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『岳飛伝 四 日暈の章』を読んだ

岳飛伝 四 日暈の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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『岳飛伝』も四巻目となり、そろそろ各勢力の動きが活発化してきました。

まず、前巻で梁山泊と講和した金と南宋随一の軍閥岳飛軍とが激突します。互いに「大将」のクビを獲れば勝利であると確信し、主力の兵とは別の動きで、金軍の大将兀述の親衛隊と、岳飛が自ら率いる一隊が真っ向勝負に出ます。決して言葉の数が多い訳ではないのですが、的確な描写で精鋭同士の戦いをリアルに描ききっています。さすがはハードボイルドの第一人者。男臭い戦いの描写は他に比肩する者のない素晴らしさです。ただ、私の乏しい想像力では、イメージしきれない場面も多々ありましたので、誰か映像化してください!!もっともこのリアルさを実写化するのはほぼ不可能でしょうから、コミックかアニメにするしかないでしょうけどね…。

戦いは一進一退で、まだどちらに転ぶか全くわからない状態です。

さて、この両者の戦いに高みの見物を決め込むカタチとなっているのが梁山泊軍。彼らは目先の戦いではなく、もっと遠くを見据えた戦いを進めています。南越に行った秦容は新たな産物としてイメージしている甘藷糖を製造するため、その原料となる甘藷を栽培するための農地の開墾を粛々と進めていきます。栽培のための土地を見いだし、その地の治水を行う過程で、土地の人々との交わりも生まれてきます。この交わりで梁山泊軍にかかわることのなった人物たちが織りなすドラマにも期待が膨らみますね。

梁山泊軍の志の達成のための支えとなるのは「力」、そしてその力の源泉は「物流」だというのもこの物語の一つのテーマです。秦容の戦いがどのように梁山泊の力となっていくのか?そしてその力は三つの勢力の争いに、そして国の民にどのような影響を与えていくのか?まだまだ興味は尽きません。



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by lemgmnsc-bara | 2017-04-25 09:32 | 読んだ本 | Comments(0)

『プロ野球・二軍の謎』を読んだ

プロ野球・二軍の謎 (幻冬舎新書)

田口 壮/幻冬舎

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昨シーズンは、ファーム、交流戦、シーズンとすべて最下位という「完全最下位(史上初の怪挙…)」を達成してしまったオリックスバファローズ。毎年外国人選手には大枚をはたくし、T−岡田という和製大砲はいるし、中継ぎ、抑えの勝利の方程式もそれなりに整っているのに、何故か勝てずに低迷期に突入しています。今シーズンはいきなり5連勝するなど、好調な滑り出しですが「いつ、この勢いが止まってしまうんだろう」という不安を常に感じさせているのが、この球団の特色ですね。

このオリックスというチームが最高に輝いていたのはブルーウエーブというニックネームだった1990年代半ば頃。イチローが大ブレークして打線を引っ張り、投手のコマも豊富だったところに名将の仰木彬氏が監督に就任し、二年連続してシーズン優勝。二年目の優勝時は阪急ブレーブス時代からの宿敵巨人を破って日本一にも輝いています。

本書の著者であり、現在オリックスバファローズの二軍監督でもある田口壮氏はこの黄金時代に堂々たる主力選手として活躍していました。そしてその時代の実績を引っさげてMLBへと打って出た田口氏は、貴重なバイプレーヤーとしての存在感を醸し出し、日本人としては初となるワールドシリーズ制覇を含め、二度のアメリカNo.1に輝いています。

数々の輝かしい実績はさすがにドラフト1位指名を受けた期待の選手だ、と言いたいところですが、氏の選手生活は必ずしも順調なモノではありませんでした。打撃と走塁には長けていたのですが、遊撃手としての守備、特に送球がメタメタで、一時はゴロを捕った後、一塁への送球ができない「イップス」という状況になったこともあったそうです。ちなみにこの「イップス」って言葉が一般化したのも田口氏の「功績」の一つだと思いますね。それほど深刻な問題でした。この症状が重症であったが故に外野手へとコンバートされ、結果的にはこのコンバートは奏功するのですが、田口氏には未だにショートというポジションに対してのこだわりがあるそうです。

