心なこのチームはベテラン選手の技術や経験値をいかに若手選手が吸収できるかが浮上の鍵です。日野市にあるこのチームのグラウンドは、雨が降ったら泥田のようになる状態の頃から(現在は素晴らしい人工芝)よく使わしてもらっていましたので、親しみを感じます。頑張って欲しいですね。



# by lemgmnsc-bara | 2019-07-27 09:25 | ラグビー関連 | Comments(0)

『利休の闇』を読んだ

利休の闇 (文春文庫)

加藤 廣/文藝春秋

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信長の遺体のありかをめぐる様々な人間模様を描いた「本能寺三部作」があまりにも有名な、加藤廣氏による千利休を主人公とした時代小説。

織田政権下で、財政面の後ろ盾となり、また「茶の湯」という文化を広める役割を担った堺衆の中では三番手だった千宗易が、頭角を現しはじめた秀吉と組むことによっていかにして商人・茶人としてのし上がっていったか、そしてどのような出来事がきっかけで秀吉と決別したのかを克明に描いています。

そもそも、私たちが歴史の教科書で習う「千利休」という名は秀吉が朝廷に掛け合って下された名前で、様々な能書きを並べて美化してはいますが、その裏には読んで字の如しの真の意味が示されているそうです。「利」を「休」め、すなわち自分の茶人としての名声を利用して茶に関するビジネスで巨利を得ることを控えろ、という意味で、千宗易の生き方が美しくないから、改めなさいという意味であったという指摘はまさに目からウロコ。いわば和気清麻呂を別部穢麻呂と改名させたに等しい扱いだったというわけです。

実際に利休という名を賜った頃には秀吉と宗易は、表面上は茶の湯という文化に対する理解の違いで、裏では秀吉の政治的な思惑から、すでに「破局」しており、宗易は各地の有力大名に対し、自分を庇護してくれるよう、しきりに働きかけるのですが、宗易のこうした行動が、より秀吉の猜疑心を掻き立てるという悪循環を生みました。

特に、表面上忍従していても、決して油断してはならぬ相手と秀吉が認識していた伊達政宗との書簡のやりとりや、茶の湯を通じての交流が秀吉の怒りを買ったとのことです。

侘び寂びを最上の価値と考える宗易に対し、最下層から関白にまで成り上がり、全面に金箔を捺した茶室を建てたり、庶民までもが参加できる茶会を開くなど派手好きだった秀吉との価値観の違いばかりが強調される両者の対立構造ですが、その他にも秀吉がその権威を最大限に利用しようとしていた朝廷が宗易を快く思っていなかったり、茶の湯を最高権力者の専権事項として「プレミアム体験化」しようとしていた秀吉の思惑に反して、宗易が各地の有力大名に勝手に茶の湯を教授したことなど、まあ、大小様々な対立が積み重なっての決裂だったことが事細かに解説されています。秀吉が処刑したくなるのも無理はないな、という事象の積み重ねではあります。

加藤氏は、この作品を、もともとは「本能寺三部作」の何処かにエピソード的に挿入するつもりだったとのことですが、到底サイドストーリー程度では収まりがつかない内容でした。独立した作品にして正解だったと思います。



# by lemgmnsc-bara | 2019-06-24 13:20 | 読んだ本 | Comments(0)

『座頭市あばれ凧』鑑賞

座頭市あばれ凧 [DVD]

勝新太郎,久保菜穂子,渚まゆみ,五味龍太郎,中村豊/角川書店

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日本を代表するダークヒーロー座頭市シリーズ第七作。古いBlu-Rayディスクの中身を確認している最中になんとなく観始めてしまい、そのまま最後まで鑑賞。

内容的には、典型的な勧善懲悪モノ。富士川の両岸を挟んで対立する津向の文吉一家と竹居の安五郎一家の抗争にひょんなことから巻き込まれた座頭市が、安五郎の汚いやり口に怒りを爆発させ、安五郎以下一家のほぼ全員を斬って斬って斬りまくって大団円というのが筋立て。まあ、これは観る前から予想がついていたことでした。このテのシリーズモノはいかに敵役を憎々しく描き、観衆の反感を高めるかにかかっています。観客の反感が目一杯高まったところで、座頭市の華麗な刀さばきでスカッとして映画館を後にするってのが、この映画が製作された時代の人々に人気のストレス解消法だったのでしょうね。

まだ他の作品をまともに観たことがないので、このシリーズに対しての最終的な感想ではないのですが、シリーズも7作目ともなれば、観客を「煽る」手段も限られてきてたんでしょうね、ってのが素直な感想。「偉大なるマンネリ」と呼ばれた水戸黄門シリーズなどの人気が高かった当時であれば、座頭市というお世辞にも品行方正とは呼べないダークヒーローは、毛色が変わっていて、それなりに楽しめたのだと思いますが、先に「必殺シリーズ」にハマってしまった私としては、古臭いなぁという感想しか浮かんできませんでした。まあ、ダークヒーローを主役に据えたのはこちらのシリーズが先なのですから、そういう意味では革新的だったのでしょうけど…。

当時の規制状況を正確に反映して「ドめ○ら」とか「ど○り」(敵役の安五郎は吃音者でども松というあだ名までつけられてました)とか、身体が不自由な人々に対しての差別的な表現がぽんぽん飛び交ってました。普通の人でも、ある人間に怒りを覚えたて感情のタガが外れてしまえば、まず最初は、その人間が持つ「標準体」より劣る部位を嘲る言葉を発するのはある意味自然なことだと思うのですが、最近では、そういうシーンでは不自然なほど巧みにそうした表現は避けられますね。そういう不自然さが、「忖度」とかと結びついて、言論の自由みたいなものがだんだん狭められていくという過程を垣間見た気がしました。そういう意味においては製作者の意図とは別に、現代社会における問題点を浮き彫りにした作品だったですね。



# by lemgmnsc-bara | 2019-06-22 20:16 | エンターテインメント | Comments(0)

『ホステージ』鑑賞

ホステージ(Blu-ray Disc)

ブルース・ウィリス,ケヴィン・ポラック,ジョナサン・タッカー/松竹

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ブルース・ウィリス主演のサスペンスアクション。

主人公タリーはとある田舎町の警察署長。そこに赴任する前はロスアンゼルス市警で敏腕の交渉人として活躍していたという設定。数々の難事件を解決はしてきたものの、ある人質立てこもり事件で、人質になった子供は死亡、犯人も自殺という事態を引き起こしてしまい、自ら志願して田舎町に赴任したということになっています。

まあ、ここでタリーがのんびりと暮らしながら、時折事件を思い出しては心の痛みを感じる程度のお話では流石に映画にはなりません。田舎町随一の資産家で会計士のスミス親子三人を人質に、不良三人がその邸宅に立てこもるという、交渉人が必要とされる典型的な事件が発生することで、ストーリーが展開していきます。そこで、タリーが見事に犯人を説得してメデタシ、メデタシ、となってはやはりお話は盛り上がりません。

