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All About 身辺雑事

『キングスマン:ゴールデン・サークル』鑑賞

キングスマン:ゴールデン・サークル 2枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]

タロン・エガートン,コリン・ファース,ジュリアン・ムーア,マーク・ストロング,ハル・ベリー/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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演技派と目されていたコリン・ファースの派手なアクションシーンと、意外な小道具が話題となった『キングスマン』シリーズの二作目。

一作目で主人公だったハリー(コリン・ファース)が死んでしまったので、今作の主人公は、前作でハートをかばって死んだ同僚の息子エグジー(タロン・エガートン)。諜報機関であるキングスマンとジュリアン・ムーア演じる女王ポピーが率いる麻薬密売組織ゴールデンサークルとの戦いが描かれます。

冒頭からいきなりのカーアクション。キングスマン失格の烙印を押され、今やゴールデンサークルの一員に成り下がったチャーリーとエグジーとが走行中の車両内でバトル。チャーリーは高度にメカニカルな義手を武器に、車体のあちこちを破壊しながらエグジーに襲い掛かりますが、そこは若いとはいえ、「正式」なキングスマンであるエグジーとチャーリーの実力差。苦戦しながらもエグジーはチャーリーを撃退します。しかしながら、義手はチャーリーの意思とは別にコントロールされており、車両のコンピューターからキングスマンの情報をハッキングします。

この情報をもとに、キングスマンの基地や各地のメンバーの居住地にミサイルが撃ち込まれ、エグジーと、主に情報を扱うことの多い非戦闘員マーリンを除いてキングスマンは全滅。さて、八方ふさがりのエグジーとマーリンはどうするのでしょう、って『ミッション・インポッシブル』そのまんまだろ!しかも組織の秘密金庫から出てきた「ステイツマン」って名前のウイスキーの産地がケンタッキー(なんでスコッチの本場でバーボンなんだ?って疑問もあります)だからケンタッキーに行けばなんとかなる、って短絡的な思考と行動は何?普通は飲んで酔っ払って刹那的な気分のまま風俗にでも行くか、ゲロでも吐くかくらいだろ?まあ、そこは諜報機関だけにどんなモノにでも何かしら意味があるとエグジーたちが意識していたのと、どんな小さな手がかりでもそこにすがりつくしかないというくらいに追い詰められていたがゆえの行動だったと、好意的に解釈しておきましょう。

で、エグジーたちの予想通りというか、期待していた通りステイツマンはあまりかにおけるキングスマンみたいな活動をする組織で、エグジーたちの活動をサポートすることになります。

ここで『リングにかけろ』または『魁!男塾』システムともいうべき超御都合主義的展開へ。すなわち、前作で左眼に銃弾を浴びて死んだはずの前作の主人公ハリーが生きていたのです。銃弾を受けたすぐその後に最先端医療システムで保護され、過去の記憶のほとんどを失うというダメージを受けながらも生きていた。これは流石にねーだろ。でもって様々な紆余曲折を経て、ハリーは記憶を取り戻し、キングスマンに復帰。いやはや。ゾンビじゃねーんだから明らかに死んだことになっている人間を生き返らせるんじゃねーよ、全く。

さて、ステイツマンのバックアップと旧主人公の助力を得て以降のストーリーは勧善懲悪の物語そのもの。最後は正義が勝ってメデタシ、メデタシ。

『ハンニバル』で、レクター博士の「恋人」として「普通の女性」を演じていたジュリアン・ムーアが、レクター博士もかくやと思わせる残虐かつ悪趣味なシーンを演じ、憎たらしさを醸し出していたのが唯一の救い。ヒット作の続編ってのは難しいですね。





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# by lemgmnsc-bara | 2018-06-17 08:34 | エンターテインメント | Comments(0)

『IT』鑑賞

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組/イラスト・カード付) [Blu-ray]

ビル・スカルスガルド,ジェイデン・リーバハー,ソフィア・リリス,ジェレミー・レイ・テイラー,フィン・ウォルフハード/ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

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アメリカ産のホラー映画。彼の国では結構高い評価を得たそうですし、日本でも公開当初からマスコミに多々取り上げられていたという記憶があります。なおこの作品は1990年に一度ドラマ化されたもののリメイク版だそうです。

舞台はど田舎の街デリー(インドとは地名の綴りが違います)。日本でいうと、中学生くらいの年齢の少年少女7人がメインキャラ。

このデリートいう街には27年周期で不可解な惨事が起こるというジンクスがあり、作中のリアルタイムとして設定された1989年は前回の惨事があった後、27年を経ていることになっています。そして街では若者や子供達が行方不明になるという事件が頻発します。行方不明者の中には7人組のリーダー格であるビルの幼い弟ジョージーも含まれています。というわけで、この7人組が事件の謎を追いかけるというのが大筋。

7人組は最初いじめっ子たちから「負け犬クラブ」と名付けられた4人組でした。そこに不良少女と噂のあるべバリーが加わり、おデブちゃんで高校生不良グループの格好の標的になっているベン(個人的にはこの少年に一番感情移入できました 笑)、さらに黒人であるということでやはりいじめの対象となっているマイクが加わります。彼らが力を合わせて、現実の敵にも、何かよくわからない怖いものに立ち向かう姿は往年の名作『スタンド・バイ・ミー』を連想させたのですが、それもそのはず、この『IT』という作品の大元の小説の作者はスタンド・バイ・ミーの作者でもあるスティーヴン・キングですから。

さて、訳のわからん怖い存在である「IT」はピエロの姿で皆の前に現れることが多いのですが、基本的には、最初はその人物が一番怖いと感じているモノや現象に変身して個々の人物の前に現れます。暗い場所や誰もいない部屋などに感じていた単純な不気味さから、本人がはっきりと自覚している怖いもの(負け犬クラブの最初の4人のうちの一人スタンリーが常々恐怖していた歪んだ顔の女性の肖像画が実体化する)から、いわゆるトラウマ(マイクの両親は火災で命を落としたのですが、死の間際に苦しみ悶えながら、ドアの隙間から焼け焦げた腕を出していました)、無意識下に無理やり押し込めている恐怖(父親から性的虐待を受けていると思しきベバリーの恐怖や、過干渉な母親からの依存に苦しむエディ)まで、痒いところに手が届くような恐怖のオンパレード。

その恐怖に打ち勝つのは結局のところ友を信じる気持ちだ、というのはスタンド・バイ・ミーにも共通するクサさなのですが、こういうクサさが受ける素地というのがアメリカにはあるのでしょう。誰も信用できないという現実があるからでしょうけど…。

さて、エンドロールにはわざわざ「第1章 完」の文字が表示されます。もともと1990年のドラマは二回に分けられていたそうですから、ヒットしたらすぐさま続編に取り掛かる準備がしてあったんでしょう。

作品の中で中学生だった人物は「次回」の起こる27年後には40歳前後。「大人」になった7人組のその後が描かれるのか?あるいは全く別のキャラクターが登場するのか?はたまた新旧の登場人物たちが絡むのか?なんとなくですが、個人的には彼らの子供たちが何らかの事件に巻き込まれるんじゃないのか?という気がしています。どんなパターンとなるにせよ、続編は今作を超える出来に仕上げていただきたいモノです。

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# by lemgmnsc-bara | 2018-06-16 20:01 | エンターテインメント | Comments(0)

『ビッグ・リボウスキ』鑑賞

ビッグ・リボウスキ [DVD]

ジェフ・ブリッジス,ジョン・グッドマン,ジュリアン・ムーア,スティーヴ・ブシェミ/ジェネオン・ユニバーサル

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コーエンブラザース作、演出の一作。何かのランキングでかなり上位にあったので、なんとなく心に引っかかっていたのをレンタル。