また、渡米後は一軍半的な存在で、メジャーとマイナーを行ったり来たりした期間が長かったようですね。そしてこのアメリカのマイナーを経験したことが、この本を書く大きなモチベーションともなったようです。

氏の記述によれば、共に新戦力を見いだすことと、主力選手に調整をさせることが主目的の組織ながら、日米の二軍はまったく対照的です。

日本の場合は二軍であっても基本的には球団がすべて衣食住を提供してくれた上で、野球に打ち込める環境を作ってくれますし、よほどのことがない限り、いきなり契約を打ち切られることはありませんが、米はマイナーだと衣食住すべてを自分が確保しなければならないし、能力がないとみなされれば、今この瞬間に契約打ち切りになるということも珍しくないそうです。

各人が持ちうる文化的背景が比較的均一に近い日本と、人種のるつぼと言われ、人種も言語も宗教も全く異なる人々の集まりである米との文化的な相違が感じられるオハナシですね。

どちらの方法が良いのかは一朝一夕で結論の出せるオハナシではありませんが、米のような、文字通りのハングリーさを乗り越えた選手の方が「緊迫した場面」でのプレッシャーには強そうな気はしますね。

さて、彼我の相違を知る田口氏は、現在の与件の中でどうやって「一軍に奉仕する」組織である二軍を率いていくのか?

オリックスの二軍はウエスタンリーグに所属しており、西日本が活動の場となるため、関東在住の身としてはなかなかその動静が詳しくは伝わってきません。結局は一軍に新しい選手をどれだけ送り出したかで判断するしかないのですが、T−岡田のような「大化け」した選手を一人でも多く一軍に送り込んで欲しいな、とは思います。



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by lemgmnsc-bara | 2017-04-09 17:56 | 読んだ本 | Comments(0)

『本当は間違いばかりの「戦国史の常識」』を読んだ

本当は間違いばかりの「戦国史の常識」 (SB新書)

八幡 和郎/SBクリエイティブ

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歴史学者八幡和郎氏による、戦国時代の解説書。

私は八幡氏の著作を読むのは初めてですが、様々な時代の様々な地域の出来事について、新しい考え方を提示し、今までの定説(いわゆる教科書に載っている「史実」)を覆すことを自らの使命としている方のようです。

この本のターゲットは題名通り、日本の「戦国時代」。日本という国が大きく変わった時代であり、世の抑圧された皆様が「俺があの武将だったら…」という仮説を好きなだけ飛翔させることのできるエピソードに満ちた時代でもあります。

氏は、現在の定説は、徳川の治世を正統化したいが故にかなり偏った見方をしていると喝破しています。すなわち、それまで戦乱に明け暮れていた日本を最終的に平定した徳川家こそが正義であり、それ以前の反徳川勢力(反織田の勢力も含む)はすべて悪で立ち遅れた存在だったという論調で語られる学説です。

最後の最後に徳川家の前に立ちふさがった豊臣家などは最も悪く描かれています。秀吉は死の間際に狂ってしまい、夢か現かはっきりしない意識状態のまま、勝算などないに等しかった朝鮮出兵に及んだ、とか戦を理解していない淀君とその取り巻きの文官たちが余計な口出しをしたため、真田幸村を筆頭とする優秀な武将を無駄死にさせたとか…。

もちろん、今までの定説にもそれなりの根拠に基づいたものであることは事実なのでしょう。しかしその説と、そこから派生したエンターテインメント作品が広く流布されたことで、徳川にはポジティブさが、それ以外の勢力にはネガティブさが必要以上に付与されてしまったというのもまた事実です。

