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All About 身辺雑事

『ゾンビーバー』鑑賞

ゾンビーバー [DVD]

レイチェル・メルヴィン,コートニー・パーム,レクシー・アトキンス,ハッチ・ダーノ,ジェイク・ウィアリー/インターフィルム

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アメリカでは常に一定の「需要」があるゾンビ映画の動物版。題名の通り、ゾンビと化したビーバーが田舎町を訪れた若者たちを襲うというホラー映画です。

とはいえ製作陣には『ハングオーバー!』という超おバカ映画と同じスタッフが連なっており、おバカ要素と、低予算からくるチープさ(何しろ登場人物はチョイ役も含めてたったの13名だし、襲ってくるビーバーたちはいかにも作りモノ然としたオモチャのようなシロモノ)に満ち満ちておりました。

ストーリーは、いかにも無神経なトラックドライバーが、ケイタイを見ながら運転し、鹿を撥ねてしまうところから始まります。撥ねた衝撃で、荷台から産業廃棄物の缶が一つ川に落ちてしまうのですが、このサノバビッチたちはそのことに全く気付かずに走り去ってしまいます。

で、その産業廃棄物が流れ着いた湖に生息するビーバーたちに悪さをしてゾンビ化してしまうという安直そのものの設定です。

折悪しくこの湖近くを訪れていたのは、セックスのことしか頭にない、これまたクソビッチな女子大生三人組。本当は女子会のはずだったこのバカンスに結局は彼や浮気がバレて元カレになりつつあった三人の男子大学生が合流して乱痴気騒ぎを繰り広げます。エッチなサービスショットもあり、その辺だけは「娯楽作品」というにふさわしいんですがね(笑)。

で、静謐な地域を侵した馬鹿者たちは必ず報いを受けるという物語の典型例に添い、ゾンビーバーたちがこの6人に襲いかかります。最初にコテージに侵入してきたのは一頭だけでしたが、翌日湖でノホホンと水浴しているところには大群が襲いかかってきます。

なんとか根城であるコテージにたどり着いた若者たちでしたが、男の一人は足首を食いちぎられてしまっていたりもします。この湖は人里離れた場所にあり、ケイタイは圏外、しかも枝やツタなどをかじることが大好きなビーバーの習性から固定電話の電話線も食いちぎられており、外部との連絡は一切つかないという追い詰められた状況。

窓やドアに板を打ち付けるなどして懸命に自衛策を講じる若者たちをあざ笑うように、夜に入ると夜行性であるという本能をむき出しにしたゾンビーバーたちが一斉にコテージに襲いかかってきます。足首を食いちぎられて寝込んでいる男を除く五人は必死で抵抗しますが、いわゆる多勢に無勢状態。段々と窓が破られたり、地下からの攻撃にあったり綻びが生じ、その綻びが大きくなっていきます。そんなジリ貧状況を打破するために、外部に助けを求めに車で脱出する三人(怪我した男と健常な男、そしてサービスショットを披露してくれたねーちゃん一人)。しかし狡猾なビーバー君たちは木を切り倒して道路を封鎖したりもしています。ここで一人の猟師が通りかかり、なんとか窮地を脱した二人(健常な男一人は倒木をどけようとしたところをビーバーに襲われて倒されました)と猟師は一旦、コテージからは少し離れ隣家に助けを求めに行くのですが、ここもビーバーたちにすでに襲撃されており、しかもご丁寧に固定電話の電話線は食いちぎられています。そうこうするうちに足首を食いちぎられた男がゾンビ化し、生き残った人間はますます不利な状況に追い込まれていきます。というわけでストーリー紹介はここまで。結末は本編をご覧ください。

英語の「beaver」には俗語として「女性器」の意味があるそうで、エロ要素が満載。しかし、ゾンビ化したビーバーたちはあまりにもちゃちで恐怖をあまり感じませんでした。噛み付かれた人間がゾンビ化してからの展開はゾンビ映画の定番のストーリー展開です。襲いかかってくるゾンビをいかに倒すか躱すかして逃げ切るか?まあそれなりに意外性があり、皮肉もまぶされた結末だったとだけ記しておきます。

遊び心あるスタッフ故、エンドロール中のNGシーン紹介や、ラスベガスあたりのディナーショーでフランク・シナトラあたりが歌ったらぴったりくるようなスタンダードナンバーを模したエンディングソングなどストーリー以外のくすぐりには楽しませてもらいましたが、いかんせん本筋がねぇ…、って感じの一作でした。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-08-12 08:17 | エンターテインメント | Comments(0)

『こどもつかい』を読んだ

こどもつかい (講談社タイガ)

牧野 修/講談社

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2017年に公開された同名のホラーサスペンス映画のノベライズ作品。大人による虐待を受けた子供が強い恨みを持つと出現し、出現の三日後にはその大人が変死してしまうという怪人トミーとその手下の7人の子供たちが怖さを担います。

作品中には二つの時間軸が存在します。

一つは現代。トミーによってもたらされた死は「不審死」であるため、その真相を突き止めるべく奔走する新聞記者駿也と、保育士をしているその恋人尚美の周辺に巻き起こる事件を描きます。

もう一つは数十年前のロシア、いわば「トミーライジング」とでもいうべき物語です。後にトミーと呼ばれることになる人物は少年時代に、そのテの趣味をお持ちの方のお相手をする娼館に親によって売られた少年。少年は自分を苦境に投げ込んだ親を恨むとともに、自分にとってこの世を苦境たらしめている大人全体を恨むようになります。行き場のない恨みや怒りのはけ口は一体どこに向かうか?自分よりも小さくて弱い存在です。トミーはある日バスに乗り遅れてバス停に佇んでいた少年を森の中に誘い込み、産前に性的暴行を加えた末に殺し、埋めてしまいます。この少年の祖母は魔力を持っており、トミーはその呪いに、時と場所を問わず苛まれることになります。この呪いから逃れないことには死ぬことすらできないのです。この辺りから物語には非日常性が高まっていきます。

さて現代の方に戻りましょう。尚美は自身も親から虐待された経験を持っており、同じような境遇の少年蓮への同情心から、つい彼の母になることを約束してしまいますが、現実にはコトはそうそう簡単には運びません。結果的に蓮との約束を破ってしまうことになり、深く傷ついた蓮の前にはトミーが現れます。そして尚美はトミーの呪いを受けてしまいます。残された時間は三日間。駿也は子供達が歌っていた歌を手がかりに、トミーの謎に迫っていきます。果たして尚美を救うことはできるのか?そしてトミーという存在の謎を暴くことができるのか?というところでストーリーの紹介はおしまい。続きは小説を読むか、映画を観るかしてください。

つい最近も悲惨としか言いようのない状態で衰弱死させられた女児がいましたが、彼女に代表されるような、子供達にはトミーはむしろヒーローのような位置付けで必要なのではないか、と思ってしまいました。性衝動に駆られて子供を「作ってしまった」大人になりきれないクソガキどもには、圧倒的な恐怖を与えてやるくらいのことをしないと、家庭内の虐待は減らないのではないか、というのが率直な感想です。密室内で行われている虐待に関しては。必殺仕置人ではありませんが「天の裁きは待ってはおれぬ。この世の正義もあてにはできぬ」という状態が出来しちゃってますからね、すでに。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-08-11 08:04 | 読んだ本 | Comments(0)

『沈黙の鎮魂歌』鑑賞

沈黙の鎮魂歌 [DVD]

スティーヴン・セガール,ドミトリー・チェポヴェツキー,イゴール・ジジキン,ロバート・ウィスデン/ギャガ

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在庫一掃整理中のセガール作品。

今作のキャラ設定は、元ロシアンマフィアで、現在はバイオレンス小説家として生計を立てているルスランという人物。ルスランは離婚した妻との間に一人娘(また一人娘だよ…。まあ、男が自分の命をかけてでも守りたいと思うのは娘ってのは通り相場なんだろうけどね…。)がいて、彼女が結婚するというので久しぶりに元妻の家を訪ねるというところからストーリーがスタートします。