主人公のジュフリー・”デュード”・リボウスキ(以下デュード)はデブで冴えないオタクっぽいおじさん。日中は怠惰に過ごし、ボウリングが唯一の社会との接点という設定です。

そんなデュードが、ある日自宅でやばい連中の待ち伏せに遭います。彼らはデュードに「借金を払え」と要求するのですが、デュードには全く心当たりがありません。デュードを襲った二人のおにいちゃんたちは「お前の女房の借金だ」というのですが、デュードには近づこうとする女性すらなく、女房なんてものは持ったことすらないのです。実は、この街にはもう一人リボウスきという人物がおり、そちらはビッグと言われるほどの大金持ち。どうやらこのおにいちゃんたちはデュードとビッグを間違えたらしいのです。ビッグの妻の浪費は事実のようでしたが…。まずもって導入部からおマヌケ全開です。

おにいちゃんたちの一人が腹いせにデュード家の敷物に放尿し、使い物にならなくしてしまいます。この敷物の賠償を求めて、デュードはビッグの元に出向くのですが、全く相手にされないまま追い払われます。せめてもの抵抗としてデュードはビッグの秘書に「どれでも好きな敷物を持っていって良いと言われた」と嘘をつき、一枚敷物をせしめます。こういうところでデュードのケチな小悪党ぶりが描かれます。

ところが数日してデュードはビッグの自宅に呼び出されることとなります。件のおにいちゃんたちの背後にいる組織がビッグの妻を誘拐して、身代金を要求してきたのでした。おにいちゃんたちの顔を知っているのはデュードだけということで、彼は身代金の受け渡し役を依頼されます。ここで素直に身代金の受け渡しが行われないところがコーエン兄弟映画の仕掛け。デュードのボウリング仲間が身代金のネコババを持ちかけ、デュードの反対にも関わらず、ネコババを強行してしまったことで、主人公たちがどんどんやばいシチュエーションに追い込まれていく、いわゆるドツボにはまってしまうというストーリーが展開されることとなります。

この辺のドタバタぶりがコーエン作品の妙味です。今作に関しては多少血は流れますが、人は死なず、シャッキリとはしないながらも心和む結末に向かって行きます。日米の笑いのツボの違いなのか?個人的な感覚なのか?コメディーと謳っているわりにはそんなに笑えない作品でした。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-06-10 16:04 | エンターテインメント | Comments(0)

『アウトレイジ 最終章』鑑賞

アウトレイジ 最終章 [DVD]

ビートたけし,西田敏行,大森南朋,ピエール瀧,松重豊/バンダイビジュアル

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「全員悪人」というキャッチフレーズで、武闘派ヤクザの姿を描いた北野作品『アウトレイジ』の最終章。登場人物から発せられる言葉をはじめ、作品全体に色濃くバイオレンス色が漂っています。北野映画のど真ん中の作品ですね。

今作は、関西最大の暴力団組織である花菱会と韓国の暴力団組織との抗争がメインストーリー。そこに花菱会の跡目争いやら、関東ヤクザと関西ヤクザの対立やらが絡んでいって、事態が複雑化。そこに北野武扮する元関東ヤクザでバリバリの武闘派だった大友が乗り込んでいって派手にドンパチをやらかします。

この作品が遺作となった大杉漣氏が、花菱会の先代会長の娘婿として跡目をついだ、元証券マンの二代目を好演しています。居丈高に古株の幹部たちを罵り、事あるごとにヤクザを見下した発言をするこの二代目に、西野(西田敏行)をはじめとする古参の幹部たちは不満を募らせていました。

そんな折、花菱会の稼ぎ頭である花田(ピエール瀧)が韓国の済州島で、風俗嬢とのトラブルから、その風俗嬢のバックである韓国ヤクザを的に回すという失態を犯します。二代目はこのトラブルを契機に、強い経済的基盤を持つ花田を取り込み、かつ組織No.2の西野とNo.3の中田(塩見三省)とを仲違いさせようと画策します。このゴタゴタに済州島を仕切る張親分の意を受けて乗り込むのが大友。

まあ、派手に銃弾を撃ちまくりますし、見せしめを兼ねて、敵方の要人たちはかなり残虐な方法で殺します。どんな殺し方だったかは是非とも本編をご覧ください。方法は斬新でしたが、決して後味の良いシーンではありません。

大友は暴れに暴れ、すべての敵を殺戮します。そしてその後に待っていたものは…。衝撃的ですよ、ラスト。確かにこの終わり方なら続編は作りようがありません。

日本的な任侠モノとは一線を画し、ひたすらリアルな暴力を描いたこの作品は、日本では大ヒットするとは思えませんが、世界全体に対してはウケる内容であると思います。世界が「世界のキタノ」に期待しているであろう作風のど真ん中作品だったと思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-06-10 15:17 | エンターテインメント | Comments(0)

『岳飛伝 17 星斗の章』を読んだ

岳飛伝 17 星斗の章 (集英社文庫)

北方 謙三/集英社

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岳飛伝の最終巻にして、北方版『大水滸伝シリーズ』の最終巻でもあるのが標題の作品。

このブログを始めてから10年以上経ちましたが、確か一番最初に紹介した書籍は水滸伝の5巻目じゃなかったかな、と少々感慨に浸りながら読書開始。

ストーリー的にはすでに前巻でヤマ場は描かれていました。金国軍の総帥兀朮は史進との戦いに敗れて死んでいたし、南宋も将軍程雲、宰相秦檜共に先は長くなさそうだって雰囲気が醸し出されてましたから、後はいかに梁山泊・岳飛連合軍が「統一」を果たし、梁山泊第一世代から受け継がれてきていた「志」を体現するのか、というところだったのですが、結局「志」は各人の心の中にあり、全土に物流網を張り巡らして、政権がどう変わろうとも、働けば働いただけ民は報われる、という仕組みを作りあげたところで物語は終わります。

実際に梁山泊軍が目指した国のカタチが理想的に出来上がっていたら、中国は今頃押しも押されぬ世界一の大国となっていたかもしれません。もっとも、ローマやスペインなども一時期は「日の沈まぬ国」と言われるほどの隆盛を誇りながら、現在は見る影もないことを考え併せると、単なる老大国に変わっただけ、という結果がもたらされたかもしれませんがね…。

今作の主人公、岳飛は最後の最後まで戦い続け、勝ち続けますが、結局は最後の戦いで受けた矢傷がもとで静かに息を引き取ることになります。水滸伝で宋江が自害したこと、楊令伝で楊令が暗殺されたことに比べれば安らかな死でした。彼が死んだことにより、戦いによってモノゴトの雌雄を決する時代が去り、軍人たちはその任を終えたというのが暗示されていたと思います。

とにかく最初から最後まで読み応えのある作品でした。合計で50巻近いというのに読み飽きるということがなかった。原作を完全にぶっ壊して大胆に再構成した上で、当時のアジア全体の雰囲気を損なうことなく見事に完結させた北方氏の筆力には恐れいらざるを得ません。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-06-10 12:01 | 読んだ本 | Comments(0)

『沓掛時次郎』鑑賞

沓掛時次郎 [DVD]

市川雷蔵,新珠三千代,杉村春子,志村 喬/KADOKAWA / 角川書店

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長谷川伸氏作の戯曲の映画化作品。時次郎に市川雷蔵、ヒロインおきぬに新珠三千代、主題歌は橋幸夫と、当時の人気者を集めて製作された一作です。

