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『トウガラシの世界史−辛くて熱い「食卓革命」』を読んだ

トウガラシの世界史 - 辛くて熱い「食卓革命」 (中公新書)

山本 紀夫/中央公論新社

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久しぶりに読んだ「紙の本」。

著者山本氏は植物学の研究者から民俗学に転じたという経歴の持ち主。食品の歴史を研究し、その成果を本にまとめるためにいるようなお方ですね。というわけで、私の興味のど真ん中にもジャストミートしておりますので、いつかどこかのタイミングで衝動買いしていたのに違いありません。

よく知られているオハナシですが、トウガラシの原産地は南米です。それが欧州諸国の進出に伴い、商人の手によって持ち出され、高価であったコショウの代替品として広まり、中国やインド、韓国などを経て日本にまで伝わりました。ちなみにこれもよく知られていることですが、トウガラシは辛いものばかりではなく、ししとうやピーマンなどそのまま食べても大丈夫なものもあります。

トウガラシを多く使う料理として私が一番最初に思い浮かんだのはキムチですが、実はこのキムチが定着したのはせいぜいここ300年ほどの間だそうです。一説には、秀吉の時代の朝鮮遠征で日本兵が持ち込んだものが、韓国産トウガラシのルーツであるとのこと。意外なほどに歴史の浅い漬け物だったのですね。ちなみに韓国ではここのところ、キムチの消費量は減っているそうですし、若い年齢層には、自家製キムチをつくることを面倒くさがり、出来合いのモノで済ましてしまう人々も増えているそうです。日本でも嫁入り道具の一つにぬか床がラインナップされていた時代は遥か昔になってしまいましたが、韓国でも同じような自体が出来しているようですね。なお、現代の日本で一番生産量の多い漬け物はキムチだそうです。

中国も四川地方は辛い料理が有名ですが、ここでトウガラシが使われるようになったのは、韓国よりも100〜200年ほど後で、さらに歴史が浅い。18世紀にいたるまでトウガラシが出現する文献がないそうです。これがこの本を読んで一番意外に思ったことでしたね。

あとは、ハンガリーでパプリカとして独自の進化を遂げた一派に関する章が興味深かったですね。新婚旅行の際、オーストリアで夕食がフリーとなる日があったのですが、そこで当時のガイド氏に勧められたメニューの一つがグロールシュというスープの一種。これは和訳(でもないんですが…)するとハンガリー風スープと呼ばれるもので、パプリカをたっぷり効かせて牛肉を煮込んだものです。残念ながら、その時にいったレストランにはグロールシュはなかったのですが、このスープは欧州各国で、各言語で「ハンガリー風スープ」としてオンメニューされるほどポピュラーなものだそうです。パプリカは最近は日本でもちょっとしたスーパーに行けば手に入るようになりましたが、ハンガリーでは日本におけるミソみたいな存在のようです。

拡散の過程や年代についてはおぼろげなイメージを持っていただけでしたが、この一冊はかなり具体的に拡散ルートや各国の食文化との結びつきを解説してくれていました。なかなかためになるウンチク本だったような気がします。ついでに、トウガラシをたっぷり入れたうどんをすすりたくなりました。日本のように薬味としての使い方にほぼ限定されていたのは珍しい例だったようです。



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by lemgmnsc-bara | 2017-07-23 15:49 | 読んだ本 | Comments(0)