それぞれの事柄についての定説と、八幡氏の見解の相違についてはぜひとも本文をお読み下さい。一つだけ印象に残ったのは、織田・徳川と武田の二つの大きな戦いを巡る見解です。この二つの戦いとは、徳川軍が大敗し、逃げる家康が馬上で恐怖のあまり脱糞したというエピソードで有名な三方ヶ原の戦いと、当時としては最新の武器である鉄砲と三段構えという斬新な戦法で武田の騎馬軍を織徳連合軍が散々に打ち破った長篠の戦いです。前者は脆弱な三河武士が武田の精強な騎馬武者軍団に蹂躙されたというイメージで、後者は旧態依然の武田軍に対し、織徳連合は最新兵器を用いて大勝したというストーリーですね。確か学校でもそう習った気がします(笑)。八幡氏はこの二つの戦いは単純に兵数の多い方が勝っただけ、という味も素っ気もない説を開陳しています。三方原では武田軍二万五千に対し、織徳側は一万一千、長篠では同一万五千に対し三万五千。血湧き肉踊る戦国物語ではなく、冷徹な現実ってやつです。実社会の経験からは冷徹な現実のほうが強いと学びましたね(泣)。戦国シュミレーションもののゲームだって、武将の才能より兵力のデカい方が強いんですから…。

俗に「歴史を学ぶことの一つの価値は、過去を研究することでその過ちを分析し、同じ間違いを繰り返さない方策をたてることだ」などと言いますが、事象の見方をまるっきりひっくり返されるような説を次々と出されると、なにを基準に考えればいいのか、よくわからなくなってしまいますね。

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by lemgmnsc-bara | 2017-04-01 07:36 | 読んだ本 | Comments(0)

『創価学会』を読んだ

創価学会 (新潮新書)

島田 裕巳/新潮社

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いまや連立与党の片翼として、政府の意思決定に深く関与しているのが公明党。その支持母体となっているのが、いろんな意味で有名な創価学会。衆議院で圧倒的多数を占める自民党ですが、各選挙区における創価学会の選挙協力なしには成立し得ない議席数だそうです。日本で一番政治力のある宗教団体と言ってもよい同会についてその発生から、現在に至るまでの歴史を概観しているのが宗教学者島田裕巳氏による標題の書。

島田氏がこの書で語るところによれば、創価学会の基本的な教義は現世利益の実現です。信者は自らが深く信仰することもさることながら、新しい信者をより多く獲得することでより多くの現世利益がもたらされるという教えを受けるそうです。故に一時はその布教方針について批判が集まったこともありました。よく言われていたのは、重病の患者の枕元に押し掛けて、入信を迫り、最後まで入信しなかった故人に対し「入信しなかったから罰が当たったのだ」と言い放ったという「伝説」。聖教新聞の購読を勧めることと連動した大学生への勧誘も多々あったようです。

私は幸か不幸か彼の教団の「折伏」に遭遇したことはありません。私の学生時代に布教活動に熱心だったのは統一教会(月に一回か二回くらいは自室に勧誘が来た)かオウム真理教(こちらも私は遭遇したことはありません)で、聖教新聞の勧誘も仏罰を唱えて入信を強要する人物にもお目にはかかったことがありません。しかしながら、実際には先に述べたように、政治的影響力を強く持つ集団として、かなりの数の信者が存在するようですね。各地に存在する学会の教会所はみな立派な建物で、しかも地価の高そうなところに堂々と鎮座しています。

島田氏は創価学会が勢力を伸ばした背景には日本の高度成長とそれに伴う都市部への人口集中があると分析しています。高度成長は農村から労働力となる若者を都会へと呼び寄せる作用がありました。そして人口が集中した都会に大量に発生したのが、地縁や血縁のない孤独な大衆。日々の労働で疲れ、その疲れを癒す受け皿を持たない大衆の不満は社会体制への不満となります。そしてその不満の受け皿となったのが、創価学会と社会主義・共産主義だったというわけです。後者の運動の中心は難しい理論を唱えるインテリで、時にはテロ行為を行うなど、ささやかな幸せを求める一般庶民の「志向」からは少々乖離していたのに対し、創価学会が唱える現世利益は、見事にその「需要」を満たした、というのが島田氏の解説。なるほど、わかりやすい。アメリカのトランプ氏が目先の利益への関心を強く持つ、農民を中心とした中間層の意向をうまくくみ上げ勝利した昨年の大統領選と同じような構造ですね。

さて、この集団は一体どこに向かうのか?そしてその方向性により日本はどのように引っ張られるのか?なかなか興味深いところではあります。公明党が信条とするところの「平和の党」というスタンスだけは持ち続け、自民党の暴走を食い止める存在であって欲しいとも思います。



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by lemgmnsc-bara | 2017-03-26 17:09 | 読んだ本 | Comments(0)

