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『エロティック日本史 古代から昭和まで、ふしだらな35話』を読んだ

エロティック日本史 古代から昭和まで、ふしだらな35話 (幻冬舎新書)

下川 耿史/幻冬舎

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日本史の薀蓄本。神話の時代から近代にいたるまで、日本人の行動に「性」、というよりこの本の論調からすると「エロ」の要素がどれだけ関わってきたのかを、さまざまな文献や史実を基に記しています。

日本の歴史はイザナギとイザナミがそれぞれの「なり余れるところ」と「なり足りぬところ」をあわせることにより始まったとされています。そして、そのあわせる作業の仕方がわからなかったので、セキレイの行為を真似ることでなんとか国産みに至ったというのが最初のエロ要素。ずいぶんと牧歌的だったんですねぇ。

しかし、一旦国ができ、人間が集団で生活し始めると、一気にエロ要素が強くなっていきます。明治の初めくらいまでは、公衆浴場はほぼすべて混浴だったそうですし、盆踊りは、祭りの夜の乱交パーティーの名残です。これも明治の初期に、警察が取り締まるようになるまでは、実際に乱交が行われていたようですね。その他、東北の田舎のほうでは男性が童貞を捨てるのは、人妻に夜這いをかけていたすことが一般的だったり、ちょっと財力に余裕のある人物が妾を置くなどの行為もつい最近まで(後者については現在でも)「常識」だったそうです。おおらかなのか不道徳なのか?私個人としてはポジティブに捉えたいと思います。社会全体にこういうあいまいさを認める空気があったほうが、人々の心にも余裕があったような気がしますね。

現在では、かなり自主規制がすすんで、テレビなどでは、映画などの「出来上がった作品」を別にすると成人女性の乳頭は隠されます。男性の裸の尻や女児の下着などもイラストやモザイクなどで隠されることが多いですね。一方で、ネットにはそのものズバリの画像が出まくっています。結局、どんなになかったことにしようとしても、人間の根本にはエロ要素を求める欲望というか本能が厳然として存在しており、それが実際の行動に反映され、社会的に大きなムーブメントを起こしたります。

息子の嫁に手を出して、その結果生まれた子供(もちろん「戸籍上」は孫ですが…)を天皇にするために息子を退位させてしまう上皇。巨根を武器に時の女性天皇に取り入って、自分が天皇になろうとした道鏡。男性の急激な増加に対応するだけの女性がいなかったため、男色が当然のこととされた江戸初期。直近で言えば、パソコンの普及にもエロ動画や画像を見たいという欲求が大きく作用していたってのは事実ですね。

身分の貴賤や時代を問わず、エロ要素は人間の行動の大きな原動力となります。さて、今後エロ要素はどのような発展を見せ、それが人間の行動にどのような影響を及ぼし、社会的にはどんなムーブメントになるのか?現状を見る限りでは、欲望の対象が二次元の世界に向かった結果、人間関係の構築を苦手とする若者を数多く生み出すという現象を巻き起こしているようですね。これが少子高齢化を促進し、日本の国力が衰退していく、というのが漠然としたムーブメントのようです。いやはや。



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by lemgmnsc-bara | 2017-06-18 17:45 | 読んだ本 | Comments(0)

『ガッチリマンデー!!知られざる40社の儲けの秘密』を読んだ

がっちりマンデー!! 知られざる40社の儲けの秘密

がっちりマンデー!!制作委員会(編集)/KADOKAWA

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TBS系日曜朝7時半から放送している『がっちりマンデー!!』のより抜き版。

私はこの番組結構好きで、用事がなければ大抵観ています。自分が奉職しているのとは違う業界の動向を知ることが興味深くもあり、また同業者のオハナシに関しては「あ、自分の所属している業界は世間からはこんなふうに観られているのか…」という客観性をも得ることが出来るからです。新興の企業もあれば、老舗の企業もあり、それぞれの儲けの仕組みは実に面白い。

儲かりの根本は、現実を冷静に見つめて、そのスキマを探し出して、いかにそこに特化していくのかということに尽きます。これは古今東西を問いません。一見、強固なシステムが出来上がっているようでも、日々変化する社会状況の下では、どうしてもそのシステムではカバー出来ない部分、すなわちスキマが生まれてきます。そこに、いかに気づき、そのスキマを埋めるための策を考え、実行するか?中でもポイントとなるのはいかに「実行するか」でしょう。