娘婿となるべき男性は、ルスランがマフィアの現役だった時代に敵対していた組織の長の息子。一応この息子はカタギではありますが、そもそもこの設定に無理がないかい?ってツッコミを入れたくなりますね。そこは『ロミオとジュリエット』という大看板もあることなんでスルーしときましょう。敵役の俳優の顔がどことなくプーチンに似ていて、米の対露感情を表しているのでないかというのは穿ち過ぎですかね(笑)。

ルスランがいかに現役を引退したといっても、ハイそうですか、では仲良くしましょう、とならないのが人の感情というもの。敵のボスもこの結婚を快くは思っておらず、手下に命じて、元妻の家を襲撃させ、元妻は死亡、娘は意識不明の重体となってしまいます。

というわけで、ルスランの怒りが爆発して、コトの真犯人を突き止め、そいつらを自慢の体術と、射撃で散々にやっつけるといういつものパターンに落ち着きます。

アクションシーンは私が大好きな「必殺シリーズ」の殺し場面だと思えば良い。要は最終的にセガール演じる主人公が敵をいかに叩きのめすかを見て、カタルシスらしきものを感じれば良いだけ。まあ、アクションシーンまでの前フリも、いかに敵役が悪どいかを納得するために見ているようなもんですけどね。

今作の最大のツッコミどころは、アクションシーンのBGMです。変なロシア民謡風の、少しも荒々しさが心の中に湧き上がらないのんびりした曲なんです。画面の派手さと見事にミスマッチ。民族衣装着た男女が入り乱れてダンスでも踊るってのなら納得のいく曲でしたね。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-08-05 13:30 | エンターテインメント | Comments(0)

『弾突DANTOTSU』鑑賞

弾突 DANTOTSU [DVD]

スティーブン・セガール,ランス・ヘンリクセン,ブランチャード・ライアン,ポール・カルデロン/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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最近日常生活の中で一番真剣に取り組んでいる「とっておく必要のない作品廃棄運動」における、廃棄対象の筆頭格、スティーヴン・セガール作品です。タイトルに『沈黙の〜』というフレーズこそありませんでしたが、中身は一連のシリーズ作品そのもの。

今作の主人公マットは元警官。病的なまでのバクチ好きで、家庭を崩壊させた上に、多額の借金まで背負っているというダメ男。「いつも」のようにストイックな品行方正さがないところが、若干のテイスト違いといえばテイスト違いですかね。

さて、そんなマットの前に謎の老人とその手下が出現。借金の肩代わりをするから、人を殺しなさいなどという正義のヒーローにはあるまじき「悪事」に手を染めることをそそのかします。マットが刑事の前についていた職が軍人で、しかも腕っこきの殺人のプロだったからです。この辺からいつものセガール作品のパターンを踏襲していくことになります。一応、依頼されるのは生かしておいては世のため人のためにならぬ人物の殺人です。正義背負ってますねぇ。ただの人殺しのくせに。まあ、『必殺シリーズファン』の私としては好ましいパターンではあるのですが…。

ストーリーは決まっているので、あとはアクションシーンの出来が作品の価値を決めます。結論から言えば、それなりに見ごたえはありました。合気道の達人らしく(実際に七段の資格持ち)、素手やナイフの相手はことごとく投げ飛ばすか殴り倒すかする。銃撃戦でも負けない。敵の方が圧倒的に多く、したがって撃たれる弾も天文学的と言って良いほどの差があるというのに、マットにはほとんど当たらないか、当たっても防弾チョッキの上。逆にマットの撃つ弾はバンバン当たりまくります。御都合主義満開ですねぇ。もはやこうなると歌舞伎の様式。さすが日本に住んでいた経験が長いだけあって、日本文化への造詣が深いからだ、ということにしておきます。以前紹介した『沈黙の聖戦』に比べれば、敵の動きに無駄がない分、リアルな格闘シーンではありました。

この作品の公開は2008年で、セガールがデビューして20周年という記念作品でしたが、本国アメリカではビデオスルーされ、日本でのみ劇場公開されたそうです。『水戸黄門』みたいなドラマが根強い人気を誇る日本というマーケットに関しての分析だけは冷静になされていたようです。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-08-05 07:53 | エンターテインメント | Comments(0)

『ダーティーファイター』鑑賞

ダーティファイター [Blu-ray]

クリント・イーストウッド,ソンドラ・ロック,ジェフリー・ルイス/ワーナー・ホーム・ビデオ

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クリント・イーストウッド主演のアクション映画。アクション映画というよりは「暴力映画」とでも言った方がいいくらい、ケンカシーン満載です。

主人公ファイロは長距離トラックの運転手が「表の仕事」ですが、裏では賭博の対象となるストリートファイトの戦士という顔を持っていました。とにかく素手でのケンカには滅法強い。腕に覚えがあるせいか、「公式」なファイトの場ではない酒場でも路上でも、誰彼なくケンカをふっかけるという悪癖の持ち主というキャラクターも付与されています。

ドライバーとしての仕事と、その後のビール、そしてケンカというのが彼の生活の全て、おっと忘れちゃいけない、彼には親友のオランウータン、クライドがいました。このクライド君とにかく芸達者でコメディーリリーフとしての役割もあるし、ファイロの孤独の象徴でもあります。

そんなファイロの日常にいきなり飛び込んできたのが、行きつけの酒場でカントリー&ウエスタンを歌うリン。リンに一目惚れしたファイロは猛アタックをかけて、彼氏がいるというリンを強引に自分の恋人にしてしまいます。

恋が成就して幸せ一杯夢一杯、と思っていた矢先、リンは突然ファイロの元を去って郷里に帰ってしまいます、当然追いかけるファイロ(とクライドと相棒オーヴィルとオーヴィルと深い仲になったエコー)。自身の地元のロスの一度諍いを起こした暴走族にも、またやはり警官を殴り倒してしまったロス市警にも追われながらの追跡行と鳴ります。

各地で、旅費を稼ぐためにストリートファイトの試合に出てみたり、襲ってきた暴走族を返り討ちにしたり(この暴走族はファイロの自宅を襲撃した際にファイロの母親のショットガン乱射に恐れおののいて撃退されたというおマヌケ連中でもあります)、警官を出し抜いてみたり…。

あまり血生臭くはないドタバタの騒動の末に、リンの元にたどり着いたファイロを待ち受ける衝撃の事実。そして傷心のファイロはストリートファイトの場でも一方的に追い詰めていた相手に自分自身の惨めさを投影してしまいわざと負けてしまったりします。

この辺、よくわからないんだよなぁ…。それこそ自棄のやんぱちで散々にやっつけて、大金手にして、ビールの数十本もがぶ飲みしてうさ晴らしするのが「普通」じゃねーのかな?と思ってしまうのは私だけでしょうか?