事件の現場に向かうタリーは、いきなり黒覆面の集団に拉致されスミスの家から、あるDVDを秘密裏に奪還してくることを命じられます。タリーと妻と娘を人質に取った上でのお話です。

というわけで、スミスの身辺がキナ臭いことを、同僚たちには隠しながら、すなわち孤立無援の状態で、人質を無事に解放させ、さらにDVDは奪還しなければならない、という、実現可能性が限りなくゼロに近いミッションがタリーに課せられることとなります。

率直に言って、ブルース・ウィリスの代表作、『ダイハード』そのまんまです。TBSの『高校聖夫婦』をフジが『青い瞳の聖ライフ』という名でパクって以来の、換骨奪胎ぶり。違いはドンパチのシーンの多寡くらいです。ブルース・ウィリスに対して観客が持っているであろうイメージと、主人公タリーとのキャラの乖離こそほとんどなかったとは思いますが、ストーリーが本当にそのまんまで、「本当にこんなお話でいいの?」って疑問ばかりが頭に浮かんできちゃってどうしようもありませんでした。『ダイハード』シリーズそのものがすでにマンネリ化していて客の入りが悪いってのに、こんな「代替品」がウケるわけはないですね。少なくとも私は思いっきりゲンナリしました。

この作品は、BSで放映していたやつを録画して観たのですが、劇場でのチケット代はおろか、旧作レンタル代の100円すら払うのは惜しいという程度の作品でした。



# by lemgmnsc-bara | 2019-06-09 17:25 | エンターテインメント | Comments(0)

ミッドナイト・ジャーナル (講談社文庫)

本城 雅人/講談社

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新聞記者出身である本城氏が、自らの体験をもとに新聞記者の生々しい姿を描いた一作。

俗にマスコミは、「立法・行政、司法」の三権に次ぐ第四の権力などと言われるくらい、大衆に対して影響力を持ちます。ネットの速報性に押されて、部数こそ落ちているものの(当家も「紙」の新聞は購読せず、ネットで紙面を読む契約に変えました)、まだまだその影響力は強力で、新聞の報道がきっかけで隠れていた問題が表面化したり、人々の意見が大幅に変化したり、という例は枚挙にいとまがありませんね。世論調査や政治、経済、社会など各分野に存在する問題点のえぐり出しなど、新聞の果たす役割は決して小さくなってはいません。

一方で新聞には、現実に起きたことを「正確」に伝えるという使命もあります。ジャーナリズムを論じる際に常に問題とされるのは「客観報道」の是非です。客観報道とは、主に警察など公的機関の発表を根拠とした「事実」を報道すること。お上の言ったことについての責任はお上にあり、法的に正しい手続きに則って発表されたことなので「正しいことと」として報道して良い、という姿勢です。私のような門外漢でも発表されたことを鵜呑みにすることに関してはかなりの危険性を感じるのですが、例えば小さな交通事故などの報道に関しては。人手などの問題もあり、警察の発表を「事実」として報道することが大半です。

この物語の登場人物たちは、女子児童連れ去り殺人事件に関し、誤報を流してしまった過去を持つ記者たちです。三人の女子児童を殺害した犯人が四人目の凶行に及んだと報道したのですが、実は四人目は生きていました。社会からは誤報を叩かれ、無事帰還した女児の家族からは面罵されるという屈辱の日々を送りながらも、その誤報に関わった記者たちは、事件発生当時の目撃証言から、死刑が確定し、執行された実行犯とは別にもう一人共犯者がいたという可能性を追い続けて行くのです。

関係者たちは責任を取らされ、それぞれが左遷されて冴えない日々を送っていますが、そんなある日、当時と同じような手口の女児連れ去り未遂事件が発生します。いわゆるミステリーと同様の手法で、一見完璧に見える事象の本の小さなほころびに気付くか否か?そしてそのほころびをどう解釈して事件に結びつけて行くのか、というストーリーが展開する中で、同時に記者がどのように性根を据えて事件の関係者たちの懐に飛び込んで行くのか、という人間味溢れる「現実」も読み込むことができます。このミックス加減が実に巧みで、ついつい読み進めさせられてしまいました。なかなか読み応えのある一冊だったように思います。



# by lemgmnsc-bara | 2019-06-09 11:59 | 読んだ本 | Comments(0)

『万引き家族』鑑賞

万引き家族 通常版Blu-ray(特典なし) [Blu-ray]

リリー・フランキー,安藤サクラ/ポニーキャニオン

スコア:



カンヌ映画祭のパルムドールをはじめ、国内外で数々の賞を受賞したのが標題の作。

描かれる「一家」は祖母、両親に一女一男の五人家族。収入は祖母の年金と父の肉体労働、母のパートづとめから得ていますが、それだけでは生活を維持できないため、足りない分は万引きで補っている、という設定です。

とある日の「万引き」帰り、父と長男はマンションのベランダの隅で震えている少女を見つけます。少女が放置されている姿を何度も見ている父親は少女を家に連れ帰ります。決して善人であるとは言えないが、困っている人を見過ごすことの出来ない人の良さを持ち合わせた男であるという設定がすんなり頭に入ります。

家に帰ると、他の家族たちは少女をすぐに家に返してくるようにと文句を言い、実際に父と母とで返しに行くのですが、少女の自宅から男女が激しく言い争う声が漏れ聞こえ、母親の方が、少女をそのまま自宅において帰ることができなくなり、結局一家に連れ戻ります。こうしてこの一家に末っ子が増えることになります。

この辺りから、観ている人は「家族」って一体なんなんだろうという素朴かつ、根本的な疑問を感じざるを得なくなります。血の繋がった実の親子ですら、親が幼い子供を虐待したり、逆に老齢の親を子供が殺害してしまったりという悲惨な事件が多発していますね。一つ屋根の下で、寝食をともにしてはいても心はバラバラという集団は思いの外多く、さらにこうした集団は増大、深刻化の一途を辿っているように思えます。

昨今の実社会の崩壊しはじめた家族に対し、この一家は、実は血のつながりも、法的な親族関係も全くない「他人同士」の集団であるというのに、心の結びつきがはじめにあり、実の家族以上に家族らしい共同体として機能しているのです。様々な事情があるとは言え、家族という与件が希薄化していると感じている人が多いからこそ、この一家の関係性が多くの人々の感動を呼び起こしたのでしょう。