時次郎はいわゆる渡世人。渡世人は一宿一飯の義理ってやつで、草鞋を脱いだ溜田の助五郎一家のためには何か代償を払わなければなりません。この場合は六ツ田の三蔵という博徒の命を奪うことでした。とはいえ人情に厚い時次郎は何の恨みもない三蔵を斬り殺すには忍びなく、一太刀だけ浴びせると、助五郎一家への義理は果たしたとして、三蔵を見逃します。そもそも助五郎一家は圧倒的な人数で三蔵とその家族(女房おきぬ、一人息子太郎吉)を皆殺しにしようと企てており、事前にその企てを察知していた三蔵は落ち合う場所を決めたうえで、自らは陸路で、女房子供は水路で逃亡しようとしていましたが、助五郎一家は水路、陸路どちらにも大人数で待ち伏せをしていました。で、手傷を負っていた三蔵は助五郎一味に滅多斬りにされて死亡。

これに憤ったのが時次郎。大人数で一人の人間を惨殺するとは何事か!と助五郎に噛みつき、「三蔵の女房子供は絶対に守る」と啖呵を切って落ち合い場所に赴いて、おきぬと太郎吉を救い出し、おきぬの故郷である足利まで送り届けることとなります。で、後は雨あられと降ってくる厄難から、時次郎がおきぬと太郎吉を守り抜く姿が描かれます。

まあ、何というか、いかにも昭和の日本人にウケそうなストーリーですね。義理と人情の板挟み、最初は時次郎を夫の仇と憎みながらもその献身的な行動にほだされて次第に惹かれていくおきぬ(しかもこの恋は結局実りません)、太郎吉と時次郎の心の交流、ヤクザの勢力争いに、おきぬとその父親の確執。定番のおかずがすべて揃った幕の内弁当ってなところでしょうか?ちなみにこの演目は歌舞伎にも取り入れられ、人気を博しているそうです。キャストやストーリーのディテールを変えて、映画化されること実に8回。林長二郎、長谷川一夫の二つの芸名で二度主演を張った方もいます。2010年にはコミック化もされたそうですが、私が知らなかったくらいですから、大した話題にはならなかったのでしょう。確かに、現代の醒めた目で見てしまうと、この物語は矛盾だらけ。そもそもの渡世の義理なんてのが理解できないでしょうし、恨み憎しみがなかったとはいえ、一度は自分の手にかけた人物の女房子供の世話のために命を張る姿にも????でしょうね。

主演の市川雷蔵は、ニヒルさと華麗な剣さばきが特徴の当たり役眠狂四郎とは真逆のキャラクターである時次郎を熱演していましたが、どうしても狂四郎のイメージが強すぎて何となく馴染めませんでした。一つの役のイメージが定着してしまうのは良し悪しですね。

なお、ちょっとググってみたら、この作品で可愛らしい少年太郎吉を演じていた青木しげる氏はこの作品の翌年製作されたTVドラマの出演を最後に子役を辞め、後には京都大学の医学部に進んで現在は放射線科医師としてご活躍だそうです。人の一生ってのはどう転ぶかわかんないですね。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-06-10 11:06 | エンターテインメント | Comments(0)

『バリー・シール アメリカをはめた男』鑑賞

バリー・シール アメリカをはめた男 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

トム・クルーズ,ドーナル・グリーソン,サラ・ライト・オルセン,E・ロジャー・ミッチェル,ジェシー・プレモンス/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

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実在した人物が、実際に起こした事件を描いたクライムアクション。題名『バリー・シール』とはズバリこの実在した人物の名でこの作品ではトム・クルーズが演じています。

バリーは史上最年少でTWAに採用された天才的パイロットでした。世の中には往往にしてあることですが、技術の高さと人格の高潔さとは必ずしも一致しません。バリーは禁輸品となっているキューバ産の葉巻をこっそりと持ち帰っては売りさばいて、宿泊地でガールハントする資金源にしていました。そこに目をつけたのがCIA。バリーとの連絡係となったシェーファーは、密輸の事実に目を瞑る代わりにパイロットとしての腕を活かして協力することを要請します。

バリーの存命時は冷戦下で、中南米の小さな国々でアメリカとソ連の代理戦争が頻発していました。彼はCIAから小型ジェット機を与えられると、これらの国々を超低空で飛行しながら、反米ゲリラや反米政府の拠点などの写真を取りまくります。それこそ雨あられと打ち掛けられる銃弾をかいくぐって、任務を果たすバリーは次第にその腕を認められ、CIAの信頼も厚くなってパナマの独裁者ノリエガ将軍との連絡係に抜擢されるわ、ニカラグアの反共組織への武器の輸出を任されるわで、もはやCIAの中南米での活動には欠かせない人物となっていきました。

このまま、国の仕事だけしていればよかったのですが、身を隠すためにど田舎に引っ越さざるを得ず、そのために女房のご機嫌を取らなければならないバリーには金が必要で、彼はより多大な金銭的見返りを求めて、コロンビアのメガジンカルテルと手を組み、コカインの米国内への密輸入に携わることとなります。彼の腕を買っているCIAは渋々ながら黙認。それをいいことに、バリーは自身のみならず他にパイロットを5人も雇って本格的にコカインを密輸し始めます。

ここで黙っていなかったのがFBI、DEA(麻薬取締局)、ATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局、長えわ!)にバリーの居住地の州警察。この四つの団体はそれぞれバリーを追い、ついに検挙。この検挙シーンは結構笑えます。

しかし、バリーはコカインの密輸ルートをを明らかにするという司法取引と、中南米での活動を公にしたくないCIAの思惑で釈放されます。彼はその後密輸で稼いだ、隠し場所に困るほどの有り余る金で優雅に暮らしましたとさ、ではオチになりません。下手すりゃ全米で暴動が起こるほどの騒ぎになったと思います。

結局バリーは自らの命を代償に差し出さざるを得なくなります。悪事はいつか露見して、報いを受ける。なんのことはない最後は勧善懲悪な結末なのですが、実話なのですから仕方ありません。

飛行機の操縦の難しさがピンとこなかったし、当時の中南米のゴタゴタもイメージできなかったので、今ひとつドキドキ感には欠ける作品でした。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-06-07 17:33 | エンターテインメント | Comments(0)

『オリエント急行殺人事件』観賞

オリエント急行殺人事件 2枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]

ケネス・ブラナー,ジョニー・デップ,ペネロペ・クルス,ジュディ・デンチ,デイジー・リドリー/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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アガサ・クリスティーのあまりにも有名なミステリー小説の二度目の映画化作品。ジョニー・デップやペネロペ・クルスなどのビッグネームがキャストに名を連ねる中、主役のポワロを務めたのは監督でもあるケネス・ブラナー。

原作を読んだことのある最高権力者様によれば、今作のポワロは原作のイメージと合わないためにどうしても違和感がぬぐえないとのことでした。彼女のイメージではポワロはもっと小男で、有名な「灰色の脳細胞」というフレーズを発する際にはどこか、他人を見下したようなニュアンスがある(『相棒』の杉下右京氏の慇懃無礼さのイメージでしょうか?)そうなのですが、確かにケネス・ブラナー氏は日本人がイメージするところの「英国紳士」に近い外見でしたね。

さて多くの人々がご存知であろうストーリーですが、少し紹介しておきます。

エルサレムで、休暇中にも関わらず、財宝の盗難事件を解決したポワロは、さらに休暇を取るため、友人である鉄道会社の重役ブークの手配で、オリエント急行に乗り込みます。そこには多国間を走る列車らしく様々な国籍の様々な階層の人々が乗り合わせていました。食堂車やコンパートメントの通路。発車前の駅での会話から、さりげなく書くキャラの説明を済ますところは、オーソドックスなやり方ですが、見え見えの説明っぽさがなくて上手く作ってあったように思います。それぞれがなんとなくワケありって風情なのですが、一人だけあからさまに危険な空気を方々に発している人物がいました。美術商を営んでいると自称するラチェット(ジョニー・デップ)です。彼は、ポワロに「命を狙われている」と打ち明け、身辺警護を依頼するのですが、ポワロはあっさりとその依頼を断ります。