ワイルドに我が道を突き進むハリー・キャラハン刑事とはちょっと違う結末に持って行こうとしたのでしょうが、なんだか締まらないなという思いだけが残りました。最後の最後のお笑いシーンはそこそこ笑えましたがね。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-08-04 07:19 | エンターテインメント | Comments(0)

『鬼平犯科帳』鑑賞

鬼平犯科帳千両箱 DVD全巻セット(79枚組)

中村吉右衛門/SHOCHIKU Co.,Ltd.(SH)(D)

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ここのところ断捨離を続けており、部屋の中からなるべくモノを減らそうとしています。一番のターゲットは書籍ですが、基本的に買う場合は電子書籍にし、読み終えた本はどうしても取っておきたいもの以外はすべてブックオフ行きにしています。取っておきたい本も、電子書籍を再度探して、そちらに切り替えるようにしています。古着や古デバイスはセカンドストリートに持ってくことにしてかなりの物体を減らしましたが、まだまだ物理的にも心理的にもハバを取っているのがBlu-Rayに録画した番組たちです。すでに1000枚近くの内容を外付けH D Dに移行したりはしたのですが、まだ1000枚近くの「ストック」があります。外付けH D Dも容量ですでに20TBを超えてしまっており、今度はH D Dが場所を食うという事態になりつつあります。まあ、物理的にはしれたものですがね…。そんなわけで、移行作業は一旦中止して、録画したものをまずは観て、取っておく価値なしと判断したものを片っ端から捨てていくという作業に取り掛かっています。

ここのところ二作紹介した『沈黙の〜』シリーズなどは削減の筆頭候補です(笑)。その他、レベルのあまり高くない国内のラグビーの試合とか、ドラマ、映画などが主な対象となります。で、今集中して観直しているのが時代劇。私の場合『必殺シリーズ』は絶対的な保存対象ですので、必然的にそれ以外の作品が対象となります。ここでようやく『鬼平犯科帳』シリーズが登場します。ここのところ平日は2〜3本、休日は下手すると10本くらいは観ています。内容に入る前にまず気づいたのが、ダブり、トリプりで録画したものが数多くあったこと。BSフジにせよ、スカパーにせよ、同じ内容の作品を何度も繰り返して放映しており、内容のチェックをせずに録画だけをしておいたらこんなことになっちゃいました。ま、ダブってたやつを即座に消すってのも一つの快感ではあるのですが(苦笑)。BS N H Kで毎日放送しているプレミアムシネマも然りで、2〜3年周期で同じ作品を取り上げることが多く、よくよく見直すとダブってることは多いです。

さて、集中して観ている鬼平ですが、一番多いのは何と言っても中村吉右衛門版。鬼平といえば彼を思い浮かべる人も多いでしょう。原作者の池波正太郎氏は、鬼平のキャラを設定する際に吉右衛門氏の父親八代目松本幸四郎を念頭においていたそうですから、吉右衛門氏の鬼平「就任」は歴史的必然性があったということでしょう。実際に作品数も一番多く、人気も一番高いようです。

そのほかには萬屋錦之介版、そして丹波哲郎版があります。

丹波哲郎版は密偵おまさ役に野際陽子を起用していることもあり、ついつい『キーハンター』を思い出してしまいます。顔をアップにされた際の表情なども歌舞伎役者である錦之介、吉右衛門両氏に比べると、どことなく違和感があります。なお、丹波氏は後に吉右衛門版で老盗賊を演じていたりもします。さらにいうと、松本幸四郎版には中村吉右衛門氏が鬼平の息子長谷川辰蔵役で出演したりもしています。

個人的に一番鬼平としてしっくりくるのが萬屋錦之介。「俺は鬼よ」と言い切ってしまう冷徹さは一番強い。表情も迫力を超えて少々怖いくらいです。吉右衛門氏の鬼平はどちらかというとニコニコしている場面が多く、少し優しすぎる、という印象。木村忠吾役の尾美としのり氏がハマりすぎて、コメディー色が少々濃いのも一因なのでしょうけど。逆に丹波版の忠吾役古今亭志ん朝氏はコメディーリリーフとしての役割があまり果たせていないような気がします。

作品の根本的な世界観に一つツッコミを。「殺さず、犯さず、貧しいものからは奪わない」というおつとめ三原則を忠実に守っている盗人集団の頭領は、非常に高潔な人柄の持ち主として描かれるのですが、それだけ良性の人間性と統率力があるんなら、真面目に働けよ!!その方がよほど成功しただろうし、真っ当な市民として鬼平の追及に怯えることなく平穏に暮らせるだろう、っつーの。鬼平は「いかに非道を行わずとも罪は罪、悪は悪」というような超建前論を吐くのですが、三原則を守っている頭領に関してはどうしても「悪いやつ」という意識が湧いてこない。この辺が勧善懲悪を大前提としている時代劇としては若干マイナスに働いているように思います。人間、白黒はっきりしたやつばかりではないし、モノゴトも黒白を明確にしさえすればいいというものでもない、という主張は、どちらかというと現代劇の人情ドラマに近い作り方ですね。その辺が吉右衛門版の人気につながっているのかもしれません。

さて、H D Dにはあと何本の鬼平が眠っているのでしょうか?観終わってしまうのが楽しみでもあり、少々寂しくもあり、というところです。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-29 08:07 | エンターテインメント | Comments(0)

『沈黙の聖戦』鑑賞

沈黙の聖戦 [Blu-ray]

スティーヴン・セガール/ギャガ

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アクション映画界の「ハーレクインロマンス」こと『沈黙の〜』シリーズの一作。今作のタイトルは『沈黙の聖戦』、主演は言わずと知れたスティーヴン・セガールです。

ストーリーについては今更書くまでのこともありませんが、それでは文字数が著しく少なくなってしまうので(笑)少々紹介します。見事なまでの「いつも通り」な展開。元CIAの腕っこきエージェントが、テロ集団にさらわれた自分の娘を助け出すまでを描きます。付け足しのように、「巨大な陰謀」ってやつが絡んできます。

まあ、このシリーズに関してはどこまでツッコミどころを探せるかというのが私の鑑賞法。

相変わらず、マシンガンの弾幕に遭遇しても、セガール演じるほとんど動かない主人公には一切当りません。相棒のアジア人にも当たらないねぇ、と思っていたら最後の最後に、こちらにはしっかり当たってました。

今作の舞台はタイなのですが、タイの民族武闘法を操る殺し屋たちが、攻撃を加える前に踊り過ぎ。よさこいソーランの大会じゃねんだから、そんな無駄な動きをしてる暇があったら、全員で一斉に飛びかかるなり、手裏剣を投げるなりしろよ!

アクロバティックな動きをする時と、普通に戦っている時の主人公の体型が違い過ぎ。いくらスタントマンを使うとはいえ、明らかに別人とわかってしまうようでは興ざめ。もっとガタイのいいスタントマン探すか、あるいはセガール自身が少し痩せなさい!!

『マトリックス』ヒットの影響か、ワイヤーアクションがふんだんに盛り込んでいますが、乱発のしすぎ。敵の攻撃パターンは遠目の距離から飛びかかってくるようなものばかり。あのねえ、空中では体勢の変えようがないんだから「普通」の戦いの場ではなるべく「滞空時間」を減らすというのが喧嘩の基本のキですよ。メキシコのプロレスラーか、お前らは?

『沈黙の〜』シリーズはまだ何作か録り溜めしたものがあるのですが、果たして何作目まで耐えられるのか?いまの興味はそこにあります(笑)。

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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-29 07:09 | エンターテインメント | Comments(0)

『トゥームレイダー』鑑賞

トゥームレイダー (初回限定版) [DVD]

アンジェリーナ・ジョリー,ノア・テイラー,ダニエル・クレイグ,2枚買って1枚もらおう!キャンペーン,2枚買って1枚もらおう!キャンペーン/ジェネオン エンタテインメント

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アンジョリーナ・ジョリーの人気を不動のものにした一作。元々はゲームとして考案されたコンテンツの映画化作品です。

ストーリーはあって、ないようなもの。主人公ララ(アンジョリーナ・ジョリー)が、襲いかかってくる敵をなぎ倒しながら、様々な謎を解き、時間を自由に操れるというアイテムを手に入れるまで、というだけ。ララがどれだけの派手なアクションシーンで敵を倒すのかだけが見どころです。