この家族の心の結びつきは強固でも、法律的には綱渡と言って良い危うい生活は。「妹」に万引きをさせたくないという「兄」の行動から一気に崩壊します。それぞれのメンバーが「法的」に正しい場所に配置されるのですが、全員が全員少しも幸せそうではないところに、この一家はいかに法律的には正しくない集団ではあっても、そこに属する人間たちにとっては確かな居場所であったことが示されるラストは、ややベタな描写ではありますが、感動的でした。何かと言うと、離婚した夫婦が登場する欧米諸国でのウケが良かったのも良くわかるお話ですし、家族というものの概念が揺らぎはじめた日本社会への警鐘としても優れていた作品だったと思います。

# by lemgmnsc-bara | 2019-06-01 10:56 | エンターテインメント | Comments(0)

ボヘミアン・ラプソディ 2枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]

ラミ・マレック,ルーシー・ボーイントン,グウィリム・リー,ベン・ハーディ,ジョセフ・マッゼロ/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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昨年の映画界の話題をかっさらい、フレディー・マーキュリーを演じたラミ・マレックがアカデミー賞の主演男優賞に選出されるなど、名実ともに大ヒットした作品。

伝説と言われるほどのロックバンド「クイーン」がスターダムにのし上がる姿を、リードボーカルのフレディー・マーキュリーを中心に据えて描いた、ドキュメンタリー的な一作です。

ストーリー的にはさほど複雑ではありません。ひょんな事から、バンドを結成し、フレディーのあふれんばかりの才能でヒット曲を連発し、一気にブレイクしたクイーン。しかし、フレディーは自らがゲイであることで、最愛の妻メアリーに去られ、果てしない孤独感に苛まれることになります。そしてその寂しさゆえに、ブレイク前の彼らを支えたスタッフを次々とクビにしたり、バンドのメンバーともギクシャクした関係となります。こうしてますます孤独感が募り、酒に溺れて手当たり次第にゲイの相手を明後日は関係を結ぶという荒れた生活を送ることとなります。で、当時世界的に流行し始めていたエイズに罹患し、世を去ることになる、というのが大まかなストーリー。

こういうお話は何もショービジネスの世界に限ったことではなく、どんな分野にでもあるものではないでしょうか?成功した人間には、お追従を駆使して取り入り、なんとかそのおこぼれに預かろうとする人間が群がります。そしてそんな連中に散々に甘やかされた成功者は諌めてくれたり、叱ってくれたりする「本当に大切な人間」を次第に遠ざけるようになります。そのうちに才能までが枯渇し、落目になると、金の切れ目が縁の切れ目とばかりに周りから人間が一気にいなくなる。そして、酒とか性欲とかドラッグなんかに依存していき、しまいには死んでしまうという絵に描いたような転落ストーリー。人物、時代などを変えて何度も芝居や映画のネタにされている物語ですが、それだけ病巣が深く、程度の差はあれ、誰しもが落ち込む危険性を持ち合わせているがゆえに何度でも取り上げられるのでしょう。

さて、フレディーはエイズによる肺疾患の影響と長年の不摂生で、往年の美声を出せない状態になっていたのですが、アフリカの飢餓を救うために当時の英国のアーティストたちがほぼ全て出演した伝説のイベント「ライブエイド」に出演するため、文字通り最後の力を振り絞ります。このシーンは、実にリアルな迫力がありました。観客の「本物」の感動を画面のこちら側でも素直に共有できました。『伝説のチャンピオン』を聴衆とともに大合唱するシーンなどは皮膚に粟を生じたほどです。このシーンだけでもラミ・マレックが数々の映画賞の主演男優賞を受賞するに十分だと思えるほどです。

映画・ドラマ・CMなどでクイーンの楽曲を耳にする機会は多々ありますが、このことはクイーンの作り出した音楽が後世に「20世紀のクラシック」として生き残り続ける可能性を示唆するものだと思います。フレディーの遺志はエイズ患者を救うための財団という形で受け継がれてもいます。



# by lemgmnsc-bara | 2019-06-01 10:28 | エンターテインメント | Comments(0)

エージェント・マロリー [Blu-ray]

ジーナ・カラーノ,マイケル・ファスベンダー,ユアン・マクレガー,ビル・パクストン,チャニング・テイタム/東宝

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どこで放映されていたのを録画したはいいが、保存しておいたBlu-Rayが使い回しだったために、途中で再生不能となり、中途半端に観たものだから結末が知りたくなって借りてきてしまった一作。

ストーリーは、スパイ物にはよくありがちな展開。主人公マロリーは米海兵隊出身の凄腕のエージェントで、現在は民間の諜報会社でスパイとして、危険で荒っぽい仕事をしています。で、とある事件に絡んでジャーナリスト依頼を受けて、首尾よく任務を果たして、次の任務に取り掛かったら、派遣先でそのジャーナリストが殺されていて…。誰が敵で誰が味方かわからない状況の中、マロリーは単身で組織とその後ろに控える依頼主に迫っていく、というのがサマリー。

実はこの作品はストーリーを楽しむものではありません。主人公マロリーを演じたジーナ・カラーノを鑑賞するための作品なのです。とは言っても別にオケべなシーンが満載というわけではありません。ジーナは、総合格闘技のチャンピオンなのです。で、その特長を活かした戦闘シーンが実に見事。

自分より体格的にまさる相手に対しては、関節技や絞め技が有効だという戦い方に実に忠実で、柔道で言う所の崩し、すなわち自分が技をかけに行くためにいかに相手の体勢を技をかけやすいよう崩すかが見事なのです。段取りをつけたスタントであってもこうはうまくいかないだろうな、というシーンが随所に見られます。さすがは総合のチャンピオンです。マウントポジションを取って、男をボコボコに殴りつけるなんていうシーンもあります。それを不自然に感じさせない「実力」の持ち主だから、文句のつけようもありません。いかにも華奢なおねーちゃんが大の男を投げ飛ばして当身一発で悶絶させるというような、絵に描いたような演出でないところは流石です。

残念ながら、この方、この作品しか映画には出ていないようですが、もう一作くらいは、戦闘能力を遺憾なく見せつけるような作品に出演していただきたいものだとは思います。

# by lemgmnsc-bara | 2019-05-25 11:52 | エンターテインメント | Comments(0)

『首都崩壊』を読んだ

首都崩壊 (幻冬舎文庫)

高嶋 哲夫/幻冬舎

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題名から『日本沈没』のようなパニックストーリーを想像していた(多少はパニックの描写もあります)のですが、さにあらず。現代日本への警鐘と、ネットが発達しすぎた社会における「噂」の怖さをうまく表現していた作品でした。

主人公森崎はアメリカの大学の留学経験のある国交省の官僚。冒頭は森崎の友人である地震学者の前脇の驚愕と苦悩の描写から始まります。5年以内に首都東京を直下型の大地震、それも東日本大震災を上回る規模のものが襲う確率が90%以上あるという恐るべき予測が、彼の研究により導き出されたからです。以前の復興担当大臣で「地震が起こったのが東北でよかった。東京の近辺で起こったら被害はより甚大だった」と発言して世を騒がせた人物がいましたが、発言の是非はともかく、東京を大地震が直撃したら、日本の政治経済その他あらゆる活動が麻痺するであろう事は事実です。一極集中の弊害の最たるものですね。