そんな中、列車はイスタンブール近辺の山中で雪崩に遭って脱線。そしてその際に、ラチェットが列車内の鍵のかかったコンパートメント内で刺殺されているのが発見されます。走っている列車の、それも中から鍵のかけられた二重の密室状態のコンパートメント内で誰がどのような方法を用いてラチェットを殺したのでしょうか?そしてラチェットは何故殺されたのでしょうか?というわけでこの謎にポワロが挑んでいくというのがストーリー紹介です。現場を詳細に観察し、乗客の一人一人から丹念な聞き込みを行って、「灰色の脳細胞」が導き出した答えとは?この後の展開と結末についてはぜひとも本編をご覧いただくか、原作を読むかしてください。ミステリーの結末をネタバレさせてしまうような罪を犯したくはありませんから(笑)。

映像であるか書籍であるかに関わらず、現代のミステリーとカテゴライズされる作品が様々な意味で、様々な部分をパクっている古典的名作ですね。人間としての倫理の観点からは軽々に答えの出せない問題を扱っているところは単なるエンターテインメントを超えていると言えます。長い年月を経ても風化しない問題がそこにはあります。

最後の最後に、この作品の世界観を受け継いだ続編が作られる可能性があることを匂わすセリフがあるところでちょっとクスリとしました。なかなか洒落たエンディングだったように思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-06-07 15:56 | エンターテインメント | Comments(0)

『タワーリング・インフェルノ』鑑賞

タワーリング・インフェルノ [WB COLLECTION][AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

スティーブ・マックィーン,ポール・ニューマン,ウィリアム・ホールデン,フェイ・ダナウェイ/ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

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1970年代の、いわゆる「パニックムービー」ブームの始祖的存在の作品。最新鋭の科学を駆使しても、その科学を使う人間が腐っていて、文字通り超高層ビルが「骨抜き」となり、大惨事を巻き起こしたと言う、教訓と示唆に富んだ名作です。

舞台はアメリカ、サンフランシスコ。先端技術の粋を集めて建造した超高層ビルが完成し、あとは各界の著名人たちを招いたパーティーが開かれるのを待つばかり。そんな時に、長期の海外出張から戻って来たのが、ビルの設計責任者ダグ(ポール・ニューマン)。オフィスに顔を出した彼の元には、ビル各所から不具合の報告が続々と入って来ます。根本原因は、電気系統に使用された部品がダグの指定したものとは違う粗悪品だったことでした。

ビルの所有者ダンカンの娘婿ロジャーが、正規の部品との差額を着服するために仕組んだことでした。ダグは火災の危険性を指摘し、ダンカンにパーティーの中止と建て直しを進言しますが、ダンカンには各界の著名人との顔つなぎの場としたい、物件としてのビル内の部屋や区画を高く売りたいとの欲求が強くあり、対策が全く打たれないままにパーティーは強行されます。

で、きらびやかに着飾った紳士淑女が多数参加したパーティーのまさに最中に火災が発生。ビルはあっという間に業火に包まれてしまいます。ビルの内部はまさにインフェルノ(地獄)。恐怖に狂った人間のエゴがむき出しになり、我先にと逃げようとする姿は「性悪説」の格好の見本です。そして、絶望的な状況の中で一人でも多くの人を救おうと奮闘するダグの姿も見どころの一つです。

もう一人の主役、スティーブ・マックイーンが、時に冷酷とも思えるような決断を下す、勇敢ながら冷静沈着な消防隊長マイケルを演じ切っていたのも印象的。この役に対しての各賞受賞こそありませんでしたが、公開当時、かなりの高評価を得たそうです。西部劇専門の方だとばかり思ってましたが、手綱をホースに変え、頼りになるカッコイイ男を見事に演じてました。杉良太郎が現代劇のヒーローを演じたような趣でしょうか?杉氏が現代の刑事を演じたドラマは今や笑いのネタにしかなりませんが…。

例えば、交通事故や工場での労災なども、その大半はヒューマンエラー、すなわち人間のミスが原因だそうです。いかに科学や技術が進歩しようと、それを御する人間が一番重要な存在なのだということを改めて教えてくれた一作だったように思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-06-07 11:53 | エンターテインメント | Comments(0)

『ジャスティス・リーグ』鑑賞

ジャスティス・リーグ ブルーレイ&DVDセット(2枚組) [Blu-ray]

ベン・アフレック,ガル・ガドット,エズラ・ミラー,ジェイソン・モモア,レイ・フィッシャー/ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

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マーベルコミックの「ヒーロー大集合」が『アベンジャーズ』ならDCコミックのそれは『ジャスティス・リーグ』。

今作の「前作」である、『スーパーマンvsバットマン』を観ていないので経緯はわかりませんが、スーパーマンは死んでいます。で、残されたバットマン、ワンダーウーマン、アトランティスで生まれたアクアマン(その名の通り、水中戦が得意)、フラッシュ(異次元からパワーを引き出し、超高速で動くことができる)、サイボーグ(有能なアメフト選手だったが事故のため瀕死の重傷を負い、身体のほとんどが高度な機器)の5人が力を合わせてステッペンウルフという強大な敵と戦うというのがストーリー。

ここで出てくるヒーロー・ヒロインの皆様方はそれぞれが特殊な能力を持つとはいえ、結局は人間なので、神に等しい戦闘力を持つステッペンウルフには束になっても敵いません。それでもなんとか戦ってきたジャスティス・リーグの面々ですが、世界を破滅に導くとされる三つの箱をまんまと奪われ、絶体絶命の危機に。

そこに様々な紆余曲折はあるものの、スーパーマンが復活してきて大逆転。ネタバレですが、これ以外に説明のしようがありません。

歴代の仮面ライダーたちが大集合して「等身大」の敵と戦っていたところに、いきなりウルトラマンが現れてスペシウム光線一発ですべての敵をなぎ倒してしまったという体の、ミもフタもない展開です。んなもん、最初からスーパーマン生き返らせることに集中して、スーパーマンに全部任せりゃよかったじゃねーか!!という寂莫とした気持ちに襲われました。ここまでくるともはや諸行無常とでもいうような境地に達せざるを得ません。今日日の目の肥えたアクションヒーローものファンにはウケないでしょうね。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-06-02 07:56 | エンターテインメント | Comments(0)

『ミックス。』鑑賞

ミックス。 通常版Blu-ray

新垣結衣/瑛太/ポニーキャニオン

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主演に新垣結衣、瑛太という人気者を起用し、脇役にも様々な個性派を配したスポ根モノ。タイトルの「ミックス」は卓球の男女混合ダブルスを指します。

ヒロイン多満子(新垣)は幼少時から母親(真木よう子)に卓球のスパルタ教育を施されてきており、技術的には非常に高いものを持っていましたが、「優勝以外の成績は全てクズ」という極端さについていけず、本当は嫌で嫌でたまらないものの、逃げ出せないという「生き地獄」を味わっていました。幼少時の練習風景が「泣き虫愛ちゃん」のVTRをもじった作りになっているという細かなくすぐりがありました。高校時代に母親が病死すると、長年の重石が一気に取れた多満子は卓球から遠ざかって一気にヤマンバギャル化。その後も一切卓球と関わることなく、30目前の今まで普通のOLとして冴えない生活を送っています。