現実を見渡せば、何かしらのほころびは必ず見つかるはずですが、それを実際の経済活動に結びつけるまでには非常に高いハードルが待っています。

例えば、冒頭に紹介されている「ビィフォワード」という会社の設立は、社長がネットオークションに出品した国産の中古車をアフリカの人が買い上げたことがきっかけでした。そこから日本人が丁寧に乗った中古車は、日本では買いたたかれて大した利を生まないが、自動車産業が発達していない上に、自動車というモノへのニーズの高いアフリカならば大きな商売になると見抜き、そして現在では400億円を超える年商をほこる企業にまで育て上げたのです。

このオハナシは、盆の送りの際に、霊の乗り物に擬せられて川に流されたキュウリやナスを下流で集めて漬け物にして大儲けし、そこから大商人にのし上がった人物の逸話を彷彿とさせます。

普通の人が、気づいてはいるものの、手を出さないところに手を出し、工夫して利に変えていく…。う〜ん、その気で見渡せば世の中にはまだまだオイシイ部分は残っているのかもしれませんね。もっともそれを見いだすには、それなりの才覚が必要でしょうし、そこに向けて原資を集中する覚悟も必要です。残念ながら私には才覚も覚悟もないようです…。



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by lemgmnsc-bara | 2017-06-12 05:59 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 六 転遠の章』を読んだ

岳飛伝 六 転遠の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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岳飛伝の6巻目。

今巻では、「正統派」の岳飛伝での最大の敵役秦檜が、そのストーリー通りの憎まれ役として岳飛の前に立ちはだかります。秦檜は、岳飛を南宋軍の最高司令官として迎えるとともに、岳家軍を正式な軍隊として南宋に取り込もうとするのですが、岳飛はあくまでも軍閥として独立して活動することを望みます。最高権力者たる秦檜の命令に従わない岳飛は、南宋に対しての忠誠を秘めながら、従容として刑場の露と消える、というのが正統派のストーリー。

しかし、北方版は正統派通りにストーリー展開などしません。こんなところで主人公が死んでしまっては元も子もないってのもありますが、北方氏の大胆な翻案を楽しむのがこの大水滸伝の醍醐味。岳飛は表向き処刑されたこととされますが、実際は目立たぬように都から追放されます。秦檜は約束どおり岳飛を解放しましたが、その部下は後顧の憂いを断つために、暗殺団を送り込みます。ここで岳飛を救ったのは梁山泊の致死軍。久しぶりにこの集団が、暗躍でなく活躍する姿が描かれ、燕青も登場します。世間的には「亡くなった人物」となった岳飛はどこに向かうのか?梁山泊への合流となるのか?仮に合流となれば知も武も兼ね備えた、頭領にふさわしい存在になるとは思いますが、そうそうすんなりとは行きそうにないのもこの物語の特色です。

金国は兀述が岳飛との戦いを終え、世代交代を画策します。こちらの動きからも目を離せません。中原に覇を唱えることが悲願のこの国が南宋とどう対峙して、そしてそれは梁山泊軍にどのような影響をもたらすのか?今のところは、楊令とのつながりや物流により金と梁山泊は協力体制にありますが、世代交代後の金がどのような道を選択するのかについては、暗示すらもされていない状態です。

さて、我らが梁山泊は二強の直接対決を横目に、着々と力を蓄えている最中です。南越に甘藷糖の生産基地を建設した秦容が、その基地が大きくなるにつれて生じる「生活の諸問題」をいかに解決していくのか、を描きながら、狩猟採集から栽培定住の生活への転換、国というものの根本的な成り立ちとはどういうものかをも描いています。

以前、一時期ハマった水滸伝のシュミレーションゲームでも、実際の戦闘よりは、戦闘を開始する前の国力の充実(武器や食料の生産拠点の建設と発展)の方が楽しくなって、戦闘そのものはソフト任せにしていた(武器やら何やらを最大限に持たせておけば勝手に勝ってくれた)私にとっては非常に興味深い視点の転換です。もとより、梁山泊の志とは民が安心して暮らせる国とはどんなものかという問いに対しての答えを求めるものであったはず。で、南越の地に、一つの理想郷とでもいうべき村が出来上がるのです。戦いだけに生きてきた秦容が「文官」に転じるのも、武力革命を成し遂げた後の指導者の姿の一つの理想形だと思いますね。