しかしながら、大地震の発生の前に、日本はすでに破滅へのカウントダウンが始まっているとするのが、この作品の設定。国としての借金が、収入の倍以上あるという異常な状況を、本格的に問題視し始めた世界の投資家、投資機関たちが日本の国債を大々的に売りに出すというムーヴメントが起こり、株価は暴落するわ、円は乱高下するわで、まさに日本経済は大混乱。「これだけの状態になっても、日本人は根拠のない『何とかなる』という姿勢を崩さない」という森崎の留学時代のルームメイトにして、現在はアメリカの官僚であるロバートの言葉がチクリと胸を刺しました。

最後は国がなんとかしてくれるさ、と民間は高をくくっていますし、国の役人や政治家は、ヤバいことは先送りにして「今」だけをしのぐために国民に阿る場当たり政策を繰り返す…。まさしく今の日本の姿そのものです。見事な風刺と見るか、現実を正確に描写していると取るかは各人のご判断ですが、いずれにせよ、現状の日本が少なくとも良い方向に向かっているとは到底思えませんね。

こうした状況に乗じて、日本を手中に収めようと伸張してくる中国と、中国の動きを牽制したいアメリカの動きに翻弄される日本の政治経済。そして東京に忍び寄ってくる直下型大地震。ここで出てくる起死回生の策が首都移転と道州制の導入です。

俗に「世の中を変えるものはよそ者と若者、そして馬鹿者だ」などと言われています。この場合よそ者とはアメリカと中国、若者は主人公森崎をはじめとする首都移転遂行チームの若手官僚たち、馬鹿者は首相の能田となりますかね。首相が馬鹿者であるというのは現実の正確な反映でしょうか(笑)?いや、能田を突き動かす最大のモチベーションとなっているのは「遷都をした首相として歴史に名を残す」という功名心であるからです。念のため。

移転の話が表面化してくると、首都圏の住民やそこを地盤とする各カテゴリーの議員たち、果ては右翼団体に至るまで大小様々に反発を生みますが、能田首相は先に挙げた「最大のモチベーション」の為に、首都移転を推し進めていきます。この過程における描写の中で、「東京を首都と定める法的根拠はない」という意外な事実も紹介されています。江戸時代の中心であった江戸という都市に、たまたま明治維新の最高権力者である天皇が住むに値する江戸城という建築物があり、そこを居所に定め、その後に、政治の中心となる建物ができてそのままの流れで「首都」並びにそれに付随する機能を持つに至っただけで、「首都は東京でなければならない」という法律はないのだそうです。へぇ〜。じゃ、然るべき措置(国会での決議)さえ取れば首都って移転できるんだ、ってのが正直な感想。

「平城、平安、鎌倉、室町、大坂、江戸と歴史の転換点では必ず首都は移転した」という史実の指摘にも、なるほど、と改めて納得。現実に即していうと、先日の新元号発表とセットで移転を発表するか実施するかしていたら、新時代というに相応しい政策になったかも知れませんね。まあ、上皇の生前退位が決まってから新元号になるまでの間では到底準備しきれなかったでしょうし、そもそも首都を移転させようなどという発想がなかったでしょうけど。

さて、作品中では動き始めた首都移転計画。新しい首都はどこなのか?そして首都を移転した後の日本はどのような姿になっていくのか?東京を襲うとされる地震は…?結末については是非とも本文をお読みください。

どんなに大きなムーヴメントであっても、根本的なところの出発点は個々人のモチベーションであり、その人間に近しい人間との関係性にあるのだ、ということを描いたラストはなかなか秀逸なものだとだけ述べておきます。場所云々はひとまずおいておいて、首都の移転については本気で考えて見ても良いのではないか?という気はします。少なくとも直下型の大地震が襲ってきてから後悔するよりはマシなのではないでしょうか。

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# by lemgmnsc-bara | 2019-05-25 08:48 | 読んだ本 | Comments(0)

スポーツ開幕企画!応援しているチーム&気になる選手教えて!

何と言っても、ブレイブブロッサムズ(ラグビー日本代表)です。

何しろ、アジア地区で初の開催となるW杯イヤーなのですから。今年応援、注目せずしていつするんだ、ってくらいのもんです。

前回2015年にイングランドで開催されたW杯では、優勝候補の一角だったスプリングボクス(南アフリカ代表。一時、オールブラックスに勝ち越していたのは世界で唯一このチームだけでした)を破り、今世紀最大の番狂せとして世界を震撼させた、我がブレイブブロッサムズが、目標としているベスト8入り(=予選突破)できるか否かが最大の興味の焦点です。

是非とも目標を果たしていただきたい。というよりは果たさざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。2020年をもって日本代表に準ずるサンウルブズをスーパーラグビーから除外するとの報道がなされたからです。ここでスーパーラグビーの経営者たちの意向を覆すためにも、また、国内に、サンウルブズの参加を継続させるべしという世論を巻き起こさせるためにも、ベスト8は必要条件ですし、欲を言えばそれ以上のステージへの進出をお願いしたいところです。

とはいえ、予選だって楽々通過できるほど甘くはありません。同じプールに属する優勝候補の一角アイルランドはここ3年で二回もオールブラックスを破っていますし、2015年にも対戦して大敗を喫したスコットランドも全力で向かってくるでしょう。W杯を最大の舞台としてスター選手を総動員するサモアだって決して気を抜けない相手だし、一番分が良さそうなロシアも、昨年のテストマッチで日本を追い詰めた戦法をもっと突き詰めて挑んでくるでしょう。全勝してもおかしくない反面、全敗する可能性だって大いにある、というのが今の状態です。

とにかく今欲しいのは勝利という結果だけ。選手の皆様にはこの試合で死んでもいいくらいの覚悟で毎試合臨んでいただきたいし、我々も全力で応援したいと思います。

気になる選手は、福岡堅樹選手ですね。ジャパンを代表するスピードスターであり、この大会を最後に医師の道へと進むため、一線からは退く意向も示しています。彼が有終の美を飾ることを期待したいですし、彼がデイフェンスにばかり向かうようではブレイブブロッサムズの勝利はおぼつきません。相手を振り回すだけ振り回して、最後は大外を胸のすくようなスピードで駆け抜けてトライゲット、なんてなシーンをどれだけの数見せてくれるのか?今はとにかく期待だけしておこうと思います。

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# by lemgmnsc-bara | 2019-04-14 21:26 | ラグビー関連 | Comments(0)