そんなある日勤務している会社に卓球部ができ、そこにスター選手として入部してきたのが、多満子と同年代で、数々の大会で優勝していて多満子の憧れだった晃彦。多満子は卓球少女であったという前歴を隠して、晃彦と付き合うようになりました。

そこに入部してきたのが若手女子選手愛莉。ミックスのパートナーでもある彼女は私生活でも晃彦を略奪してしまいます。

傷心の多満子は、会社を辞めて故郷に帰り、母親の遺産である潰れかかった卓球クラブを引き継ぐことになります。最初はすぐにでも潰してしまおうと考えていた多満子でしたが、幼少時代からの会員弥生をはじめとする、現在のメンバーたちのために渋々経営を引き受けます。そしてそこに、ある目的で卓球を知ろうと入ってきた元ボクシングの日本ランカーである久(瑛太)が入ってきて、ミックスで日本選手権優勝を目指し、メンバーのそれぞれがその置かれた様々な状況を乗り越えて努力する様子を描く、というのがメインストーリーです。多満子と久の「歴史」を軸に、主要なメンバーの背負うそれぞれの苦境がクロスオーバーして行く、というのはスポ根ドラマの常道ですが、それぞれのキャラクターが持つストーリーはそれなりに練られていて、不自然さとか、無理矢理な感じとかはありませんでした。ま、日本人の嗜好には最も合うストーリー展開の一つのパターンであることは事実です。

脇役陣の怪演も目立ってました。多満子の母親役の真木よう子の鬼気迫るそれでいてコミカルなスパルタ毒母には一つ大きく笑えるギャグがあります。メンバー行きつけの中華料理店の中国人店員を演じていた蒼井優が特に出色。日々ふてくされている無愛想な店員をうまく演じていたと思います。あとは、やや反則ではありますが、ドラッグクイーンの役を演じた生瀬勝久氏のインパクトが大。欲を言えば、彼(女?)も大会に出すなどしてもう少し出番を増やしてもよかったかな?

さて、肝心の多満子は『逃げ恥』の森山みくりをどうしても想像させてしまうキャラクターでした。若くて綺麗なのに、消極的で考え込みすぎる性格故になかなか次の一歩が踏み出せない。人生も、恋愛もそれで失敗しているのに、もう一度失敗するのが怖くて現状の肯定に逃げ込んでいる…。こういう経験は誰にでもあるでしょうから、感情移入はしやすかったんですけどね。柳の下の二匹目のドジョウを狙うのはこの業界の常ですが、あまりこうした役ばかり演じてしまうと、何をやっても「のだめ」に見えてしまう上野樹里みたいになってしまいますから、本人も周りのスタッフも気をつけないといけませんね。瑛太はまあ、いつもの調子で、可もなく不可もなくでした。









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# by lemgmnsc-bara | 2018-05-20 16:49 | エンターテインメント | Comments(0)

『ラスト・ボーイスカウト』鑑賞

ラスト・ボーイスカウト [DVD]

ブルース・ウィリス/ワーナー・ホーム・ビデオ

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ブルース・ウィリス主演のアクション映画。モロに『ダイ・ハード』シリーズの亜流です。

主人公は私立探偵のジョー(ブルース・ウィリス)。彼はもともと凄腕のSPで、かつてカーター大統領(そっくりさんでしょうが、かなり似ていたと思います)を、テロリストから守ったことのある人物。その後、護衛を担当していた上院議員がSM趣味の持ち主で、女性を散々いたぶっていることに我慢がならなくなり、その議員を殴って免職され、しがない私立探偵に落ちぶれていているという設定です。

ある日、ジョーは探偵事務所を通じて、コリーというダンサーのストーカーからの護衛を依頼されます。そのストーカーとはかつてはアメフトの花形選手だったものの、賭博に手を出してアメフト界から追放され、現在はクスリにも溺れてしまっているジミー(デイモン・ウェイアンズ)であるはずだったのですが…。コリーは自ら運転する車で帰宅中、追突してきた車の運転手に文句を言おうと相手の車に近づいた瞬間に、マシンガンで文字通り蜂の巣にされて死亡します。

マシンガンまで持っているということは、彼女を殺した相手は大きな組織を後ろ盾にしているという推理が成り立ちます。ほんのしがないダンサーであるはずのコリーがなんでこんな「組織的」な殺され方をしなければならなかったのか?ジョーとジミーは即席のコンビを組んでこの事件の真相を捜査し始めます。

で、相手の組織が様々な妨害を加えてくるものの、二人は何度も窮地を脱し、最後には謎を解き明かし、組織を壊滅させて、ついでに人間関係もうまく行く(ジョーは妻には探偵事務所の上司と不倫され、思春期を迎えた娘には散々に反抗されているという最悪の状態)、という典型的ハリウッドハッピーエンドを迎えます。

役名を変えればそのまんま『ダイ・ハード』シリーズの一昨と名乗ってもなんの違和感もありません。二匹目のドジョウを狙った安易な手抜き企画であると言わざるを得ません。ブルース・ウィリスのアクションシーンが死ぬほど好きだ、という方以外には到底お勧めできませんね。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-05-20 15:13 | エンターテインメント | Comments(0)

『男はつらいよ・寅次郎忘れな草』鑑賞

男はつらいよ・寅次郎忘れな草 [DVD]

渥美清,倍賞千恵子,前田吟,森川信,三﨑千恵子/松竹

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『男はつらいよ』シリーズの11作目。このシリーズのマドンナとして最多の出演を誇る(本当の本当のマドンナは異母妹であるさくらだって説もありますが…)リリー(浅丘ルリ子)の初登場作です。

ストーリーのパターンは変わりません。旅から旅への的屋稼業を続けるフーテンの寅こと車寅次郎がある日、ふらりと柴又帝釈天の門前町にある老舗団子屋の「とらや」に帰ってくる。気はいいものの、口の悪い寅さんは妹さくらや叔父夫婦と大げんかの末、再びとらやを飛び出した寅さんは放浪の旅へ。今回の舞台は網走。そこでドサ回りの歌手リリーと出会って恋に落ち…、というど定番の展開です。

ま、ストーリーの型は決まってますから、あとはいかにくすぐりやら印象的なセリフを埋め込むかが、作品の出来を左右するのですが、今作は見事に笑えました。特に笑ったのが冒頭のシーン。寅さんは夢の中で腕っ節の強い旅ガラスのやくざ者となり、借金のカタに悪徳高利貸しに身柄をさらわれそうになるさくらの前にさっそうと現れ、借金の肩代わりをした上に、襲いかかる三下たちをカッコよくしばき倒して、涙を隠して去って行くのですが、当時の時代劇、あるいは大衆演劇の見事なパロディーになってました。名物のタコ社長とのやりとりもたっぷり。さらには的屋の口上も見事。口上という芸で客を惹きつけておいてモノを売りさばくってな的屋のは壊滅しましたね。こういうシーンは故小沢昭一先生辺りが見たら随喜の涙を流しそうです。

さて、寅さんはリリーといい雰囲気になり、結ばれそうになるのですが、そこで結ばれちゃって、平穏な家庭なんぞ築いてしまったら、この作品の世界観には全くそぐいません。結局リリーは若い寿司屋(なんと、ババアトークの巨匠毒蝮三太夫氏!!)の妻となり、幸せな生活を送る姿が描かれます。半ばヤケになった寅さんは、一度、あまりの重労働に1日働いただけで倒れてしまった網走の酪農家を訪ね、そこに再就職します。

悲しみをぐっとこらえて、カラ元気を出して、明るく振る舞う寅さんのラストシーンを観て勇気付けられた皆さんはさぞやたくさんいたことでしょう。時代が、大衆が要求したキャラクターである寅さんのスタンダードな一作でした。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-05-20 14:28 | エンターテインメント | Comments(0)