『熱狂の王 ドナルド・トランプ』を読んだ


先ごろ行われたG20では、さまざまな議題を全部吹っ飛ばす勢いで、トランプ大統領が掲げた、アメリカ第一の保護主義への対策が議論されたとのことです。2017年に入り、アメリカの実権を掌握したトランプ氏は、アメリカという巨大な「ドル箱(文字通り!!)」を掌中の玉としてもてあそんでいるような印象があります。始まったばかりだというのにはやくも世界各国を周章狼狽させる、山っ気たっぷりなこのおじさんにアメリカの、いや世界の舵取りができるのか大いに不安が募るところです。

標題の一冊は、トランプ氏の人となりを克明に調べ上げた半生記。どのような生い立ちで、どのような生育過程を経たらあのような人物が出来上がるのかについて、興味深いエピソードがずらりと並んでいます。氏がビジネスマンとして一定の手腕を持っているのは明らか。ニューヨークの一等地に、ドデカイ上に、住んでいるのはセレブばかり、入っているのは高級ブランドばかりという物件を持ち、維持運営していくのは並大抵の才覚ではありません。のみならず世界各地にも同じような物件をたくさん抱え、きちんと利益を出しているのですから、少なくとも知能が低い人物ではないことは事実です。

ただし、この方、商売の才覚はあっても人格的に少々難ありのようです。だまって金儲けしてればいいものを、いささか病的なまでの目立ちたがり屋という側面も持ち合わせていますね。せいぜい自社物件に「トランプ~」って命名するくらいでとどめておけばいい(日本にも森家が運営する「森ビル」ってのがあります)ものを、一番目立つ大統領選に打って出てきてしまった。しかもなまじ商才があるだけに、アメリカの大衆に内在する欲望を見抜き、その充足を公約としてしまった。結果として彼の国の選挙権を持たない他国の大衆がワリを食うというわけです。いやはや。

氏の基本的心象にあるのは「勝てば官軍」。目標達成のためなら何でもやる。その熱意自身は悪いことではないのですが、この方の場合はちょっと方角がずれているような気がしますね。氏が現有資産の大半を稼いだ大規模な不動産取引に際しては、限りなくブラックに近いグレーな手法が用いられています。政治家にカネを贈ることもあれば、日本で言うところの反社会勢力にモノをいわすこともある。氏が、大統領という職を「ビジネス」ととらえて取り組んだときに、どんな暴走が始まるのか見当がつきません。

我々としては一刻も早く4年が過ぎ去ることを祈るしかありません。あとは「ジジイ蕩し」がお得意の安倍首相に、うまく立ち回ってもらうくらいのことしか考え付きません。トランプ氏の出現が後の世の大きな禍につながった、などという記述が後世の歴史書に残るような事態にだけはなってほしくないものです。

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by lemgmnsc-bara | 2017-03-25 07:39 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 三 嘶鳴の章』を読んだ

岳飛伝 三 嘶鳴の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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岳飛伝も三巻目を迎えました。文庫本ではすでに五巻目まで発売されているようですが、まだ電子書籍では三巻目が最新です。早く電子化して欲しいなぁ、集英社の皆さん。

というわけで、いつもの通りの読書感想文です。

さて、この巻では梁山泊、南宋、金国の三つの勢力が、来るべき「決戦」の日に向けて力を蓄えていこうとする姿を描くとともに、それぞれの勢力が内側に抱える問題や、勢力同士の小さな衝突などが描かれています。

我らが梁山泊の一番の問題は、絶対的なリーダーがいないこと。各頭領たちはそれぞれ「志」を持ち、現在でいうところの自由主義経済国家、すなわち国の強権的な部分をなるべく小さくして、商流や物流を自由に行えることを保証する国家を作ろうとしてはいるのですが、「志」を明確に示し、成員を一つの方向に引っ張っていくだけの資質を備えた人物がいないため、「志」が各人各様に分裂してしまう危険性を常にはらんでいます。水滸伝の頃から「生き残って」いる史進や燕青、呉用などに加齢からくる衰えが忍び寄ってきているのも不安材料。新時代のリーダー候補秦容は軍を離れ、ベトナムで甘藷の栽培に勤しむこととなりますし、新しい商流を築きつつあった王貴は南宋の軍閥張俊の軍に襲われ、半死半生の状態で岳飛の軍で手当を受けることとなります。