シメの言葉はいつもと同じ。次巻の発売が待ち遠しい…。

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by lemgmnsc-bara | 2017-06-07 05:20 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 五 紅星の章』を読んだ



岳飛伝も巻を重ねること5冊目。この壮大かつ男臭い物語がだんだん終わりに近づいていくのが楽しみでもあり、さびしくもありというところですね。

さて、ストーリーは今までの流れに沿ったものです。南宋の軍閥岳飛軍と兀述とは相変わらず戦い続けています。一方で講和の動きがある反面、岳飛と兀述は直接対決し、「戦いのための戦い」を繰り広げることとなります。戦場では、川中島の上杉謙信、武田信玄よろしく一騎打ちに近いような場面すらあります。結果については直接本文を読んでください。単純に勝った負けたを論じるより、この戦いが両者にどんな影響を及ぼし、その結果として両国間にどのような関係性の変化が生じ、そしてそのことが我らが梁山泊にどのように波及してくるのか、を考えることがこの物語本来の楽しみ方であるはずです。

梁山泊軍は相変わらず高みの見物状態が続いています。しかしながら水面下では激しく動いてもいます。梁山泊軍の頭脳であり続けた呉用がついに亡くなり、「政治」の主体は宣凱に譲られることとなります。王貴の商業部隊は岳飛軍に糧秣を供給し続け、南越に渡った秦容は甘藷糖の製造に向け、着々と体制を整えていきます。

ここでやはり一番気になるのは秦容の動向ですかね。密林を開拓し、治水を行い、甘藷の栽培を本格化させる。農地の拡大や、甘藷糖の製造開始に当たって、増やすべき人物は梁山泊の活動から「引退」した人物たちを充当する。それでも足りない場合は現地の人々を採用したり、水牛を労働力に使うことを考えてみたり…。一種の福祉国家の建設ですね。日本で、源氏と平氏が争っている時代に、自由主義経済国家のみならず、老人の福祉までを考えた国家を出現させてしまうとは…。派手な事件ではなく、日常の着実な歩みこそが国の姿を作り上げる、という北方氏の哲学が見事に表されていますね。

そしてこの福祉国家を打ち立てるためにさまざまな問題に直面する秦容は、直接剣を振るうのとは違う形の戦いに臨んでいるという、気概を持ち始め、自らの求める「志」は今の生活にこそあるのでないかという心境にまで至るのです。荒くれヤンキーが農場経営に目覚めたってなところでしょうか。 来るべき「最終決戦」に向け、南宋、金国、梁山泊の三者がどのような変化をみせていくのか?次巻の発売が待ち遠しいですね。

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by lemgmnsc-bara | 2017-05-23 13:16 | 読んだ本 | Comments(0)

『人間はこんなものを食べてきた 小泉武夫の食文化ワンダーランド』を読んだ

人間はこんなものを食べてきた 小泉武夫の食文化ワンダーランド (日経ビジネス人文庫)

小泉 武夫/日本経済新聞社

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日経新聞の夕刊に連載中のコラム『食あれば楽あり』で、食材に関する蘊蓄と料理に関する美味そうな描写を楽しませてくれている農学者、小泉武夫氏のエッセイ集。本書では数ある異名のうち「味覚人飛行物体」を名乗り、主に日本各地で「食べ継がれてきた」食品にスポットを当てて、その魅力を描き出しています。

小泉氏の持論は、人間が長い間をかけて順応して来たその土地土地の気候風土にあった食べ物が一番おいしいということ。

日本人の食生活の根幹をなすのは米、魚介類、野菜、それに発酵食品であり、これらの食材を中心に食生活を組み立てることが、健康に一番効果的であると述べています。

私も齢50を超え、氏のおっしゃることが実感出来るようになりました。肉や、脂肪分とと糖分の塊であるケーキなんぞを食うと、その場は確かに幸せなのですが、数時間後ぐらいからジワジワと内臓が悲鳴を上げ始めます。で、その蓄積が風が吹いただけでも痛いなんて病気の発症につながったりもします。