『岳飛伝 16 戎旌の章』を読んだ

岳飛伝 16 戎旌の章 (集英社文庫)

北方 謙三/集英社

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今まで、ずっと『岳飛伝』は18巻で完結、と記してきましたが、実は全17巻だったようです。(しかも前巻の15巻を紹介した際にはしばらく16巻をライフログに表示してました…)そんなわけでラス前となるのが今巻です。

ストーリーはほぼ戦い一色。年齢を重ね、人格的にもそれなりに成熟した梁山泊第二世代が率いる梁山泊軍とが南宋という旧体制国家と金国という軍事大国を相手に、自由主義経済に基づいた民主主義を確立するために戦い続けます。

戦闘シーンはシビアでリアルそのもの。特に父秦明も用いていた狼牙棍を武器にする秦容は当たるを幸い、全ての敵をなぎ倒す超人ぶり。数万の軍勢同士の戦いがホンの一騎の大暴れで左右されるのですから、その超人ぶりは際立っています。普通の人間の中に、一人だけ仮面ライダーがいるようなもんです。まあ、数の論理でいえば、梁山泊軍は南宋にも金国にも劣っているのですから、一人一人の戦闘力が高いということをアピールする一つの方法ですね。

今巻最大のクライマックスは、第一世代の最後の生き残り、史進と金国軍総帥兀朮との乱戦の中での一騎討ち。お互いが待ち望んでいた「戦いの中での死」を迎えるのは果たしてどちらでしょう?これは本文を読んでのお楽しみということにしておきます。

各勢力が戦いに明け暮れる一方で、梁山泊がその基礎を築きあげた物流網は、金国軍の元総帥の息子蕭玄材がトップである轟交賈という組織が完全に引き継いでいます。この組織は現在でいえば総合商社、それも多国籍にまたがる巨大商社とでもいうべき存在です。日本の昆布、金から南方の甘藷糖、中国大陸内部の穀物全般に、南宋が特産品としている絹織物まで、何でも扱います。しかもどの勢力に与することもなく、戦乱が怒っている地域では一切商売をしない、という方針が徹底しています。現代の商社との違いは、利のための不正は一切しないところ。戦火がくすぶっている地域で、兵器や食糧などの「需要」を高めるために、戦いを煽るような介入を行う(と、巷間言われてますね)現代商社にはない高潔さがそこにはあります。

志の具現化の一つの形として梁山泊の面々にも認められている轟交賈はどの勢力が勝ったとしても残るのでしょう。民がその機能を必要とするからです。こういうところが相変わらずリアルですね。

さてこの長大かつ重厚な物語がどのような結末を迎えるのか、待ち遠しいような、名残惜しいような…。とりあえずすでに最終巻は買い求めてあります。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-05-13 19:37 | 読んだ本 | Comments(0)

『101』観賞

101 [DVD]

グレン・クローズ,ジェフ・ダニエルズ,ジョエリー・リチャードソン/ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント

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ハリウッドの「ネタ切れ感」を如実に表した一作。その昔、私が幼少の砌に作られたアニメ『101匹ワンちゃん大行進』の実写版映画です。

何分にも、この物語に触れたのが半世紀近くも前のオハナシですので、アニメで見たのか、絵本の類で読んだのかもすでに定かではありません。ただひたすらダルメシアンの大群が走り回っていたというイメージしか残っておらず、ストーリーなんぞ全く覚えていませんでした。そういう意味では「新作」ではあったのですが…。

ストーリーは深く通じ合った人間と犬の情が奇跡を起こして、犬たちを窮地から救うとともに、最後には犬も人間もハッピーハッピーという典型的勧善懲悪ほのぼのモノ。このストーリーをいかに作り物っぽくなく、自然に進行させるかが一番の見所でした。

結論から言うと、不自然さは多々あったものの、許容範囲に収まったかな、というところです。ま、実写とはいえファンタジーですからね。対象年齢層もおそらくかなり低く見積もられていたのでしょうし…。

敵役のデ・ヴィルは売れっ子デザイナー。デザインしたものが売れているのをいいことに、わがまま放題の傲慢な人物で、近くにいる従業員たちをそれこそ犬以下に扱う非道ぶりです。どこかの元議員さんに演じさせたら、さぞかしリアリティーが出たのではないでしょうかね(笑)。もちろん従業員役は元秘書氏です。今作で演じた女優グレン・クローズは『危険な情事』で鬼気迫る女ストーカー役を演じた方。けばけばしいメイクと髪型、ド派手な衣装で、出て来た瞬間に彼女以外の敵役は考えられない、という雰囲気を醸し出してしまいます。あ、そうそう、今なら韓国の某財閥の姉妹と母親を足して3で割ったらちょうどいい感じが出るんじゃないでしょうかね。

さて、デ・ヴィルは突然、ダルメシアンの、それも子犬の毛皮でコートを作ることを思い立ちます。普通、ダルメシアンは立派な飼い犬ですから、毛皮なんぞ簡単に集まる訳はありませんが、そこはナッツリターン姫に水かけ姫、暴行女王の性格を全て持ち合わせたキャラクターですから、手下に命じて非合法に子犬を集めさせます。簡単に言えば、さらって来ちゃうってことです。いかにもケチでスケールの小さい悪事しか働けないような、下っ端たちに命じてさらわせた子犬が101匹。その内の15匹が主人公たちの飼い犬の子供たちだったというわけで、親犬が子犬たちを救おうと奔走します。

ここで街中のいろいろな動物たちが、様々に協力して、小悪党たちを翻弄します。この辺はファンタジーのファンタジーたる所以。曹物たちの知能が作品内のレベルにあるなら、人間が万物の霊長として地球上に君臨などできているはずがありません。ま、その辺には目をつぶって『ホーム・アローン』の動物編だと思って見ておけば肩がこらずに楽しめる作品だったと思います。





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# by lemgmnsc-bara | 2018-04-28 18:28 | エンターテインメント | Comments(0)

『我が道 松尾雄治』を読んだ

「我が道」松尾雄治

スポーツニッポン新聞社(編集)/スポーツニッポン新聞社

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1980年代前半の日本ラグビー界に絶対的な王者として君臨していたのが新日鉄釜石(現釜石シーウエイブス)。寡黙な「北の鉄人」たちを率いて日本選手権7連覇という前人未到の偉業を成し遂げた司令塔が松尾雄治氏。スポニチ紙上で一ヶ月にわたり連載された松尾氏の半生記を一冊にまとめたものが表題の書です。

松尾氏は釜石の司令塔であるとともに、日本代表(以下ジャパン)の司令塔をも長年務めました。レッドドラゴンと呼ばれ、当時世界最強の名を恣にしたウエールズを相手に演じた24-29の大接戦をはじめ、数多の国際試合にも出場し、現在に到るまで、ジャパン史上最高のスタンドオフ(異論も多々ありますが…)と語り継がれています。

そんな松尾氏を作り上げたのは、練習。中学、高校、大学、社会人、ジャパン、どのステージにおいてもとにかく練習したそうです。現役時代のプレーには、攻撃が鮮やかである反面、守備が弱い(つまりガツンガツンとタックルに行くことが少ない)というイメージがあったのですが、ラグビーというスポーツの性質上、一定レベルに達するまでにはどうしても高強度の練習はついて回ってきます。どんなにセンスが良くても、どんなにパスが上手くても、まずは走れて、最低限一試合に数回は相手のラッシュを受けても耐えうるフィジカルの強さがなければ、選手として大成することはできません。強力なFWがいた明治大学、釜石出会ってもそれは一緒。松尾氏はどちらかといえば優男の部類に入る体型ですが、体の芯を強くするための鍛錬は油断なくしっかりやったんでしょうね。とはいえ、現代の、BKにはパワーランナーを揃え、かつFWのライン参加が多数発生するようなラグビーにはちょっと不向きだとは思います。