ちょっとばかり思い出話

平成を振り返る!思い出ベスト3を教えて

先ごろ、新元号「令和」が発表されましたが、何かの終わりが近づくと、このテの企画多くなりますね。最近、あんまり本も読んでないし、映画も観てないのでたまにはこういう企画に乗ってみようと思います。カウントダウン方式でいきます。

第3位 東日本大震災
発生した2011年3/11は金曜日で、発生時刻は3時少し前でした。翌日からの連休のことを考えて、少々浮き足立ち始めていた時、長く、強い地震が襲ってきました。それまで鼻歌交じりで参加していた避難訓練で習った「机の下に身を隠す」というのを初めて実践しました。当時私は工場勤務でしたが、工場の「緊急事態」アナウンスは流れるは、サイレンが鳴るわで、あれよあれよというまに、非常事態になっていた、というのが正直な感想でした。「こんなことって本当にあるんだ…。」、最寄り駅では電車の運転再開の見込みが立たず、電灯も消されたまま、駅前ロータリーにはタクシー待ちの人の列が文字通り十重二十重していましたが、肝心のタクシーは一向に来る気配なし。しばらく駅近くのファミレスで状況の変化を待ちましたが、時間の経過とともに混乱に拍車がかかってきているような状態でしたので、自宅まで、20数キロの距離を歩くことを決意。しかし、最高権力者様は都内の某所に出かけていてそこで震災にあったために、区民会館のようなところに避難しているとのメール。途中でそちらに方向転換したはいいが、数週前に初めて導入したスマホの電池が切れて連絡不能。ようやくスマホが売りに出された時期だったので、充電器などはコンビニにも売っておらず、標識を参照しながら、知っていそうな人に道を聞き聞き、2時間近くかけて区民会館に到着。その後、動いた地下鉄に散々待たされた上にぎゅうぎゅう詰めにされて乗り込んで、深夜にようやく帰宅。家の中はしっちゃかめっちゃか。翌日、スーパーの加工食品の棚から、インスタントラーメンやレトルト食品の類が一気になくなりました。

あれからはや8年。つい先日訪問した釜石市には、いまだに当時の爪痕が残っていました。築いてきたものは一瞬で崩れるが、再建するには旧に倍する時間が必要。改めて亡くなられた皆様のご冥福をお祈りいたします。

第2位 就職、そして…。
私の就活の時期は、バブルの最後の残り火が燃えているころで、超売り手市場。高望みしなければ、大抵の企業からは内定がもらえた時代でした。私はマスコミ志望でしたが、その希望は通らず、某製造業に就職。数々の挫折を経て、それなりに実績をあげたところで、いきなり僻地に島流し、そこで鬱を得て、今に至ります。この駄ブログを読んでいただければその詳しい内容やら、恨み言は腐る程投稿しておりますので、過去ログを読み返してみてください(笑)。総合的に考えて、私は今の会社を選択したことは間違いだったと思います。まあ、私が本当にやりたいことを気付かせてくれた、という皮肉な効果はありましたが…。今は、なるべく自分のエネルギーを消費せずに、もらうものだけは一円でも多く、ということだけを考え、すぐにでも辞められる態勢を整えるべく努力しているつもりです。最近ちょっといろんな意味でサボり気味ですがね(苦笑)。

第1位 結婚
伴侶である最高権力者様と結婚したのが21年前。なんだかんだで21年持ってしまって、別に今のところ亀裂も生じていません。おそらく、このまま私が死ぬまでは夫婦関係は継続していくと思っています。少なくとも私の方は(笑)。すでにお互いがお互いを水とか空気と同じ存在であると認識していると思っております。少なくとも私の方は(笑)。

最初意気込んで描き始めた割に、後半は少し疲れて端折っちゃいました。まあ、不都合がないわけではないけれど、概ね「普通」に暮らせていることが、最大の出来事だってことなんでしょう。




# by lemgmnsc-bara | 2019-04-07 14:12 | 雑談 | Comments(0)

本当は怖い日本の神さま (ベスト新書)

戸部 民夫/ベストセラーズ

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井沢元彦氏が常々自らの著作で述べられている通り、日本人の心根に脈々と息づいているのは祟りへの恐れです。崇道天皇社をはじめとして、全国各地に御霊社と呼ばれる神社が多々あります。現世に恨みを残した人間が、超自然現象を以って現世に祟りをなす、という図式は、歴史的にかなり広く受け入れられていた「信仰」でした。

しかし、そこでただ単に、ほめたたえ、崇め奉るのみに終わらないのが日本人のしたたかさ。天変地異を起こすほどの力を災いではなく、人々の幸福の方に用いてくれたら、さぞかしご利益があるだろうとして、いつの間にか、周辺住民の信仰の対象となっていく逆転現象が起こります。時の朝廷に対して謀反を起こした、大犯罪人である平将門を祀る神田明神など、周辺の大企業の幹部が、年始になると必ず神妙な顔をしてこうべを垂れてお祓いを受けていたりします。例えば仏教などでも、インドの土着の神であった「天」や「明王」と呼ばれる存在を自分の宗派に「帰依」させ、守り神として位置付けていたりもしますが、多神教の日本ではその序列は緩やかで、ある神が別の神を明確に下に従えているような例はあまりなく、それぞれの神々は神社単位でオンリーワンの存在に近いものとなっています。

標題の書は、現在神社に祀られて、ご利益をもたらすと進行されている神様が、実は恐ろしい存在であったのだ、という伝承を紹介したもの。各々の神様が、本来はどんな暴れん坊であるかを解説し、そこから転じて、神に祭り上げられた現在ではどんな役割を担うのかについても詳説しています。

どの神についても共通しているのは、敬って奉っているからこそご利益をもたらしてくれるのであり、一度その逆鱗に触れたら、とてつもない災厄をもたらす存在だということ。近所に対しては人当たりが良くても、ちょっとでもトラブルがあれば、たちまち本性を露わにする反社会的勢力の皆さまみたいですね(笑)。

現代のように、特に都市部における、地縁も血縁も檀家も氏子もない状態の場合、知らずにある神様の神域を犯していたり、罰当たりな行為をしていたりということは多々考えられます。体調が悪かったり不運が続いたり、なんてのはもしかすると、どこかの神から罰が当てられているのかもしれません。だから、そういう祟りを祓うために印鑑か壺を買いなさい、ってのがカルト教団の典型的な手口ですが、こういう悪がはびこることこそ、神が人間に与えたもうた罰なのかもしれませんね。とりあえず、軽々にポイ捨てしたり、立ち小便したりするような無作法はしないよう心がけたいと思います。森羅万象全てに神が宿る、というのが日本人の根本的な考え方のはずですから。



# by lemgmnsc-bara | 2019-04-07 13:38 | 読んだ本 | Comments(0)

信長になれなかった男たち 戦国武将外伝 (幻冬舎新書)