かつて、北宋軍に攻め滅ぼされた梁山泊から落ち延びた楊令は金国の保護を受け、「幻王」という名で北宋の軍に対峙しましたが、こうした敵味方とははっきり分かれにくい人間関係が出現するところも「現代的」。王貴と岳飛軍の今後の関係性の変化も見逃せません。

南宋も趨勢がはっきりしない。張俊、岳飛の軍閥は成長を続けている上、皇帝の直属軍も整備されつつあります。張俊は他国と対抗する気満々の上、巨大化した軍閥の勢力を背景に宋の乗っ取りをにおわせる行動にも出ています。岳飛はこのシリーズの「主人公らしく」、心身ともに精強な兵団を作り上げつつあります。先にも述べた通り、梁山泊の中心人物の一人である王貴ともつながりができました。旧宋で跋扈していた諜報集団の残党もいまは鳴りをひそめていますが、今後の勢力の動向によってはまた暗躍を始めるかもしれません。

金国は梁山泊と対決して敗戦します。しかし梁山泊は一気に金国を攻め滅ぼそうとはせずに、和を結びます。そこで交渉の任についたのは宣讃の息子にして、呉用が自らの後継者であると見込んでいる宣凱。武力同士の衝突だけではなく、交渉による戦いもあるのだ、という記述には静かな力があります。宣凱の今後にも期待したいところです。

様々な勢力が入り乱れる様相を示してきた物語がどのような混沌を迎え、平静をとりもどすのか?早く次の巻が読みたいなぁ。



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by lemgmnsc-bara | 2017-03-20 15:10 | 読んだ本 | Comments(0)

『よろず屋稼業 早乙女十内 一 雨月の道』を読んだ

よろず屋稼業 早乙女十内(一)雨月の道

稲葉稔/幻冬舎

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早乙女十内シリーズの第一巻。例によってkindleのバーゲン本コーナーで見かけて衝動DL。稲葉稔氏の作品を読むのはこれが初めてです。

主人公の早乙女十内は幕府の要職にある名門旗本の次男坊。幼少の頃は、長男である兄が、「明日をも知れぬ」レベルの病弱体質だったため、跡継ぎとしての期待をかけられ手厚く遇されていたのですが、長じた兄が健康となってからは、一家の中での厄介者扱い。そのことで少々やっかみ気質となってしまった十内は部屋住みの身に甘んじることも、他家への婿入りも潔しとせずに、町人と同じ長屋に住んで「よろず屋」を開業。人捜しなどで生計を立てています。幼い頃から鍛えられたこともあって優れた剣技を持ってはいるものの。その腕を披露する機会にもそうそう恵まれない、その日暮らしの毎日。

自ら選んだ道とはいえ、うらぶれた境遇にあって満たされぬ思いを抱えた身、という設定は心ならずもサラリーマンとして口に糊している方には感情移入しやすいものだと思います。私は大いに身につまされました(苦笑)。

さて、十内はとある商家から人捜しを頼まれます。捜す人物はその商家の一人娘への入り婿。かざり職人として独立しているのですが、何故かその商家のカネを持ち逃げしたというのが捜される理由です。持ち逃げされたのは二百両余。にもかかわらず、ケチとして名の通っている商家の主人が五十両もの金を成功報酬で支払う、という話に違和感を覚えた十内は婿を捜すと同時に、この商家が婿を捜す本当の理由を知ろうと奔走します。

で、数々の妨害にも関わらず、その謎を解いて、こじれた人間関係(婿と嫁である商家の一人娘の間にはいろいろな問題があったということ設定になっています)も修復して、十内の剣の腕も存分に披露される場も生じるというストーリー展開です。