現役を退いてからは、持ち前の明るさと、機転の利いたトークで、一時期はスポーツ番組を中心にタレントとしても活躍していました。このことは「ラグビーで得た名声をタレント活動に利用している」として、ラグビー協会のお偉方たちの覚えを悪くしたようです。本来なら、平尾氏や向井氏の世代がジャパンの監督を務める前に彼が務めるべきだったように思いますがね…。そんなことを思っているうちに高額の金額をかけた賭博が発覚して、一気にマスコミから干されちゃいました。そのことに触れたのはほんの数行でしたね。本人にとってはあまり触れたくないおハナシなんでしょう。ちなみにこのことで明治大学のラグビー部のOB会からは除名もしくはそれと同じ程度の重い処分がくだったはずです。結果明治大学の監督になる道も閉ざされちゃいました。彼が、ラグビー界の中心にいたら、もっと今回のW杯の盛り上げ役として活躍したであろうと思うと残念な限りです。彼の「軽さ」が悪い方に転んでしまった最大の例でしょう。

最近、ビートたけし氏のオフィス北野退所に際し、いち早く自身の脱退を表明したことでちょっと話題になりましたが、現役時代に比べれば随分としみったれた扱いしか受けていません。自業自得と言ってしまえばそれまでですが、彼の才能を活かす場がないというのは返す返すも残念です。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-04-24 17:05 | 読んだ本 | Comments(0)

『沈黙の制裁』鑑賞

沈黙の制裁 [Blu-ray]

スティーヴン・セガール,ヴィニー・ジョーンズ,バイロン・マン,ラウロ ・チャートランド/アメイジングD.C.

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駄作ぞろいと名高い、スティーブン・セガールの『沈黙シリーズ』中の一作。『沈黙シリーズ』は、映画会社の宣伝部が、セガール作品ならなんでも邦題には『沈黙の〜』とつけてしまえばいい、という思い込みで文字通り何でもかんでも沈黙の、になってしまったようで、本当の沈黙シリーズというのは二作しかないそうです。この作品は正統派沈黙シリーズとは別口のようです。まあ、沈黙とつこうがつくまいが、セガールの作品ってのは、凄腕の傭兵である主人公が仲間とともに悪の組織に立ち向かい、最終的に勝利をおさめるっていう筋立てでしかないので、勧善懲悪な結末に至るまでをどう楽しむかってのが、鑑賞の醍醐味ってやつです。

さて、本作の敵役はロシアンマフィア。若い女性を、ギャラが高額なベビーシッターとして雇うという名目で自宅に引っ張り込んでは、嬲り殺しにするのが趣味という変態野郎が頭目。その頭目の元を、殺される寸前で逃げ出してきたおねーちゃんを、セガール演じるところの、通りすがりの凄腕の傭兵ジョン・アレクサンダーが助け、それが原因で、ジョンとマフィアの一大軍団が全面戦争になるというのがメインストーリー。

見所であるアクションシーンは、多くの人から「全く動かないジョンに、相手が雨あられと打ちまくる銃弾が全く当たらない」というツッコミが入ってましたが、まさにその通り。その昔のアメリカ製の戦争映画では、米軍の軍艦や戦闘機には全く弾が当たらずに、敵軍のそれらにはボカスカ当たるという「アメリカの正義」が描かれましたが、その思想を人間にも適用したってところですかね。「アメリカの正義」には毛ほどの傷もつけちゃいけない。このルールこそがこのシリーズ最大の武器なのだと思いますね。一方で、相棒であるアジア系の顔立ちのキャラクターは散々に殴られたり、撃たれたりします。このキャラクター、背後から、胸を貫通するほどの至近距離で撃たれたというのに、次の瞬間には立ち上がって、ジョンの手助けをしたりします。いかに撃たれたのが右側の胸で、心臓にダメージはないという理屈をつけても、撃たれる前と全く同じ動きができるわけねーだろ、ってのがこの作品の最大のツッコミどころ。

まあ、かの水野晴郎先生のシベリア超特急と同様、いくつのしょうもないツッコミどころを見つけることができるか、というのがこの作品の「正しい」鑑賞方法なのだ、ということにしておきましょう。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-04-24 16:34 | エンターテインメント | Comments(0)

『網走番外地 北海篇』鑑賞

網走番外地 北海篇 [Blu-ray]

高倉健,千葉真一,田中邦衛,杉浦直樹,嵐寛寿郎/TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

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高倉健氏の代表作『網走番外地』シリーズの四作目。仮釈放で娑婆に出た主人公橘真一(もちろん健さん)が大型トラックの運転手として様々な人物と関わり合っていくというロードムービーです。

じつは私は今まで、健さんの作品といえば『鉄道員』や『幸せの黄色いハンカチ』といった「いい人」を演じたモノしか観たことがありませんでした。しかしながら、健さんをスターダムに伸し上げたのは何と言っても任侠モノ。かねがね任侠モノを観てみたいと思っていたのですが、今回、Blu-Rayに録り溜めておいたものを観る機会に恵まれました。ちょうど健さんが逝去された時に追悼番組として放映されたやつだと思います。

基本的に健さんはどの作品でも「正義の味方」ですね。罪人ではあっても、決して悪人ではない。刑務所で同房の若いヤクザ葉山(千葉真一。若い。息子の真剣佑ソックリ)が重病だと知るや、厨房に余分に食い物を分けてもらえるよう頼んだり、娑婆にいる葉山の家族の様子を見てくることを請け負ったり。悪徳看守に反抗して、看守とつるんだ一派と大乱闘を繰り広げてみたりもします。この大乱闘を何事もなかったかのように沈めたのが嵐寛寿郎演じる8人の人間を殺したという鬼寅。「いよっ、鞍馬天狗!!」とでも合いの手を入れたくなるような、見事なドスの利かせ方。こちらも罪人ではあってもスジの通らないことは許さないという正義感に満ち満ちています。

で、娑婆に出た橘は葉山が受け取るはずだった給金をもらうために運送会社へと向かうのですが、火の車の財政状況を誇るこの運送会社の社長は金を払おうとはしません。払いようにも払えないという状況を見てとった橘は、大雪のために交通が麻痺した地域に大型トラックで乗り込むという業務を請け負うこととなります。

このトラックには見るからに怪しい人物が二名始めから乗り込んでいます。さらには運送会社社長の娘(大原麗子。こちらも若い。後年の「しっとり感」ではなく、いまのKPOPのアイドルを思わすような派手な顔つきで、おキャンな娘を演じてました)やら、通りすがりの怪しい男やら、心中相手に逃げられた女やら、怪我した幼い娘とその母親やら、ワケありの登場人物がどんどん増えていって、その人物たちが相互にいろんな関係性を構築していくことになります。

正義の人、健さんは弱気を助け、強きを挫くというオイシイ役どころをしっかりと演じています。この作品は、主人公はあくまでカッコよく、敵役は憎々しくてとことん卑劣な人物として、実にわかりやすく描かれています。歌舞伎の手法を踏襲しているんだと思いますが、悪役は、いかにも、な顔つき、衣装、仕草で、どう考えたって最後にこいつは成敗されるなってのがわかっちゃいます。単純なつくりですね。

作品の公開年は1965年(私はまだ生まれてません。ようやく父と母が知り合ったくらいの時期です 笑)とあって、先にも述べた大原麗子をはじめ、出演者が皆若い。鬼籍に入って久しい由利徹氏はコメディーリリーフとして、しっかり存在感を示していましたし、強引な関西弁を駆使する田中邦衛、肌がツルツル、ツヤツヤしている藤木孝など「若いって素晴らしい!」と叫ばざるを得ないような画面写りでした。