安部龍太郎/幻冬舎

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戦国時代を含む、安土桃山時代から題材をとった歴史小説の多い安部龍太郎氏の、いわば「ネタ本」エッセイ集。戦国時代を制覇仕掛けながら、腹心明智光秀の謀反に倒れた織田信長とその後を襲った豊臣秀吉、そして、当時日本の中心であった京都近くに領地を持ちながら、信長のような「覇権ロード」を歩むことのできなかった大小様々な戦国大名についてまとめた一冊です。上杉、武田といった超メジャーな大名も、この本を開くまで私が全く知らなかったような方も同じような紙幅を割いて紹介しています。

戦国時代…、濃いキャラクターが、それこそ綺羅星のごとく登場した時代でしたね。大抵の人はその誰かに、自分の姿を投影し、事と次第によっては俺だった天下を取れたかもしれない、って妄想をたくましくする時代ですね。私もご多聞に漏れず、私もいろいろな武将に自分を投影して、自分だったら様々なシーンにおいてどのような行動をとっただろうか、という空想の世界に遊んだことは多々あります。最終的には隆慶一郎氏の小説ならびにその小説を原作としたコミックの影響で前田慶次になってみたいという結論に達しました。戦いには滅法強い上に、詩歌や茶道を嗜み、古典の文学にも明るいという教養の高さを併せ持ち、前田利家だろうが、豊臣秀吉だろうが、死を賭してまで己の意地を貫き通す。私には慶次の持ち合わせた戦闘力や教養の高さもないので、実際には無理なオハナシなのですが、だからこそ憧れるんです。ついでにいうと、年齢的にちょっと無理だったかもしれませんが、本能寺の変の際に信長の側にいて、一人でなみいる敵をなぎ倒し血路を開いて信長を逃し、彼が天下を取るまで仕えたかったなどと勝手に想像を膨らましました。まてよ、本能寺で弁慶の立ち往生よろしく華々しく散るってのもいいな。なんてな、バリエーションはいくらでも考えられます。

さて、この本で取り上げられた人物で特に印象深かったのが九戸政実と宇久盛定。

九戸政実は高橋克彦氏の小説『天を衝く』で既知の人物でしたが、安部氏もまた彼を主人公とした小説を構想しているようです。上梓された是非読んでみたいですね。天下統一目前の豊臣秀吉に対して牙を剥いた最後の武将。圧倒的に不利な情勢下で、あえて時代の潮流に逆らった武門の意地ってやつにシビれます。

長崎の五島列島を拠点とし、中国の海商王直と関係が深かったという宇久盛定は、この本で初めて知った人物です。当時の五島は東南アジア貿易の中心地として栄えており、種子島以前に初めて日本に鉄砲が伝来したのは五島だという史料があるという指摘は新鮮でした。また海外との貿易で得られる利潤が莫大なものであったということにも改めて驚かされました。戦国時代というととかく農地となる土地の奪い合いというイメージがあったのですが、実はコメの取れ高以外にも、貿易や商流を押さえる事で財力を蓄え、そこから兵力を整えていったものこどが覇権を握ったのだという指摘にも唸らされました。織田信長の父、信秀は現在でいう中部地方から畿内に流れる商流の利権を握っており、信長の挙兵はここから得た収益に裏打ちされたものだったという指摘はまさに目からウロコが落ちる思いでした。

海外との密貿易で栄えていたであろう宇久氏が、歴史の表舞台に出てこなかったのはなぜか?明による盟友王直への取り締まりと、それに連動した大友宗麟からの攻撃にあって勢力を拡大することができなかったからです。多分これに似たような事態は戦国時代のここかしこで起こっていたはずで、その動きの中で埋もれてしまった人物には、より良く世を治めることのできた人物がいたのかもしれません。果てしないロマンに思いをはせることのできた一冊でした。



# by lemgmnsc-bara | 2019-03-23 09:08 | 読んだ本 | Comments(0)

カメラを止めるな! [Blu-ray]

濱津隆之,真魚,しゅはまはるみ/バップ

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最初はごく限られた小さな映画館だけでの上映だったものが、いつの間にか口コミで評判が広がり、上映館数、上映日数ともにどんどん広がっていったインディーズ作品。レンタルショップで衝動借り(その1週間後には地上波で放映されてたりしました…)。借りる前の週に『アド街ック天国』で水戸が特集されており、その中でこの作品の舞台となった浄水場跡が紹介されたことも「衝動」に拍車をかけてました。

インディーズ作品だけあって、有名な俳優(名前を聞けば、あ、あの人かとすぐに思い出せる人)は全く出ておらず、技術にも舞台にも必要最低限のコストしかかけていませんが、以前三谷幸喜氏の『12人の優しい日本人』を観た時と同じ感想を持ちました。「映画の出来を決めるのは、キャストでもコストでもない」。ちょっとググって調べてみたら、映画評論家の町山智浩氏は「三谷幸喜を真似ようとしたら三谷作品より面白くなった」という感想を述べたそうです。

さて、ストーリーは劇中劇である『One Cut of the Dead」の撮影シーンから始まります。この劇中劇はゾンビ映画なのですが、現場となった浄水場跡地には、かつて日本軍が死者を蘇らせるための実験を行なっていたという噂があるという設定がなされており、そしてその噂は実は実話で、ゾンビ化したスタッフたちが、ゾンビ化されていない人々を追いかけまわすというベタなゾンビ映画ストーリーが展開されます。ここで終わってしまえば単なるゾンビ映画ですが、実はここからがこの作品の本筋。

地上波で放映された後とはいえ、ネタバレは回避したいので詳しいストーリー紹介はしませんが、劇中劇の中で、様々に仕掛けられた伏線が、次々に回収されていく筋立てはなかなか面白く、笑えるシーンも少なくありませんでした。

またもや、心苦しくも他人様の意見を拝借いたしますが、キムタク氏は「映像制作の現場の雰囲気を上手く表現している」と感想を述べています。映画に限らず、映像を提供する側は、画面の流れをスムーズなものにするために、文字通り見えない部分で工夫や努力を重ねているんだな、ということは、現場を全く知らない人間が観てもよくわかる作りにはなっています。

期待半分、疑い半分てな心理状況で観始めたのですが、期待を上回る出来の作品だったように思います。個人的には最後の最後がスポ根ドラマっぽくなっちゃったのが残念でしたが、まあ、「勝利は全てを癒す」的な結末は最も一般受けしやすいものだというのも事実です。



# by lemgmnsc-bara | 2019-03-21 06:35 | エンターテインメント | Comments(0)

『ゲット・アウト』鑑賞

ゲット・アウト ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

ダニエル・カルーヤ,アリソン・ウィリアムズ,ブラッドリー・ウィットフォード,ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ,キャサリン・キーナー/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