まあ、一言で言ってしまえば、昭和の時代劇の典型的なストーリー展開です。日頃は冴えない主人公が、いざとなったら凄腕を発揮して謎を解いて悪人を懲らしめて最後はメデタシメデタシ。十内のキャラクター設定だけは少々ひねってありますが、主人公が遊び人の金さんでも徳田新之助でもまったく同じストーリーで通用してしまいます。よくいえば、昭和の時代劇へのオマージュ、悪くいえばモロパクリ。それ以上の感想は持ち得ませんでした。このシリーズかなり巻数を重ねているようですが、次の巻に進みたいか?と問われたら「微妙」と返さざるを得ませんね。



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by lemgmnsc-bara | 2017-03-16 12:03 | 読んだ本 | Comments(0)

『奇談蒐集家』を読んだ

奇談蒐集家 (創元推理文庫)

太田 忠司/東京創元社

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kindleのバーゲン本コーナーからのDL品。最近このイントロ多いですが、バーゲンコーナーから購った作品から新しい作家を知ることも少なくないので、この衝動DLだけは止められません。太田氏の作品を読むのはもちろん初めてです。

主人公は恵美酒一(えびすはじめ)。奇談蒐集家を名乗り、新聞広告を打って実際に奇妙な体験をした人を募り、応募してきた人からその体験談を聞き取るというのが趣味という人物設定です。なお、本当に奇妙なオハナシには高額な謝礼を支払う、というのが広告の謳い文句でもあります。『聊斎志異』みたいな作りのオハナシですね。

さて、この一冊は、いくつかのオハナシが編まれた連作短編集で、どの話も恵美酒氏が指定したバー「Strawberry Hills」に奇談を売り込もうと企図した人物たちが入店するところから始まります。どの話もそれなりに奇妙な話ですので、恵美酒氏は大いに喜んで買い取ろうとするのですが、そこに待ったをかけるのが恵美酒氏の助手(というよりは相棒またはそれ以上の存在)である氷坂。話をする人の背後にいつの間にか忍び寄っているような不気味な習性を持ち、美貌でありながら、外見からは男か女かの区別がつかないというキャラクターが付与されています。

この氷坂は、出てくる話出てくる話にすべてツッコミをいれ、冷静に、科学的に話の矛盾点を指摘し、すべての人の話を思い込みや錯覚によるものだと「解決」してしまうのです。

奇談を集めたい恵美酒氏も、奇談を買ってもらおうと意気込んできた人々もガックリとさせてしまうことがオチ。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ではありませんが、いわゆる奇談とか怪異譚の類いは、すべて当事者の歪んだ主観がもたらすもので、すべてにおいて何らかの「合理的」な説明がついてしまうものだ、という皮肉り方はなかなか悪くありません。この展開は展開として面白かったのですが、最後の最後のオハナシにどんでん返しが待っています。う〜ん、やられたね、ってな感じです。すべての矛盾に対する答えを示すと見せかけて、実は最後の最後に最大の奇談を持ってくるというのは、この一冊の完結編としてなかなか見事な落とし方だったと思います。

太田氏なかなか面白い作風の持ち主ですね。また別の作品を読んでみたい作家が増えちゃいました。



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by lemgmnsc-bara | 2017-03-11 19:34 | 読んだ本 | Comments(0)

『漂流巌流島』を読んだ

漂流巌流島 (創元推理文庫)

高井 忍/東京創元社

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kindleのバーゲン本コーナーで見かけてDLした一冊。

著者高井氏は、日本史上有名な出来事にフォーカスし、様々な資料を検証し、再構成することで、「そういう見方も出来るな」という事態にその出来事を放り込むという手法でこの一冊を書き上げ、文壇デビュー。ちなみに今作は『ミステリーズ!新人賞』を受賞しているそうです。

さて、この一作には4つの事件が取り上げられていますが、主人公は事件の「当事者」でも、事件があった時代に生きた人物でもなく、その子孫でもなく、映画界の底辺付近を這いずり回っているような駆け出しのシナリオライター。主人公は、低予算でどんな無理な撮影も引き受けるが、「巨匠」とか「名監督」という名称にはほど遠い三津木という映画監督からの依頼で、巌流島の決闘を題材とした作品のシナリオを書くこととなります。この三津木監督という方、安い予算で撮影を引き受けはしても、作品そのものを安っぽく作ることは良しとしない気概だけは持っている人物という設定で、主人公の書いてきたシナリオと、そのシナリオの基となった史料をもう一度見直して、よく言えば大胆な新解釈の、悪く言えば荒唐無稽な筋立てて映画を撮影しようとするのです。