襲いかかってくる敵が、強いんだか、弱いんだかよくわからない。まあ、元々がゲームなだけに、最終的には主人公が何らかのテクニックで勝つことは間違い無いのですが、アイテムの半分を手に入れるために乗り込んだカンボジアの遺跡の中の、守護キャラたちがいかにもチープなゲームキャラっぽい。重々しく復活してきた割りには、動きは鈍いし、銃弾で破壊されるのは仕方ないにせよ、人間の蹴りとかパンチであっけなく粉々になっちゃうんです。せめて、普通の銃弾は跳ね返すけど、何千年と生えている巨木から作った矢なら倒せるとか、一捻り欲しかったなぁ。まあ、シューティングゲームや格闘ゲームの要素を盛り込むことを考えると、変な設定にするよりは、銃を撃ちまくって破壊しまくる単純さの方がシンプルで良いってな考えなんでしょうけどね…。何つうか、物量にモノをいわせるアメリカの覇権主義みたいで、スカッとはしませんね。異教の神ならいかに侵入しようが破壊しまくろうが関係ない、ってな一神教特有の考え方もわかりやすすぎるくらいわかりやすく表されてましたしね。

ララのアクションシーンは、最大のウリだけあってそれなりに迫力がありましたが、やっぱりゲームのシナリオに沿わねばならないという制約のせいか、少々強引な部分が目につきました。

例えば、敵対組織のイルミナティーが空からララの家に侵入してきてそれを迎え撃つシーン。何で侵入してきた敵はずっと宙吊りのままでいなきゃいかんのでしょうか?さっさと1階の床に降りるなり、2階の床に降りるなりして体を安定させてから銃撃すればいいものを、狙いが定まらない状態で盲滅法撃ちまくって、結局当たらない。そもそも、無数と言って良いくらいの銃弾が飛び交うシーンが散々あるのに、ララはかすり傷一つ負わない。強引な御都合主義ですね。

続編も録画してはあるのですが、おそらく一番できがいいはずの一作目がこれでは、観る気も失せるというもの。とはいえ、もったいないから観るとは思いますけどね(笑)。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-28 16:56 | エンターテインメント | Comments(0)

『クローズド・サーキット』鑑賞

クローズド・サーキット [レンタル落ち]

エリック・バナ,レベッカ・ホール,ジム・ブロードベント,キアラン・ハインズ,ジュリア・スタイルズ/null

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2014年公開のイギリス映画。2006年にロンドンで起きた同時多発テロと、その後欧州各地で頻発した自爆テロで、イスラム系の人々への強まった風当たりを背景とした作品のようです。ただし、この作品はイスラム系の人々を叩くのがテーマではありません。

冒頭はとある賑やかなマーケットの各所に設置された監視カメラからの映像とそれを監視する人々の会話から始まります。そのうちに、一つのカメラに進入禁止のはずの通路に入ってきたトラックの映像が映り、いきなり大爆発。多数の死傷者を出したテロの発生です。

警察はエルドアンというトルコ人を首謀者として逮捕。彼の家族も軟禁状態に置かれます。彼らの弁護を担当することになったのはサイモンという弁護士。しかしサイモンは自殺してしまい、お鉢が回ってきたのが本作の主人公の一人マーティン。この裁判は国家機密がらみということで、非公開となり、非公開時に彼らを弁護する特別弁護人になったのがシモンズ=ハウ。私はイギリスの司法制度について全くの無知でしたので、なぜ弁護人と、特別弁護人などというものが存在するのか全くわかりませんでしたので、ちょっと調べてみました。細かいことは無視して、ごく荒っぽく言ってしまうと、特別弁護人は国家機密を扱うことができるという特権を持っており、一般の弁護人と特別弁護人とは情報共有を禁止する法律のため、普段の接触が禁じられているそうです。しかしマーティンとシモンズ=ハウは元恋人同士。二人の間には公私にわたる複雑な感情が存在し、それがドラマの様相を一層複雑化させます。見え透いた御都合主義の設定ですね。実際には多分二人の事情を勘案し「特別な感情」が生じることを防ぐためにどちらかが外されるはずです。

シモンズ=ハウは常にやばそうな男たちに監視されてもいます。裁判に関わる国家機密とは、大げさに言ってしまえば、国家存亡に関わる事実が含まれるからでした。その事実を知ったシモンズ=ハウとマーティンは、そのやばそうな男たちから追われることになります。派手なドンパチはなし。なぜならやばい男たちはMI5のエージェントたちなので、人目につくことを避けるからです。二人の安否と事件の行方はいかに?結論からいうとあんまりスッキリとはしない結末となります。

題名の『クローズド・サーキット』とはスポーツやコンサートなどの催し物を実際に行われているのとは別の場所で観客に観せることを指すのだそうです。実際に何かが起こってはいない場所で、起こった出来事を眺めているのは弁護人二人でしょうか?それとも物語の外にいる我々でしょうか?「神」の視点で観ている我々には、何か大きな権力を持った存在が近づいてきたらなるべく接触しないようにすべし、との教訓はくれたと思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-22 08:27 | エンターテインメント | Comments(0)

『狐の呉れた赤ん坊』鑑賞

狐の呉れた赤ん坊 [DVD] COS-040

阪東妻三郎,橘公子,羅門光三郎,寺島貢,谷譲二/Cosmo Contents

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俳優の田村三兄弟(俳優以外にも一名いて本当は四兄弟)の父としても名高い、俳優阪東妻三郎氏主演の人情時代劇。何年か前のBSの企画で「山田洋次の選ぶ日本の映画100本」というものがあり、その中の一本として紹介されていたものを録画しておいて鑑賞。

舞台は、江戸時代の大井川金谷宿。川越え人足をしている主人公張り子の寅八(阪妻)は、酒とバクチが大好きで、喧嘩っ早いものの男気にあふれ、どこか憎めない男というキャラ設定です。昭和中期の日本でウケた人物像の典型と言って良い設定ですね。今日も今日とて馬方の辰(羅門光三郎:中島らも氏のペンネームの由来となった方ですね)行きつけの居酒屋浪華屋で酔っ払って大げんか。店の主人も看板娘のおときもいささか呆れ気味。でも誰も止めようとしないし、いくら店の中をしっちゃかめっちゃかにしようと出禁にもならないところに寅八の人間的魅力と、当時のおおらかさのようなものが暗示されています。最近でこそコンプライアンスとかハラスメントとかで厳しくなりましたが、日本は酔っ払いには寛大な時期が長かったですからね…。

寅八と辰の「哲学」的対立が、またなんともおかしい。辰が「動物は毛が少なくて、裸に近い奴がより下等なものとされている。してみればいつも裸ん坊の川越え人足なんてのは一番下等な商売だ」と嘲るのに対し、寅八は「動物である馬をこき使って自分は楽をしている馬方こそ卑怯な生業だ」と切り返す。それぞれの職業が一番であるといううぬぼれと、その他の職業を下に見てしまう尊大さは程度の多少はあれ、現代人も持ち合わせているのではないでしょうかね?

さて、そんなところにある日、街道筋に人を化かす狐が出没するとの噂が…。意地っ張りの寅八は内心ではビクビクとしながらも狐をふんづかまえてやろうと夜の街道へ。そこにいたのは狐ではなく男の赤ん坊。寅八はこの赤ん坊を自分の息子として育てることを決意し、酒もバクチもやめ、真面目な生活を送るようになります。これも日本人にはウケるストーリーですねぇ。散々悪さをしてきたヤンキーのにいちゃんが、子供が生まれた途端に、家にすっ飛んで帰るようになり、仕事もバリバリこなすようになった、なんて話は腐る程聞きましたし、そういうテーマの映画やドラマもゴマンとあります。もっとも最近はこういう風潮は文字通り腐ってしまい、子供が生まれようが親が死にかけようが、自分が第一で自分の思い通りにならないとすぐに虐待したり殺したりする、クソガキばかりですが…。

さて、善太と名付けられた赤ん坊はすくすくと育ち、七つになる頃には年上を含め周りの子供達の上に君臨するガキ大将となっていました。なお、この善太を演じたのは、後に津川雅彦と名乗るようになる方です。あんな可愛い子役が、いまは鼻にチューブを突っ込んだじいさんなんですから、時の流れは残酷です。