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権威主義の権化である私が、「アカデミー賞候補作」という店頭ポスターの謳い文句にひっかけられて、借りてきたのが標題の作品。

黒人写真家のクリスには白人のガールフレンド、ローズがいます。とある週末、ローズの両親にクリスを紹介するため、二人はローズの実家に行くことになっていました。

実家訪問に先立ち、クリスはローズに「僕が黒人であることは両親には話してあるのかい?」と問いかけます。「話してないわ。でももしオバマに三期目があれば、父親は彼に投票していたわ」と返すローズ。両親がレイシストではないと主張し、クリスの危惧を鎮静化しようとします。

さて、二人はローズの実家に到着。両親とローズの弟ジェレミーはクリスを歓迎しますが、この家には黒人の男女が一人ずつ召使いとして雇われており、クリスにも、観ている者にも違和感が生じます。次の日は、両親の親しい人々を集めてのパーティーが開催されます。メンバーは一人の黒人を除いて全て白人。その黒人は30歳も年上の白人女性と結婚しています。違和感がどんどん広がります。クリスはここで、参加者たちの、差別的ではないものの、何か彼を値踏みするような視線に晒され、違和感が不快感に変わっていきます。

アカデミー賞の候補になったということは、何らかの社会問題について掘り下げた作品だという思い込みがあったため、糊塗しても、そこかしこから滲み出てくるレイシズムにクリスが苦しむ姿を描くことで、アメリカ社会に根付いた病巣を描く展開になるのだろうと予想して鑑賞し続けていったのですが、その予想は見事に裏切られ、物語はSFチックな方向に向かっていきます。そういえばポスターには「SFホラー」という文字も躍っていたな、と思い返しもしました。

根底には確かに、白人の黒人への差別意識と、その裏返しとして、黒人の優れた身体能力への憧れがありますが、この作品はまさしくホラーです。なぜホラーなのかを説明するためには、この先の展開を紹介せざるをえず、そうなると単なるネタバレになってしまうので、ストーリー紹介はしません。私が一番恐怖する、正気と狂気のはざまにいる人間の姿を描いた作品としては非常に優れていたと思います。

一番怖いのは、一見正常でありながら、実はどこか一本ネジが飛んでしまった人間なのだということ、ということはすぐそばにいる誰かが、こういう人間である可能性が常にあるということ。日常に潜む恐怖を改めて思い出させてくれる一作だったと思います。オススメです。

# by lemgmnsc-bara | 2019-03-09 08:00 | エンターテインメント | Comments(0)

ワンダー 君は太陽 [Blu-ray]

ジュリア・ロバーツ,ジェイコブ・トレンブレイ,オーウェン・ウィルソン,マンディ・パティンキン,ダヴィード・ディグス/Happinet

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トリーチャー・コリンズ症候群という、顔面の骨格の形成が著しく損なわれる先天性の病気を患った少年が、周囲からの偏見に打ち勝ち、成長する姿を描いたヒューマンな一作。宇宙飛行士のようなヘルメットを被らないと学校にも通えない少年の物語という、良くいえばユーモラスな、悪くいえば悪趣味なプロモーション動画がTVで紹介されていたと記憶しています。

私は、昨年参加した高野山人権講座で、この病気に罹患している石田祐貴氏の講演を聴き、実際の姿も見ましたが、「好青年」という言葉は彼のためにあるような素晴らしい方でした。頭も良く、当時筑波大の大学院に在学中でした。

彼が講演で主張していたのは、とにかく「普通」の人間として扱ってほしいということ。外見をあげつらったり、辛かったりするのは論外だが、変に気を使われるのも逆に重荷になるそうです。

たとえは悪いのですが、ハゲた人やあまり見目麗しいとはいえない外見をお持ちの女性(いわゆるブス)だって「普通」の人間として生活していますね。彼らは、その延長上にある、ちょっと変わった外見の持ち主である「普通」の人であり、一般社会において十分に活躍ができる人々なのです。

とはいえ、彼らに「普通」の人間として接するのは非常に難しいことではあります。最初に見た瞬間に、どうしても見た目にとらわれて半ば反射的に「なんか変」という視線を送ってしまうからです。ご多聞にもれず、私も石田氏を最初に見かけたときは、ついつい好奇の目で眺めてしまいました。

ある程度の常識をわきまえた大人ですら、好奇の眼差しを注いでしまうのですから、遠慮を知らない子供の世界では見た目の違いというのは大きなハンデとなります。ズケズケと外見の違いを口にし、嘲ったり、意味もなく避けたりという、自分がやられたら深く傷つくであろう行動を平気でとってしまいますからね。

主人公の少年も同年代の子供たち言動、行動に大きく傷つけられることになるのですが、スポーツを除く学業成績の優秀さと、折れない心でついに皆からの賞賛を浴びることになるのです。彼はこの賞賛により「独立」しますが、そのことは、彼にばかりかまける両親の心を、彼の姉に向けることにもつながりました。彼は題名の通り。まさに太陽のように、彼の家族を救ったのです。

彼を支えたのは、外見に対して偏見を持たない友人であり、両親であったのですが、何よりも彼自身が世を拗ねたり、はかなんだりせずに努力し続けたことが飛躍の最も大きな要因でした。そして嘲られたり傷つけられたりした痛みを知る彼は、大きな器量を持つ人間へと成長したのです。賞賛を浴びた後も決しておごり高ぶることのない彼の姿には、自分自身の未熟さを痛感させられました。彼は、五体満足でありながら、ロクでもない生活をしている人間をはるかに凌ぐ功績を世に残すことでしょう。



# by lemgmnsc-bara | 2019-02-24 11:50 | エンターテインメント | Comments(0)

嫌なことからは逃げる

片岡義男/株式会社ボイジャー

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ここのところ、花粉が飛び始めて耳鼻咽喉系の調子が悪かったり、その影響で合唱で担当するパートの高音が出なかったり(ついには風邪をひいて合唱の本番を欠場…)、珍しく仕事が立て込んだり、人間ドックの結果も思わしくなかったり、そのくせトレーニングは億劫でできなかったりと気分の落ち込むことが続いていました。そんな時に頼みとなるのは、精神安定剤と、精神安定剤的な役割を果たす本。この本も題名からして、そうした精神安定剤的な「使い方」のできる本だと思って電子書籍としてDLして読み始めたのですが、さにあらず。片岡義男氏の短編小説でした。

31歳のフリーライターの男が一軒のスナックに立ち寄るところから始まり、そこの店長兼ホステスで男より一回り年上の女性と知り合い、二度目の邂逅で男女の関係になる、というのが味も素っ気もないストーリー紹介。よくあるBoy meets Girl(というにはいささか歳を食い過ぎてますが)ストーリーなのですが、普通とちょいと違っているのは二人の会話です。