歳はとりたくねーな、と思うしかない今日この頃ですが、私の場合は食う絶対量が多いということもあります。いかに日本人向きの食材で食事を工夫しても、量が多ければやっぱり不具合を起こしますね。

いい食材を使った料理を適度な量食べる、というのが一番健康であり、現在の世の中では一番贅沢なことなのではないかと思います。今やいい食材を探すのは至難の業ですし、値段も高くつきますからねぇ…。

しかしモノは考え様です。安いけれどカラダに悪いモノを食い続けて、結果カラダを壊して医療に高い金をかけるなら、多少は高くても健康につながる食品を食べ手いる方が結局は安いと言えるのかもしれません。何より、安全な食品は美味いはずです。元々食い物の美味い不味いは食ったら毒になるか否かを判断するものだったはずですから。

今後は少しづつでも、いいモノを手に入れてしっかり味わって食う、という方向に持っていきたいと考えています。とは言え、ついつい店頭に行くと、魚より肉を、高い良品よりは安い難あり品を買い求めてしまうのですがね…。



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by lemgmnsc-bara | 2017-04-29 21:06 | 読んだ本 | Comments(0)

『稲盛和夫最後の戦いーJAL再生にかけた経営者人生』を読んだ

稲盛和夫 最後の闘い―JAL再生にかけた経営者人生

大西 康之/日本経済新聞出版社

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京セラの創業者として有名な稲盛和夫氏が、経営破綻したJALに乗込んで、いかに内部を改革し、V字回復を成し遂げたかを描いたルポルタージュ。

経営破綻をした際のJALというのはお役所以上にお役所的な会社だったようです。アタマのいい経営陣が素晴らしい経営計画を作りはするものの、その計画を遂行しようと努力する者はなく、「達成出来なかった時のいい訳は超一流」という体たらく。内にばかり目を向けていて、本来なら一番向き合わなければならない顧客からも「笑顔ではあるが心がこもっていない接客態度だ」と評される始末。おまけにいろいろな組合が乱立して社内もバラバラ。破綻するべくして破綻したとしか言いようのない状態でした。

もちろん、素晴らしい社員はたくさんいたのでしょうし、与えられた持ち場の中で精一杯の努力をしていたのではあろうと思います。また、必要だとは思えない地域にまで空港を建て、空港がある以上は国の後ろ盾があるJALが飛行機を飛ばすのが当たり前だろ、という論調で、人が乗ろうが乗るまいが、飛行機を無理矢理運航させた上に、経営をまともに監査しなかった国や政治家たちにも、その罪の一端はあります。でもやはり一番悪いのは「最後は国がケツをふいてくれるさ」と高を括っていたJALの経営陣ですね。

さて、稲盛氏は高学歴でアタマがよく、それ故プライドも高い経営幹部を向こうに回し、小学校の道徳の授業でやるような、「人としての道」とか「やってはいけないこと」などの話から始めていきます。

拍子抜けとともに、「そんなことは知っている」として反発していた幹部たちですが、繰り返し繰り返し人の道を説く稲盛氏への賛同者は次第に増えてゆきます。

「人の道」を知識として知っているだけではなく、実践していくことにより、顧客に提供すべき航空会社のサービスとは一体なんなのか?という原点に立ち戻った行動を社員全員がとるようになり、より良いサービスを提供するためにはどうしたら良いのかを考え、行動する組織に生まれ変わっていくのです。

上から押し付けた「思想」は結局他人事であり、自らの意思には反映されませんが、自分自身が行動してつかみ取った哲学は自らの行動に大きく影響します。すべての社員が会社の再建を「自分のこと」と捕らえ直す意識改革により、数万人にも及ぶ解雇という文字通り血の出るようなリストラや、徹底的なコスト削減以上に奏功し、JALはV字回復を成し遂げます。

人を感動させるのはかけたコスト以上のサービスを提供すること。そしてそのサービスを生み出すのは一人一人の気持ちです。ナニワ節だといわれてしまえばそれまでですが、そうしたキモチを作り上げることの出来た稲盛氏の手腕には脱帽です。


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by lemgmnsc-bara | 2017-04-29 20:45 | 読んだ本 | Comments(0)