善太は近所の子供に輿を担がせてその上に乗り、大名行列の真似事をしながら街道を練り歩いていたのですが、そこに本物の大名行列が現れ、正面衝突。子供とはいえ勘弁ならぬから手討ちにするという大名の下に寅八は乗り込んで行って、善太の代わりに自分を手討ちにしてくれと談判するのです。昭和中期の観衆はここで大号泣でしょうね。で、結局は寅八の誠意が通じて二人とも無罪放免。「本物の親子」として強い絆で結ばれることになるのですが、善太が、実はさる大名の世継ぎであることが判明します。

父子ともに別れたくはないのですが、しがない川越え人足と、大名の世継ぎとでは身分も暮らしも雲泥の差があることも事実。悩みに悩む寅八に「引導」を渡す質屋の大黒屋主人の言葉がまた良い。「お前は善太の命を救うために一度死んだはずだ。ならばもう一度善太のために死ね。」この言葉で、寅八は善太を送り出すことを決意します。

最後のシーンも泣かせますよ。侍従が担ぐ輿に乗ろうとせず、寅八の肩車で川を渡る善太。肩の上に乗る善太に向かって寅八は「下々の民のことをしっかり考える殿様になるんだぜ」と諭すのです。陳腐と言われてしまえばそれまでのシーンですが、このシーンで涙を誘われない人間は人間やめなさいと言いたいほどの名シーンでした。

阪妻氏は田村三兄弟の誰とも似ていない「芸風」でしたね。二枚目というよりはどちらかというと三枚目に近い二枚目半で、カラダを張ったドタバタが印象的でした。


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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-22 07:36 | エンターテインメント | Comments(0)

『オレの獲物はビンラディン』鑑賞

オレの獲物はビンラディン [DVD]

ニコラス・ケイジ,ラッセル・ブランド,ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ,レイン・ウィルソン,マシュー・モディーン/トランスフォーマー

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実在の人物が起こした珍騒動を映画化した一昨。近年ますます仕事を選ばなくなった感の強いニコラス・ケイジが主演を務めます。

週の半分は人工透析を受けなければならない、冴えない中年男のゲイリーは、ある日いきなり神の啓示を受け、ビンラディンを捕縛することを自らの使命であると信じ込むよになります。で、その使命のためにフロリダからヨットで出航して遭難したり、アフガニスタンとの国境に近いパキスタンの山中からハンググライダーでアフガニスタンに密入国を企てたり(当然失敗)、しまいには日本刀を携えてパキスタンに入国し、街を「警備」したりします。

その程度のことでは当然のことながら、ビンラディンを捕まえることはおろか、彼につながる手がかりを得ることすらできません。要するにこの作品は、異常に行動力だけはある誇大妄想狂のゲイリーが巻き起こすドタバタを楽しもうというのが趣旨です。

ゲイリーはグラウチョ・マルクスを思わせる早口と、独特のフレーズを常に周囲にまき散らかしています。遠くで見ている分には面白い、とか変わり者だね、とか笑っていればすみますが、親類縁者とかご近所さんだったりするとあまり親しく付き合いたいとは思わない人物ですね。

ご存知の通り、米軍によってビンラディンは殺害され、ゲイリーの使命はあえなく消滅してしまいますが、彼の奇行だけは人々の記憶に残り、映画にまでなってしまったというわけです。9.11以外にもこんな形で人生を変えてしまった事例もあるんですね、アルカイーダは(笑)。

劇中のセリフで「何、オレのことを映画化する?主演は誰だ?ニコラス・ケイジ?ならOKだ」みたいなことを言わせたのが最大の笑どころ。なおゲイリーは映画化で得たカネで腎臓の移植手術を受け、元気に暮らしているそうです。メデタシメデタシ。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-15 06:42 | エンターテインメント | Comments(0)

『狛犬ジョンの軌跡』を読んだ

狛犬ジョンの軌跡 (光文社文庫)

垣根 涼介/光文社

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リアルなアウトサイダーものや、『君たちに明日はない』シリーズのようなやはりリアルなビジネスもので知られる垣根涼介氏の異色作。何しろ題名の通り主人公は「狛犬」なんですから。それも千葉の銚子の近くの由緒正しき神社の門前に、500年近く鎮座していた石像がいきなり実体化してしまうというSFそのものの設定です。

一応、物語進行上の主人公はそこそこに儲かっているという設定の建築士太刀川。彼が自宅での仕事での合間に愛車を駆って深夜ドライブに出かけるところからオハナシがスタート。

で、太刀川はその愛車で黒い大き目の物体を轢いてしまいます。その物体は見た事のない姿形をした大型犬でした。車が衝突したこととは関係なさそうな深い傷を負っていたこの犬をほっぽり出しておくことができず、動物病院に連れて行って、そのままなし崩し的に自宅で飼うことになり…、という具合にオハナシが進んでいきます。

この犬、犬のナリはしていますが、実はただの犬ではなく神獣、つまり狛犬が実体化したものです。そのことを本能的に悟った生身の犬たちは、太刀川によってジョンと名付けられたその神獣が近づくと、恐怖故か、飼い主たちがいくら制止しようとしても不可能なほどに吠え立てます。この辺は大型犬を飼っている家庭であれば類似の経験をしているのではないかと思います。飼う場所も確保しなきゃいけないし、エサ代だってバカになりません。犬同士の近所づきあいもあれば、人間様には臭いの問題で嫌われたり、幼児なんかには噛み付いたりする危険性だってあります。そんな現実的な問題を一つ一つクリアしながら太刀川はジョンの正体に迫っていきます。

時折、ジョンの視点から太刀川を中心とした人間の生態を語らせているのがミソ。俗に犬の知能は人間でいうと4〜5歳児程度などと言われていますが、ジョンは普通の人間の大人程度の知能を持ち合わせており。人間の言葉を理解することもできれば、しらばっくれて理解できないふりをすることだってできます。案外普通の犬だって、人間のことをよく観察していて、時には茶化してみたり、毒づいたりしたりしているのかもしれませんね。権勢症候群なんて言葉もあるくらいで、犬は人間のヒエラルキーに敏感だったりしますから…。

さて、ジョンの正体がどうやら普通の犬ではなく、「犬のような形をした何か」であることを太刀川が確信した時に、とある事件が起こり、ジョンは姿を消します。事件をきっかけに警察が太刀川の家に乗り込んできて、ジョンには殺人事件の実行犯としての疑いがかけられており、太刀川がその殺人事件に一枚噛んでいるのではないかと事情聴取を受けることとなります。この辺も大型犬を買っていて、人間に危害を与えてしまったなどということがあった家庭なら似たような経験をされているかもしれません。人間の社会は厳しいし、面倒臭いですからね。ジョンの行方は杳として知れず。太刀川も殺人事件をジョンが起こしたらしきことはわかっても「動機」はわからないまま。最後は、この一連の騒動で、太刀川は付き合ってはいたものの結婚には踏み切れずにいた恋人との結婚を決意する、というところで終わっています。少々無理やりな感がありますね。もっと神獣と人間とを絡ませて、人間社会の煩わしさ、鬱陶しさなどを描き出してくれるとよかったな、というのが読後最初に感じたことでした。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-08 14:32 | 読んだ本 | Comments(0)

『ムカデ人間』鑑賞

ムカデ人間 [DVD]

ディーター・ラーザー,北村昭博,アシュリー・C・ウィリアムス,アシュリン・イェニー/トランスフォーマー 

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『最強の二人』という映画がヒットし、慌てて新宿の武蔵野館に観に行った際に、同館の別のシアターで上映されていたのが標題の作。ちなみにその時はお目当の『最強の二人』は満席で観られなかったのですが、この映画を観ようという気にはなりませんでした。今回も、別に目当ての作品があってDVD屋に立ち寄った際に、ホラーコーナーにあったのをたまたま見かけて「そういえば…」という感じで上述の記憶が蘇り、とりあえず借りてきてみた、というのが実際のところでハナからあまり期待はしていませんでした。

