『ア・ホーマンス』鑑賞

ア・ホーマンス [DVD]

松田優作,石橋凌,手塚理美,ポール牧,阿木燿子/TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

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故松田優作氏の初監督作品。新宿を舞台に、ヤクザ同士の抗争とそこに関わる謎の男の姿を描いています。

松田優作演じるのは、主人公「風(ふう)」。彼は記憶をなくしているという設定で、バイクに乗って新宿にやって来て、浮浪者のたまり場近くに住みつきます。独特の威圧感を持つ彼の周りには、その威を借りようとする浮浪者たちが恐々近寄ってきますが、彼はまったく相手にしません。やがて、新宿を拠点とする大島組のヤクザ山崎にその威圧感を見込まれ、組の経営するデートクラブのボーイとしての職を得ることとなります。

そんな折、大島組の組長が、対立する旭会のヒットマンに襲撃され死亡するという事件が起きます。この辺は、映画公開当時世間を賑わしていた、巨大暴力団同士の扮装を彷彿とさせます。また、当時の新宿は、そんな血なまぐさい事件が勃発してもおかしくないような危うさが漂ってもいました。親分さんたちが派手にカネをばら撒いて遊んでたりもしましたね。特に夜の歌舞伎町は賑わいとともに、その裏の闇の濃さを濃厚に感じさせてくれる場でもありました。その辺の雰囲気はよく出ていたように思います。

親を殺されたら、そのカタキは自分の命に代えても討たなきゃならないのがヤクザの世界。しかし、大島組の「後継者」藤井(故ポール牧師匠が、コミカルな中にも残虐さと冷徹さを併せ持つインテリヤクザを怪演しています!)は相手のトップではなくナンバー2の副会長への報復を指示。どうやら藤井は裏で旭会とつるんで表向きは共存共栄を目指す方針のようです。この藤井の方針に納得いかないのが山崎。彼は単身で旭会会長の命を狙います。そしてそこに風は助太刀として参戦するのですが…。というところで久しぶりの逃げ口上。この先は本編をご覧ください。

全体に、不思議な緊張感の漂う作品でした。今にも大爆発しそうな予感があるのに、決して爆発しない。俗に言う「嵐の前の静けさ」ってやつがずーっと続きます。それこそ本当に最後まで。結局観る側の期待も予測もすべて裏切る結末が待ち受けているんですが、一言で言えば拍子抜け。あれだけ引っ張った緊張感はナンだったんだ?という感想を持つしかない結末です。アクターとしての松田優作に求められていた「雰囲気」はたっぷり味わえたものの、作品としては欲求不満の残る不思議な一作でした。

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by lemgmnsc-bara | 2017-04-07 20:19 | エンターテインメント | Comments(0)

『暴力教室』鑑賞

暴力教室 [DVD]

東映ビデオ

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松田優作主演のバイオレンスアクション。松田演じる体育教師溝口が学園に巣食う不良グループ(リーダーの喜多条を演じるのは当時クールスのリーダーだった舘ひろし)と対決する、という展開を予想していて、実際途中まではその通りのストーリー展開だったのですが、途中で筋がぐちゃぐちゃになります。

元ボクサーである溝口が、不良どもを鍛えに鍛えて矯正する、ってストーリーだとスクール・ウォーズになっちゃいますね。厳しく接する溝口に対し、反発を強める喜多条は溝口の妹淳子を暴行します。ここで、溝口の怒りが爆発して、不良グループを叩きのめしたら、アメリカの本家『暴力教室』とまったく同じ。まあ、あの映画が下敷きになっているのは否めないところですがね。

話の焦点はいつの間にか、溝口が教師として奉職している学園の汚職騒動へと移っていきます。結局一番悪いのは私腹を肥やそうとした校長。どこでどうストーリーを捻じ曲げれば彼が最大の悪役になるのかよく解りません。

最終的には喜多条たちまで「正義キャラ」になっちゃいますし…。

まあ、松田優作のその後のバイオレンス作品の魁となったという意味で、記念碑的作品という評価はなされているようですが、まあ、体のいい「顔見せ映画」。ストーリーはどうでもいいから、主役を目立たせりゃいいって作りがミエミエでした。同じ怒りを爆発させるなら、すくなくとも前半部分くらいはしつこいくらいに「耐え忍ぶ」シーンを観せてくれれば、また印象も違ったと思うのですがね。