『岳飛伝 四 日暈の章』を読んだ

岳飛伝 四 日暈の章 (集英社文庫)

北方謙三/集英社

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『岳飛伝』も四巻目となり、そろそろ各勢力の動きが活発化してきました。

まず、前巻で梁山泊と講和した金と南宋随一の軍閥岳飛軍とが激突します。互いに「大将」のクビを獲れば勝利であると確信し、主力の兵とは別の動きで、金軍の大将兀述の親衛隊と、岳飛が自ら率いる一隊が真っ向勝負に出ます。決して言葉の数が多い訳ではないのですが、的確な描写で精鋭同士の戦いをリアルに描ききっています。さすがはハードボイルドの第一人者。男臭い戦いの描写は他に比肩する者のない素晴らしさです。ただ、私の乏しい想像力では、イメージしきれない場面も多々ありましたので、誰か映像化してください!!もっともこのリアルさを実写化するのはほぼ不可能でしょうから、コミックかアニメにするしかないでしょうけどね…。

戦いは一進一退で、まだどちらに転ぶか全くわからない状態です。

さて、この両者の戦いに高みの見物を決め込むカタチとなっているのが梁山泊軍。彼らは目先の戦いではなく、もっと遠くを見据えた戦いを進めています。南越に行った秦容は新たな産物としてイメージしている甘藷糖を製造するため、その原料となる甘藷を栽培するための農地の開墾を粛々と進めていきます。栽培のための土地を見いだし、その地の治水を行う過程で、土地の人々との交わりも生まれてきます。この交わりで梁山泊軍にかかわることのなった人物たちが織りなすドラマにも期待が膨らみますね。

梁山泊軍の志の達成のための支えとなるのは「力」、そしてその力の源泉は「物流」だというのもこの物語の一つのテーマです。秦容の戦いがどのように梁山泊の力となっていくのか?そしてその力は三つの勢力の争いに、そして国の民にどのような影響を与えていくのか?まだまだ興味は尽きません。



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by lemgmnsc-bara | 2017-04-25 09:32 | 読んだ本 | Comments(0)

『プロ野球・二軍の謎』を読んだ

プロ野球・二軍の謎 (幻冬舎新書)

田口 壮/幻冬舎

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昨シーズンは、ファーム、交流戦、シーズンとすべて最下位という「完全最下位(史上初の怪挙…)」を達成してしまったオリックスバファローズ。毎年外国人選手には大枚をはたくし、T−岡田という和製大砲はいるし、中継ぎ、抑えの勝利の方程式もそれなりに整っているのに、何故か勝てずに低迷期に突入しています。今シーズンはいきなり5連勝するなど、好調な滑り出しですが「いつ、この勢いが止まってしまうんだろう」という不安を常に感じさせているのが、この球団の特色ですね。

このオリックスというチームが最高に輝いていたのはブルーウエーブというニックネームだった1990年代半ば頃。イチローが大ブレークして打線を引っ張り、投手のコマも豊富だったところに名将の仰木彬氏が監督に就任し、二年連続してシーズン優勝。二年目の優勝時は阪急ブレーブス時代からの宿敵巨人を破って日本一にも輝いています。

本書の著者であり、現在オリックスバファローズの二軍監督でもある田口壮氏はこの黄金時代に堂々たる主力選手として活躍していました。そしてその時代の実績を引っさげてMLBへと打って出た田口氏は、貴重なバイプレーヤーとしての存在感を醸し出し、日本人としては初となるワールドシリーズ制覇を含め、二度のアメリカNo.1に輝いています。

数々の輝かしい実績はさすがにドラフト1位指名を受けた期待の選手だ、と言いたいところですが、氏の選手生活は必ずしも順調なモノではありませんでした。打撃と走塁には長けていたのですが、遊撃手としての守備、特に送球がメタメタで、一時はゴロを捕った後、一塁への送球ができない「イップス」という状況になったこともあったそうです。ちなみにこの「イップス」って言葉が一般化したのも田口氏の「功績」の一つだと思いますね。それほど深刻な問題でした。この症状が重症であったが故に外野手へとコンバートされ、結果的にはこのコンバートは奏功するのですが、田口氏には未だにショートというポジションに対してのこだわりがあるそうです。