で、内容は?というと期待にそぐわぬ駄作でした(笑)。

冒頭で車でヨーロッパ各地を旅しているという設定の二人の派手なアメリカ人のオネーちゃんが二人登場します。この二人は、通る車すらほとんどないドイツの山の中で迷ってしまい、しかもタイヤまでパンクしてしまって身動きが取れなくなります。仕方なく、助けを求めて人家を探すのですが、折悪しく雨まで降り始め、とにかくなんとかしないといけないという気持ちが募るばかりの状況です。そんな時に二人の目に飛び込んできたのはこんな寂しい山の中には不似合いな豪邸。

こういう、常軌を逸した人間たちが静謐で神聖なエリアを犯すと、そこに棲む何者かに必ず痛い目に遭わされる、というのは世界各地の神話や民話の類によくみられる物語類型ですね。

で、期待通り、このネーちゃん二人は、この屋敷の主人でいかにも怪しげな風体のハンター博士に捕らえられてしまいます。この博士はかつて、シャム双生児の分離手術で名を馳せた名医でしたが、どこでどうトチ狂ったか、現在は人体を結合させることに、異常なまでの情熱を燃やしています。具体的に言うと、一人目の人間の肛門と二人目の口、二人目の肛門と三人目の口を外科手術で繋いだ上で、膝から下の運動機能を失わせて、あたかもムカデのような状態でしか移動できなくしてしまうということです。「先頭」は日本人の男性、「二人目」「三人目」は件のネーちゃん二人です。二人目、三人目の人間はそれぞれ「一人目」「二人目」のう◯こを食糧にするしかないという状態にされちゃうわけです。特殊な趣味をお持ちの方は別にして、地獄のような状況ですね。

こういうことを考えつく人間のアタマは確かに怖いんですが、繋がっちゃった三人は怖いというよりはグロいというかバカバカしいというか…。一体何が楽しくてこの博士はこんなことを思いついたのでしょうか?で、この博士はムカデ人間を生み出すほどの技術は持っていましたが、自身の犯罪の痕跡を消す、ということには一切気が回らないらしく、いろんなところにいろんな証拠を残したまま。でそこから警察に踏み込まれることとなり、あっけない結末を迎えてしまいます。いくら深い山の中とはいえ、証拠を放置したままにしておけば一週間もすりゃ警察は乗り込んでくるでしょうよ、そりゃ。観終わった後に一番最初に感じたのはそのことに突っ込みたい気持ちでした。まあ、そういうところに気が回らないところが狂人の狂人たる所以ってことなんでしょうけどね…。

この作品は元々は小説で、原題には「First sequence」とあるそうで、実際に三作目までありますし、映画の方もパート3まであります。二作目、三作目はこの作品とは世界観が違うそうですが、あんまり観たいとは思いませんね。


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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-08 12:30 | エンターテインメント | Comments(0)

『旅人 国定龍次』を読んだ

旅人 国定龍次(上) 山田風太郎幕末小説集(全4巻) (ちくま文庫)

山田 風太郎/筑摩書房

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旅人 国定龍次(下) 山田風太郎幕末小説集(全4巻) (ちくま文庫)

山田 風太郎/筑摩書房

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タイトルは「たびにん くにさだりゅうじ」と読みます。

主人公国定龍次は架空の人物で、飢饉の際に農民を救った義賊としても名高い渡世人、国定忠治が愛妾の一人に産ませた息子という設定です。

龍次はやはり上州の渡世人として有名な大前田の栄五郎の乾分でしたが、成人するちょっと前までは自分の出自を知らなかった、という設定にもなっています。

ある日、勤皇という当初の目的を見失い、ただの略奪集団と化していた天狗党の宿に栄五郎と龍次の二人は乗り込んでいきます。栄五郎の縄張りである土地を通らないで欲しいと懇願するためでした。そこで天狗党の軍師役だった草堂万千代はある党員を呼び寄せます。千乗坊こと国定虎次でした。この千乗坊という人物は後に大谷国次と名乗った実在の人物で、幕軍と戦って戦死した記録があるそうです。虎次は自分とそっくりな、丸顔でずんぐりむっくりした体型(いわゆるとっちゃん坊や)をした龍次を異母弟と認め、忠治の遺品である長ドス小松五郎兼定を渡します。

で、龍次は自分に忠治の血が流れていることを知り、忠治同様、弱きを助け強きを挫く侠になろうと奮闘努力する姿が描かれるというわけです。この龍次、志は高いのですが、父親以上の暴れん坊。一旦思い込んだら後先考えずに突っ走るというキャラクターを付与されています。実際に先述した通り、たった二人で乗り込んだ天狗党の宿で栄五郎に暴行を加えようとした党員を一人、いきなり叩き斬ってしまったりします。激情に駆られたとはいえ、自殺行為としか言いようのない突発的な行動でしたが、この時は草堂の一言で命を救われることとなります。

上州に帰った栄五郎は龍次に「本物の侠になる修業のため、しばらく旅に出ろ」と命令します。それに猛反発したのが栄五郎の養女で、幼い頃から龍次と兄妹同然に育ち、今ではお互いに恋心を抱いているおりん。龍次はそれでもおりんを振り切って出発しますが、栄五郎は同時におりんに「大前田の娘である」というお墨付きの書と路銀を持たせて龍次の後を追わせます。こうして龍次とおりんの見えつ隠れつの奇妙な二人旅が始まります。さらに途中からは天狗党を抜け出した草堂も加わり、三人旅に。

草堂は龍次の剣の師としての役割も担います。ただの喧嘩殺法だった龍次の剣は日々磨かれていくことともなります。こうして、江戸の新門の辰五郎、甲州の黒駒の勝蔵、駿州の清水次郎長などの名だたる侠客たちと交わっていくうちに人間としての質も喧嘩の腕も上がっていくというのがメインストリーです。しかしながら、艱難辛苦を乗り越えて、上州に帰り、おりんと結ばれて上州の大親分となってメデタシメデタシという結末には残念ながらなりません。

時は幕末の混乱期。京大坂を中心に勤皇佐幕両勢力が繰り広げた血みどろの戦いに、龍次、おりんも否応なしに巻き込まれていくこととなります。もっとも、この戦乱に龍次を巻き込むことが草堂の目的だったりもしますが…。いずれにせよ龍次は侍たちの勝手で無辜の民が苦しむような状況には黙っちゃおれずになんとかしようという狭気の持ち主であるというキャラクター設定にはなっていました。

しかし、龍次のこの純粋な侠気は最後の最後で踏みにじられることとなります。苦く切ないラスト。信じていたモノに裏切られ、愛するおりんを喪った龍次の気持ちは何万語を費やしても語りつくせないでしょう。真剣に生きてきた半生を一気に飲み込んでしまう時代のうねりってやつの無情さをつくづくと感じさせてくれたエンディングでした。




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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-08 11:55 | 読んだ本 | Comments(0)

『六つの希望 吉祥寺探偵物語』を読んだ

六つの希望 吉祥寺探偵物語 (双葉文庫)

五十嵐 貴久/双葉社

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五十嵐貴久氏の吉祥寺探偵シリーズの第三作目。

主人公川庄が「本業」にしているバイト先のコンビニに6人組のフルフェイスのヘルメットをかぶった人物たちが侵入して来て店をジャックしてしまうところから物語はスタートします。

物腰や身体つきなどから、どうやら犯人たちは老人(一人は車椅子に乗っていたりもします)、それも皆かなりの高齢者らしいと主人公川庄に推測させています。6人はそれぞれ違う色のヘルメットを被っているので、言葉を交わす際にはお互いをそのヘルメットの色で呼び合っています。