筋立てといい、キャスティングといい、古臭さは否めませんでしたが、日本にはこうした作品がウケた時代があったということです。男は寡黙で己の信念を心の内に秘めながら現実の理不尽さを耐え忍ぶモノだ。こういうヒーロー像は今の世ではウケそうにありません。それがいいことなのか悪いことなのかはにわかには判断できない問題です。この問題は一旦脇において、このシリーズをいくつか観てみたいと思います。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-04-24 16:07 | エンターテインメント | Comments(0)

『ウォークライ』(全8巻)を読んだ

ウォー・クライ コミックセット [マーケットプレイスセット]

竜崎 遼児/ワニブックス

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高校ラグビーを題材としたスポ根漫画。『どぐされ球団』の作者竜崎遼児氏がラグビーというスポーツをどう料理しているのかに興味を惹かれ、衝動DL。

舞台は創立1年目の扶桑高校。校長兼ラグビー部の監督は元日本代表のラガーマン。犯罪を犯して少年院送りになった者、あるいはそれと同等の悪たれどもを集めてラグビー部を創り、そこで少年たちを更生させようってのが目論見、って『スクールウォーズ』(それもどちらかというとパート2)の設定そのまんまじゃねーかよ!

最初の試合で強豪校と当たって、惨めな大差の敗戦を喫し、そこから発奮して猛練習に励み、ってモロにそのまんまの展開がしばらく続きます。

この作品の連載時期は1980〜81年。有名な伏見工業vs大工大高(そう言えばこの両校とも校名が変わっちゃいましたね…)の決勝が1981年の正月で、書籍としての『スクールウォーズ』の出版はそれよりももっと後になってのオハナシですので、こちらの方が先、とも言えるのですが、伏見工業のエピソードはこの作品のもっと前ですから、マスコミ等を通じて伝えられたエピソードの数々に竜崎氏がインスパイアを受けたであろうことは想像に難くありません。

ストーリーは王道のスポ根モノです。一度叩きのめされた相手にリベンジするまでの血と汗にまみれた猛練習の日々と、キャプテンである叶の苦悩、校長からこの悪たれたちの「調教」を任された女監督なんかが出てきて、それなりに読ませるストーリーが仕掛けられています。

数々の強豪との対戦、NZの高校生チームとの対戦などを経て、最後には少年院のチームまで出てきて、ケンカというよりは殺し合いに近いような試合をやったりもするのです。このチームの必殺サインプレー「アマゾネス」なんてのも登場しますが、これはちょっとラグビーをかじったことのある人なら、実現性の極めて低いプレーであるとすぐにわかってしまう必殺技です。こういうところがフィクションとノンフィクションの決定的な違いですね。

物語の終結部分では、今までの敵味方を問わないメインキャラたちが勢ぞろいして、日本代表チームとして、オールブラックスと対戦することとなります。試合は一進一退で最後の最後まで結果がわからないままのストーリー展開となります。

この作品の発表時点ではW杯も開催されていませんので、オールブラックスとは対戦することも難しかったし、ましてや互角に戦うなんざ、夢のまた夢、人類が木星で暮らすのと同レベルの不可能なオハナシでした。しかしながら2015年のW杯の「ブライトンの奇跡」以降、月面で生活するくらいの距離感に縮まってはきたように思います。このストーリーの最後で描かれたような熱戦の末、ジャパンがNZを破って優勝、なんてな2019年W杯になってくれたらいいな、ってのが読後に最も強く感じた感想でした。


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# by lemgmnsc-bara | 2018-04-21 08:03 | 読んだ本 | Comments(0)

『クレージー作戦 くたばれ!無責任』鑑賞

クレージー作戦 くたばれ ! 無責任 [DVD]

クレージー・キャッツ,浜美枝,藤山陽子,淡路恵子/東宝

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クレージーキャッツの「無責任シリーズ」中の一作。『ホンダラ行進曲』や『ハッスルホイ』などのヒット曲も劇中に効果的に散りばめられた快作です。

鶴亀製菓の冴えない総務課員田中太郎(植木等)が主人公。彼は徹頭徹尾やる気がなく、何事に対しても常に一歩どころか二百歩も三百歩も引いて、オドオドオドオドしている人物という設定がなされています。彼を取り巻く世界は全てモノクロ。クソ面白くもない人生のメタファーとしてこの表現方法はなかなか効果が高かったように思います。

彼の人生を一変させたのは、「悪役」である鶴亀製菓の石黒専務(山茶花究’名前はいろんなところで見聞きしてたんですが実際の映像を観るのは初めて。表面上は強面ながら、実は腹黒くて器の小さい人物って役がピッタリハマってましたね)の肝煎りで開発された「ハッスルコーラ(スポンサーの日本飲料が当時製造販売していたペプシコーラの実際の製造現場のシーンがハッスルコーラの製造シーンとして挿入されていたりもします。瓶のラベルのロゴとか、非常に懐かしかったです)」。このコーラには特殊な成分が含まれており、田中はそれを飲んだらたちまち元気ハツラツ、というよりは一気に典型的なC調(調子いい、のアナグラムであるということを最近知りました、ってかっこ付きの注釈ばっかり)モーレツ社員に変身して、会社の重役相手に大風呂敷を広げるわ、バス待ちの列に横入りしてきたいかついおっさんを追い払うわ、このことで彼に好意を寄せてきた美女恵子(浜美枝’わ、若い。しかも綺麗)ともいいムードになります。

ん?でもこれって、昨今問題となっているエナジードリンクの効果を少々大げさに描いただけじゃん。薬物とか危険ドラッグも種類によってはこんな「効能」を謳い文句にしてなかったっけ?ってなツッコミ視点を持ちつつも鑑賞続行。

このツッコミへの回答はすぐさまストーリーに示されます。役所の認可のおりていない成分が含まれているということで、ハッスルコーラは売ることができないという予見が登場人物の口から語られます。しかしながら、開発に会社の資金を多量につぎ込んで売れもしない商品を作ったという責任を追及された専務は、窮余の一策として販売子会社を作って、責任をそこになすりつけることを提案します。同時に田中とその上司の大沢(ハナ肇)をはじめとする会社の厄介者計7人(残りの5人は全てクレージーキャッツメンバー)をも一掃してしまう、という妙案に重役連中も同意します。

体良くスケープゴードを押し付けられた7人ですが、そこでくじけないのが「ハッスルコーラ」の威力。商道徳からすると反則となるような様々な手練手管を用いて、大逆転に持っていくというのがメインストーリー。その商戦の過程で随所にいろんなギャグが盛り込まれるという仕組みです。正統派二枚目の上原謙や、のちの黄門様東野英治郎らがコミカルな演技を繰り広げているのも見所。作りはシンプルながら、素材の良さと香辛料の利かせ方の巧さで見事な作品に仕上がっていると思います。

最後の最後でクレージーの面々がその名も『くたばれ!無責任』という曲を、会社前の大通りをミュージカルのように歌い踊りながら行進していくシーンも清々しい。歌の歌詞もいい。『安いサラリーでこき使われて』とか『ペコペコペコペコ下げるために頭はあるんじゃない』とか、拍手喝采したくなるような言葉の数々。全てのストーリーは最後のこのシーンの前フリだったと言って良いくらいです。

いつの世もサラリーマンにウケるストーリーってのは不変なんだな、とも思わされました。



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# by lemgmnsc-bara | 2018-04-17 20:43 | エンターテインメント | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。
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