主人公がSFチックな存在、すなわちタイムトラベラーとか超能力者などではなく、身は現実社会にありながら、空想だけは果てしなく飛翔させることを常に求められる映画というものの制作に関わっている人物だというのがミソ。一般的に「常識」とされている説を紹介した上で、「それじゃつまらないから」という理由で、ちょっとしたほころびを見つけて、そこをどんどん拡大させて新しい物語をでっち上げてしまう…。なかなか巧い方法です。

で、でっち上げられた方のストーリーでも、それなりに信憑性のあるものに仕上げられてしまうというところも巧みです。

4つの出来事は、巌流島の決闘の他、赤穂浪士47士の討ち入りに、池田屋事件、鍵屋の辻の仇討ちとどれもこれも人口に膾炙したオハナシばかり。さてさて、この物語たちがどんな風に変身させられ、それなりに筋の通ったオハナシとなるのか?基本的にこの作品集はミステリー集ですので、ネタバレになるような野暮なことはできません。実際の文章に是非触れてみて下さい。

高井氏はこの作風をこの後も続けているとのことなので、折をみて別の作品も読んでみたいと思います。



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by lemgmnsc-bara | 2017-03-11 19:08 | 読んだ本 | Comments(0)

『日本の「神話」と「古代史」がよくわかる本』を読んだ

日本の「神話」と「古代史」がよくわかる本

日本博学倶楽部/PHP研究所

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私が愛読しているコミックスの一つに『孔雀王』シリーズがあります。

このシリーズ、最初の作品が好評だったために一旦完結した後『退魔聖伝』という続編が連載されたのですが、その中盤位から、日本の天津神と国津神の戦いを描くストーリーが展開されます。主人公、裏高野退魔師孔雀がスサノオの牙の力を得て、天津神たちの野望を打ち砕こうとするというのが主な筋立てなのですが、このシリーズはなぜか途中でブッチ切れてしまいます。その後このストーリーを引き継ぐものとして『曲神記』が連載されたのですが、これも肝心なところでブチ切れ。ようやく最近『戦国転生』というシリーズが始まって尻切れとんぼだったストーリーの続きが読めるようになりました。

前置きと愚痴が長くなりましたが、このストーリーで孔雀の前に立ちはだかるのがイザナギとその子供のツキヨミ、それに手力男やオモイカネといった日本の神話の神たちです。『孔雀王』では実際のキャラクターはそのままに本来なら善であるはずの神が悪役で出てきたりするので、この作品を読むためにはそもそもの「位置づけ」を知っておく必要があります。しかしながら私が日本の神話に触れたのは遥か昔の小学生時代に子供向けの「やさしい日本神話」みたいなものを読んだのが最後。そのため、イザナギ、イザナミの後、アマテラスが出てきて、スサノオが暴れて天岩戸に引っ込んで、八岐大蛇に因幡の国の白ウサギ、海幸山幸、ヤマトタケル…、どの人物がどの順番で出現してきて、で、どんな子孫を残したのかについて混乱に混乱を重ねる状態でした。

これは良くないね、ということでいつかは日本の神話を読んで、少なくとも誰がどの順番で出てきて、どんなキャラクターだったのかのアウトラインくらいはあたまにいれておかなきゃ、という思いは常に持ち続けていました。で、kindleの割引本コーナーで見かけたこの本を即DL。一応すべて読んだのですが、まだなんとなくこんがらがっています。

天皇が人間宣言をしたのは第二次大戦の敗戦後ですが、神話の神が実際の人間の天皇として政治を始めたのは誰の代からなのか?なぜ、大国主は国ゆずりをしたのか?土蜘蛛や長髄彦などと呼ばれ蛮族とされた土着民たちはどんな由来を持つ民族だったのか?こうしたことはこの本を出発点としてより深く学んでいくべき事柄なのでしょう。孔雀王を最初から読み直す際には、端末に呼び出しておいて、並行して読み進め直したいと思います。




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by lemgmnsc-bara | 2017-03-05 19:57 | 読んだ本 | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。


by 黄昏ラガーマン
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