ま、この作品も鑑賞眼の肥やしってやつですね。
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by lemgmnsc-bara | 2011-08-07 08:44 | エンターテインメント | Comments(0)

『ひとごろし』鑑賞

ひとごろし [DVD]

角川エンタテインメント

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松田優作主演の時代劇。この作品での彼は、クールな二枚目ではなく、臆病者で卑怯な侍を演じており、公開当時、それまでのイメージを覆すようなみじめったらしい演技が話題になったそうです。

山本周五郎の小説が原作となったこの作品、私が最初に触れたのは小説ではなく、演劇でした。確か中学の頃演劇教室なる催しがあり、体育館にしつらえられた舞台で観た覚えがあります。ストーリーは覚えていましたが、松田優作が主人公のキャラをどう演じるのかには大いに興味を惹かれていました。

双子六兵衛(松田優作)は犬や蛙にさえおびえる臆病な武士。藩内でその臆病振りが物笑いの種にされており、本人に嫁が来ないばかりか妹のかねにすら縁談が舞い込まない始末。

一方同じ藩内の武芸指南役仁藤昂軒(丹波哲郎)は腕は立つものの、あまりに厳しく稽古をつけるので、藩士の恨みを買っていました。ある日、積もりに積もった恨みを晴らそうと、数人の藩士が昂軒を襲いますが、見事に返り討ちにあってしまいます。

昂軒はそのまま逐電。藩の面子にかけても昂軒を討ち果たさねばならないとはいうものの、腕の冴えを見せ付けられていた藩士達はみな追っ手になることに及び腰。ここで名乗りを上げたのが汚名返上を心に誓った双子六兵衛。武芸の腕はからっきしの彼が取った「戦闘方法」とは?というわけで、これ以上はネタバレになってしまいますので、とっとと逃げることにします。実際の映像をご覧下さいm(_)m。

松田優作は持ち味のハードボイルドさを封印し、徹底的にコミカルな男を演じています。二枚目テイストはほとんどなし。まあ、最後の最後だけちょっとカッコいいかな?って感じです。話題になるだけのことはあった作品だと思います。

それにしても松田優作、丹波哲郎、岸田森と主要なキャラを演じた俳優はみな鬼籍に入ってしまっています。1976年の公開作ですから、今から35年前か…。月日の流れって残酷です。
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by lemgmnsc-bara | 2011-06-30 23:28 | エンターテインメント | Comments(0)

『殺人遊戯』鑑賞

殺人遊戯 [DVD]

東映ビデオ

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そういえば松田優作のバイオレンス作品ってまともに観たことがなかったな、と思い立って借りてきたのが標題の作品。

この作品で彼が扮するのは凄腕の殺し屋鳴海。冒頭でいきなり暴力団頭山会の組長を射殺して海外に逃亡。その時に命を救った組長の愛人と娘が帰国後の鳴海と様々な形で絡みます。

鳴海は寿会と花井組という二つの暴力団の間で、彼を利用しようとする二つの組の思惑に揺り動かされるのですが、実は二つの組の間で巧く立ち回り、両方の組からカネを出させるしたたかさをみせます。

決してクリーンな主人公ではありませんし、結局は彼がほとんどすべての人間を殺戮します。高倉健の時代の任侠映画とは異なり、鳴海には義理も人情もありません。ただ、己の思うがままに動き、銃を撃ちまくって、二つの組織を壊滅に追い込みます。

しかし、その報酬として残ったのカネだけ。女の愛情を得たわけでも、暴力団の利権を受け継いで甘い汁を吸うわけでも、正義を体現するわけでもありません。得たカネですら、唯一の舎弟文太にそっくり渡してしまいます。

よく言えばフランス映画のニヒリズムに通じる作品でしたが、悪く言えばよく意味の解らない作品でした。松田優作の存在感だけは確かに強烈ではありましたがね。ある意味、松田優作が観られればいいっていう、アイドル映画でしたね。
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by lemgmnsc-bara | 2011-06-05 08:58 | エンターテインメント | Comments(2)