また、渡米後は一軍半的な存在で、メジャーとマイナーを行ったり来たりした期間が長かったようですね。そしてこのアメリカのマイナーを経験したことが、この本を書く大きなモチベーションともなったようです。

氏の記述によれば、共に新戦力を見いだすことと、主力選手に調整をさせることが主目的の組織ながら、日米の二軍はまったく対照的です。

日本の場合は二軍であっても基本的には球団がすべて衣食住を提供してくれた上で、野球に打ち込める環境を作ってくれますし、よほどのことがない限り、いきなり契約を打ち切られることはありませんが、米はマイナーだと衣食住すべてを自分が確保しなければならないし、能力がないとみなされれば、今この瞬間に契約打ち切りになるということも珍しくないそうです。

各人が持ちうる文化的背景が比較的均一に近い日本と、人種のるつぼと言われ、人種も言語も宗教も全く異なる人々の集まりである米との文化的な相違が感じられるオハナシですね。

どちらの方法が良いのかは一朝一夕で結論の出せるオハナシではありませんが、米のような、文字通りのハングリーさを乗り越えた選手の方が「緊迫した場面」でのプレッシャーには強そうな気はしますね。

さて、彼我の相違を知る田口氏は、現在の与件の中でどうやって「一軍に奉仕する」組織である二軍を率いていくのか?

オリックスの二軍はウエスタンリーグに所属しており、西日本が活動の場となるため、関東在住の身としてはなかなかその動静が詳しくは伝わってきません。結局は一軍に新しい選手をどれだけ送り出したかで判断するしかないのですが、T−岡田のような「大化け」した選手を一人でも多く一軍に送り込んで欲しいな、とは思います。



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by lemgmnsc-bara | 2017-04-09 17:56 | 読んだ本 | Comments(0)

『本当は間違いばかりの「戦国史の常識」』を読んだ

本当は間違いばかりの「戦国史の常識」 (SB新書)

八幡 和郎/SBクリエイティブ

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歴史学者八幡和郎氏による、戦国時代の解説書。

私は八幡氏の著作を読むのは初めてですが、様々な時代の様々な地域の出来事について、新しい考え方を提示し、今までの定説(いわゆる教科書に載っている「史実」)を覆すことを自らの使命としている方のようです。

この本のターゲットは題名通り、日本の「戦国時代」。日本という国が大きく変わった時代であり、世の抑圧された皆様が「俺があの武将だったら…」という仮説を好きなだけ飛翔させることのできるエピソードに満ちた時代でもあります。

氏は、現在の定説は、徳川の治世を正統化したいが故にかなり偏った見方をしていると喝破しています。すなわち、それまで戦乱に明け暮れていた日本を最終的に平定した徳川家こそが正義であり、それ以前の反徳川勢力(反織田の勢力も含む)はすべて悪で立ち遅れた存在だったという論調で語られる学説です。

最後の最後に徳川家の前に立ちふさがった豊臣家などは最も悪く描かれています。秀吉は死の間際に狂ってしまい、夢か現かはっきりしない意識状態のまま、勝算などないに等しかった朝鮮出兵に及んだ、とか戦を理解していない淀君とその取り巻きの文官たちが余計な口出しをしたため、真田幸村を筆頭とする優秀な武将を無駄死にさせたとか…。

もちろん、今までの定説にもそれなりの根拠に基づいたものであることは事実なのでしょう。しかしその説と、そこから派生したエンターテインメント作品が広く流布されたことで、徳川にはポジティブさが、それ以外の勢力にはネガティブさが必要以上に付与されてしまったというのもまた事実です。

それぞれの事柄についての定説と、八幡氏の見解の相違についてはぜひとも本文をお読み下さい。一つだけ印象に残ったのは、織田・徳川と武田の二つの大きな戦いを巡る見解です。この二つの戦いとは、徳川軍が大敗し、逃げる家康が馬上で恐怖のあまり脱糞したというエピソードで有名な三方ヶ原の戦いと、当時としては最新の武器である鉄砲と三段構えという斬新な戦法で武田の騎馬軍を織徳連合軍が散々に打ち破った長篠の戦いです。前者は脆弱な三河武士が武田の精強な騎馬武者軍団に蹂躙されたというイメージで、後者は旧態依然の武田軍に対し、織徳連合は最新兵器を用いて大勝したというストーリーですね。確か学校でもそう習った気がします(笑)。八幡氏はこの二つの戦いは単純に兵数の多い方が勝っただけ、という味も素っ気もない説を開陳しています。三方原では武田軍二万五千に対し、織徳側は一万一千、長篠では同一万五千に対し三万五千。血湧き肉踊る戦国物語ではなく、冷徹な現実ってやつです。実社会の経験からは冷徹な現実のほうが強いと学びましたね(泣)。戦国シュミレーションもののゲームだって、武将の才能より兵力のデカい方が強いんですから…。