犯人たちは、店内に入ってくると、まず持ってきた銃で威嚇射撃。店にいた客も店員も一斉に床に伏せるしかありません。

最初こそ荒っぽかったものの、犯人たちは意外に紳士的で、人質になった人々には一切手を出さない上に、店にあるものはなんでも好きなだけ食べていいし、外部との連絡も取り放題であると宣言します。表のシャッターを締め切り、従業員の通用口は溶接するなど身柄だけは拘束しているものの、人質はほぼ自由に行動できます。特に外部との連絡はむしろ推奨しています。この出来事がなるべく多くの注目を集めることを願うかのように…。

で、店内の人質38名と、都内5か所の小学校に仕掛けたという時限爆弾を背景に、犯人たちは警察に5つの要求を突きつけます。高級な寿司と高級なウイスキー、販売が停止されたため入手困難なタバコという、一人の犯人の要求以外は、全て特定の人物を呼んで、その人物と話をさせろというもの。しかもそのうちの一人は消息不明。犯人たちから与えられた時間は五時間。果たして警察は犯人たちの要求に応えることができるのか?そして川庄たち人質の運命やいかに、というサスペンスです。ストーリーの紹介は以上にしたいと思います。

私が五十嵐氏という作家を知った『交渉人』と同様のテイスト、すなわち一見なんの関係もなさそうな出来事や人物たちが実は裏で深く結びついているというストーリーが次々と展開されていきます。『交渉人』では血も流れたし、恨みと倫理の対立というかなりへヴィーな、人間の葛藤が描かれていました。今作は、血こそ一滴も流れない穏やかな展開ですが、人間が人間として生き、そして死んでいくとはどういうことなのかという、別種の重々しさがありました。松下幸之助は「青春とは心の若さだ」という言葉を残しましたが、何事であれ、追究したい事柄があり、それに対しての情熱が冷めていなければ、たとえ年齢が幾つになろうと、多少体が不自由になろうと、その人はまだ青春時代の中にいる、そんなことを思わせてくれた一昨でした。

大泉洋あたりを主役にして是非映像化してほしい作品です(でもそれだと『探偵はBARにいる』とカブっちゃうか…)。


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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-07 19:48 | 読んだ本 | Comments(0)

『アフタースクール』鑑賞

アフタースクール [DVD]

大泉洋,佐々木蔵之介,堺雅人/メディアファクトリー

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大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人の中堅個性派俳優3人の共演が、公開当初少々話題になったのが標題の作品。

物語は女子中学生美紀が下駄箱の前で同級生の木村に一通の手紙を渡すところから始まります。場面は変わって臨月の大きなお腹を抱えた美紀(常磐貴子)を気遣う優しそうな木村(堺)。「木村家」の幸せな朝の風景が描かれます。そこに絡んでくるのが二人の中学時代の同級生で、現在は母校の教師をしている神野(大泉)。お人好しでお節介焼きで、あまり女にはモテそうでなく、木村と結ばれた美紀に、いまだに惹かれている様子、というのが自然な形でストーリーの中で説明されていました。

さて、木村は出勤していきますが、なぜか神野が所有するポルシェに乗っていくのです。一介の中学教師にしか過ぎない神野がなぜポルシェになんか乗れるのか?どうしても不自然さを感じてしまいますが、この映画は、こうした不自然さをそのままにせず、常に頭の隅においておいた方が良いです。ホンの何気ないシーンが、後々様々な伏線として登場して来ますよ。

場面は変わって、歌舞伎町の少々怪しげなアダルトショップ。店長北村は何やら借金に追われているようで、ショップ店長の他に探偵もやっているようですが、どうも真っ当な連中と付き合っているわけではなさそうです。

そんな店主は、ある人物から、木村の身辺を探ることを依頼されます。木村が中学卒業後、長じるにつれても地元から動いていないことを見て取った北村は、大胆にも木村らの出身中学に同級生「島崎」を装って、同窓会名簿を入手しに乗り込みます。そこに通りかかったのが神野。神野は島崎という名前に心当たりはあったものの「あんまり話したことなかったよな」と、人相風体の記憶があやふやだったため、「島崎」の正体を怪しむこともありません。この辺も不自然です。一学年に1000人もいるようなマンモス校ならともかく、中学3年間一緒なら、いくら何でも面影ぐらいは記憶に残ってるはずだろ?なんでそんなにすんなり信じちゃうわけ?しかも顧問の部活もあるであろう、中学校の勤務をほっぽり出して、島崎の車に乗り込んで探偵の真似事までやるという徹底ぶり。お人好しにもほどがあるだろ!って突っ込んじゃいましたが、この辺りは全てラストを「合理的」にするための布石なんです。ラストに向かうにつれ、「あ、なるほどね。」と思わされることが多くなり、最後はやられたな、という仕上がりになります。ゆえにストーリーはあんまりあかせないんです…。

大泉、佐々木、堺の3人はそれぞれの持ち味をしっかり出して、それぞれに付与された役のキャラクターを「それっぽく」演じていました。脇役にも個性的な役者さんたちが数々配されていましたし、警察も暴力団も外見だけで見比べたら大して変わらないよね、という意図の下に紛れ込まされていた、細かなくすぐりが笑いも誘ったし、伏線の一部にもなっていました。つくづく油断できない作品でしたね。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-07 15:52 | エンターテインメント | Comments(2)

『人生を狂わせる10本の映画』を読んだ

人生を狂わせる10本の映画

シネマ4の字固め/null

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「シネマ4の字固め」というPod Castで配信されている映画評論対談を書籍化したもの。マルモト、タカノ両氏が「出演」し、マルモト氏編の5本は同氏の一人語り、タカノ氏の5本は両氏の対談という体で文字化してあります。

『アマデウス』という超メジャーな名作から、どこで上映されるかすらわからず、語っているタカノ氏本人自身が観たこともないという幻のカルト作品『バリゾーゴン』まで10本の映画が紹介され、それぞれが両氏の人生をどう狂わせたかが語られています。

本にせよ、映画にせよ、音楽にせよ、他人に対して自分の考えなり情熱なり感動なりを表現した作品に影響を受けて、その後の人生が変わったという例は枚挙にいとまがないでしょう。私の場合は中学時代に触れた北杜夫氏の「マンボウ」モノに大いに刺激を受け、影響されました。それまで「笑い」とは動作とか、一発ギャグの類で取るものだと思っていましたが、文字だけでもいくらでも面白いことが表現できるんだ、と知った衝撃は非常に大きかったですね。このブログをはじめとして、様々な場所で文章を書き殴っていますが、大半の場合、どこかで笑いを取ることを意図したフレーズを挟んでいるつもりです。ウケるか否かは補償の限りではありませんがね…。

マルモト氏にとっての「マンボウ」モノに当たるのが『悪魔のいけにえ』というホラー映画。頭の狂った一家に、たまたま通りかかったヒッチハイカーたちがひたすら惨殺されるだけというグロな内容だそうですが、キャラクターの設定からストーリー展開、個々のシーンに至るまで、タカノ氏のとっては全てが衝撃的だったそうで、この映画を観てしまったがゆえに、のちに映画でメシを食う道を選んだとまで言い切っています。確かに人生を狂わせた作品ですね。

私はこの作品に関しては未見ですので、ぜひ観てみたいと思い、先週近くのレンタルDVD屋で探してみたのですが、残念ながらありませんでした。悔しいんで『ムカデ人間』というグロ作品を借りて来ちゃいましたが(笑)。

人生のある時期において、その後の人生の方向性を決定してしまうような作品と出会うというのは幸せなことなのか?それとも不幸なことなのか?恐らくは幸いと言って良いのでしょう。だいたい人生に「正解」などというものはないのですから、森羅万象のうちに一つでも興味のあるものが見つけられ、それを生業にできることは幸せなことなんだろうと思います。締めが急に真面目になっちゃったなぁ(笑)。




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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-07 14:24 | 読んだ本 | Comments(0)