男の方のセリフはことごとく、英文を「教科書通り」に直訳したような奇妙さを常にまとっているのです。どんな奇妙さなのかについては本文を読んでみてください、としか言いようがありません。英語に造詣が深く、翻訳についての著作もある片岡氏が、ある程度は意識して作り上げたセリフなんでしょうね。

清水義範氏には『永遠のジャック&ベティ』という日本語と英語の表現方法、考え方の違いをテーマにした佳作がありますが、あの作品ほど、二つの言語の落差で笑いを取ろうと意図しているわけではありません。あくまでも刹那的なラブストーリーの中で、なんとなく引っかかりのある会話が連なっていく、という仕掛けです。

平凡なメロディーの中に、ちょっと不協和音を入れて「予測」を外す現代音楽のように、単純な「快適さ」や読みやすさをあえて殺した、不思議な一作でした。

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# by lemgmnsc-bara | 2019-02-24 07:14 | 読んだ本 | Comments(0)

グレイテスト・ショーマン 2枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]

ヒュー・ジャックマン,ザック・エフロン,ミシェル・ウィリアムズ,レベッカ・ファーガソン,ゼンデイヤ/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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ヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画。実在したヤマっ気たっぷりの興行師P・T・バーナムの自伝を映画化した一作です。

バーナムは貧しい父と一緒に富豪の家に拾われ、下働きの召使として働かされる日々を送りますが、その日々の中で、富豪の娘チャリティーに恋をします。チャリティーもバーナムを憎からず思い、二人は愛を育んでいくのですが、チャリティーの父親は最後の最後まで二人の仲を認めませんでした。

さて、成人したバーナムはまず寂れた博物館を買い取り、そこにかなりグロな展示品を並べるのですが、客足はさっぱり。妻のチャリティーはもとより、二人の幼い娘まで、懸命にビラ配りをするのですが、人々には見向きもされません。切羽詰まったバーナムは、今度は生身のフリークスたちを集めて見せ物にすることを思い立ちます。アルピノやシャム双生児、ゴワゴワのヒゲが生えた大女等々。このフリークスショーは大当たりし、バーナムは一躍セレブの仲間入り。

この、人集めの過程における歌と踊りは見所。特にフリークスショーの舞台となるサーカス小屋のステージで出演者たちが歌い踊るシーンはクライマックスの一つと言ってよでしょう。鼻の部分の皮膚ガンと闘病中だったヒュー・ジャックマンもしっかり歌って、踊っています。

『レ・ミゼラブル』でもそうでしたが、この方実に歌が上手い。拳からヤイバなんぞ出す役の映画になんぞ出ている場合じゃないよ、って言いたいくらいです。

さて、こういう風に、ちょっと変わった角度から世に出た人間が目指すのが、「正統派の芸術」を世に紹介する仕事をすること。喜劇役者がシリアスな役で芝居に出ることに魅せられるようにバーナムも、欧州から一流のオペラ歌手を呼んでくることに成功し、そしてその興行は大成功をおさめます。

しかし、その影で、バーナムの「出世」を支えたフリークスたちは冷遇されていき、成功に酔いしれ、傲慢になったバーナムに耐えられず、チャリティーも二人の娘とともにバーナムの元を去ります。

好事魔多し。オペラ歌手との契約もこじれ、全てを失ったバーナムは一体どこを目指すのか?良くも悪くも、バクチを打ち続けているような人物が最後に本当に求めていたものに気づく、ってのは良くあるパターンのストーリーではあるのですが、展開的には上手く説明できていたように思います。

ヒュー・ジャックマンは、まず体調を万全にしてもらって、今後は作品を選んで出ていただきたいように思います。まあ、X-MENシリーズはすでに飽きられていますから、ウルバリンの出番はないようには思いますがね。

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# by lemgmnsc-bara | 2019-02-09 09:31 | エンターテインメント | Comments(0)

ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

ゲイリー・オールドマン,クリスティン・スコット・トーマス,リリー・ジェームズ,スティーヴン・ディレイン,ロナルド・ピックアップ/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

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主演のゲイリー・オールドマンがチャーチル本人に、それこそそっくりにメイクされ、そしてそのメイクが日本人によって施されたことで本筋以外の部分の方が話題を読んでしまったのが標題の作。

ところがどっこい、ストーリーも骨太で、見応え十分でした。

時は第二次大戦中、ヒトラーが総統を務めていたナチスドイツの軍は、欧州各地で猛威をふるっていました。地続きであるベルギー、オランダを支配下に置き、フランスをも攻め落とそうという勢い。

時の英国内閣のチェンバレン首相はよく言えば平和主義、悪く言えば弱腰で、英本土がドイツに攻め込まれる前に講和条約を結ぼうとしています。このことに野党から猛反発を受けたチェンバレンは首相を退き、その後をハリファックス卿に託そうとしますが、ハリファックス卿も同じように弱腰外交路線を取ると目されていたため、国中が分裂しかねない危機を迎えます。

ここで白羽の矢が立ったのが、海軍大臣である、ウインストン・チャーチル。気難しく、戦場で大敗の経験もある彼の起用を危ぶむ人は少なくなかったのですが、ヒトラーという凶悪な毒を制するにはチャーチルのような劇薬が必要だということで、周囲も納得し、チャーチルは首相の座に就きます。

とは言え、彼の主戦論はすべての人々に受け入れられたわけではありません。施政方針演説はドッチラケで、宥和派はもとより、彼を待ち望んでいた主戦派ですら冷たい視線を送る始末。

折も折、フランスに派遣していた30万人もの兵士が敵に包囲され、全滅の危機を迎えていました。チャーチルはその兵士たちを救うために、4千人の部隊に生還の見込みのない囮として、敵を撹乱することを命じるのですが、この策もまた全方位からの避難を浴びることとなります。

追い詰められたチャーチルは辞職を決意しますが、辞職の前に、市民の生の声を聴こうと、移動には公用車しか使わなかった彼が、自らの足で歩いて地下鉄に乗り込み、乗り合わせた市民の声を直に耳にします。ほんの小さな子供までが「絶対にドイツには屈服しない」という言葉を発するのを聞いたチャーチルが起こした行動とは?ということでストーリー紹介は強制終了。この後は是非本編をご覧ください。

結果地役にチャーチルという劇薬は、自らの力だけでなく、国民の力を引き出すことにも成功し、ドイツに勝利するのですが、勝利の6ヶ月後にがチャーチルは首相の職を解かれます。乱世の英雄は必ずしも平時の英雄になるとは限らない。結局一番うまく立ち回ったのは英国の国民だったのかも知れません。

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# by lemgmnsc-bara | 2019-02-09 08:47 | エンターテインメント | Comments(0)