俗に「歴史を学ぶことの一つの価値は、過去を研究することでその過ちを分析し、同じ間違いを繰り返さない方策をたてることだ」などと言いますが、事象の見方をまるっきりひっくり返されるような説を次々と出されると、なにを基準に考えればいいのか、よくわからなくなってしまいますね。

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by lemgmnsc-bara | 2017-04-01 07:36 | 読んだ本 | Comments(0)

『創価学会』を読んだ

創価学会 (新潮新書)

島田 裕巳/新潮社

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いまや連立与党の片翼として、政府の意思決定に深く関与しているのが公明党。その支持母体となっているのが、いろんな意味で有名な創価学会。衆議院で圧倒的多数を占める自民党ですが、各選挙区における創価学会の選挙協力なしには成立し得ない議席数だそうです。日本で一番政治力のある宗教団体と言ってもよい同会についてその発生から、現在に至るまでの歴史を概観しているのが宗教学者島田裕巳氏による標題の書。

島田氏がこの書で語るところによれば、創価学会の基本的な教義は現世利益の実現です。信者は自らが深く信仰することもさることながら、新しい信者をより多く獲得することでより多くの現世利益がもたらされるという教えを受けるそうです。故に一時はその布教方針について批判が集まったこともありました。よく言われていたのは、重病の患者の枕元に押し掛けて、入信を迫り、最後まで入信しなかった故人に対し「入信しなかったから罰が当たったのだ」と言い放ったという「伝説」。聖教新聞の購読を勧めることと連動した大学生への勧誘も多々あったようです。

私は幸か不幸か彼の教団の「折伏」に遭遇したことはありません。私の学生時代に布教活動に熱心だったのは統一教会(月に一回か二回くらいは自室に勧誘が来た)かオウム真理教(こちらも私は遭遇したことはありません)で、聖教新聞の勧誘も仏罰を唱えて入信を強要する人物にもお目にはかかったことがありません。しかしながら、実際には先に述べたように、政治的影響力を強く持つ集団として、かなりの数の信者が存在するようですね。各地に存在する学会の教会所はみな立派な建物で、しかも地価の高そうなところに堂々と鎮座しています。

島田氏は創価学会が勢力を伸ばした背景には日本の高度成長とそれに伴う都市部への人口集中があると分析しています。高度成長は農村から労働力となる若者を都会へと呼び寄せる作用がありました。そして人口が集中した都会に大量に発生したのが、地縁や血縁のない孤独な大衆。日々の労働で疲れ、その疲れを癒す受け皿を持たない大衆の不満は社会体制への不満となります。そしてその不満の受け皿となったのが、創価学会と社会主義・共産主義だったというわけです。後者の運動の中心は難しい理論を唱えるインテリで、時にはテロ行為を行うなど、ささやかな幸せを求める一般庶民の「志向」からは少々乖離していたのに対し、創価学会が唱える現世利益は、見事にその「需要」を満たした、というのが島田氏の解説。なるほど、わかりやすい。アメリカのトランプ氏が目先の利益への関心を強く持つ、農民を中心とした中間層の意向をうまくくみ上げ勝利した昨年の大統領選と同じような構造ですね。

さて、この集団は一体どこに向かうのか?そしてその方向性により日本はどのように引っ張られるのか?なかなか興味深いところではあります。公明党が信条とするところの「平和の党」というスタンスだけは持ち続け、自民党の暴走を食い止める存在であって欲しいとも思います。



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by lemgmnsc-bara | 2017-03-26 17:09 | 読んだ本 | Comments(0)

なんだかんだで読んだ本のことばっかり書いてます。たまに映画、時々食い物とドライブとラグビー観戦。


by 黄昏ラガーマン
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