『つまみ食い文学食堂』を読んだ

つまみぐい文学食堂 (角川文庫)

柴田 元幸/角川書店(角川グループパブリッシング)

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ポール・オースターをはじめとする米文学作品の翻訳者として名高い柴田元幸氏による、小説に登場する食べ物に関するエッセイ集。

文学作品に関していうと、美味な食事というのはまず登場しません。美味な食事というのは典型的な幸せな状態であり、多くの場合は幸せな状況を描いても「ウケない」からです。

場末の安食堂でそれこそ食中毒の心配とか、懐具合の心細さなんかを感じながら食べる得体のしれない定食の類とか、女を口説き落とすのに使う小道具としての、味は一流であっても価格は超一流だとか、意中の男性から振られたあまり見栄えのよろしくない女性がジャンクフードの類をバカ喰いして過食症に陥るとか、とにかく、素直に美味そうで、こんな美味いものを食えることは無上の幸せだなどというシーンはまず登場しないし、仮に登場しても印象にはほとんど残りませんね。

たまに平々凡々な食事のシーンが描かれたりもしますが、食卓についた人間が、食事の直前に人を殺してきた(それもかなりスプラッターな殺し方で)とか、料理の材料が実は人肉だったりとか、とにかく一筋縄ではいかないのが文学作品で描かれる食事や食品です。吉本ばなな(現よしもとばなな)氏はデビュー作「キッチン」で、主人公の女性が、真夜中に恋人にカツ丼を食わせる「幸せな」食事シーンを登場させますが、これは性行為の代用としての快楽であり、食事そのものと言うよりは、二人の関係性を味わうものでした(とはいえ登場してきたカツ丼は実に美味そうで、翌日の昼食にカツ丼を食いに行った覚えがあります)。

最近ではダイエットやら病気の予防のなどの名目で、糖や脂肪分など人間が味覚として「美味い」と感じる栄養素に対してのバッシングが高まってきていたり、逆に子供にジャンクフードしか食べさせない親がいたり、遺伝子組み換え食品なんてものが登場したりと、食をめぐる環境は実に複雑怪奇で、これを真正面から取り上げたら、さぞかし読み応えのある作品となりそうな様相を呈してきていますね。

こういう異常な状況下においては、例えば日本なら白米のめしに味噌汁、焼き魚に納豆に漬物なんて素朴な食事を真正面から描いた方が人々を唸らせることができるのかもしれませんね。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-02 15:02 | 読んだ本 | Comments(0)

『教授のおかしな妄想殺人』鑑賞

教授のおかしな妄想殺人 [Blu-ray]

ホアキン・フェニックス,エマ・ストーン,パーカー・ポージー/KADOKAWA / 角川書店

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ウディ・アレン監督のコメディサスペンス。

主人公は片田舎の小さな大学で、哲学を教えているエイブ。彼は哲学を教えながらも自分の人生に対しては絶望しており、無気力に酒に溺れる日々を送っています。片時もウイスキーが手放せず、近所に住む尻軽な女性化学者が露骨な誘いをかけてきて、いざベッドインしても男性機能が不全なまま。取り組んでいる著作も父として進まず、イライラを募らせては酒を飲んで、そんな自分を嫌悪してますます落ち込んでいく…。観ていて親近感を感じざるを得ませんでした(笑)。生活の全てに行き詰まりを感じているところなんか特に。

そんな中、ジルという女子学生から授業内容についての質問を受け、そのことがきっかけで、エイブは彼女とだんだん親しくなっていきます。ただしこの段階ではエイブは彼女との関係について「友人」という表現を用いており、恋愛感情を否定しています。私が中学生だった頃の、田舎の中学生の恋愛事情のようなこそばい、じれったい展開。

しかし、ある日二人で入ったレストランの隣で交わされていたとある家族の会話を盗み聞きしたことから、彼を取り巻く環境が一変します。この家族は、別居した夫婦の子供の親権を母親ではなく、父親に与えるという判決を下した判事に関する恨みつらみを目一杯吐き出していたのでした。判事が全て悪いという話を丸のまま信じ込んだエイブは、義憤にかられ、この判事を殺害することをいきなり決意してしまいます。そしてこの「使命」は彼を今までとは全く逆の意欲的で活動的な人物に変えてしまいます。自己啓発本の典型的な「説得パターン」、すなわち人は何か目的を持つことで人生を充実させることができる、ってなことの端的な表現ですね。その目的が「殺人」ってところがおかしな妄想なんですけどね。私も何か大きな人生の目的が欲しい!その目的達成のためには殺人はできないけど、自分自身の命を差し出すくらいの覚悟ができるような目的が!!まあ、これは自分で見つけるしかありませんがね…。

さて、エイブは綿密に計画を練り、着々と実行に向かいます。その過程で昂ったココロとカラダを鎮めるために先述した尻軽化学者ともジルとも深い関係になったりします。で、肝心の作戦は見事にハマり、エイブは自らに容疑のかからない状況を作り出した上で、判事を殺害することに成功します。しかし、天網恢恢疎にして漏らさずの言葉通り、犯人がエイブであることをジルにひょんなことから見破られてしまいます。ジルは、大罪を犯したエイブを許すことができず、自首を勧め、もし自首しなければ自分が訴え出ると宣言します。さて、追い詰められたエイブはどう行動するでしょう?ストーリー紹介はここまで。詳細は本編をご覧ください。一応サスペンスですからね。

人間の心理と行動の不条理さを笑おうというのがこの作品のメインテーマだと思いますが、何気なく見過ごしていたシーンや、聞き流していたセリフが後になって重要な伏線であったことに傷化される、という展開はなかなか考えられていたと思います。結末はウディ監督の作品らしく、シニカルさとやや悲し目のユーモアに彩られていた、とだけ述べておくことにします。




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# by lemgmnsc-bara | 2018-07-02 12:28 | エンターテインメント | Comments(0)

『早春物語』鑑賞

早春物語 [DVD]

原田知世,林隆三,田中邦衛,仙道敦子,由紀さおり/パイオニアLDC

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デビュー間もない頃の原田知世の主演作。『時をかける少女』の時のような「いかにも」な女子高生ではなく、複雑な事情を受け止めながら「大人の女」への脱皮を図っていこうとするヒロインを生々しく演じています。

ストーリーは、当時のロリコンのおじさんたちがさぞ胸躍らせたであろう展開、すなわち女子高生が親子ほどに年の離れた中年男性に惹かれていくというモノです。

実際にはその心惹かれた男性は、昔、すでに死んでしまった母と恋人同士でありながら、海外での仕事のために別れた人物であるという一捻りした関係性が内包されています。揺れ動く自らの心情に翻弄される主人公沖野瞳(原田)は自分からオジサン梶川(林隆三 そういえばこの映画出演で、彼の「中年の魅力」がクローズアップされ少し人気が出たとも記憶しています)い露骨に迫ったりしますから、そのテの趣味のある男性諸氏は「もし自分がこんな状況に遭遇したら」という妄想を膨らませるだけ膨らませたはずです。大っぴらに援交している女子高生が数多いる今日では考えられないような純情さをこの二人は持ち合わせています。まあ、先に述べたような事情があるからでもありますが…。

ストーリーとは別に瞳の同級生麻子役の仙道敦子が自らの「淫夢」の類を語る際の「少し濡れちゃった」というセリフに少しドギマギ。今ならいざ知らず、当時の女子高生同士の会話ってあんなにエロかったんですかね?文字通り少々芝居掛かったセリフではありましたが、同じ年代の男子高生がするようなレベルのエロ話を女子もやっていたとは塑像しにくいなぁ、ってのは私の過大な幻想でしょうか?

この時代の角川映画は、良きにつけ悪しきにつけ、女優をたっぷりと見せるという作りになっていますので、そういう意味ではうまく作ってあると思いますが、作品の質としては?をつけざるを得ません。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-06-28 19:55 | エンターテインメント | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
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